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最終章

その後③

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細かなこともついでに書いておこう。

まず、シスターテレサ。
彼女は俺が戻った時には天に召されていた。歳が歳だ、仕方ないだろう。むしろあそこまでよく元気だったと思う。


それとバイク馬車の隠れ迷い人のダンズ。
奴は今大忙しだ。亜空間倉庫が消えた今、魔物を運ぶ手段が荷車や馬車に殺到している。
そこで目立ったのがダンズだ。
バイクだからではない、彼の荷車の振動の少なさや、タイヤ?かわらかないが力が少なくても押せる荷車の技術に注目が集まっている。
ダンズの為にも俺が作る予定の亜空間倉庫バッグは、値段を高くするか発売時期を伸ばそうと思う。


オカマ隠密のキャサリンは、なぜか姿を消していた。ハルートもどこに行ったかわからないらしい。あいつは本当に謎が多かった。


そうそう、ザルバ。
ザルバはとうとう引退してカラディンに帰った。
その際に俺の迷宮都市の拠点に、葉っぱ用に炉を作って行った。覚えている人は少ないと思うが、使い道がなかった《離れ》があるのだ。そこにオリハルコンでも精製出来る炉を作ってくれた。
今はカラディンで復興の手助けをしている。


マイアとゴンドの店は、また売上が低迷化していたが、今度はクレープの作り方を教えてやった。
あのごついゴンドといけ好かない顔をしたマイアがピンクのエプロンをしてクレープを焼いてるのは笑えたが、売上はうなぎのぼりだった。


千年エルフのガラテアはまだ存命だった。聖龍教を後釜に任せ、隠居生活をしていた。
龍の真実を知って、聖龍教はどうするのか?ガラテア曰くもうどうでもいいらしい(笑)。
酷い言い草だと思うが、

「ヨシト様を見習ったのです」

とか言っていた。一体何を見習ったのか問い詰めたかったが、面倒なのでスルーした。


メイの両親は、籍を入れたと知ると狂喜乱舞だった。本当に、文字通り狂喜乱舞だ。
何故、娘に子供が出来ないからと母親が俺と寝ようとし、それを旦那が推奨するのか理解不能だが、そこはメイの睨み一つで抑え込まれたので助かった。


両親つながりだと、メリッサの両親も違った意味でうるさかった。
まず、ベッドの回数を増やせ。正妻をメリッサにしろ。テレポートがあるのだから毎日顔を出せ等だ。
元が商人で今でも商人だからか、注文が多くて面倒だ。
メイの時の同じくメリッサにも両親を押さえつけて欲しいのだが、こっちは両親にあまり強く言えないらしく、もじもじするだけで役に立たない。普段の脳筋ぶりはどこに消えてしまうのだろうか。


武闘大会を覚えているだろうか。なあなあで立ち消えになっていた武闘大会は、なんとバセアー主体で執り行われた。
モーラたち四姫桜の面々も紋章の力がなくなり、今では一般人だと言い張り出場した。
予選には数百人が出場し、決勝に残った8人でトーナメントを行った。
モーラ、メリッサ、メイ、アリサ、バセアー王、ダークエルフの精霊魔法使い、サザーランド将軍、ビューゼルドが決勝に残った。
・・・・・・俺?察しろ。
ただ予選第1試合の相手がメリッサだった。これは仕方ないと思う。
決勝はモーラとメリッサだ。かなりの白熱した試合を見せたが、紙一重でモーラが優勝をもぎ取った。
メリッサの悔しがり方は半端じゃなかったが、ベッドの回数を増やしてやることでなんとかご機嫌を取った。


POOTERSも忘れてはいない。ポーターが廃業になり、ポーターズも終わりかと思いきや、ミナミハリューセンタスたちの頑張りにより、ポーターズはまだ営業している。むしろ《お持ち帰り》がメインになってる気がしないでもないが、女性用ポーターズの方の人気も衰えてなく、やつらはカラディンに移住してしまった。
時々、迷宮都市とカラディン間の足として俺が使われるが、そのくらいは許してやろう。


エルダイトの新国王も、今では立派な大人だ。ガニメデ子爵も名実ともに宰相としてその腕を振るっている。
だが、1つ困ったことがある。

「帝王!私にアーデル様をください!必ず、必ず幸せにしてみせます!」
「・・・・・・お前、俺が嫌いじゃなかったっけ?復讐するんだろ?」
「帝王は相変わらずいけずですな!そんな昔のことを持ち出さないでください!あれは我が父や兄たちがバカだったのです。それにアーデル様の魅力に掛かれば、そのような些細な・・・こと、どうでもいい!!」

親親族を殺された恨みを、どうでもいいとか言っちゃう神経してる奴の方がどうでもいいけどな。

「・・・ガニメデ、なんとかしろよ・・・」
「帝王様。アーデル様は人族、帝王家の血筋を絶やさぬ為にもアーデル様は人族と婚姻するしかないのです。我らが都市エルダイトの更なる繁栄の為にも、ご考慮戴けませぬか」
「・・・まだ成人もしてねーよ」
「あくまでも婚約です」

だが、親の仇である俺が名付けたエリクソンという名前を、忠実に守って名乗っているこいつを無下にするわけにもいかない。
どうしようか迷っていると、エリクソンは言う。

「アーデル様はアリサ様のご息女!アーデル様が成長しましても、必ず、必ず慎ましく美しい胸をしてるに────」
「お前もかよっ!!」

どうしてこう、王族関連のやつは貧乳を好むのか。ジョシュアも「我が息子にアーデル様を」と言って来ているし・・・。
ボリュームのある方がいいと思うのだが、希少価値だからか。


フリーポートでは、ビューゼルドとシンクレアが結婚していた。まあ、そんな雰囲気は前々からあったから、なるようになったと言う感じだ。

「老けたな・・・」
「兄ちゃん、それを言うのかよ」
「・・・一応帝王なんだが?」
「はっ、そんな台詞は俺に手合わせで勝ってから言え!」
「・・・」

ビューゼルドはもうおっさんを通り越してオジサンになっていた。

「あなた?帝王様に失礼ですよ」
「あ、ああ、すまねえ」

ビューゼルドは完全に尻にしかれていた。これも元からだな。
シンクレアは今では王妃兼宰相だ。

「宰相、ネライックの件は大丈夫か?」
「はい、帝王様。ネライックの存在は公にならないように隠しております」
「頼む。それと動向の監視もな」
「心得ております」

普通は魔物の街が存在するとなれば、友好を深めにとかやるんだろうが、それはあり得ない、あってはならない。
俺たちは食うか食われるかの関係でなければならないからだ。

「ケツアルは?」
「あいつは完全に人間として暮らしている。ほっといていいだろ」
「そうだな」

尻フェチだしな。

「そう言えばゲンとか言うナイトウォーカーは、はどうしてるんだ?」

俺は結構気になっていた。
ビューゼルドは天井を見上げる。

「もともとは高額の金で女を集めていた。一回幾らって感じでな。でも今じゃ血を捧げたいって女が自ら血を渡してるよ」
「・・・それ、魅了とか洗脳とかは・・・」
「違うな。昔調べたことがあるが違ったよ。ゲンが言うには、『竿で女を自由に出来なきゃナイトウォーカー失格』だとよ」
「おい、やめろ」

隙を見せるとすぐに下ネタを挟んで来やがる。
だが、ビューゼルドは笑う。

「良いじゃねーか。下世話なのはこの作品で終わりなんだろ?気にすんじゃ────」
「その話はもっとやめろ!!」

全く、どいつもこいつも禁域サンクチュアリに平気で踏み込みやがる。
一体どこから情報を仕入れてくるのか。




もう一つだけ語らねばいけない事がある。

俺はケイノスに向かう。

「あっ!ヨシトおじさん!」
「元気か?バルト」

バルトの背は俺に追いつき、年も同じくらいに追いつかれてしまった。それでもおじさん呼ばわりだが、敢えてそれを許している。

「これバルト、帝王様になんて口の利き方をする」
「良いんだ、オースティン」

店の入り口で掃除をしていたバルトに挨拶すると、店内からオースティンが出てくる。

「帝王様、お久しぶりでございます」
「ああ、心配かけたな」

俺とバルト、オースティンで店先で数分話をすると、オースティンが、

「さて・・・・・、バルト、仕入れに行きますよ」
「えー、父さん、昨日も行ったじゃないか」
「良いから来なさい。商人は市場の動向を探ることは最も大事なことです」
「・・・ちぇ、じゃあ、ヨシトおじさん、またね」
「ああ・・・、またな、バルト」

オースティンがバルトを連れてどこかへ離れる。

店の軒先で俺がまごまごして突っ立って居ると、店内から年の頃10歳~12、3歳の男の子が出てくる。

「いらっしゃいませ、おじさん。今日は何をお求めですか?」
「・・・・・・」
「・・・おじさん?」
「・・・・・・」

自然と俺の頬に涙が伝う。

「お、おじさん?」

男の子は挙動不審な男に、いきなり泣かれて、店内に後ずさりしようとする。

「お、お母さ────」
「ま、待ってくれ!」

俺は片膝を地面に付いた。男の子は立ち止まって俺を凝視した。

(消えてる・・・、アザが・・・。だけど力を感じる・・・すげえ魔力だ)

そうしようと思って来たのではない。だが何故か直感的にそれが正解に思えた。

「す、すまない、こっちに来てくれないか、怪しい者じゃない。・・・って怪しいけども、怪しくないから!・・・あー、俺は何を言ってる!!」

俺は俺の頭を殴る。
すると、男の子はくすりと笑い、

「へんなおじさん。なんか用?」

男の子は俺の前まで歩いて来てくれた。
俺は頬に伝う涙をぐいっと拭き取り、亜空間倉庫から銀色の本を取り出す。

「これを・・・持ってみてくれるか?」
「これを?別に良いけど」

男の子は俺から銀色の本を受け取ると、表紙を開き、ページをパラパラと開く。

「なんだろ、見たことない文字だね。おじさん、これ何語?」

男の子は視線を銀色の本から俺に移して、訪ねてくる。
無垢な、純粋な瞳をしている。

(開いた・・・、アリサでもメイでも開かなかったのに・・・・・・。これが正解なのか?)

「それ、おじさんからのプレゼントだ。君にあげるよ」
「っ!ダメだよ、こんな高そうな本もらえないよ!それに中身読めないし」
「良いんだ、それは読めなくても良いんだよ。おじさんも読めない。でもそれを持ってれば、いつの日か役に立つから」

男の子は、不審そうに首をかしげる。

「本当に?・・・それに重いよ」
「頼む、貰ってくれ・・・」
「んー、わかった。でもお母さんに相談してからだね。待ってて、お母さん呼んでくる!」
「待って!」

本を両手で抱えたまま、店内に走り出そうとした男の子を呼び止める。

「な、名前は?」
「・・・僕?ヨシヒコって言うんだ。珍しい名前でしょ?」
「っ!」

俺の視界は、湖の水面のように波打つ。

「・・・へんなおじさん・・・待っててよ、お母さん呼んでくるから!」

俺はヨシヒコの背中を見届けて、その場を立ち去った。


数年後、何やら珍しい商品を売り出す店が有名になる。
それは、この世界では見られない、とても珍しいものばかりだった。
まるで日本で売っているような・・・。
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