俺の知っている異世界はどこにある

はがき

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オーゴト

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今日は天気が良い。

草原の駅でおにぎりを買い、セイコと2人でゴッドライガーの背中に乗り、ゆっくりとゴッドライガーを進ませながらおにぎりを食べている。

「なあ、セイコ」
「なんでしょうか、マスター」
「こいつ、自我があるのか?」

俺はセイコに振り返り、けつの下のゴッドライガーを指差す。

「ありません。ゴッドライガーは魔鋼機です」

セイコはいつもの澄まし顔で断言する。

「いや、だってよ。こいつイヤイヤしただろ」

そう、ゴッドライガーは俺がおざなりに呼んだのが許せず、やりなおしを要求してきたのだ。

「ゴッドライガーはマスターと繋がっています。そして、自動制御時はマスターの脳波を学習し、AIが動かしています」
「いや、だから────、ん?」

俺は何かが引っかかり、セイコに振り返る。

「そうです、あれはマスターを基にした行動です。あの行動はマスターそのもの。マスターが求めていることなのです」
「・・・・・・」

(あり得ない、ハードボイルドのこの俺が、あんなコミカルなやり直しを求めた?・・・こいつの性格は俺のコピー?あり得ない!)

「いや、セイ────、」
「マスター」
「・・・なんだよ」
「認めてください。マスターはハードボイルドに程遠い、コミカル厨二病なのです」

俺はゴッドライガーの背に立ち上がる。

「誰が厨二病だ!」

セイコはおにぎりについているたくあんを一つ拾い、ポリポリとかじる。

「マスター」
「・・・」
「ナッコォォォォはないです。無いです」

セイコは俺の口真似をしながら言ってきた。

「っ!!!」

俺は反論する言葉がなくなり、ゴッドライガーの中に逃げ込んだ。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



まもなくシガ国だ。
シガ国と言えばレイクビュワーを有する国、その巨大な湖を囲むように出来た国と言える。
もちろん特産もレイクビュワーにまつわるものが多い。
だが、その影には知る人ぞ知る歓楽街オーゴトがある。

俺はオーゴトの女はどんなものかに夢を走らせる。

「マスター、路銀が底をつきました」
「・・・なんだと?」

そんなはずはない。レイアからたんまり受け取ってるはずだ。

「資金は私が持っていました。それは前回捕まった時に、すべて没収されました」
「使えねーな!」

まずい。路銀がなくばオーゴトでハッスル出来ない。これは大事おおごとだ。

「つきましては、レイア姫に追加資金を要請しました。シガ国の冒険者ギルドから受け取れる手配が完了しております」
「使えるな!」

流石セイコ。仕事が早い。

「ですが引き落とせるのは明日です。本日はゴッドライガーの中で寝てください」
「使えねーな!!?」



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



俺たちは、レイクビュワーの西岸にゴッドライガーを止めた。

ここから歩いてオーゴトまでいける。
だが、金がない。
それでもここまで来てじっとしていることもできずに、ゴッドライガーから飛び出して散策をする。

「着流しのたもとに大銀貨1枚入ってて助かった・・・」

大銀貨1枚は1万エルだ。
風俗界では、大1枚の隠語で通っている。
これだけあれば、ピンサロレベルなら遊べないことはない。

「何も高級ばかりが風俗じゃない、低価格には低価格なりの楽しみ方がある」


だが、オーゴトは泡姫街だ、ピンサロは皆無に等しい。
俺は淡い期待を胸に、オーゴトの街を練り歩く。






「ん?なんだこれは?・・・ラッキー・・・ホール?」

店の名前はテキ屋がやっているゲーム型出店のような名前だ。
だが、看板の色はピンク一色で、女の絵も描かれている。どう見ても風俗にしか見えない。
看板には、《2000エルポッキリ!》とも書かれている。

(これが風俗だとしたら、まさかこの俺が知らないジャンルがあると言うことだ。・・・これは、試してみる価値がある)

あまりの安さに一抹の不安を感じないでもないが、泡姫だって入場料しか公開していない、ピンサロだって最も安い価格しか表示しない。これも多分その類だろう。

入り口を入ると、まるで銭湯の番台のような場所に座ったおばさんがいる。そいつは俺を見ると、

「二番が空いてるよ」

いらっしゃいませも言わない。

「金はここで払うのか」
「・・・そうだよ。二千エルだよ、これを持って二番に行きな」
「・・・」

ぶっきらぼうである。それを通り越して、悪態をついているような態度だ。表情も至極面倒くさそうにしている。

(なってない、なってないが、このレア風俗を見逃す手はない・・・)

俺も黙って大銀貨を番台に置くと、きっちり銀貨8枚が帰ってきた。

「・・・・・・中で女に金を払うのか?」
「はあ?何言ってんだい、早く行きな」

おばさんは俺に粗末な鍵を投げ渡した。
それには②と書かれたタグがついている。

「・・・」

俺は店内に進む。
どうやら店内は円形のようだ。
ぐるっと一周してみると、廊下が円形に続いていて、内周には所々に扉があり、扉には番号がふられている。

歩いていても仕方ないと、俺は②番の部屋のドアノブに、番台で貰った鍵を差し込み、ドアを開ける。

「な、なんだと・・・!」

予想外だ。
ドアの向こうは壁でした。
隙間も何もない。天井から床まできっちり壁が貼ってある。
トンネルを抜けると雪と言うのは聞いたことがあるが、ドアを開けたらいきなり壁とは想定出来なかった。

よく見ると、一応部屋にはなっていた。ドアと壁の間には1m四方ぐらいのスペースがある。しかし、この極狭の部屋で待ってれば女がくるのか。

(それにしてもこの壁の絵のセンスは・・・。ん?なんだ?)

壁には下手くそな絵で、ビキニの水着を着た女の絵が描かれている。だが、その女の絵の股間あたり、ちょうど俺の腰の高さあたりに、拳が入るか入らないかぐらいの穴が空いている。

だが、歴戦の猛者の俺はここでピンと来た。

(ま、まさか!ここに突っ込めと?!!)

新しい。斬新すぎる。
いや、古臭い雰囲気なのだが、斬新、お手軽、格安風俗だった。

俺は着流しの裾を開き、パンツを下ろして突っ込んでみる。

数秒の時が流れる。

「ぬっ!ぬあっ!う、うおおおおおお!」


・・・
・・・・
・・・・・


上手かった。
あの入れ歯ババアに匹敵するほど上手かった。しかも完了後は、壁の向こうでイチモツをお湯洗いして、丁寧に拭いてくれている。
完璧な心遣いだ。

俺は満足して、壁から離れてパンツをあげる。
そしてドアから出ようとすると、

「ありがとうございました」
「っ!なっ!」

壁の中から礼を言われた。
文面では伝わるかわからない。
わからないがあえて書こう。
野太い声だった。
ババアの掠れた声でもない。
それはもう、疑いようのない、一瞬で理解出来る声だった。

「・・・・・・」

はっきり言って、この街を皆殺しにしたいほどムカついている。そして、死んでしまいたいほど恥ずかしい。
だが、事実、中に入っているがどんな奴とは明言されてない、むしろ女とも書いてない。
ただ、看板にも壁にも女の絵が描かれていただけだ。

部屋を出て、番台を通ると、おばさんババアはニヤニヤしている。

「なかなか悪くなかったろ?」
「・・・・・・」

俺は目線も合わせずに店を出た。




「くそったれ・・・・・・、これが異世界か・・・、こんな異世界は滅びればいい!!」





◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

ラッキーホールは、某片田舎に10年前まで本当に実在した。
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