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第五章

黒幕?

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ハルミに城の中に案内された。
長い通路を歩き通された場所は、王の謁見の間だった。

王が玉座に座り、その左に宰相のような老人、右に女神を名乗る召喚の魔導書グリモア、ラステル。その隣から勇者として召喚された人間、タケル、ケイコ、ジュリが並ぶ。
ハルミは黙ってその隣まで歩き、参列した。
宰相の隣には、文官武官が並び、俺たちの後ろには騎士がずらりと並んでいる。

そしてまずは王が立ち上がり、オーバーアクションで両手を広げて話しだす。

「よく来たな、女神を救い出した勇者よ!、朕はエルダイト皇帝、エドワード=ヴァン=エルダイトである。貴公には人族の為に苦労をかけた。充分な褒賞を与えよう」
「どこまで知っている」

俺が王にぶっきらぼうにそう答えると、家臣たちから「無礼者」「礼儀知らず」などの怒号が飛び交う。
だが、王はそれを手で制し、

「よい、冒険者などはこういうものだ」

爽やかでない笑みを浮かべ、尊大な態度で椅子に仰け反る。王の年頃は50ぐらいか、皇帝という貫禄は備えていた。

「ラステルよ、話と違うようだ。既に知っているようだぞ?」

王は女神に話しかけると、女神は答える。

「そこの裏切り者が話したなのです。まさか神に逆らうとは思わなかったなのです」
「答えろ、どこまで知っている」

だが王は尊大な態度を崩さぬまま、俺をからかうかのような姿勢をとる。

「ふん、貴様らが知っていることは全てだ。当然だろう?朕は皇帝なのだから」
「その偽女神が龍の手下で、亜人との戦争を起こそうとしていることもか?」
「大陸統一は、朕の祖父の代からの目標である。望むところだ」

王はいやらしい笑みを崩さない。

「その為に人族の国を滅ぼすのか」
「滅ぼすのではない、まとめるのだ。理にかなっておろう」

モーラが口を開く。

「亜人は今では多い、それでも勝てるつもりなのかい?」
「ん?誰だお前は、・・・なかなか良い体をしている。良かろう、朕の奴隷にしてやろう」

メリッサは呆れたように言い捨てる。

「こいつ馬鹿ね。ヨシト、もう良いんじゃない?」
「フハハハハ!なんだ、どれもこれも美味そうではないか。まとめて奴隷にしてやるが、問いには答えてやろう。朕は寛大だからな。女、各国がどれほどの戦力を持ってるか知っておるのか?バセアーは多少多いがそれでも五万、フェイダーやカラディンなどは、訓練されている兵は二万もおるまい。ケイノスも十万には足らぬ。だが、朕の同盟国であるフリーポートは二十万、我がエルダイト帝国には三十万の兵士がいる。一体どうやって勝つと言うのだ」

ハッタリかどうかはわからないが、本来であれば絶望的な戦力差だ。

「そんなの関係ないわ。全員が死んだら腐敗臭が凄そうだけど仕方ないわね」

王は頬杖をつく。

「星降らしか。朕が対策もせずに戦うと思うのか?その程度で勝てると思っておるのが笑わせるわ」

王はフハハハハと高らかに笑う。

「本気で戦争をするつもりなのか?」
「臆したか、偽勇者よ」
「量より質が勝る場合もあるぞ?」
「確かにケイノスの兵の質は高い。流石は迷宮を所持してるだけはある。だがそれは微細な差を埋めることは出来ても、数倍の戦力は覆せぬぞ。それともなんだ、星も降らせずに勝てると思っておるのか!それこそ愚かと言うものよ!更に今は帝国も質が高いものも多い。勇者しかり女神しかり、龍の加護まであるのだ、負けようがないわ!」

また王は高らかに笑う。
俺は実は、王は女神に勾引かされていると思っていた。だが違った。
今の発言からも、王は全てを分かった上で利用しているのだ。紋章を奪うつもりだとかは関係ないのだろう。むしろそれを望んでるのかもしれない。
もう、戦争は避けられないのかもしれない。いや、方法は一つだけある。

俺は目一杯睨みを効かせて、王に問う。

「皇帝が死んでも戦争が出来るのかな?」
「会見の場を荒らすのか。全く持って無作法なやつらよ。だが、それでも良いぞ。やってみるがよい。なに、命までは取らん、ケイノスが滅びゆく絶望を見せてやりたいのでな」

王がそう言うと、騎士たちは抜剣し、勇者が前に出て来た。

「あたしが行くよ。一人で充分だ」

モーラの言葉にイケメン勇者が反応する。

「おーおー、粋がってるねー。女を殺すのは好きじゃないけど、大きい女は嫌いなんだ。死んでもいいな」
「勇者タケルよ、殺すな。生け捕りにするのだ」

王は勇者にそう告げると、勇者は顔をしかめたが、

「へいへい、努力・・しますよ」
「やめとけ。お前らは戦う必要はないだろ?」

俺は同じ日本人として、一応気を使う。

「たかだか1、2年早く来ただけで偉そうにするんじゃねーよ先輩。気に入らねーんだよ。お前はぶっ殺してやるからな」
「なあ、お前らもか?」

俺は女3人の勇者に問いかける。

「タケルが負けるはずないじゃない」
「気取るなよおっさん。謝ったら許してくれるかもよ?」

女勇者はキャハハと笑う。メガネおさげの空間魔法使い、ケイコだけは何も言わずにおどおどとしている。

(かわいそうに・・・鑑定さえ持ってればな・・・)

「モーラ、なるべく殺すなよ」
「わかってるよ。ヨシトは甘ちゃんだからね」

モーラは俺にウインクをして、腰の刀を抜いた。
メリッサは自分も行きたそうにしたが、

「良いわ。この程度じゃ二人も要らないものね。それにつまらなそうだし」

それでも一応亜空間倉庫から武器を取り出し、武装はした。

「おらああああ、死ねええ!」

タケルがモーラに斬りかかる。
だがモーラは、はあ、とため息をつきながら剣を刀で弾いた。

「なっ!てめえ!」

タケルはすぐさま剣を水平に振り抜く。
それをモーラは叩き落とし、峰打ちでタケルの首を打ち付ける。

タケルはドサッと床に倒れた。
エルダイトの面々は驚愕の表情を浮かべる。
モーラは俺に振り返り、

「こんなかい?これやる必要あるかい?」
「適当にあしらっとけ」
「・・・わかったよ」
「やれ!殺せ!」

王が叫ぶと騎士たちが一斉に動き出した。
だがモーラは一人一撃で倒していく。
俺たちに向かってきた騎士もいたが、メリッサがなんなくぶっ飛ばした。

数分もかからずに騎士は全滅、女勇者は震え上がる。
王も目を大きく見開いている。

「こ、これはなんだ、ラステルよ!話が違うではないか!星降らしは動いてないぞ!」

王が偽女神に文句を言う。

「な、なんなのです・・・、こんな・・・あり得ないのです!!人間に許された力を超えているのです!!」

どうやら偽女神も想定外だったようだ。

「あたしはまだ人間をやめてないんだけどね」
「おっぱいの大きさは人間やめてるわね」

アリサの冗談が聴こえて、モーラはアリサを睨みつける。
俺は偽女神に問う。

「おまえも強いんだろ?お前はやらないのか?」

偽女神は俺を見ると、女勇者3人の所に移動した。
ケイコと呼ばれてるメガネおさげの女に耳打ちすると、女勇者3人と偽女神は消えた。

「逃げたか」
「なっ!ラステル!!!貴様!」

俺たちは王の所まで歩いて行き、

「さて、戦争を終わらすか」

王はガタンと椅子からずり落ちる。

「ま、待て!朕は偽女神にそそのかされただけだ!」
「ほう、偽女神とも知ってたのか」
「さ、逆らえなかったのだ!・・・そうだ、龍をけしかけると言われたらどうしようもあるまい!!龍殺しの貴公らが来るのを待っていたのだ!」
「さっきはずいぶんノリノリだったけど?」

王は顔を青ざめさせる。

「仕方なかったのだ!ああいう以外に方法がなかった!」
「じゃあ戦争はどうするんだ?」
「辞めるに決まっている!!平和が一番だ!」
「そうか」

これで一件落着かと思いきや、この謁見の間に誰かが入ってきた。その男が俺たちに告げる。

「辞めませんよ」
「誰だ、お前は・・・」
「エリック!引っ込んでいろ!」
「お父様、お父様の時代は終わりです。もう引退なさったほうがよろしい」

その男は身なりは一目でわかるほど高級な服を着ている。その後ろには両手がメカのどデカイガントレットみたいなのをつけた人族の男が付き従っていた。その男が一歩前に出る。

「よお、会いたかったぜ。特にそこのお嬢ちゃん。殺してもいねえのに、龍殺しを名乗ってるらしいな。たーっぷりと礼はしねーとな」

男はまるで爬虫類の瞳のような目で、ギラギラとメリッサを見ている。

(誰だあいつ・・・、メリッサの知り合いか?)

「あんたは・・・」
「メリッサ、知り合いか?」
「何言ってるのよ、ヨシト。あれは───」
「ファブニール、後です」

高級な服を着た男が、両手ガントレットの男をたしなめる。

「ちっ、わーったよ」

ガントレットの男は高級な服の男の後ろに下がった。

「はじめまして、私はエリック=ヴァン=エルダイト。帝位継承権第一位、皇太子です」

またやっかいそうなのが現れた。
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