鑑定や亜空間倉庫がチートと言われてるけど、それだけで異世界は生きていけるのか

はがき

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第五章

システィーナ=ファン=ケイノス

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「ふつちゅかものですが、━━━噛んじゃった♪」
「・・・・・・」
「ふつつかものですが、よろしくお願いします、旦那様っ!」

システィーナと呼ばれた幼女は、リモアより更に幼い見た目だ。
王族らしく、白だけを使いながらも、フリルやキラキラした何かを使い、華やかな印象の膝丈のドレスを着ている。
黄色いワンピースで槍を持ったりはしていない。

身長は120~130くらい、女としての起伏も薄い。多少胸は膨らみかけている。
ブロンドのウェーブがかかった髪を背中まで伸ばし、肌は白く、顔は北欧系に近い。
ロシアの妖精と言う言葉がよく似合う顔立ちだ。

「えっといくつかな?」
「9歳っ!」

システィーナは、眩しいくらいに純粋な笑顔で、若干ジャンプするように飛びはね、元気に答える。
俺はめいいっぱい眉にシワを寄せて、新宰相を見る。
新宰相は下を向いた。
ハルートを見ると、ハルートは腹を抱えていた。

(あいつは絶対許さない。必ず痛い目にあわせてやる)

そのまま王を見ると、王まで満面の笑みだ。

「てめえ・・・、まだ9歳の幼女を政略結婚に使う気か?」
「余は預かり知らん。ヨシト殿たちのことは、宰相に一任しておる」
「てめえの子供だろうが」
「王族として生まれたからには、どこかへ嫁ぐのは当たり前のことだ。それが数年はやまるだけのこと。エルダイトにもフリーポートにも相応しい男はいない。むしろヨシト殿の仲間はみな幸せそうだ。娘が幸せになれそうな所に嫁ぐのに、何の心配をするのだろうか」
「・・・・・・」

やはり、この気持ちをぶつけるのはハルートしかいない。

「ハルート!、友としてこれはありなのか!?」

ハルートは笑いから復活し、

「いや、私も知らなかったのだ。宰相に一任していたのは本当だ。だが、ジョシュアの気持ちもわかる。女殺しのところなら、幸せは約束されたようなものだしな」
「俺はロリコンじゃねえ!!!」
「なにも今すぐ子を為せと言うことでもあるまい」
「それに何の意味がある!!!」

俺がハルートを怒鳴り付けると、システィーナは会話の内容がわかるのか、今にも泣きそうな顔だ。

「わたしじゃ、ダメですか・・・ぅぅ、・・・」
「っ!!!」

俺はシスティーナの前に片ひざをつき、目線をシスティーナに合わせて、頭を撫でる。

「い、いや、ダメとかじゃないんだよ。君はまだ子供だからな。結婚とかは早いんじゃないかな?」
「わたし、イタイのも我慢します!」

俺はカッと頭に血が昇る。

「宰相!てめえ!!!子供になんてこと教えてやがるっ!」

だが宰相は冷静に答える。

「王族たるもの、次代に生命を繋ぐことは最も重要な催事であり、また義務です。それは男女に多少の違いはあれど、物心付いたときから教育するのは当然のことです」
「・・・・・・」

(ダメだ、価値観が違いすぎる・・・)

俺はクイクイとシスティーナに袖を引かれる。
仕方なくまた片ひざをつくと、同じ目線になったシスティーナが、俺に耳打ちをする。

「(わたし、まだ子供は出来ないみたいだけど、練習は出来ます!)」

俺は頭に血が昇る感覚がして、バッと立ち上がる。
この世界の倫理や、王族のなんちゃらはわからない。だが、9歳にこんな教育をするのが正しいとはどうしても思えない。

俺はシスティーナから離れ、宰相の前にツカツカと歩いていく。

「ふざけんなよ、てめえ・・・」

だが宰相は澄まし顔だ。

「アリサ様との結婚が難しいなら、これがケイノス王国とヨシト様の四姫桜にとって、最も強い絆になります」
「だからって9歳だぞ?もっと年上がいるだろ?」
「姉はいません。妹は既に婚姻の予定があります。一度決まったものを覆し、ヨシト様の元へ向かわせるのは、ヨシト様にも妹の婚姻相手にも失礼にあたり、遺恨が残ります」
「・・・・・・ほかにもいるだろ」
「申し訳ありません。あとはもっと幼いです」
「・・・・・・」

(なんだこれは・・・。待て、貰わなければいいんじゃ)

「ならこの話はなしだ」

だが宰相はここで頭を下げた。

「ここはなんとかお願い致します。システィーナを貰って頂ければ、ヨシト様たちが敵国を視察されようと、我が国に籍を置かなかろうと一切の不安が消えます。それに貰っていただけるだけで良いのです。食い扶持は増えますが、システィーナにはそれなりの支度を持たせます。正妻にしろとも言いません。側妻でも妻として置いてくれれば良いのです。お手間はそれほどかからないはずですが」
「・・・・・・」

上手い反論が見つからない。
確かに一人同居が増えるだけで、そんなに負担にはならない。

「あっ、いや、俺たちは冒険者だ。危ないところに連れていくことになる。危険だぞ」
「冒険者に嫁いで行くのですから、それは覚悟の上です。もちろんシスティーナにも話してありますし、システィーナも納得しています」
「お前・・・、幼女の納得に何の意味がある」
「システィーナはあれで聡い妹です。充分理解しています」
「・・・・・・」

俺は手詰まり感に襲われて、ふとシスティーナに目線を向ける。
システィーナは、俺が宰相と話してる間に、メリッサとモーラと会話していた。

システィーナは悲壮な雰囲気をだし、うつ向いている。

「わたし、旦那様に断られたら、どこに嫁がされるんだろ・・・・・・」
「システィーナちゃん・・・」
「きっと、父上より年上のおじさんのところに嫁がされて、イタイこともたくさんされちゃうんだ・・・・・・、ねえ、お姉ちゃん?どれくらいイタイの?システィーナ、我慢できるかな・・・?わたし、コワレちゃうかな・・・ 」
「「システィーナ!!!!!」」

モーラとメリッサはシスティーナを抱き締めた。

「大丈夫よ!お姉ちゃんが守ってあげるから!」
「あたしに任せな。エロオヤジのところになんて行かせないよ!!!」

(・・・またこのパターンかよ・・・・・・ん?)

システィーナはメリッサとモーラに抱き締められながら、俺と目が合った。

システィーナは、口角の片側だけをあげ、ニヤリとにやついた。

「っ!」

宰相を見ると、宰相もシスティーナと同じ顔をしている。

「ダメだメリッサ!モーラ!お前らは騙されている!」
「「ヨシト!」」

モーラとメリッサから責めるような視線を貰うと、宰相が口を開く。

「騙してはいません。もしヨシト様に貰って頂けないなら、システィーナの未来は明るくないでしょう」

俺は宰相に振り返り、

「若い男なんていくらでもいるだろ!!」
「システィーナに見合う方はおりません。王族ならば年齢は問題ではありません。格が見合うかどうか、婚姻が利になるかどうかです。・・・・・・そうなるとシスティーナの言葉は真実になります」
「・・・・・・」

メリッサが懇願するような顔で、

「ヨシト、連れて帰りましょ。こんな子供をエロオヤジに嫁がせるのはかわいそうよ」
「そうだよ、何も夜を伴にしろとは言われてないんだからさ。ちょっと同居人が増えるだけさ」
「いや、お前らな。・・・メイが黙ってないぞ」

メリッサはシスティーナと手を繋いだまま立ち上がり、

「メイは大丈夫よ。あれでいて情が深いわ」
「ヨシト、ソフィアの時も連れていこうと一番に言ったのはメイ子だよ。この子の境遇を聞いたら賛成するのはメイ子のほうだよ」
「・・・・・・」

システィーナはメリッサとモーラから離れ、俺のところにトコトコとやって来て、袖を引いて俺に耳打ちをする。

「(わたしの勝ちね、もう結婚するしかないわ。大丈夫、ちょっと潤滑油を使えば入るわ♪)」
「っ!」

俺は袖を捕まれたまま、システィーナを睨み付ける。

「こ、このクソガキ・・・・・・」

メリッサとモーラが走ってきて、システィーナを抱き上げる。

「ヨシト、相手は子供よ?そんな顔しちゃダメ!」
「あたしが惚れた夫は、子供をエロオヤジのところに送るような冷たい男じゃないよ」
「・・・お前らな・・・」

二人はシスティーナを抱き上げて俺から離れた。

いつのまにかハルートが俺のところにやって来た。

「ヨシトよ、あまり難しく考えなくても良いのではないか?むしろ、人質を取ったくらいのつもりで一緒に暮らしてみては?婚姻の儀式をしろとも今は言われてない。ただ一人子供を預かるだけで丸く収まるならば、一番簡単ではないか?」
「・・・・・・」

(確かに理屈はその通りだ。だが、なんか嵌められてる気がしてならない。・・・・・・見ろ、あの幼女の顔を。まるで小悪魔みたいだ。9歳にして9歳の特権をフルに使ってやがる)

メリッサとモーラが、システィーナをよしよししながら会話している。その上をプカプカとリモアが浮いている。
俺はリモアと目が合うと、リモアは真剣な表情で黙って頷いた。

(ふむ・・・・・・。リモアもとりあえずは連れて帰れと言うことか。確かに損はないからな)

「わかった、宰相。とりあえず連れて帰るだけだぞ?」
「今は結婚を前提に、姫を預かると言うことで構いません。王、よろしいですか?」

宰相が王を見ると、

「宰相が決めたなら構わん。ヨシト殿、娘をよろしく頼む」
「・・・わかった、わかりました・・・」


また、同居人が一人増えた。
  
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