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第六章

幕間 ヨシトの散歩

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「いやあ、活気があるな~」

俺はリモアとカラディンの復興の手伝いに来ている。
しかし、「助世の竜殺しにやらせるわけにいかない」と手伝わせてもらえない。
何度も交渉したのだが、しまいには

「はっきり言って役立たずだ!この、へっぴり腰が!」

と、言われてしまった。

カラディンの地下都市からどんどん資材が地上に運び込まれ、地上都市がどんどん出来上がっていく。
みんな、龍に襲われたことなどなかったかのように、笑顔に溢れ、男も女も貴族も平民も復興に勤しんでいる。

「おっ!そこにいるのは竜殺しではないか!」

王だ。ザルバの弟弟子と言っていた王も、頭にハチマキを巻いて、資材運びを手伝っていた。

「・・・そんなことまでしてるのかよ」
「ガハハハハハ!復興に王も庶民もない!むしろ陣頭指揮をしてこその王よ!」
「・・・まあ、一理ないこともない」

俺は手伝いを断られたことを話すと、

「ふむ、ならば頼みたいことがある」
「おっ、なんだ?」
「噂では竜殺しはその武力だけではなく、素晴らしい知恵を持つと聞く」
「・・・いや、そうでもねーけど、誰がそんなことを」
「誰がと言うより噂だ。迷宮都市には、竜殺し印のおにぎり屋があり、恐ろしく繁盛していると聞くぞ?」
「あー、あったなー」

マイアとおっちゃんの店だ。そういえばしばらく顔を出してない。覗きおにぎり屋は繁盛してるのか。それは良かったと思う。

「是非ともその素晴らしい知恵を、我がカラディンにも授けてくれぬか?」
「・・・・・とりあえず考えてみるわ」
「うむ。頼むぞ」


・・・
・・・・
・・・・・


さて、とんでもないことを頼まれてしまった。
ここはやはり、日本の知識を使って何か面白いことをやるのがいいだろう。

「ん~~~っ・・・どうするか・・・」

はっきり言って、ドワーフに受けるものなんてわからない。酒が好き程度しか知らないのだ。
俺は何人かの道行くドワーフにリサーチをしてみた。すると、一番多かった答えは、

「意外だとよぐ言われるけども、ドワーフは皆、歌と踊りが大好きだでや」
「たしかに意外だ」

これだった。だが、よくよく思い出すと、あの宴会の時も歌や踊りに溢れ、誰も彼もが踊り出していた。宴会だからと気にしなかったが、あれが国民性だったのか。

「ん~~、あっ!わかった!リモア、冒険者ギルドに行くぞ!」
「はぁ~~~い!」



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



建物を作るのと、従業員の研修に1ヶ月かかった。
そして今日はお披露目の日だ。今日は四姫桜たちや葉っぱも連れてきている。システィーナだけ、訳あってお留守番だ。
当然王なども見に来ている。

建物の前には100人以上のドワーフが集まり、やんややんやと大騒ぎをしている。
そして建物には黒い垂れ幕がかかっていて、何も見えなくなっている。


俺はモーラに風魔法を使わせて、風に乗せて俺の声を通す。

「レディーーース、エン、ジェントルメン!!本日、これより!竜殺し印の2号店を、ここ、新生カラディンにオープンする!!」

「「「「「うおおおおおおおおおお!」」」」」

「見たいか?見てーのか?!」
「早く見せろ!」
「じれってえ!」
「構わねえ、店に乗り込んじまえ!」

ドワーフは気が短くて困る。

「待て待て、それでは!垂れ幕、オープン!」

実際は垂れ幕ではない。亜空間倉庫で空気穴を開けつつ、建物を囲っていたのだ。

「「「「おおおおおおお!!!」」」」

亜空間倉庫を解除すると、煌びやかな、色とりどりの照明の魔道具によって飾られた、カラフルな建物が現れる。
そして、建物の中からはダンサブルな曲がガンガンと流れている。

「押すんじゃねーぞ!全員入れるから!ゆっくりと順番に入れ!」


店内は、白とオレンジを基調とした、そしてまたまた照明の魔道具で、色とりどりに飾られた室内になっている。

全員が着席すると、どこかの席でドワーフが、

「竜殺し様あ!席に座ったども、店員がいねえべがや。注文はどうすんだ?」

俺は大声で、

「テーブルに置いてあるメニューを見て注文してくれ、わからないことは、・・・・・・今からお前らの席に向かう店員にしろおおお!」


「「「「キャアア!」」」」
「「「「ヤホー!!」」」」

黄色い声をあげて、店員の女の子が勢いよく、裏方からフロアに飛び出してきた。
服装は、上はボディラインが丸見えのタンクトップ一枚、下はまるでビキニの水着のようにキレッキレのホットパンツや、尻がギリギリ見えるか見えないかのミニスカートを履いたドワーフの若い女たちがぞろぞろと現れた。

中にはローラースケートを履いたやつもちらほらと見受けられる。
もちろんこれらや照明なんかも、俺とポールたち、ミナミハリューセンタスの知り合いなどから作られている。

店内の一席に座っているうちのメンバーは、なぜか既にジト目で俺を見ている。
感がいいのは嫌いだよ。

「聞けええ!まずはそれぞれ注文して、一杯やってくれ!」

たわわな胸を強調するようなタンクトップのドワーフ女たちが、席をどんどん回っていき、注文を取っていく。
それを紙に記入し、ローラースケートを履いたミニスカートのドワーフ女が店内を颯爽と走りながら、注文の書かれた紙を回収し、それを裏方に持っていく。
ローラースケートの速度で、ミニスカートはヒラヒラヒラヒラ、パンチラを作り出している。

自身も注文した王が、俺の近くの座席に座ったまま、ボソリと呟く

「て、天才だ・・・」

俺は王の隣に立ち、

「まだだ、こんなもんじゃねえ」

王は、俺にゆっくりと振り返り、

「・・・・・・なんだと?」

そしてローラースケート部隊は、パンチラを生み出しながら、裏方から颯爽と客の座っているテーブルに、手ぶら・・・で戻ってくる。
ローラースケート店員は、客のテーブルに着くと、

「エール4つ、からあげ、サラダ、ポテフラで間違いないですか?」

客はミニスカートのすそに目を釘付けにされながら、

「あ、ああ・・・」
「・・・んだ」
「そうですか、では。亜空間倉庫!」

ローラースケート店員は、亜空間倉庫を開き、テーブルに注文品を並べていく。

「揃ってますね。じゃ、また注文してね♬」

こんな状態が店内かしこで繰り広げられていた。

しばらくすると、店内の曲が更にダンサブルになり、ローラースケートを履いてない女たちが、テーブル間の通路にぞろぞろと出てくる。

「レディース、エン、ジェントルメン!今からはショータイムだ!呑んで食って、見て楽しんでくれ!」

そして、情熱的で官能的なダンスを踊りまくる。

「「「「ヤホー!」」」」
「「「「ヘーイ!」」」」
「「「「レッツ、ダンシンッ!」」」」

キレッキレのホットパンツを履いた女が、タンクトップで寄せて上げられた胸をブルンブルン揺らしながら、魅惑的なダンスを踊る。
客はその一挙一動に釘付けになる。

王はまたぼそりと呟いた。

「神よ・・・、この天才との出会いに感謝を・・・」


(満足してくれたなら良かった。この世界の女は基本的にムチムチだから、女集めは楽だったぜ。・・・俺の仕事は終わった)


いつのまにかアリサたち四姫桜が、俺の隣に立っている。アリサのお腹は少し膨らみ始めている。安静にして欲しいのに、ついてきやがって。

「・・・お兄ちゃん、これはなんなのよ」
「ん?POOTERSポーターズだ」
「・・・一文字間違えてない?」
「間違えてないぞ?見ろ、料理を運ぶウエイトレスはみんなポーターだ。ちゃんと冒険者ギルドの登録証もある。・・・どうだ?考えたろ?ポーターならローラースケートで料理を運んでも料理が溢れないんだぜ?もちろん酒もだ。俺の亜空間倉庫みたいにずっと収納ってわけにはいかないが、ウエイトレスにはもってこいなスキルだ」

アリサのジト目が濃くなる。

「・・・完全にパクリじゃない」
「失敬な!日本、いや、アメリカにも亜空間倉庫があるか?アメリカのポーターはこんなサービスをしてくれるか?れっきとした俺のオリジナル・・・・・だ」
「「「「・・・・・・」」」」

全員のジト目を華麗にスルーしてると、近くのテーブルに座っている客が、

「ぬええええええ!」

俺はいかなり叫んだドワーフのおっさんに視線を向ける。

「どうした?」
「あっ、竜殺し様あ!なして料理を持って帰ると金貨1枚なんですが!高すぎねか?!」
「あー・・・」

メニューの一番端っこに小さく、《お持ち帰り、金貨1枚》と記入してある。
俺はおっさんの肩をぽんと叩き、おっさんに耳打ちする。

「注文してみりゃわかる」
「・・・?」

それを皮切りに、店内のそこらかしこで、ポーターズのお持ち帰り・・・・・交渉が過熱した。
今でもすごい盛り上がりだったが、お持ち帰りに気づいた客の、ウエイトレスを見る目は、腹を空かせた狼の目のようだった。

四姫桜の面々は、お持ち帰りの意味が分からず、きょとんとしてると、アリサが余計なことをする。みんなにヒソヒソとお持ち帰りの意味を説明しているのだ。
するとみんなが、

「ヨシト・・・」
「ヨシト様、最低です」

メリッサは一層強く俺を睨む。

「あんた、まさか自分で味見・・してないでしょうね?」

俺はドキッとして、おろおろしてしまう。

「す、するわけないだろ!俺には愛するお前たちが居るんだから!」
「・・・怪しいわ・・・」
「なんで汗かいてるのよお兄ちゃん?おかしくない?」
「あ、暑いんだよ!」


すると、店の外からまるでPTAのおば様方のようなドワーフおばさんたちが、10人ほどすごい形相で乗り込んできた。
アリサはそれを見ると、

「ほーら、こんなの作るからこうなるのよ」
「・・・・・・まじかよ・・・」

(まさか一日目で終わってしまうのか・・・)

ドワーフおばさんたちは、俺の目の前にぞろぞろと並ぶ。
そして俺に膝をつかせ、俺の胸ぐらを掴む。

「竜殺し様、・・・いや、あんた」
「・・・は、はい!」

おばさんは俺の胸ぐらをぐいっと引き寄せ、

「あんた、女用も作るんだろうね?」
「はい!・・・・・・はい?」

後ろのドワーフおばさんは言う。

「あたしゃ、人族がいいね!」
「おらはエルフがいいだ、こう、すらっとしたお尻がたまらないだで」
「ええのー、ドワーフでねければお持ち帰り・・・・・しでも、旦那にバレねだ」
「んだんだ!」
「あたしゃ、竜殺し様でもええだよ」
「おお、そりゃ名案だで!ひとつ頑張ってもらうかいね!」
「「「「ギャハハハハ!」」」」

俺たちは絶句した。

俺は更に胸ぐらをぐいっと引っ張られる。

「で、いつ作るだ?」
「す、すぐに・・・・・・」





POOTERSポーターズ、ホストバージョンは、ひと月経たずにオープンした。
俺はポールたち4人組をホストとしてぶち込み、経営を任せて逃げた。
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