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第六章

ケツアルクワトル

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次の日の朝、みんなに散々からかわれた。
だが、中学生のようなああいう感じではなく、

「アリサ、良くやりました」
「これでヨシトの子供が見れるんだね」
「みんなで育てましょ!」
「・・・」

アリサは嬉しさ、恥ずかしさで真っ赤になり、黙って俯いている。

「ヨシト様、アリサが妊娠するまでは毎日アリサと寝てください」

メリッサも興奮している。

「そうよ!これで命がつながるわ、ヨシトの子供なのよ!」

言い方はどうかと思うが、メリッサは過去、異種族で子供がかなり出来にくいのを気にしていた。葉っぱのことを人族だと期待してたくらいだ。

「あたしはちょっと悔しいよ。アリサの次にあたしが一番妊娠しやすいはずだからね。先越されたよ」
「私、武術を教えるわ!」

興奮してるメリッサにメイが水を差す。

「何言ってるのですか?メリッサ」

メリッサはメイを見る。

「ヨシト様の子は、私が教育します。立派な淑女にして差し上げます」

メイの後ろにいるシスティーナがぼそりと言う。

「それだけはやめたほうが・・・」
「なんですか?システィーナ」

急に振り向かれたシスティーナはびくりとして、

「なんでもありません!マム!・・・、あっ、メイお姉様!」
「あたしも剣を教えたいよ」
「鍛治覚えるかな?」

皆が散々言いたい放題言ってると、流石にアリサがキレた。

「うるさーい!!私の子よ?!魔法を教えるに決まってるでしょ!!」
「ずるい!独り占めは良くないわ!」
「そうですアリサ。私に任せなさい」
「アリサ、近接も大事だよ?剣は任せなよ」
「葉っぱの鎧作ったげる」

女たちがガヤガヤやりだした。

(良かった。これならアリサの気も紛れるだろう。・・・任せとくか。・・・ん?)

システィーナが怯えるように後ずさりをしている。

「見える・・・見えるわ・・・!私の未来が!さらにお父様たちも加わって、・・・・・・じ、地獄・・・」

俺は下がってきたシスティーナの頭に手を乗せる。
するとシスティーナは俺を見上げる。

「ヨシト様・・・」

俺は黙ってゆっくりと首を振る。

「諦めろ」
「っ!いやあああ!」

システィーナは走り去った。

(まあな、システィーナが子供を作ったら、メイがどうなるか・・・。恐ろしいわな・・・)



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



夜になってから、モーラとリモア、俺の3人で酒場に向かう。
何故か?あいつらは既に子供服を作り始めたり、子供用品の買い物したり、システィーナを捕まえて房術を仕込んだり忙しいからだ。

酒場に着くとイケメンチャラ男の金級冒険者、ケツアルクワトルが待っていた。

「待たせたかい、ケツアゴワレトル」
「だから違うってモーラ、ケツダケアイシトルだよ」
「頼むから尻フェチにするのだけはやめてくれ・・・」

周りに人がいない空いてる席に移動し、料理と酒を注文する。

「本題から話す。我には願いがある」

ケツアルクワトルは顔をまじめにして、俺を見る。

「一応聞いてやる」
「龍神王、我が父を殺してもらいたい」
「「・・・はあ?!」」

予想外の言葉に俺たちは驚いた。

「待ちなよ。あたしも事情は聞いた。あんたは力の紋章を集めるんじゃないのかい?」

ケツアルクワトルはゆっくりとエールを飲み、

「まず、我はケツアルクワトルだが、これからはケツアルと呼んでいただきたい。冒険者登録もその名でしている」
「いいけどよ、それの何が────」

ケツアルは軽く右手をあげ、俺の言葉を遮る。

「それに我は今は人間だ。いや、そのつもりだ」
「「・・・」」
「簡単に言うとな、人間にも色んな者が居るように、龍にも色んな者が居ると言うことだ」

モーラが問う。

「要はあれかい?父親が嫌いだから殺してくれと言うことかい?」

だがケツアルは首を振る。

「その一面もある。だが、真意はそこではない」
「なら、なんなのさ」

ケツアルは酒場の外を見るように、遠い目をする。

「我は人間が好きなのだ。いや、この世界が好きなのだ。愚かで、怠惰で、傲慢で、救いようのないほど腐ってるこの世界が・・・・・・愛おしい」
「・・・ケツアル」

ケツアルは続ける。

「平等もいいだろう。調和もいい。慈愛も、寛容も全て素晴らしいだろう。だがな・・・・・・それらが素晴らしく感じるのは愚か者がいるからなのだ。何も愚か者を擁護してるわけではない。必要悪とも言わん。だが、それら全て合わせて世界ではないのか?」

ケツアルは更にエールを傾けて、ジョッキを空にすると、

「おやっさーん!エール追加だ!」
「あいよ!」
「チーッス!」

立ち上がってチャラ男っぽく注文をして座る。

「父は間違っている。・・・それは我にも父の言いたい事もわかる。だが、だからと言って、全ての生命を消滅させるなど、それこそ傲慢ではないか」
「「・・・」」
「それに、全ての龍の紋章を集めると言うことは、我も殺す気なのだ。それも困る」

確かケツアルも紋章持ちだった。
モーラはケツアルに問う。

「あんたは同族を食うことはいやじゃないのかい?」

ケツアルは少し目を見開いて、グハハと笑った。

「同族?!聞いて呆れるわ!散々龍の一族が至高、魔物の頂点にあり龍は魔物ではないと言っている口で同族だと?!そんな時ばかり同族などと口にするな!」

ダン!

ケツアルは空のジョッキを、テーブルに強く叩きつけた。

「いや、あたしに言われても・・・」

ケツアルは頭をかく。

「・・・っ、すまん。しかしな、そんなやつらなのだ。本気でそれを思っていたのはファブニールのやつだけだった」
「エールお待ち」

酒場のおやじがエールを持ってくる。

「ありがとよ!」

ケツアルが笑顔で礼を言う。
おやじは帰る。

「とにかく、我はこの世界を残したい。願わくば人間として暮らしていきたいのだ」

俺はケツアルに聞いてみる。

「お前も強いだろ。お前は龍神王を止めようとはしなかったのか?」

ケツアルは申し訳なさそうに首を振る。

「龍神王は強い。我など話にならぬほどな。それに龍神王は龍神の加護を持っておる。龍の攻撃は効かぬのよ」
「あたしと比べてどのくらいだい?」

モーラが尋ねる。

「気を悪くするな。貴様も強い。あの迷宮の時でさえ我を凌駕した。今はそれ以上の力を感じる。だが、まだ届かぬだろう」
「ヨシトならどうだい?」

ケツアルは首を傾げた。

「貴様はなんなのだ。ヴィーヴルを鬼神の如き強さでねじふせ、ウロボロスを一瞬で殺したと報告が入っておるが、貴様からは何も感じぬ。本当にヴィーヴルを屠ったのか?」
「・・・・・・ああ」

嘘ではない。

「ふむ、力を隠すのが相当に上手いようだ。我の予想では貴様らが纏めて対時して互角ではないかと思うておる」
「ほかに龍はいるのか?」
「若い龍はネライックで暮らしておる。龍の居城ドラゴンパレスに出入り出来るものは、我と龍神王しか残っておらぬ」
「そこにはどうやって行けばいいんだ?」

となりに黙って座っていたリモアが、俺の腕を掴む。

「それはっリモアが連れてくよっ」
「・・・そっか」

少し間が空いて、ケツアルがまた問いかけてくる。

「頼めるだろうか」

俺もエールを傾けてから、

「頼まれなくても俺はやる。世界を救いたいなんてのはねーけど、アリサやみんながたのしみにしている俺の子供が暮らす世界は守らないとな」
「そうか・・・」

ケツアルも少し口元に笑みを浮かべて、エールを飲んだ。

「すまぬ、次元の魔導書と2人で話させてもらうことは出来るか?」
「あ、ああ、構わないぞ」

ケツアルはリモアを見る。

「ЖХХИПЛХухјодИхмРуннош」
(あの事は言ってあるのか?)

「дкллфхиХи」
(言ってないっ、言うつもりもないよ)

「ГлвфрујееХјккХДЉТИМлбг」
(龍神王のもとへ帰れば今の姿でいられるのだぞ)

「ГуинвффЛќшуххдЈОЕшму」
(リモアは魔導書。それは初めからわかってたこと)

「ШРЕБКлгрИк」
(寂しくないのか?)

「ПутвклЅувнлОЅТТфвн」
(全然!リモアはずっとマスターと一緒だもんっ)

「そうか・・・」

気にならないと言ったら嘘になる。だが俺はリモアを信じている。
だから、敢えて内容を問わないことにした。

「話はそれだけか?」
「ああ、これを」

ケツアルが出してきたのは、紋章持ちを殺して紋章を集める魔道具だ。

「貴様が持っていても仕方ないものだが、我は使用する気がない。だから貴様が持っていてくれ」
「わかった」

俺は黒い玉の魔道具を亜空間倉庫にしまった。

すると冒険者のパーティーと思われるやつらが酒場に入ってきた。

「おっ、ケッツーじゃん!」
「なんか久しぶりじゃね?」

ケツアルは少しバツ悪そうに答える。

「チ、チーッス・・・」
「なんだよ、ん?女連れかよ!そいつのアレ狙いか?」
「バカ、男がいるだろ。ケッツーのじゃねえよ」
「あはは、そっか!ケッツー、尻愛護クラブ尻出しキャバクラに新しい子が入ったんだよ!それがまたすげーのよ!プリンっプリンでよ!!今度行こうぜ!」
「チ、チーッス・・・」

ケツアルは明らかに困った顔をしている。

「じゃあな!ケッツー!」
「またな!」
「チーッス・・・」

ケツアルは椅子から立ち上がって、冒険者たちにチョリった。

そしてギギギギとこちらを向き、

「グハハ、まあ、付き合いも大事なのだ。貴様らも人間だからわかるだろう?」

俺たちは顔を見合わせる。

「「「尻フェチじゃねーか!!」」」

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