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第五章
世界は狭い
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「モーラ、あなたが着いていながらどうしてこんなことに?」
「落ち着きなよ、メイ子。この子はかわいそうなんだ」
「違います。この子は生まれながらの責務を全うしてるだけです。それにこの子にどんな存在意義を与えるのですか?」
モーラはそこまで考えてなかったようだ。だが存在意義を示さなければ、迷宮の中での葉っぱと同じ思いをすることになる。
メイは、凍りつくような視線でシスティーナを見る。
システィーナは完全に震え上がっている。
「ソフィアの時は、私は初めから奴隷にするつもりでした。ヨシト様がうんと言うタイミングを見ていただけです。まさか、居るだけで存在意義があると思ってませんよね?」
一度はモーラに視線を返すも、またメイはシスティーナを見る。するとリモアが、
「良いじゃんっ!マスターと一緒に居たいのが本心ならっ、契約しちゃおっ!も~~っとドギツイやつっ!だって人質だもんっ!」
確かにハルートは人質だと思えと言った。
リモアはその言葉を聞いて、連れて帰る選択をしたようだ。
メリッサはシュンとしている。
お留守番でストレスが溜まったアリサも黙っていない。
「どう考えてもお目付けよね。頭良いんでしょ?なおさらじゃない。でもまさか、そんな簡単に行くとは思ってないわよね?」
システィーナはプルプルと震えている。
「ヨシト様はどのようになさるおつもりですか?」
「そうだな。頭が回るって言ってもやっぱり子供だよな。この状況は想定してなかったみたいだし」
王族と言うのは、ある意味居るだけで意味がある。だがここは冒険者の領域だ。存在意義がなかったら存在は許されないのだ。
これは王城でも考えていた。
「とりあえず、掃除洗濯を全部任せてみるか」
システィーナは大きく目を見開いた。
「わ、わたし!そんなことしたことない!」
アリサが言う。
「誰でも始めてはあるわ。良かったわね、姫を辞めてもメイドに就職出来るわよ」
「わたし、姫よ!」
その言葉を聞き、メイはシスティーナに目線の高さを合わせた。 でもそれは一般的な子供にするそれとは、空気が明らかに違っていた。
「なら、自分で言ってみなさい。あなたはここで何をするのですか?あなたの役割は?何をヨシト様に貢献し、ここにいることの許しを得るのですか?」
システィーナは怯えながらも考える。
だが所詮子供の浅知恵だ、最もしてはいけない選択をしてしまう。
「夜伽は予習してきたわ!王族はそれが最も大事だって!」
メイは少しびっくりした顔をしたが、次第に笑いだした。
「うふ、うふふふふ、その体でヨシト様を受け止められると?。良いでしょう、うふふふふ。やってみなさい。本当にヨシト様を受け止められるなら、ここにいることを許します」
「おい、メイ」
メイがとんでもないことを言うので、俺はメイを止めようとするがメイは俺の話を聞かない。
「モーラ、メリッサ、準備してください。リモア、お願いします」
「はぁ~~~いっ!」
「・・・・仕方ないね、あたしが蒔いた種だ」
「わかったわ。また私が受け止めてあげる・・・」
「待て待て待て待て」
メイは獣タイムをするつもりのようだ。それにモーラとメリッサは少し嬉しそうだ。ここ何日かしてなかったからか?
「俺はやらねーよ?!9才だぞ?!死んじまうって!」
「ヨシト様、ご安心ください。私たちが全力で受け止めます。ヨシト様のお相手をすると言うのはどういうことか見せるだけです」
(ばかやろう、子供にそんなのを見せつけたらトラウマになるぞ・・・。・・・・・いや、アリっちゃアリか?9才で男を誘うようになるよりマシか?)
「私、買い物行ってくるわ・・・。お兄ちゃんと早く結ばれたいけど、獣はイヤ・・・。」
アリサは、宿から逃げ出した。
システィーナは皆の会話とアリサの行動を見て、何やら不安になる。
「ではリモア」
「いっただっきまぁ~~~すっ!、はむっ!」
「・・・あっ」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
メイ曰く、三時間経っているそうだ。
何故か言い出しっぺのメイが一番平気そうだ。
リモアはふらふらだが、意識はある。
モーラとメリッサに関しては、意識をなくして全裸で床に転がっている。
「・・・・・・なんでお前がぴんぴんしてんだよ」
「モーラとメリッサは、この事態を作った罰を与えました」
だがリモアはパタパタと飛んできて、俺に耳打ちをした。
「(違うよっ。メイ子ちゃん、あの時のマスターが怖いみたいっ)」
俺はリモアの顔を見てから、半眼でメイを見る。
メイはサッと視線を反らした。
(・・・あのメイがトラウマになるくらい凄いのか。あんまり記憶はないが。・・・あのメイがなぁ~・・・)
どうやら獣タイムを一人で受け持ったのは相当堪えたようだ。
逆に俺は、メイに夜通し上に股がられた時のことを思いだし、感慨にふける。
(さて、問題の幼女は・・・。よし、服は着てるな)
確かに服は着てる。だが、部屋の角に固まり、壁に身を埋めるかのごとくして、ガタガタ震えている。
「こ、こんなの聞いてない・・・・、死んじゃう、本当に死んじゃう!」
システィーナは震え上がる身体に鞭をうち、メイの膝元にすがった。
「お願いします!、掃除でも洗濯でもなんでもやります!!だからお願い!夜伽は勘弁してください!私が生意気でした!無知でした!、お願いします!助けてっ!」
号泣である。
滝のような涙を流しながら、懸命にメイに嘆願する。
「良いでしょう。ヨシト様、とりあえず一月預かってみようと思います。私が責任を持ちますので、よろしいでしょうか?」
「・・・ああ、任せる」
メイに任せるのは逆の意味で心配だが、困ることにはならないだろう。
◇◇◇◇◇◇◇◇
王都に滞在してる間に、シスターテレサに報告と、俺をフェイダーに送ってくれた兄ちゃんにバイク馬車を返そうと思っている。
本当はバイク馬車は、俺が活用しようと思っていたが、リモアのテレポートが使える今、もう要らないだろうから返すことにした。
それらは落ち着いてからやろうとして、2日間様子を見ていたんだが・・・・・・。
今は掃除の練習と言うことで、宿のこの部屋をメイがシスティーナにやらせている。
メイが窓の木のサッシに指を這わせる。
「システィーナ?」
システィーナは弾丸のように走ってきて、メイの前で止まり、体が鉄になったかのようにピーンと直立不動する。
「イエス、マム!」
「拭き残しがありますよ?」
メイは指先をシスティーナに見せる。
「っ!、申し訳ありません!」
「掃除したのですか?」
「マム!イエス、マム!」
「洗濯は終わったのですか?」
「これからであります、マム!」
「なら、やってきなさい」
「イエス、マム!」
システィーナは走って出ていった。
「・・・・・・」
メイはニッコリと俺を見て、
「ヨシト様、順調です」
「何をもって順調とするかの問題だな・・・」
◇◇◇◇◇◇◇◇
俺は前に紹介されたやつのところに向かう。
確か、今にも踊り出しそうな名前のやつだ。
場所は覚えてるので向かっていると、10分ぐらいでついた。
「あっ!プラチナのあんちゃん!生きてたのか!」
「おお、そっちこそな。あー・・・、ダンス」
「ダンズだ」
「ああ!、そうそう」
「今日はどうした?またどっか行くのか?」
「あー、これを返そうと思って」
俺はその場にバイク馬車を出す。
懐かしい。一年以上放置してたからな。
「持ってたのか。流石プラチナだ」
「それ、関係あるか?」
しばらく雑談をする。あれからどうやって帰ったとか、馬を一頭バラして食ったとか。
「あんちゃん、これを見てくれよ」
ダンズに馬車置き場に案内され、ついていくと
「これは・・・」
ハンドルがチョッパースタイルのアメリカンバイク型の馬車に、サイドカーがついている。
「二人乗りか?」
「違う違う、こっちが客だ。で、こっちは御者台だ」
なんとサイドカーが客。アメリカンバイクはダンズが乗って操縦するらしい。
「これならバイクを捨てることもねえ。客も乗ってるだけだ」
「確かに」
本来の馬車スタイルになったと言うことか。形はバイクだが。
まさかと思うが・・・・・・
「ひょっとしてお前、迷い人か?」
「っ!・・・・・・あんちゃん、そんなのはどうだっていいじゃねえか!」
ダンズは笑顔で俺の肩を叩く。
「人生、何があるかわからねえもんよ。山あり谷あり、違う世界に生まれ変わったり、、な。」
ダンズは爽やかな笑顔で、ウインクをしてきた。
(こいつ、転生者か・・・)
だが、本人が隠したがってるならこれ以上踏み込むのは無粋と言うものだ。
「また何かあったら頼むよ」
「おう!持ってきてくれて、ありがとな!今度酒でも奢るから飲みに行こうぜ!」
「ああ。いつか」
俺は背中を向けて、手を振りながら歩きだした。
「落ち着きなよ、メイ子。この子はかわいそうなんだ」
「違います。この子は生まれながらの責務を全うしてるだけです。それにこの子にどんな存在意義を与えるのですか?」
モーラはそこまで考えてなかったようだ。だが存在意義を示さなければ、迷宮の中での葉っぱと同じ思いをすることになる。
メイは、凍りつくような視線でシスティーナを見る。
システィーナは完全に震え上がっている。
「ソフィアの時は、私は初めから奴隷にするつもりでした。ヨシト様がうんと言うタイミングを見ていただけです。まさか、居るだけで存在意義があると思ってませんよね?」
一度はモーラに視線を返すも、またメイはシスティーナを見る。するとリモアが、
「良いじゃんっ!マスターと一緒に居たいのが本心ならっ、契約しちゃおっ!も~~っとドギツイやつっ!だって人質だもんっ!」
確かにハルートは人質だと思えと言った。
リモアはその言葉を聞いて、連れて帰る選択をしたようだ。
メリッサはシュンとしている。
お留守番でストレスが溜まったアリサも黙っていない。
「どう考えてもお目付けよね。頭良いんでしょ?なおさらじゃない。でもまさか、そんな簡単に行くとは思ってないわよね?」
システィーナはプルプルと震えている。
「ヨシト様はどのようになさるおつもりですか?」
「そうだな。頭が回るって言ってもやっぱり子供だよな。この状況は想定してなかったみたいだし」
王族と言うのは、ある意味居るだけで意味がある。だがここは冒険者の領域だ。存在意義がなかったら存在は許されないのだ。
これは王城でも考えていた。
「とりあえず、掃除洗濯を全部任せてみるか」
システィーナは大きく目を見開いた。
「わ、わたし!そんなことしたことない!」
アリサが言う。
「誰でも始めてはあるわ。良かったわね、姫を辞めてもメイドに就職出来るわよ」
「わたし、姫よ!」
その言葉を聞き、メイはシスティーナに目線の高さを合わせた。 でもそれは一般的な子供にするそれとは、空気が明らかに違っていた。
「なら、自分で言ってみなさい。あなたはここで何をするのですか?あなたの役割は?何をヨシト様に貢献し、ここにいることの許しを得るのですか?」
システィーナは怯えながらも考える。
だが所詮子供の浅知恵だ、最もしてはいけない選択をしてしまう。
「夜伽は予習してきたわ!王族はそれが最も大事だって!」
メイは少しびっくりした顔をしたが、次第に笑いだした。
「うふ、うふふふふ、その体でヨシト様を受け止められると?。良いでしょう、うふふふふ。やってみなさい。本当にヨシト様を受け止められるなら、ここにいることを許します」
「おい、メイ」
メイがとんでもないことを言うので、俺はメイを止めようとするがメイは俺の話を聞かない。
「モーラ、メリッサ、準備してください。リモア、お願いします」
「はぁ~~~いっ!」
「・・・・仕方ないね、あたしが蒔いた種だ」
「わかったわ。また私が受け止めてあげる・・・」
「待て待て待て待て」
メイは獣タイムをするつもりのようだ。それにモーラとメリッサは少し嬉しそうだ。ここ何日かしてなかったからか?
「俺はやらねーよ?!9才だぞ?!死んじまうって!」
「ヨシト様、ご安心ください。私たちが全力で受け止めます。ヨシト様のお相手をすると言うのはどういうことか見せるだけです」
(ばかやろう、子供にそんなのを見せつけたらトラウマになるぞ・・・。・・・・・いや、アリっちゃアリか?9才で男を誘うようになるよりマシか?)
「私、買い物行ってくるわ・・・。お兄ちゃんと早く結ばれたいけど、獣はイヤ・・・。」
アリサは、宿から逃げ出した。
システィーナは皆の会話とアリサの行動を見て、何やら不安になる。
「ではリモア」
「いっただっきまぁ~~~すっ!、はむっ!」
「・・・あっ」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
メイ曰く、三時間経っているそうだ。
何故か言い出しっぺのメイが一番平気そうだ。
リモアはふらふらだが、意識はある。
モーラとメリッサに関しては、意識をなくして全裸で床に転がっている。
「・・・・・・なんでお前がぴんぴんしてんだよ」
「モーラとメリッサは、この事態を作った罰を与えました」
だがリモアはパタパタと飛んできて、俺に耳打ちをした。
「(違うよっ。メイ子ちゃん、あの時のマスターが怖いみたいっ)」
俺はリモアの顔を見てから、半眼でメイを見る。
メイはサッと視線を反らした。
(・・・あのメイがトラウマになるくらい凄いのか。あんまり記憶はないが。・・・あのメイがなぁ~・・・)
どうやら獣タイムを一人で受け持ったのは相当堪えたようだ。
逆に俺は、メイに夜通し上に股がられた時のことを思いだし、感慨にふける。
(さて、問題の幼女は・・・。よし、服は着てるな)
確かに服は着てる。だが、部屋の角に固まり、壁に身を埋めるかのごとくして、ガタガタ震えている。
「こ、こんなの聞いてない・・・・、死んじゃう、本当に死んじゃう!」
システィーナは震え上がる身体に鞭をうち、メイの膝元にすがった。
「お願いします!、掃除でも洗濯でもなんでもやります!!だからお願い!夜伽は勘弁してください!私が生意気でした!無知でした!、お願いします!助けてっ!」
号泣である。
滝のような涙を流しながら、懸命にメイに嘆願する。
「良いでしょう。ヨシト様、とりあえず一月預かってみようと思います。私が責任を持ちますので、よろしいでしょうか?」
「・・・ああ、任せる」
メイに任せるのは逆の意味で心配だが、困ることにはならないだろう。
◇◇◇◇◇◇◇◇
王都に滞在してる間に、シスターテレサに報告と、俺をフェイダーに送ってくれた兄ちゃんにバイク馬車を返そうと思っている。
本当はバイク馬車は、俺が活用しようと思っていたが、リモアのテレポートが使える今、もう要らないだろうから返すことにした。
それらは落ち着いてからやろうとして、2日間様子を見ていたんだが・・・・・・。
今は掃除の練習と言うことで、宿のこの部屋をメイがシスティーナにやらせている。
メイが窓の木のサッシに指を這わせる。
「システィーナ?」
システィーナは弾丸のように走ってきて、メイの前で止まり、体が鉄になったかのようにピーンと直立不動する。
「イエス、マム!」
「拭き残しがありますよ?」
メイは指先をシスティーナに見せる。
「っ!、申し訳ありません!」
「掃除したのですか?」
「マム!イエス、マム!」
「洗濯は終わったのですか?」
「これからであります、マム!」
「なら、やってきなさい」
「イエス、マム!」
システィーナは走って出ていった。
「・・・・・・」
メイはニッコリと俺を見て、
「ヨシト様、順調です」
「何をもって順調とするかの問題だな・・・」
◇◇◇◇◇◇◇◇
俺は前に紹介されたやつのところに向かう。
確か、今にも踊り出しそうな名前のやつだ。
場所は覚えてるので向かっていると、10分ぐらいでついた。
「あっ!プラチナのあんちゃん!生きてたのか!」
「おお、そっちこそな。あー・・・、ダンス」
「ダンズだ」
「ああ!、そうそう」
「今日はどうした?またどっか行くのか?」
「あー、これを返そうと思って」
俺はその場にバイク馬車を出す。
懐かしい。一年以上放置してたからな。
「持ってたのか。流石プラチナだ」
「それ、関係あるか?」
しばらく雑談をする。あれからどうやって帰ったとか、馬を一頭バラして食ったとか。
「あんちゃん、これを見てくれよ」
ダンズに馬車置き場に案内され、ついていくと
「これは・・・」
ハンドルがチョッパースタイルのアメリカンバイク型の馬車に、サイドカーがついている。
「二人乗りか?」
「違う違う、こっちが客だ。で、こっちは御者台だ」
なんとサイドカーが客。アメリカンバイクはダンズが乗って操縦するらしい。
「これならバイクを捨てることもねえ。客も乗ってるだけだ」
「確かに」
本来の馬車スタイルになったと言うことか。形はバイクだが。
まさかと思うが・・・・・・
「ひょっとしてお前、迷い人か?」
「っ!・・・・・・あんちゃん、そんなのはどうだっていいじゃねえか!」
ダンズは笑顔で俺の肩を叩く。
「人生、何があるかわからねえもんよ。山あり谷あり、違う世界に生まれ変わったり、、な。」
ダンズは爽やかな笑顔で、ウインクをしてきた。
(こいつ、転生者か・・・)
だが、本人が隠したがってるならこれ以上踏み込むのは無粋と言うものだ。
「また何かあったら頼むよ」
「おう!持ってきてくれて、ありがとな!今度酒でも奢るから飲みに行こうぜ!」
「ああ。いつか」
俺は背中を向けて、手を振りながら歩きだした。
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