俺の知っている異世界はどこにある

はがき

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俺は余りの羞恥と屈辱感に廃人になりかけた。
だが、持ち前のハードボイルドで、なんとか自我を取り戻す。

どうやら、最新鋭魔鋼機エネモーグラは、放精してしまうと起動できなくなってしまう。また、怒張が萎れてしまっても起動出来なくなる難儀な魔鋼機だった。

俺はレイアとの約束のため、厳しい訓練を受けることになった。
その結果、三時間連続起動と一時間休憩の後、更に三時間連続起動が行えるようになる。

戦闘訓練も行ったが、こっちはほぼ問題はない。反応が悪い自分の体のような感覚で扱えた。むしろ、あまり激しい動きをすると、起動時間が短くなってしまう方が問題だった。


そして、ダサイタへの出発の日になる。



◇◇◇◇◇◇◇◇



「最新鋭だろ?壊したらどうすればいい」

レイアの顔はまるで憑き物が落ちたように、落ち着きを取り戻している。

「構わないわ。もう気は済んだもの」
「そうか、ならもう行く」

だがレイアは引き留める。

「やっぱり危ないわ。ジンが行かなくても・・・」
「何を言っている。俺を戦争に行かせるために呼んだのだろ?」


〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓

だが、レイアの本心は違う。もう一度ジンに会いたかっただけだ。それの口実が必要で、魔鋼機を開発していた。復讐と言う名目が有ったから、18年も耐えることが出来た。
事実、この1週間はレイアは楽しかった。
調整のために何度も会話をし、一緒に食事もした。18年前に戻ったような気分になっていた。

処女をいたずらで散らされて、結婚が出来ない身体にされても恨んではいなかった。
むしろ、実はジンは魔鋼機に乗らないと思っていた。だから魔鋼機に乗らない、約束を破ったら責任を取ってという条件だったのだ。責任とはもちろん、婚期を逃した女を娶ることである。

なら何故若いときにジンに言わなかったかと言うと、レイアは姫だ。結婚を自分で選ぶなんてわがままは許されない。それに、ジンに散らされた事実が公になればジンは殺されてしまう。だからひたすら隠し続けるしかなかったのだ。

〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓


「報告に来れたら来る。来れないときは騎士にでも聞いてくれ」

俺はレイアに背を向けて歩きだす。

「お願い、死なないで・・・」

レイアの願いは俺には聞こえなかった。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「やはり訓練と実践は大違いか・・・」

トラックで運ばれて現地につくと、既に戦争の真っ最中で、俺はいきなりの実践を要求された。
敵はホバークラフトタイプばかりだった。地面を滑るように移動し、全くとらえることが出来ない。また座面から生える棒にも難儀している。
既に右肩を損傷し、右腕は全く稼働しなくなっていた。

「これなら降りた方がましか?」

はっきり言って、速度だけなら生身で避けるなら問題ない速度だ。だが、それでは逃げることしか出来ない。

3機のホバークラフトタイプにより、一斉攻撃を食らう。
俺は何とか2機まではかわしたが、不意に魔鋼機のかかとに何かが当たった。
丘だ、コフンと呼ばれるものだ。
それにかかとをぶつけ、後ろに倒れそうになる。
ふと正面をみると、3機目のホバークラフトタイプが、飛び蹴りの格好で空から降ってきていた。

「くそが!」

俺はとっさに腕をクロスし、飛び蹴りを防ぐ。
が、俺の後ろに倒れる速度は勢いを増し、コフンに尻餅をつくとこになった。

ズボッ!

「なっ!」

座面からの衝撃ではない。
なんと、俺の魔鋼機がコフンに尻餅をつくと、コフンの底が抜けた。丘だと思っていたものは中が空洞だった。

「う、うおおおおああああああ!!!!」

まさか、まさかである。それはどこまでも落ちていく穴だった。
5秒、10秒、20秒たってもまだ底に到達しない。間違いなく落下すれば死ぬ。

俺は棒を抜き、筒をはずして、コックピットのハッチを開ける。生身での自由落下ならば、死なない自信はある。だがこの棺桶魔鋼機の中では、100%の死だ。

俺は自由落下に任せて、コックピットから出る。
全裸に貫頭衣なので、ヒラヒラと色々舞う。
これが女ならば様になるが、おっさんでは誰の琴線にも触れない。

先に魔鋼機が落ちていく。ふと落下しながら周囲を見ると、岩の壁面が見える。人工的にこの穴が掘られた証拠だ。

「気功解放!!!、牙狼衝波!!!」

気功を放出する技を、両手のひらから放出し、その反動で落下速度を殺し、更に自身の背中方向に推進力を得る。ちょうど、岩の出っ張りのようなものが見え、それに捕まった。

「ふぅ、どうやら命だけは拾えたな」

ドガアアアアアアアン! 

2秒も立たずに、盛大な落下音が響き渡る。
幸いなことに爆発などはしなかった。

「しかし、ここはなんだ?」

何故かはわからない。だが、ほんのりと視界が利く。もしかしたらこの岩の壁面は、ほんのりと発光でもしているのか?そうとしか思えないほど、暗いは暗いが視界は確保されているのだ。

俺はスルスルと岩の壁面を掴みながら、穴を降りていく。 落下音がすると言うことは、地面と空間があると言うことだ。

5分とかからずに地面が見え始める。

「ん?」

そこには魔鋼機が山になっていた。だが5体ぐらいだろうか。
白骨死体も10体分ほどは確認出来る。

俺は地面に降りたつと、辺りを見渡す。落下中の穴の壁面より更に明るい。50m先でもうっすら見えるくらいだ。

魔鋼機の瓦礫から、棒状の鉄を一本抜き地面に目印を書く。更にこれから進む方向に矢印を書き、棒で地面にラインを引きながら歩く。自分が歩いた位置を見失わないためだ。

50mほどで壁にぶつかる。
どうやら円形のようだ。
右手を壁につけ、壁伝いに歩くと壁が切れる。
とりあえずはその先には進まず、今度は反対を向き左手を壁につけ、壁伝いに歩く。

間違いない、ぐるっと回っている。
魔鋼機の落下地点に戻る。

大体把握出来た。
まず落下してきた穴は直径20m前後、上までの距離はわからない。自由落下の時間は1分はかかってないくらいだった、ならば地上までの距離は10kmではきかないだろう。そして落下地点は直径50mほどのホールのようになっていて、横幅と高さ10mほどの通路が一方向にだけ伸びている。
上に行くには、体力があるうちに目指さないとたどり着けなくなる。だが、この明らかな人工的な穴を調べないと気がすまない。
俺は幅広の通路を進んだ。


距離にして200mくらいか、そのくらい進むとこの高さと横幅が10mある通路一杯に何やら近代的な壁があり行き止まりだ。
それは更に光を放ち、はっきりと見えている。
近代的とは、この世界の基準、日本での基準に照らし合わせても更に未来的なイメージを持たせるほどの壁だった。

その壁の横幅の中心くらい、地面からの高さは1.5mぐらいのところに『手形』がある。親指が左側になってる。まるで右手を合わせてみろとでも言いたげだ。
更に壁を見渡すが、一切他には何もない。

(考えても仕方ない。ヒントになりそうなものをしらみ潰しだ)

俺は手形に、右手を嵌め込んだ。少し人差し指の先がちくっとした。

急に機械の音声なような声が、どこからか聞こえてくる。

《DNAチェック・・・type-earthと認定》

《第一ラボ開放権限取得》

《blood-type   RH-null_B》

haughty傲然な-bloodと認定》

《第二ラボ開放権限取得》

《メインゲート解放》

プシュゥゥゥゥゥゥゥゥ!

壁の中心に光が走り、そこから空気が漏れだすような音がする。そして壁はゆっくりと開いていく。
俺は手形から手を離し、呆気に取られてそれを見ていた。

(な、なんだこりゃあ・・・)

壁は2mほど開くと止まった。俺はまぶしさで目をつむる。
中はまるで蛍光灯でもついているかのように、煌々と光が溢れている。なつかしい感じだ。

次第に目が慣れ、中を見ると・・・・・・

本当に研究所みたいな感じだった。
中に入ると、まず、20畳ほどの空間があり、奥は様々な計器やスイッチなどがあり、そこから先はガラス張りになっている。ガラス張りの中には直径2mほどの菱形の水晶が浮いている。魔石か?

左を見る。左には50インチほどのモニターがあり、モニターの下の壁からテーブルのようなものが突き出し、そのテーブル面にはパソコンのキーボードのようなものが埋め込まれている。
 
右を見る。
右には棺桶を縦にしたようなものが設置されている。顔に当たる部分から中が見えるようになっていて、女の顔がぼやけて見える。
冷凍保存か?


(呆けていても仕方がない。正面の機材はちと無理がある。キーボードを叩いてみよう)

キーボードは何故か英語タイプだった。俺はとりあえず、基本通りにエンターキーを叩いてみる。

するとモニターが表示される。

《ようこそ地球人よ。そして、ようこそノヴァリースへ。》
《右手のセンサーに手を置いてください》

(右手のって・・・あるな。これか?)

キーボードの隣、マウスの位置にマウスではなく半球体の黒いものがある。センサーだろう。

《DNAチェッククリア、RH-null、haughty傲然な-blood確認。HMN0999起動》

(ホーティーって・・・確かおごり高ぶるとかだろ?俺のは驕りじゃない、ハードボイルドだ)

すると後ろの女のコールドスリープのようなカプセルが「プシュゥゥゥゥ」と音を立てて扉が開いた。
そして、ぼやけて見えていた女の顔がはっきりと見えるようになった。

(松○聖子だ・と・・・・・・)

そこにいる女は、厚ぼったい前髪をし、緩くカールがかかった髪が肩まで伸びている。
ヒラヒラしたミニスカートを履き、18歳ぐらいの時の松○聖子にそっくりの女が現れた。

ゆっくりと松○聖子が目を開く。

「あなたがマスター・・・。私はHMN0999、最後のヒューマノイドです・・・」 

(可愛い、ネットで見たのより数倍可愛い。しかも声までそっくりだ)

「ヒューマノイド、アンドロイドみたいなものか?」

松○聖子が答える。

「アンドロイドは人間をベースに作られます。私は違います、ヒューマノイドです・・・」

俺は松○聖子に近づき、頬を手の甲で触ってみる。

(これが作り物・・・?まるっきり人間の皮膚の質感だ・・・・・・。ヒューマノイドでも女だよな、ならば・・・)

「今は四の五の言わない、とりあえずヤらせろ」
「やらせるとは、、、なんですか?」
「これだ」

俺は松○聖子のスカートの中に手を突っ込む。するとパンツを履いてない、人間の肌の質感がある。

「なっ!!!」

あり得ない、人間の肌の質感はあり得ないのだ。
通常ノーパンなら、柔らかかったり、ひだがあったり、凸凹してなければならない。だがそこはいくらまさぐっても、つるっつるの人肌しかないのだ。

「リ○ちゃん人形仕様の股間だと・・・ぶへあ!!」

俺は松○聖子にぶん殴られて宙を舞った。
体術達人の俺がぶん殴られたのだ。

「さ、さすが、異世界・・・くそっ・た・・れ・・・」

俺は気を失った。
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