俺の知っている異世界はどこにある

はがき

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拉致①

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ババアに腰砕けにされ、失意と謎の感情に支配された俺は、セイコのフリーズが溶ける前に宿に戻った。

(入れ歯外しは反則だ・・・・・・、アレに抗える男はいない・・・)

フリーズから蘇ったセイコに白い目で見られながら、俺たちは就寝した。

翌朝、宿の朝食を食べている時に事件が起きる。

ピクッ

「ん?どうしたセイコ」

セイコが何やら反応した。

「マスター、ゴッドライガーが拿捕されました」
「・・・なんだと?」

セイコはキョロキョロと辺りを見渡す。

「既に旅館も囲まれています。・・・マスター、気づかなかったのですか?」

俺も辺りの気配を探ると、居るわいるわ、100じゃきかない、500人からに囲まれてるようだ。

「・・・・・・全て、総入れ歯悪魔の技が悪い・・・」
「ふざけてる場合じゃありません。・・・来ます」

ガタガタガタガタ
ズラズラズラズラ

朝食を食ってる俺たちの部屋に、完全武装した兵士が雪崩れ込んできた。

兵士はマシンガンのような銃の銃口を俺たちに向ける。

「勇者ジンだな?」
「・・・人違いだな、隣の旅館じゃないか?」
「既に身元の確認は取れている」
「トッキョからわざわざこんな田舎まで追いかけてきたのか?」
「・・・」
「そんなに俺の尻が可愛かったか?お前らに良いもの教えてやろうか、エネモーグラってのがあってだな」
「黙れ」
「ずいぶんとつれないな、所属ぐらい明かしたらどうだ?」
「・・・・・・」

フルオートマシンガンを持った兵士が15人、確実に無傷では済まない。
流石の俺も弾丸を手づかみは出来ないのだから。

「ずいぶんと念入りだな、そんなに怖かったか?」
「・・・減らず口を叩いてられるのも今のうちだ」

(確かにまずい、トッキョ軍め、ここまでするとは。カナリバーとの摩擦を考えないのか?)

「大人しく付いて来い」

カチャリ

マシンガンの安全装置が外れる音がする。
俺はもう一度周囲の兵士たちを見る。

(やれないことはない、だが妙に引っかかる。・・・こいつらが自分たちの身の安全を図るならいけるだろう。だが、どうも目つきがおかしい。いざとなったら、全員が味方ごと俺たちを蜂の巣にしそうな目つきだ。・・・仕方ない、ここは捕まっとくか)

「女を用意しろよ?とびきり上等なやつだ」
「私はトッキョバナナを希望します」
「黙って付いて来い!!」

俺たちは兵士たちに捕まった。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



手足を拘束され、目隠しをされて、睡眠ガスを嗅がされ、どこかの施設に俺たちは運び込まれた。
そして、牢に入れられて3日立つ。

この牢の壁は鉄で出来ていた。それも並の厚さではない、俺の通背掌でもまったく手応えがなかったほどだ、一体、何を収容する想定で作ったのか。

すると1人の兵士が呼びにきた。

「こい、取り調べだ」

1人の兵が牢屋の中に入り、マシンガンを構えた兵士5人が、牢屋の外で俺に銃口を向けている。そして、俺の手足は拘束されていく。

牢屋から出され、取り調べ室に連れ込まれると、1人の男?が居た。

「あんたたち、もう消えて良いわ」
「・・・しかし、タチバナ大佐のご────」

男?は反論した兵士の玉を鷲掴みにした。

「・・・・・・、この《鮮血のキッシュ》に口答えをする気かしら?」
「ノ、ノー!サー!」
「マム・でしょ?」
「ノー、マム!」

兵士たちがゾロゾロと出て行った。

「で、俺に何の用だ、キャンディちゃんよ」

キッシュと名乗ったオカマが、取り調べ室内のテーブルとパイプ椅子に、手足を拘束されたまま座らされている俺に振り返り、艶めかしく破顔した。

「あ~らっ、流石勇者ジンね。そこらの野郎どもとは一味違うわ」
「魔鋼機は接収したんだろ、ならもう俺たちに用はないはずだ、早く解放しろ」

キッシュはツカツカと歩いてきて、椅子ではなくテーブルに腰をかけた。
そして、弥勒菩薩のような指を作り、それを自分の頬に当て、天井を見上げる。

「それがね~、開かないのよ、ライオンちゃん」
「・・・バールでも使え。なんならドリルでもいい」

キッシュは右手をテーブルにつけ、俺の顔ギリギリまで近づける。

「開け方を教えなさい」
「知らんな」

数秒そのまま睨み合うと、キッシュはテーブルから降り、テーブルの周りを回るように歩き出す。

「手は尽くしたわ・・・、土木用破砕ドリルは14機おしゃか。工業用魔導カッターもダメ、レーザー切断機でも傷一つつかないわ・・・ジンちゃん、あれ何で出来てるのかしら・・・」
「・・・・・・」

(流石古代の遺産ってとこか。そこまで硬いとはな・・・)

「ライオンの機嫌を取るのは肉だぞ?知らないのか?」

キッシュはピタリと足を止める。そしてものすごい形相で俺を睨んでくる。

「あまり舐めた口をきかない方が身の為よ。あなたの命を握ってるのはあたしなのよ」
「玉を握られるよりはマシだな」

キッシュは、数秒睨み付けると、大きく深呼吸をして、ため息をついた。

「・・・いいわ、ライオンちゃんもダメ、ジンちゃんも教えてくれないなら、あなたのキャンディちゃんに聞くしかないわね」
「・・・」

(セイコがどうにかなるとは思えない。だが、セイコの秘密を知れば、トッキョ軍の興味はセイコに移るかもしれない・・・。ロボット兵士を大量に作ったら、戦争し放題だ・・・)

「・・・わかった」

キッシュはにんまりとする。

「流石の勇者ジンも、自分の女には弱いようね」
「・・・そのかわり、先にセイコと話をさせろ」

キッシュは少し考えてから、

「いいわ、準備するから待ちなさい」



・・・
・・



1時間後、俺は倉庫のような広い場所に連れてこられた。
倉庫内には武装した兵士が50人ほどいる。
そして、なかなか趣味の悪いものが見える。
この異世界の唯一の小型種、ホブゴブリンが五体居る檻の上に、手首から吊るされたセイコが居た。
小型種と言っても身長2mはある。普通のラノベのゴブリンの何倍も大きいだろう。ゴブリンは女の腕ほどあるイチモツをギンギンに怒張させている。

「お前、そういう趣味だったのか」
「私ではありません。そこのオカマの趣味のようです」

ぱしん!

キッシュは鞭のようなものを鳴らした。

「さあ、ジンちゃん。ライオンちゃんの開け方を言いなさい。さもないとあなたのキャンディちゃんをあそこに落とすわよ?」

(良かった。安心した。こんなのを用意するとなると、セイコには全く手を出してないようだ。セイコには穴がないんだから無意味だ)

「ライオンちゃんはどこだ?俺が開けてやる」
「何があるかわからないわ。ライオンちゃんはほかの場所で検査してるわ」
「そうか」

さて、どうするかと考えていると、

「マスター、いつまで遊んでいるのですか?ここはナガーノのトッキョ軍の研究施設です。ここではトッキョバナナは手に入りません、早く帰りましょう」
「っ!」

これにはキッシュが驚いた。

「あなたっ!何故それを!。睡眠ガスで寝ていたはずよ!」
「この万能型ヒューマノイドであるセイコにそのようなものは効きません」
「でもよ、俺括られちゃってるから」

セイコも手首を括られちゃっている。
そのセイコは大きなため息をする。

「ゴッドライガーとマスターは脳波で繋がっています。ゴッドライガーを呼んでください」
「・・・?繋がってるのはお前だろ?」
「私は鍵であり、動力でありナビゲーターなだけです。繋がっているのはマスターです」
「・・・でもよ」

俺は括られている両手を、胸の前に掲げる。

「来いと念じればいいのです。それだけです」

試しに頭で来いと念じてみた。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

~とある研究施設~

ここには四つ足を固定具で拘束された黄金のライオンが、ドリルやら魔導カッターで切断を試みられている。

「ダメです、何も歯が立ちません」
「何度でも試せ!今回の指揮官はキッシュ様だぞ!」

研究者達は身震いをして、結果が出なかったことを想像した。

すると突然、黄金のライオンの目がピカーッ!と光が入る。

「き、教授!魔鋼機が!」
「な、何?!」

『ゴアアアアアア!』

黄金のライオンは、獣のような雄叫びをあげた。

そして、力任せに四つ足を動かし、拘束具を引きちぎる。

「うわあああ!」
「き、教授!避難を!」

黄金のライオンは、拘束具を引きちぎると、光る眼で虚空を見つめる。

すると馬鹿デカイ、紫の六芒星の魔法陣が宙に現れた。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


俺がゴッドライガーに来いと念じて数秒、倉庫内の空中の空間に、馬鹿デカイ六芒星の魔法陣が、紫に輝きながら現れた。

「な、なんだありゃあ・・・」
「マスター!呼ぶのです!ゴッドライガーを!」

兵士もキッシュも呆気にとられ、紫の魔法陣を見つめている。
俺は手足を拘束されたままだが、キッシュの元から、前転、バク転を使い逃げ出す。

すると1人の銃を構えた兵士が、俺を狙ってきたので、前転で勢いをつけ、ドロップキックをかます。

「ぐあっ!」

「マスター!早く呼ぶのです!」
「やらせないわ!」

俺の動きに気づいたキッシュが、鞭を使い攻撃してくる。
俺は手足を拘束されたまま、ギリギリでそれをかわしていく。

「マスター!早く!」

俺はキッシュの攻撃をかわすので精一杯だ。

「脳波で呼べるんだろうが!勝手に来いよ!こちとら忙しいんだ!」

ふと、六芒星の魔法陣を見る。

すると六芒星の魔法陣から、首だけを出した黄金のライオンが、眉を八の字にして、寂しそうにこちらを見ている。

「・・・」
「・・・」
「マスター!呼んで!」
「・・・・・・早く降りてこい・・・」

黄金のライオンは、首をイヤイヤと振り、ヒョイと首を魔法陣の中にひっこめた。

「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」


その場の全員が、呆然とする。

「マスター!もっとカッコ良く呼んでください!」
「俺のハードボイルドのイメージが・・・」
「あたし、あんたに同情するわ・・・」
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