あの日の約束

あの日の約束

高校3年生の夏休み、瑞希（みずき）は幼馴染の健人（けんと）と再会した。小学校以来、連絡を取り合うこともなく、距離ができていた二人だったが、運命的に再会したのは町の夏祭りだった。

瑞希は健人の変わらない笑顔に、子供の頃の思い出が蘇った。彼女は当時、健人に淡い恋心を抱いていたが、その気持ちを伝えることができないまま別れたことを後悔していた。

「久しぶりだね、瑞希。元気だった？」健人は微笑みながら言った。

「うん、元気だよ。健人も変わらないね。」

二人は祭りの喧騒の中、自然と子供の頃のように笑い合い、話が弾んだ。しかし、瑞希の心には一つの悩みがあった。健人が転校する前に二人で交わした「また一緒に夏祭りに行こう」という約束。瑞希はその約束をずっと心に留めていたが、健人が覚えているかどうかはわからなかった。

夜が更け、打ち上げ花火が始まった。二人は人混みを避け、少し離れた丘の上から花火を見上げた。瑞希の心はどこかソワソワしていた。彼女はついに勇気を振り絞り、健人に問いかけた。

「ねぇ、健人…覚えてる？昔、約束したこと。」

健人は少し考え込んでから、ゆっくりと答えた。「もちろん覚えてるよ。もう一度一緒に夏祭りに行くって約束しただろ？」

瑞希はその言葉に驚きと喜びを隠せなかった。ずっと心に秘めていた思いが、今、現実になったのだ。彼女は涙をこらえながら、微笑んだ。

「私ね、ずっとその約束が叶うのを待ってたんだ。」

健人は瑞希の手をそっと握りしめた。「僕もだよ、瑞希。ずっと君に伝えたかったことがあるんだ。」

瑞希の胸は高鳴った。花火の音が遠く聞こえる中、健人は優しく言った。「あの日からずっと、瑞希のことが好きだった。今日、やっとその気持ちを伝えることができて嬉しいよ。」

瑞希は涙を流しながら、健人に感謝の気持ちを込めて頷いた。「私も、健人がずっと好きだった。」

二人はそのまま、丘の上で手をつないで花火を見続けた。甘酸っぱい青春の恋が、ようやく実を結んだ瞬間だった。

その夏の思い出は、二人にとって一生忘れられない宝物となった。そして彼らの心には、あの日の約束が、新たな未来への希望として刻まれたのだった。