俺の知っている異世界はどこにある

はがき

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晩餐会

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俺は着流しを新調しに来た。
これもかなりの年季が入ってきてる。ちょうどよかったかもしれない。

俺はビル群とまではいかないが、田舎の都心部のような街並みの中を歩く。

建物は平屋は少なく、低くても2階建て、高いものは何十階建てと言うものもある。それはそうだ、鉄筋コンクリートがあるのだから。
都市の道路もなかなか広い。基本的には日本でいう四車線ほどの広さがある。トラックも走るのだから、当たり前と言えば当たり前だ。
都市の大きさは、市町村の市がまるまる都市と呼ばれる1単位になっている。それをすっぽり覆うようにバカデカイ城壁がある。農地ももちろん城壁の中だ。
この異世界の魔物は大きい、農地の安全も確保出来なければ、干上がってしまうからだ。

ここまで文明が発展しているのに、何故危険な魔物を駆逐しないのか。
それは魔物の体内にある魔石が、魔力をエネルギーとする世界では重要な資源だからだ。それに肉も食用として食べる。むしろ普通の牛などは見たことない、全て魔物サイズの牛なのだ。

なので積極的に魔物を狩り、資源とすることと、絶滅させないように規制している状態がせめぎあっている。
学者たちの見解では、あと500年乱獲しても全ての魔物が絶滅することはないと言われているが。


服屋にたどり着くと、俺は日本で言う着物のコーナーに行き、着流しを選ぶ。高いものは100万エルを越えるものもあるらしいが、俺が選ぶのは庶民価格のものだ。それでも五万エルはしてしまうが。

暗めの青を基調とした縦じまの着流しを選び、代金を払う。
昨日の稼ぎがいきなり半分になってしまった。


金があるうちに次の依頼を探すために、冒険者ギルドへ向かう。ギルドにつくと、顔見知りの冒険者に声をかけられた。

「よお、「勇者」の。お客さんだぜ?」
「・・・?」

冒険者が指差すほうを見ると、二人の女が立っている。
一人は40前後くらいだろうか、脂が乗ってそうな良い女だ。一人は娘か?まだガキだろう、20前後に見える。

「失礼ですが、あなたはジン様ですか?」
「・・・いや、違うな」

また疫病神がいらっしゃった。今度は金持ちそうだが・・・・・・。

「嘘つきなさい!あんたが勇者のジンでしょ?!わかってるのよ?!」
「・・・キャンキャンわめくガキだ。ちっと黙ってろ」
「なっ!!!」

メスガキはいっちょまえに目を開き、ビックリしたような顔をしている。
脂の乗った良い女の方が、話を繋げてくる。

「申し訳ありません。ですが娘の話を聞いてください。今回は娘が依頼人なのです」

(今回は?・・・・・・ちっ、こいつ、どっかでみたと思ったら・・・)

10年前に護衛依頼を受けた女だ。
今日は厄日だ、断るに断れねえ。だが、もっとも面倒事のやつだ・・・・・・。

「・・・伯爵夫人か」
「覚えておいででしたのね。ですがです。夫には先立たれましたので」

女はにっこりと微笑む。

「そうか」
「私の護衛をしてちょうだい!」
「他をあたれ。俺はもうキャンディを舐める年は卒業したんだ」
「誰がキャンディよ!私は成人した大人よ!」

俺はちらっと母親を見ると、コクリと頷いた。

「3日後の晩餐会での護衛をお願いしたいのです。報酬は50万エルでいかがでしょうか?」
「他に護衛は?」
「四人います」
「充分だ」
「充分でないのです」

夫人は笑顔を崩さない。

「俺じゃなくても受けるやつはごまんといる」
「ジン様が良いのです。お願いです、あの時のように私を助けてください」
「・・・・・・」

10年前に伯爵夫人の晩餐会の護衛をした。その時に俺は伯爵夫人を守るために蜂の巣にされた。奇跡的に助かったが、伯爵夫人は湯水のように俺に金を使い、俺の看病までしてくれた。
正直依頼人は護衛にそこまでする義理はない。金さえ払えばいいのだから。
それをそこまでしてくれるのは、命の恩人と言える。
だが・・・・・・、ここまで夫人が言うってことは、間違いなく命に関わる。

「あんたの頼みだ、聞いてやりたい気持ちもある。だが義理はもう返したはずだ。今回はやめさせてもらう」

俺はギルドから逃げようとするも、

「待ちなさいよ!」

キャンディに腕を捕まれた。

「知ってるわよ・・・、あんた、ゲスいんでしょ・・・。良いわよ、一晩覚悟するわ」
「・・・意味をわかってるのか?」
「・・・・・・当たり前じゃない・・・」

キャンディは顔を真っ赤にしている。

「仮にも貴族のはしくれだろ」
「死んだら貴族も孤児も同じよ・・・」

(そこまでかよ・・・・・・。参ったな・・・)

キャンディは暗い表情を浮かべ、うっすら目に涙をためている。

(くそが・・・)

「親子丼を食わせろ」

キャンディは目頭をごしごしと拭いてから、何を言ってるのかわからないって顔をした。

「言ったろ?キャンディを舐める年は卒業したと。お前だけではガキの菓子だ。親子丼ならやってやる」
「なっ!」

夫人の顔を見ると、笑顔を崩してない。

「夫に先立たれてもう5年、こんなおばさんでも良いなら、5年前のあの時の借りをお返しいたします」
「お母さん・・・」

夫人は頭まで下げた。

(くそ・・・・・・こう言えば断れると思ったのに・・・)

「そ、そうね!こんなゲスに処女を奪われるんだもの!もうなんでも一緒だわ!それに、死んだら恥ずかしいも変態もないもの!なんだってやってやるわよ!」

俺は帽子を取り、ガシガシと頭をかく。

「ジン様の敗けですね。では、3日後にここにお迎えに参ります」

親子は去っていった。



◇◇◇◇◇◇



依頼は晩餐会の護衛、間違いなく銃器がくる。
俺は着流しの下に防弾チョッキを着込み、少数の暗器を仕込む。

冒険者ギルドに着き、待っていた執事のような男の車に乗り込んで、晩餐会会場に向かう。

会場はこの都市で一番背の高いビルの最上階だった。
会場に入ると、すでに列席者は八割がた揃っており、立食パーティーになっていた。
会場を見渡すも、まだあの親子は来ていない。

俺はビルの南側、一面ガラス張りの辺りに立つ。
ここに照準を向けられそうな建物はなさそうだ。これならビルの外からの暗殺はなさそうだ。

俺は一人だけ浮いている格好の着流しで、室内を歩き回る。
室内はビルのワンフロア、300㎡ぐらいだ。
現在、ざっと見200人はいる。
一番の問題は、入り口の警備チェックがザルだ。
相手が貴族なだけに、ボディチェックなどは出来ないと言うことか。

しばらくすると、依頼人の親子がやって来た。

「うろちょろしないで貰えると助かるが」
「無理よ!パーティーなのよ?!ダンスだってするわ!」
「だと思ったよ」
「それにあまり近寄らないでよね!」
「はいはい、キャンディちゃん」

俺は帽子を手に取り、ヒラヒラとして立食テーブルに向かう。
背中に、

「よろしくお願いいたします」

と夫人から声がかかったが、帽子で答えた。


ワインを手に取り、部屋の隅に移動して、袖のたもとからタバコを取り出し火をつける。

「・・・っ、ふぅー・・・」

(一番ヤバイのがダンスだ。離れているやつから撃たれるなら、100%じゃねえ。だがダンスの相手が暗殺者じゃ、流石に俺でも無理だ)

俺は殺気をさぐりながら、親子を目で追っている。



3本目のタバコに火をつけた時、会場が動き出す。
列席者は壁沿いに移動し、会場の真ん中がダンスホールと化す。
夫人は南側の窓の前に移動し、娘は中央でダンスを始めた。

娘の相手が3人目になった時、相手の男が娘に何か耳打ちする。すると娘は驚愕の表情を浮かべた途端、室内3ヶ所から殺気が溢れ出す。

俺は一気に走り出す。
まず娘に走りながら、胸から投げナイフを取り出し、司会者のようにステージに立つ男の眉間に投げた。
男は銃の引き金を引くことなく、後ろに倒れこんだ。

会場に列席者の悲鳴が響き渡る。

次に娘のダンス相手を殴り飛ばし、娘を左手で抱きしめ、北側で銃を構えている男に投げナイフを投げる。それは男の首に刺さり、暴発した銃弾が天井に印をつける。

「ぐっ!」

俺は背中に銃弾をうけ振り返ると、暗殺者がナイフを片手に走ってきていた。
両手で娘を抱き上げ、右足を回し男のナイフを蹴り飛ばし、そのまま回転後ろ回しげりで男の首を刈った。

瞬間、背中がぞわっとする。

ふと南側の夫人を見ると、ハンマーを持った男が大きなハンマーを振り上げている。
俺はそれを夫人に振り下ろすのかと思った。
それなら間に合うと。

俺は娘を抱き抱えたまま、夫人に走り出すと男はハンマーを夫人に下ろさず、後ろの窓を叩き割った。

「まずいっ!」

内と外の気圧差で破片が外に飛んでいく。

夫人は目を大きく開き、手をこちらに伸ばしながら、外へと落ちていった。

「ばか野郎!!!!」

俺は娘を抱えたまま、夫人を追いかけビルの外に飛び出す。
すぐに外壁を蹴りつけ、落下速度を増して夫人を捕まえるために、右手を伸ばす。

「間に合ええええええええええ」





夫人の胴を抱き抱え、二人をまとめて抱き締めあげる。

「牙狼衝波!!!!」

ドゴオオオオオオオン!

俺の全身から、気の塊が地面に向かって吹き出す。
牙狼衝波の反動により、俺たちの身体から、ふっ、と速度が消えてから、俺は地面に着地した。




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「この度は本当にありがとうございました」
「・・・これっきりにしてくれ。女のケツをふくのはベッドの上だけで充分だ」
「ほ、本当にするの?・・・せめて一人ずつ・・・」


あれから伯爵夫人の屋敷で3日間泊まり込み、襲撃者の確認をして、報酬タイムになった。
夫人ら親子を殺害しようとしたやつらは、生き残りから足が着き、一気に一網打尽に出来たとのことだ。

「無理だな。キャンディとしても、お守りにしかならねえ」
「・・・・・・私だって女なのに・・・」

確かにどちらも体つきは肉感的だ。充分女としても魅力は高い。

「・・・そういや、お前は処女キャンディだったな」
「っ!」
「ジン様、私が誠心誠意尽くします。娘の若い肌と比べられるのは少々気恥ずかしいですが、命の恩人の為に頑張りますので、どうか共に可愛がってください」
「仕方ねえ」

親子共々、顔を赤くしている。

(・・・改めて考えると普通だな・・・、いや普通でも良いんだが、処女が痛がる姿を見るのは萎えるな・・・)

「ならば、まずは娘を夫人がいかせまくれ。張型はないか?ないなら野菜でいい。処女を夫人が奪うんだ。そして痛みが消えるまで舐めまくれ。そうだ、娘が暴れると困る。ベッドに縛り付けよう。夫人はそうだな、犬をつれてこい。どうせ旦那が死んで5年も経つならバター犬の二匹や三━━━━」

パンッ!!!!
パンッ!!!!


「異世界なんてくそったれだ・・・・・」
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