不気味な郵便

Semper Supra

文字の大きさ
上 下
1 / 1

不気味な郵便

しおりを挟む
古びた木造のアパートに一人暮らしをしている山田は、毎日同じ時間に郵便受けをチェックするのが習慣だった。平凡な生活に変化がないことに、彼はどこか安心感を覚えていた。しかし、ある日、その日常が静かに崩れ始める。

その日、山田はいつものように郵便受けを開けた。そこには、封筒が一通だけ入っていた。封筒は黄ばんだ紙で、切手も貼られていない。宛名も差出人の記載もなく、ただ彼の郵便受けに入っていただけだった。

「また広告か何かだろう」と思いながらも、山田はその封筒を開けた。中には一枚の古びた写真が入っていた。それは、彼のアパートの玄関前で撮られた写真だった。驚いた山田は周囲を見回したが、誰もいない。

「誰がこんなことを?」彼は少し不安になりながらも、そのまま写真を机の上に置き、気にしないように努めた。しかし、次の日も同じ時間に郵便受けを確認すると、また同じような封筒が入っていた。

中身はまたしても写真で、今回は彼が部屋の中で何かをしている様子が写っていた。完全にパニックに陥った山田は、すぐに警察に相談しようとした。しかし、通話を始めると携帯電話の画面にノイズが走り、通話は途切れてしまった。

その晩、山田はほとんど眠れなかった。部屋の中で誰かが見ているような気がしてならなかった。そして翌朝、彼はさらに恐ろしいものを見つけることになる。郵便受けにはまた新しい封筒が入っていた。しかし、今回は中身が違っていた。

封筒の中には、彼の部屋の鍵と、小さな紙切れが入っていた。そこにはただ一言、「次はお前だ」と書かれていた。

震える手で鍵を握りしめた山田は、ドアに向かった。そして、鍵を差し込んで回した瞬間、背後から何者かの冷たい息が彼の耳に触れた。

暗闇の中、山田の悲鳴だけが虚しく響き渡り、その声は二度と聞かれることはなかった。アパートは再び静寂に包まれ、翌日、また別の住人が同じ郵便受けを開けた。そこには、一枚の写真が入っていた。

写真には、山田の姿が鮮明に写っていた。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

あなたが口にしたものは

浅貴るお
ホラー
 復讐を行うレストランのお話。

傷心中の女性のホラーAI話

月歌(ツキウタ)
ホラー
傷心中の女性のホラー話を500文字以内で。AIが考える傷心とは。 ☆月歌ってどんな人?こんな人↓↓☆ 『嫌われ悪役令息は王子のベッドで前世を思い出す』が、アルファポリスの第9回BL小説大賞にて奨励賞を受賞(#^.^#) その後、幸運な事に書籍化の話が進み、2023年3月13日に無事に刊行される運びとなりました。49歳で商業BL作家としてデビューさせていただく機会を得ました。 ☆表紙絵、挿絵は全てAIイラスです

愛された青年は、生贄に

製作する黒猫
ホラー
自然に囲まれ、都市から隔絶された村。そこは昔森の神に生贄を捧げていたらしい。 そんな森で、少女は一人の青年と出会う。 「あなたが、昔いけにえにされた、可哀そうな人?」 誰からも愛された青年が、いけにえにされた理由とは? 小説家になろうにも投稿しています。

CLYDE WAS HERE

銅原子@スタジオ バンドデシネ
ホラー
これは、僕自身が体験した夢を元に書いた物語です。

コ・ワ・レ・ル

本多 真弥子
ホラー
平穏な日常。 ある日の放課後、『時友晃』は幼馴染の『琴村香織』と談笑していた。 その時、屋上から人が落ちて来て…。 それは平和な日常が壊れる序章だった。 全7話 表紙イラスト irise様 PIXIV:https://www.pixiv.net/users/22685757  Twitter:https://twitter.com/irise310 挿絵イラスト チガサキ ユウ様 X(Twitter) https://twitter.com/cgsk_3 pixiv: https://www.pixiv.net/users/17981561

赤い車の少女

きーぼー
ホラー
ある夏の日、少年は幽霊と出会った。 舞台となる地方都市では何ヶ月か前から自分を轢き逃げした赤い色の自動車を探す少女の幽霊が出没していた。 とある出来事がきっかけで3人の中学生の男女がこの奇妙な幽霊騒ぎに巻き込まれるのだがー。 果たして彼等はこの不可思議な事件に秘められた謎を解き明かすことができるのか? 恐怖と伝説に彩られた妖魔の夏が今始まる!! 真夏の夜の幽霊物語(ゴーストストーリー)。 是非、御一読下さい!

僕とジュバック

もちもち
ホラー
大きな通りから外れた小道に、少し寂れた喫茶店が、ぽつんとある。 それが、僕がバイトしている喫茶店の『ジュバック』。 これは、僕がジュバックで体験したほんの少しおかしな物語。 ※monogatary にて投稿した作品を編集したものになります。

逢魔が時。それは人と人ならざるモノたちが出逢う時

岡本梨紅
ホラー
「逢魔が時。あなたはこの意味を、知っていますか? これは読んで字の如く、人と人ならざるモノたちが出逢う時のことをいいます。  人ならざるモノ。彼らは、人の心の闇を好みます。甘い言葉で、人間を誘惑するのです。  お聞かせいたしましょう。魔に魅入られてしまった、哀れな人間たちの末路を……」

処理中です...