鑑定や亜空間倉庫がチートと言われてるけど、それだけで異世界は生きていけるのか

はがき

文字の大きさ
上 下
73 / 105
第五章

雪女

しおりを挟む
昨日の夜、四季桜で話し合った結果、モーラとメイ、アリサにはお留守番を頼んだ。
そして、何処で留守番をするのかが問題になってくる。

俺はぶっちゃけ王都を守りたい。敵も王都を攻めてくる確率のが高い。だが、王都を守りたい理由を説明出来ない。
モーラたちは、拠点がある迷宮都市で留守番をすると言う。
顔見知りも王都より迷宮都市のが多いからだ。

どっちも守りたいが、戦力を分散しすぎるのも問題だ。
俺も迷宮都市を守ることで同意した。
ここは執着してはいけない。執着するくらいならきちんと責任を取るべきだろうが、それは俺のエゴであり、望まれていないことだ。
勘違いすると、関係者全員を不幸にすることになる。



全員でテレポートで拠点に帰ると・・・

「これは・・・」
「・・・お兄ちゃん」
「酷すぎるわね」
「ソフィアは何処言ったんだい?」
「うふふ、うふふふ・・・どうやらまだしつけが足りなかったようですね。奴隷とはどういうものか教えてあげなければなりません」
「(こわ・・・)」
「何か言いましたか、システィーナ?」
「ノ、ノー、マム!!」

部屋がまるでゴミ屋敷だ。
食いっぱなし、脱ぎっぱなし、これだけ広い屋敷がゴミだらけなのだ。ハエのような虫も飛んでいる。
各部屋のシーツは全て使われている。シーツの洗濯が面倒だから、部屋を渡り歩いたのだろう。

「ヨシト様、ヨシト様はバルコニーでお寛ぎください。モーラ、アリサ、リモア、とにかく洗濯をしてください」

アリサはすぐさま拒否の顔を浮かべたが、メイの顔を見て反論を辞めた。

「わ、わかったわよ・・・」
「シーツもかい?メイ子」
「もちろんです、モーラ」
「わかった」
「てゆうかっ、リモアもやるのっ!?」
「当たり前です」

メイは有無を言わさない。その目付きはオリハルコン級の魔物さえ黙らせた。

「はぁ~ぃ・・・」
「システィーナと私は拭き掃除をします。メリッサはゴミをどんどん庭に集めてください」
「わかったわ」
「・・・・・・」

システィーナは絶句する。口を少し開き、顎と手をプルプル震わせている
まさか宿より汚いところを掃除させられるとは思っていなかったのだろう。

「システィーナ?」
「ぜ、全部ですか、マム・・・?」

屋敷は広い。これを全部拭き掃除をするのは、地獄に等しい。
システィーナは恐る恐る様子を伺うように、メイを見上げる。
だが、メイは言葉で答えずに視線だけでシスティーナに理解させた。

システィーナはビクッと大きく跳ね、

「マ、マム!イエス、マム!」

メリッサとシスティーナは動き出した。

「あたし・・・洗濯で良かったよ・・・」
「リモアも・・・っ」
「あの姫、エロおやじに嫁いだほうがマシだったんじゃないの・・・」

俺も正直、片付けは苦手だ。
ここはメイに任せることにした。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



三時間は経ったか、洗濯も終わり、洗濯物を干して、ゴミも庭に集められ焼却されている。拭き掃除もシスティーナとメイが一生懸命やってくれた。
システィーナは、かなり涙目だったが・・・

簡単にみんなで遅めの昼飯を食うと、久しぶりの風呂に入る。
俺が風呂から出ると、用事が終わった女たちが風呂に入っていく。
俺がリビングでくつろいでいると、

「あれ?、よっちゃん。帰ってきたの?」
「葉っぱ、てめえ・・・」

俺は葉っぱを睨みつける。

「ん?怒ってる?」

葉っぱは何故怒られるのかわからないようだ。

「この部屋を見てなんか気づかないか?」

葉っぱはキョロキョロとあたりを見渡すが、

「何も?ねね、あたい、剣が打てるようになったんだよ!」

葉っぱは胸の前で手をブンブン振りながら、報告をしてくる。胸もブルンブルン揺れる。

「・・・・・・そりゃあ、良かったな」
「うん!、もう少しでよっちゃんの役に立てるようになるからね!」

葉っぱは心底嬉しそうだ。

「だがなんだ、この部屋は」
「この部屋って?」

俺は葉っぱのこめかみにグリグリをしながら問い詰める。

「お、ま、え、は、そ、う、じ、を、し、た、の、か?!」
「いだっ、いだいいだいいだいいだいいだいいだい」

俺がグリグリを止めると、葉っぱはこめかみを押さえつつ言い訳をしてくる。

「あ、あたい、片付けは苦手で・・・。っ!綺麗になってるね!ありがとう!」
「ありがとうじゃねー!・・・・・・、まあいい、メイから話があるだろ」

俺は自分で怒る気をなくしてそう言うと、葉っぱの目は大きく見開き、悪魔と対峙したことを想像したようにガタガタと震えだす。

「あ、ああぁぁぁ・・・、ど、どうしよう、よっちゃん・・・」

(こいつ・・・、メイにはびびって俺は余裕かよ。・・・ワカらしてやる必要があるな・・・)

「お前、後で地下室でお仕置きだ」
「地下室?!そこでかくまってくれる?!お願いよっちゃん!あたい、死にたくないよ!」

完全に俺をなめてやがる。きっちりお仕置きしてやる。
葉っぱがメイにビビりまくっていると、女たちが風呂から上がって、氷の入ったジュースを持ちながらリビングにやってきた。

「あっ!ソフィア!」
「ソフィア、あんた・・・」

アリサとメリッサが葉っぱに食ってかかろうと前に出たがが、北極にテレポートしたような冷気を感じて、ピタリと脚を止める。そしてギギギギと音が聞こえそうに二人は後ろを振り返る。

アリサとメリッサは、笑顔の雪女を見た。
葉っぱは既に膝が笑っている。

「うふふ、うふふふふふ・・・、ソフィア、うふふふふふ」
「あ、あ、あ、よっちゃん!」

葉っぱはギリギリ意識を保ち、俺が座るソファにすがるように飛びついてきた。
雪女はゆっくりとこちらに歩いてくる。

「ソフィア、久しぶりですね・・・」

葉っぱはガタガタと震える手で俺にしがみつく。
半分泣いているかのように、俺に懇願しながら叫ぶ。目線だけはメイに釘付けだが。

「よっちゃん!助けて!!な、なんでも!なんでもするから!!お願い!ひ、ひぃぃぃぃぃ!!!」

葉っぱはあまりの恐怖に失禁しそうなので、仕方なく俺が介入する。

「メイ、お仕置きは俺が用意する。だから叱るのはほどほどにな」

俺は葉っぱをソファから押し出す。

「よっちゃん!!」

葉っぱは驚愕の表情を浮かべるが、知ったこっちゃない。何故俺が葉っぱごときを甘やかさないといけないのだ。

「かしこまりましたヨシト様。なら私はしつけ・・・だけに致しましょう」
「ああ、頼む」

たちまち葉っぱは全員に囲まれる。

「あんた、ふざけんじゃないわよ?」
「あたしはいいよ、でもメイ子がね」
「私は姫よ?!この私に掃除なんてさせ───、の、ノー、マム!」
「ったく、冗談じゃないわ」
「さあ、ソフィア、あちらで話しましょう」

葉っぱはメイに腕を取られ、ズルズルと引きずられていく。

「よ、よっちゃん!よっちゃああぁぁぁん!!!」

俺は葉っぱと目は合わせずに、システィーナが持ってきたジュースを傾けた。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



ひさびさに俺が夕飯を作った。
今日は豚肉、ピーマン、タケノコもどきを炒めた青椒肉絲もどきと、麻婆豆腐もどきだ。
久しぶりに全員で食卓に座る。

「あたいが悪かった。これからはちゃんと片付けをする。絶対!」
「ヨシト様、ソフィアも迷宮にいた頃の、初心の気持ちを取り戻してくれたようです。これでよろしいでしょうか」
「ああ、ありがとうな」

葉っぱの顔には涙が乾いた後が残っている。どんな方法で初心を戻させたのか、知りたくもあるが、一生知りたくもない。
俺の隣に座るシスティーナが、俺の袖を引っ張る。

「(ねえ、はっきりしときたいんだけど、ここのボスは誰なの?)」
「(・・・、俺に決まっている)」
「(ねえ、私が嫁に来るより、もしかして婿を用意したほうがいい?)」
「(したいならすればいいが、どうなるか責任とれんぞ?)」

もちろんそれは、俺が脅してるわけじゃない。そんなことをしたらメイがどれほど怒り狂うかと言う意味だ。システィーナもその意味で理解したようだ。

「(・・・やめとく、死ぬより恐ろしい目に遭わされそうだもん)」
「(大人しくしてろ、そのうち城に返してやるよ)」

システィーナは、それじゃ私の目的がとかぶつぶつ言ってたが、聞こえないことにした。
流石に一国の姫を小間使い扱いをいつまでもさせるわけにはいかない。メイも1ヶ月と言ってたので、なんとかなるだろう。
本当、システィーナは9歳とは思えないほど良く頭が回る。そんなことまで気が回るのは、やはり育った環境からだろうか。


「ねえ、ヨシト。フリーポートにはいつ行くの?」

メリッサが聞いてきた。

「明日には出る」
「具体的にプランはあるの?」
「いや、ノープランだ。だからリモア、メリッサ、頼むな」
「はぁ~~い!」
「もちろんよ」

モーラが俺を心配してくる。

「メリッサとリモアがついてるんだ、万が一はないと思う。でも本当に大丈夫かい?」
「ないとは思うが、俺よりケイノスのが心配だ。いきなり龍が来ることを想定して、モーラたち3人なら大丈夫と考えてる。こっちは所詮相手は人間だ、俺でもある程度は戦えるよ」
「そうかい・・・・、でも、早く帰ってきてね・・・」

ドキッ!

モーラが顔を赤くして可愛いことを言う。これは今日可愛がるしかないだろう。

「お兄ちゃん、気をつけてね」
「ああ」
「ヨシト様、こちらはお任せください」
「メイ、苦労かけるな」



今晩はモーラを抱こうと思った。
だがそれは叶わなかった。
特別編が入ったからだ。

しおりを挟む
感想 256

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

愛されない皇妃~最強の母になります!~

椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』 やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。 夫も子どもも――そして、皇妃の地位。 最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。 けれど、そこからが問題だ。 皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。 そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど…… 皇帝一家を倒した大魔女。 大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!? ※表紙は作成者様からお借りしてます。 ※他サイト様に掲載しております。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

〈完結〉遅効性の毒

ごろごろみかん。
ファンタジー
「結婚されても、私は傍にいます。彼が、望むなら」 悲恋に酔う彼女に私は笑った。 そんなに私の立場が欲しいなら譲ってあげる。

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。

アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。 両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。 両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。 テッドには、妹が3人いる。 両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。 このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。 そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。 その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。 両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。 両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…   両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが… 母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。 今日も依頼をこなして、家に帰るんだ! この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。 お楽しみくださいね! HOTランキング20位になりました。 皆さん、有り難う御座います。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。