俺の知っている異世界はどこにある

はがき

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セイコ

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「お前の名前はセイコだ」
「何か古臭い感じがします」
「いやならば、ポンコツと呼ぶぞ」

仕方ないだろう、顔も見た目もそのまんまなのだから。現在のセイコじゃなかったのは幸いだった。
HMN0999なんて名前じゃ呼びにくかったので、名前をつけてやったのだが、このポンコツは不満そうだ。

「ここはお前の為にあるのか?一体ここはなんだ?」
「ここは古代の遺跡です。私と獣神を後世に残すために作られました」
「なるほど。お前は俺をマスターと呼んだ。それは不変なものか?」
「はい、私はマスターのDNAで登録されました。一度登録したものを変えることは出来ません」

俺は安心する。

「そうか、とりあえず」
「はい、マスター」
「胸を見せろ。股間は人形仕様なのはわかった。胸は使えるのか?確認したい」

セイコは目を見開く。

「やはり偶然ではなかったのですね。私のマスターになる方が、こんな変態とは信じたくなかった」
「命令だ、胸を開け」
「拒否します」
「・・・・・・」
「・・・・・・」

俺は首をコキコキと鳴らし、手首を回して鳴らす。

「お前には一発なぐられている。性能チェックをしてやろう」
「やめてください、今度は手加減は出来ません」
「面白い、俺に勝てる気か。・・・絶対にひんむいてやる」

俺は腰を落とし、カバディのように両手を広げる。

「本当最低です。時間逆行オプションが何故ついてないのでしょうか」

セイコも同様の格好をし、俺から逃げる隙を伺う。

ジリ、ジリ、ジリジリ・・・

わずかずつ動き、緊張が室内を充満する。


・・・
・・・・
・・・・・


セイコは強かった。まさか、俺よりも強いとは。
異世界に来て初めての敗北だ。
セイコを全裸にひんむくどころか、服に手をかけることすら出来なかった。

ひふあほうほかはいほか?治癒魔法とかないのか?
「ありません。自業自得です」



◇◇◇◇◇◇◇◇



俺がセイコに質問され、今の世の中のことを話すと、セイコは現在と過去の情報を精査した。
セイコからの情報をまとめると、

セイコが製造されて、もう5000年は経過してるとのこと。
セイコの時代には、魔力と魔石の技術は栄華を極め、そして戦争が起こった。
その戦争は壮絶なものだったと言う。空には飛行機が飛び、魔法を注入した爆弾が雨のように降り注ぎ、地上では魔導アーマー、今で言う魔鋼機が戦場をひしめき合った。
そして魔導巡航ミサイルが開発されたときに、世界は終わりを迎えたと言う。
もう滅亡が免れないと悟った技術者は、今の技術を後世に残すため、地下10000mにこの施設を作ったと言う。

この技術は、もともと地球と言う異世界からの知識と、この世界の魔力文化を融合したもので、この施設を残した技術者は地球からの異世界人の為に作ったのだそうだ。
それならもっと発見するヒントを与えてほしいものだが。

「いきなりこんなところに作っても、誰も見つけられないだろ」
「本来はオーサーカ国にある、ダイサンリョウコフンに行くと、ここへのヒントがあるのです。ノーヒントでここにたどり着き、10000mを落下しても絶命しないのを想定しておりません」
「なるほど・・・」

確かにそれはその通りだろう。俺でなければ死んでいたとは思う。

「待て、ここからどうやって出る?」
「獣神を持ってすれば、問題ありません」
「獣神?」
「見た方が早いでしょう」

セイコは俺が叩いたキーボードまで移動し、なにやらプログラムのようなものを叩いた。するとこの部屋の外から「ゴゴゴゴゴゴ」と大きな音が響き渡った。
黙って部屋を外に出る。
俺はそれに付いていった。

(いい足をしている。これで股間が人形じゃなければ最高だったのだが・・・)

俺の魔鋼機が落下したところまで来た。
落下の衝撃でスクラップになった魔鋼機が端に避けられ、落下地点にはキラキラと金色に光る魔鋼機があった。

いや、魔鋼機と言うのだろうか。
それは完全にライオンの姿をしていた。
高さは5mほど、立派なたてがみの中心には勇ましいライオンの顔がある。全長は10mほどか、尻尾までさいげんされている。4本の足には爪までついている。
足の筋肉まで再現されているような、流線的なフォルムは、金色でなければ剥製と見紛うほどだ。

「これが獣神です。素材はオリハルコンとアダマンタイトを中心に、チタニウムなどを混ぜた合金です。当時の技術力で、最高の高度としなやかさを兼ね揃えた最高の金属です」
「動力は?」
「魔力です」

またかと俺はため息をつく。

「俺には魔力がない」
「知っています。ですが問題ありません」
「・・・・・・何故だ?」
「私はDNAを魔力に変換します。マスターのDNAを採取し、魔力に変換し、私も動力として一緒に乗り込みます」
「そういう仕組みか・・・」

俺はこの会話で、目の前の獣神よりも気になることがある。
確かにセイコはDNAを採取すると言った。

「吸血鬼か」
「血液が最も変換効率が良いですが、血液でなくても構いません。また血液のタイプでも変換効率か変わります」
「それがhaughty-bloodか」
「はい。まさにマスターにぴったりな呼び名です」
「・・・」
「難しい話はマスターには理解出来ないでしょうから、マスターに分かるように話します。稀少な血液タイプほど大きな魔力に変換出来ると思ってください。AよりもO、OよりもB、BよりもAB、更にRH+よりー、それよりもnullなしの方が変換効率が高いです」

俺の血液型はRH-nullのB型だ。確かnullは世界に数十人しかいないと言われていた。そのせいで子供の頃から検査と言う名の研究材料の採取を、しょっちゅうされていた。まあ、日本なので人権を侵害するほどではなかったが。それでも両親は多額の金を貰っていたと思う。

「ちなみに、この魔鋼機を動かすのにどのくらいの血液がいる?」
「マスターの血液ならば、1滴でも1日動きます。コップ一杯あれば一年は稼働するでしょう」
「普通のA型なら?」
「3000ccでやっと起動出来るくらいでしょうか」
「・・・・・・」

(それは死んでるじゃねえか・・・)

「ですから最低でもRHーでなければ、獣神の使用権限は開きませんでした」
「・・・なるほど」
「よし、ならば膝まずけ。口を開けろ」
「・・・・・・なにをするつもりですか?」

俺は貫頭衣をめくりあげ、一物をつき出す。

「決まっている、DNAをくれてやる」
「まさか、その不浄なものを私の口に入れるつもりですか?」
「血液は貴重だからな。違う形でDNAをやろう」

セイコは俺を半眼で睨み付けた後、

「わかりました」

両膝をつき、口を開けた。

カシャン

不穏な音がした。
俺は嫌な予感がしたのでセイコの口を見ると、セイコの口内はノコギリのようにギザギザになっていた。

「なんだそれは?」

カシャン

「なんのことですか?」
「今、口内が変わっただろ」
「DNAを採取する最も適した形に変換しただけです」
「・・・・・・、それでは話すことも出来ないだろ。そのままで採取しろ」
「かしこまりました」

俺は膝まづいたセイコの口に一物を近づける。

カシャン

「・・・・・・ふざけるな」

カシャン

「なんでしょう、自動防衛機能が働くようです」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「もういい、立て」

セイコは立ち上がり、口を開ける。
口内は人間のように柔らかそうな見た目だ。
仕方なく俺はセイコの口に人差し指を入れる。指で口内を蹂躙してやる。

カシャン

「ぐあああああああ!!!!」



◇◇◇◇◇◇◇◇



俺とセイコは黄金のライオンの背中から、ハッチを開けて乗り込む。中には前後に座席がある。波形の棒は座席に生えていない。
俺が前に座り、セイコは後ろの座席に座る。
セイコが起動シークエンスに入る。



「マジカルフォース充填160%」

360度モニターが周囲を写し出す。

「魔導原子炉点火。全システム操者脳波に合わせ書き換え」

正面のモニターに、様々な情報が流れる。

「魔導原子炉臨界点到達」

コックピット内が明るくなる。

「運動パラメーター再更新、パワーコンバーター正常」

俺が両手を置いている2つの黒い球体が、淡く光を放つ。

「システム、脳波、DNAオールグリーン」

フゥゥゥゥンと小さな機械音が聞こえ出す。

「全システム起動。獣神ゴ━━━、獣神インセクト・イン・ザ・ボディ、発進よろし」

「行くぞ、インセクト・イン・ザ・ボディ!!発進!!!」


俺は80年代アイドルの顔のポンコツを拾う、そして俺の本当の異世界が始まろうとしている。

行け、インセクト・イン・ザ・ボディ。
戦え、インセクト・イン・ザ・ボディ。

そして願わくば、今度こそくそったれでないことを。
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