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第六章

チートとは私のことよ!

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「はあ、はあ、はあ、はあ!」

アリサは一生懸命走っていた。
ケイノス軍は、みるみると戦況が悪くなっていく。勇者のユニークスキルのせいだろう。

「私はっ、はあ、はあ、筋肉バカじゃ、はあ、はあ、ないのよ!」

アリサもAGIはSになっているが、いかんせん体力がない。瞬間的に早く動けても長距離を走るのは向いてない。
それにヨシトから借りたマントと、自分の朱色の槍を背負っているので、かなり走りにくい。槍は140ぐらいしか身長のないアリサには大きすぎるのだ。


魔力の友フォース・オブ・トライデント
火魔法の効果を著しく上昇させる
魔力を通すことにより、身体能力が向上する。
魔力回復、自動修復

先が三又になっている真っ赤な槍だ。長さは約2m、槍先はまるで剣が3つついてるほどするどい。
三又の槍先の下に、赤いリボンがなびいているのがチャームポイントだ。

闇夜のマントクロークインザダーク
漆黒を纏うマント
AGIと感応を大幅上昇
アンチマジックキャンセラー
自動修復


アンチマジックキャンセラーは、アリサに必要だと、ヨシトから手渡されていた。

「・・・しかしダサいわ。このマント・・・」

真っ黒はアリサの趣味ではないらしい。

すると突然、けたたましいドラゴンの咆哮が響き渡り、アリサは脚を止めて振り返った。
すると、ジャンボジェットよりも大きなドラゴンが、さっきまでアリサたちがいた場所に現れていた。

「はあ、はあ、・・・・・・、ふぅー。向こうも始まったわね。メリッサ、負けるんじゃないわよ」

ふとアリサは閃く。
そしてパンと手を叩くと、

「そうだ!、、やれるかしら。・・・。ふんっ、やってみればいいのよ!」

アリサは背中から槍を取り、頭上でブンブンとバトンのように回してから、槍の石突きを地面に突き立てた。

「頼むわよ!私の槍!」

アリサは槍を両手で持ち、天を突き刺すかのように頭上に掲げる。

アリサの目の色が消え、右手の甲に紋章が現れる。

《金色の鎧を纏う異界の戦士よ》

《正義を司るその力を》

《全てを焼き尽くすその豪炎を》

《今こそ我の力となりて》

《この身を不死鳥へと昇華させよ》

すると、アリサの頭の上に電球のような火の玉がピコンと現れて消えた。

「行くわよ!真・私のアリ不死鳥フェニックス!!!」

ゴオオオオオオオオオオオ!!

アリサを中心に巨大な火柱が立ち上がる。

それは天を突き刺す槍にまとわりつき、そして、ドラゴンのような大きな炎の翼が生え始める。
やがて槍の穂先は、鳥の顔のようになり、足元から炎を吹き出しながら空に舞い上がった。

飛び上がったアリサの姿は、まるで巨大な炎の不死鳥のように見える。
その姿のまま、アリサはケイノスとエルダイトがぶつかっている戦場へと飛び立つ。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「将軍!あれはなんですか!!」

最前線で自らも戦っていたサザーランドは、兵士に呼び止められ空を見上げる。

「な、なんだあれは・・・」

空を見上げると、まるでドラゴンのような炎の鳥が一直線にこちらに向かってくる。
サザーランドはピンときた。

「ひけ!ここを開けろ!全員引くんだ!」

サザーランドの号令により、ケイノス軍は一斉に下がり始める。




同じく、最前線にいた勇者と偽女神一行。
かなりの善戦をしていたケイノス軍を、勇者の力で崩壊に導いていた。その力は圧倒的で、ケイノス軍は防戦がやっと、それすらもままならなくなり、前線が崩壊する一歩手前だった。

「タケル待つのです!あれは星降らしなのです!」

偽女神に呼び止められ、タケルも空を見上げた。

「・・・ド派手だな、先輩。いい気になってやがるぜ。タエ、アンチマジックだ」

タエと呼ばれた偽女神のとなりに立っている女は、頭上の炎の不死鳥を大きく目を見開いて、口をあけ見上げている。

「タエ、どうした?はやくしろ。やつが来ちまう」

タケルが話しかけるも、タエは動かない。いや、何やらぶつぶつとつぶやいている。

偽女神、ハルミ、空間魔法のケイコ、アキナと呼ばれた女も、放心しているタエを見る。
タケルはイライラしだし、タエの両肩を握り、体を揺さぶる。

「おい、タエ!」
「・・・えない・・・・・・あれは、何?・・・・・・人間・・・」

タケルのイライラは最高潮になり、タケルはタエの頬をビンタした。

「タエ!アンチマジックだ!」

ビンタされたタエは我に帰る。
そして、タケルを睨みつけた。

「そんなものとっくにやってるわよ!!女神!?アレはなんなの?!聞いてないわ!」
「あれはあなたたちより先に来た日本人なのです」

タエは偽女神に食ってかかる。

「日本人?!!チートすぎるわよ!あれをどうしろって言うの?!」

偽女神は、ここに来たのがアリサで良かったと思っていた。タエとの相性は最悪だからだ。

「やつは魔法使いなのです。タエのアンチマジックで無効化出来るのです」

だが、タエの顔は今にも泣きそうだ。

「ふざけんじゃないわよ!!あんなの・・・あんなのどうしろって言うのよ!」
「無効化───」
「そんなのはとっくにやってるって言ってるのよ!あいつのステータス見たの?!!」

タケルもあまりのタエの剣幕に、動揺し始めた。

「どういうことだよ、タエ」

タエはアンチマジックの他に、完全鑑定も持っていた。ヨシトと同じスキルだ。
タエはタケルを睨む。

「あんたより強いって言ってんのよ!逃げるわよ!無理、無理よ!アンチマジックキャンセラーの魔導具まで持ってるのよ!」
「はあ?!なんだそりゃ!おい、女神、どういうことだよ!」

偽女神も驚愕の表情を浮かべる。
だが、こんな話をしている間に、アリサはたどり着いてしまった。

ケイノス軍が下がった場所に、エルダイト軍がなだれ込み、だがそこを【真・アリ・フェニックス】で強襲し、エルダイト兵を瞬く間に火だるまにしていった。
飛び出てきたエルダイト兵士を、何百人と火だるまにすると、エルダイト兵士の動きも止まり、エルダイト兵は下がりだした。

そして、アリサは偽女神と勇者一行の目の前に降り立ち、不死鳥を解く。

「ふぅ、さすがアリサちゃん。可愛くてチートだわ。・・・あら?どうしたの?鳩が豆でも食べたような顔をして」

アリサは偽女神たちを煽るような顔をし、右手で槍を大地に刺し、左手を腰にあて、ドヤ顔をする。

「私があまりに可愛いから、見とれてるのかしら?」

空間魔法のケイコが一番先に我に帰る。

「豆鉄砲です・・・」
「っ!う、うるさいわね!どっちでもいいのよ!」
「それに・・・真っ黒なマントで赤い槍・・・可愛くはないです、むしろヴァンパイアのような・・・」
「だ、誰がヴァンパイアよ!見なさいよ!中は違うわよ!」

アリサはマントの前を広げ、中に着ている白のミニのワンピースを見せる。

それを見たパーフェクトボディのミハルは、フッと鼻で笑いアリサを見た。

アリサはそれに気づき、血の気が引く。

「あ?あんた今笑ったわね?」
「ふふ、ごめんなさい。あまりに貧相な体なもんだから」
「はあ?!!誰が貧相よ!」


ふざけたようなやりとりをしているが、タエはアリサが現れてから、ずっと震えている。膝まで笑い、逃げることも出来なさそうだ。偽女神はタエの姿が気になり、タエに耳打ちする。

「そんなに違うわけがないのです。何を怯えているのです?」

タエは油が切れたおもちゃのように、ギギギギと首を女神に向ける。

「も、も、もうあの方を刺激しないで・・・・・・。こ、ろ、されちゃうわ・・・」
「タエ・・・」


随分と鑑定結果を見ていない。
現在のアリサは、

【アリサ=サカザキ】

名前 アリサ=サカザキ
年齢 21
性別 女
種族 人族
称号 終焉の星姫

レベル 81

STR A    VIT C
DEX S   AGI S+
INT SS +  MEN S

スキル
火魔法(lv10)
土魔法(lv10)
短剣術(lv5)
槍術(lv9)
罠発見(lv6)
火の理
土の理
魔力奔流


タケルはアリサが魔法使いだと聞いている。

「はっ、どうやらアンチマジックできねーみてえだけど、所詮魔法使いだろ?魔法使いは接近戦はよえー。楽勝だろ」

タケルが出てきたことにより、アリサの意識はタケルに向く。

「あんた、本当に勇者?それっぽいオーラが何もないけど?」

タケルはアリサに煽られ、持っていた剣を構える。

「しにてーみてえだな」
「どうみてもそれ、死亡フラグよ」

アリサはアハハと笑った。

「てめえ・・・、後悔するなよ」
「するわけないでしょ」
「この、貧乳ロリがああああ!!」

タケルは剣を上段に構え、アリサに突撃してくるが、アリサは右手の槍をブンと横一線に凪いだ。

「それを言ったら命のやり取りしかないのよ?それに別にドラゴンの皮膚を斬るわけじゃないんだもの。あんたの首くらい私の力でも充分よ」

タケルの首と両腕は、あっさりと胴と泣き別れした。

「ひぃ!」

タエが悲鳴にならない悲鳴をあげると、タケルの体から、何やら光るものが抜け出し、偽女神の腰についてる球体に光が吸い込まれて行った。
偽女神一行は、あまりのあっけない出来事に、呆然としている。

「ふ~ん、どうやら味方の分の回収も万全ってわけね。じゃあ、ちょっと暴れて、その玉、頂くわね」

アリサは中国拳法の棒術のように、槍をブンブンくるくると振り回し、脇に槍を構える。

「な、なんなのよ!!あんた、なんなのよ!!」
ミハルが叫ぶ。

アリサはドヤ顔でミハルをちらっと見てから、周囲を見渡す。

「教えてあげるわ。これがチートよ。あんたら全員、骨も残らないと思いなさいよね」
「「「「「・・・・・・」」」」」

「ダメだわ、突っ込みのお兄ちゃんが居ないと、ネタが全部空回りよ。・・・まあでも、死んじゃったらどうでもいいか!」


ここから、6万対1人の蹂躙劇が始まった。
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