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絶海の孤島編
自己紹介乙
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「とんでもないガキですね!」
「……」
「一方的に恋慕を募らせて、好きな人を困らせるなんて自分本位過ぎます」
「……」
「どれだけの人を巻き込んだことか。ラインハルト様はお仕事でこの島に来たんです。それが全部お芝居だったなんて。全くいい迷惑ですよ!」
「……」
「ラインハルト様は物じゃなくて、意思を持った1人の人間なんです。その気持ちを尊重せずに騙したり、陥れて自分のものにしようとするなんて本当に好きなんですかね?」
「……セシル君、止めなさい」
「でも」
「それ全部! 君と同じだから!!」
我慢できずラインハルトは怒鳴ってしまった。
椅子に座っていたシグルドが耐え切れず吹き出した。
セシルの言うことは尤もだ。
何も知らない人物であれば、彼の言葉に感銘を受けただろう。
しかし彼の前科を知る者や、直接的な被害にあったラインハルトからすれば「お前が言うな!」とツッコまずにはいられない。
(正論だけど、コイツ自分のこと棚上げし過ぎだろ!)
遅れて合流したランスロットが、理解し難い生き物を見る目でセシルを見ている。
ラインハルトには彼の気持ちがよく分かった。
(全力で特大ブーメラン投げ続けてたからな)
誰かセシルに己を俯瞰する方法を教えて欲しい。
彼が自分を客観視できるようになればストーカーを卒業する事ができるかもしれない。
(いや、客観視できないからストーカーになったのか?)
「ラインハルト様ッ! 今俺に怒鳴りましたよね!?」
「え? ええ」
「しかも言葉遣いも、いつもより乱暴でした!」
「そうですか? 自覚はなかったんですが、すみません」
「いいえ! 嬉しいです!」
「……僕は君のことが本当に分からないです」
セシルはラインハルトに叱られたことが嬉しいようだ。
ビエルサが理詰めのストーカーだとすると、セシルは本能的なストーカーだ。
どちらもストーカーだが、正直セシルの方が何を考えているのか分からなくて恐ろしい。
(ストーカーが側にいることが当たり前どころか、カテゴライズして比較するとかもう末期じゃん)
*
ラインハルトが遠い目をしていると、目元を赤くしたビエルサがトリルとゲルスを伴って部屋に戻ってきた。
ビエルサが雇った町の住人は帰宅済みだ。今この屋敷には、使用人達とラインハルト達しか居ない。
「ラインハルト先生。申し訳ありませんでした」
「ちゃんと反省しましたか?」
「はい……」
「人を好きになるって事は、ちゃんとその人と接する事が大前提なんだ。これに懲りてラインハルト様の事を嗅ぎ回るのは止めるんだな」
「な――!」
ラインハルトが慌ててセシルを叱責したが、しっかりビエルサの逆鱗に触れたらしい。
「ラインハルト先生に付きまとっているお前に言われたくない! お前よりも僕の方が先生のことを真摯に思っている!」
「そんなわけないだろ! 俺のラインハルト様への気持ちは誰にも負けない!」
「お前は先生に迷惑かけっぱなしじゃないか!」
「そんな事ない。お役に立てるよう頑張ってるし、お前にはできないような事も俺にはできるんだからな!」
怒鳴り合う二人。このままではいけない。
「ちょっと待ちなさい!」
「お前にできる事なら、僕にもできる!」
セシルの含むことのある表現に、ラインハルトは危機感を覚えた。
ビエルサがどこまで理解しているのか不明だが、早くこの言い合いを終わらせなければ。
「いいや無理だ! お前はお子様だろ。ラインハルト様を満足させるのは無理だね!」
「セシル君ッ!」
(ちょちょちょちょちょ)
やはり性的な意味だった。ラインハルトが慌てて制止するが、ヒートアップした彼らは止まらない。
「もしかして性行為の事を言ってるのか? 僕はもうできるぞ!」
「エルッ!?」
(ああああああああああ)
ラインハルトは頭を抱えた。
「へー。俺はもうラインハルト様と何回もしてるぞ」
「合意無しですからね!」
大事な事なので、ラインハルトはすかさず否定した。
「ぼ、僕はまだ1回だけど。先生からしてもらったぞ」
「――え? ラインハルト様……嘘ですよね?」
ビエルサの言葉に、セシルがこの世の終わりのような顔をした。
「嘘じゃない! 抱きしめてもらって、キスだってした」
(嘘じゃないんだけど言い方!)
「ラインハルト様!?」
セシルが悲痛な声で叫ぶ。
「語弊があります……」
セシルに言い訳するのもおかしい気がするが、このままだとショタコン認定されかねない。
ラインハルトがどう説明するか迷っているうちに、セシルは思考を切り替えた。
「くっ、こうなったら勝負だ!」
「勝負!?」
「俺とお前が左右からラインハルト様の乳首を舐め「アウトーーーーーーー!!!!!!」」
(コイツ14歳にとんでもない事言いやがった)
「でもラインハルト様。こういった事は早めにハッキリさせないと!」
「何をどうハッキリさせるんですかッ!?」
「勿論、どちらがよりラインハルト様を気持ち良くさせることができるかです!」
キラキラした笑顔でとんでもない発言をした。
「ずるいぞ! 僕とお前じゃ年齢差があるだろう。色々経験があるお前に有利な勝負じゃないか」
「そんな事はない! 俺の初めての相手はラインハルト様だ!」
(聞きたくなかった!!!)
ラインハルトでセシルは童貞を捨てたようだ。
シグルドが腹を抱えて笑っている。
ラインハルトが手で顔を覆った瞬間を好機と見たセシルが、その左膝に乗り左腕を拘束した。
反射的にビエルサも右側で同じ体勢をとった。
「お互い耳を舐めるだけだ。大事なのは技巧ではなく、相手を思いやる気持ちだ。ラインハルト様の反応をちゃんと観察できている方が、より気持ち良くさせることができるはずだ」
「いいだろう」
「良くないです!」
ラインハルトが座っているのは一人掛けのソファなので横にずれる事ができない。腕を拘束された状態で、両膝に2人分の体重が乗り自力での脱出は不可能。
ここにランスロットが居れば助けてくれたのだろうが、彼はビエルサ達と入れ替わりに部屋を出ていった。
「おや先生、両手に花ですね」
「揶揄わないで、助けてください!」
シグルドはヒーヒー涙を流しながら笑っている。彼に悪友を回収するつもりはないようだ。
トリルは面白がるように見ているだけだし、ゲルスはどうしたら良いのかわからないようでオロオロしている。
「ゲルスさん! 主人が間違った道に進もうとしたら、体を張ってでも止めるのが真の忠義ですよ!」
「そ、そうですよね! ダメですよご主人様!」
「ゲルス。主人に勝手に触れるとは何事ですか。分をわきまえなさい」
「すみませんッ」
「ちょっとトリルさん!?」
折角ゲルスがビエルサを引き剥がそうとしたのに、トリルが叱責した所為で彼は身を退いてしまった。
「先生は今の状況から脱出したいですか?」
「勿論です!」
「では貸しひとつですよ」
ニコリと微笑むと、トリルは問答無用でセシルの首根っこを引っ掴んで持ち上げた。
男を一人片手で持ち上げている。以前も思ったが、細身にも関わらず凄い力だ。
「ビエルサ様もそこまでです」
「邪魔をするな」
「今のビエルサ様のテクニックでは、ペットに舐められている程度の刺激しかありませんよ。先生を気持ち良くさせたいなら相応の準備をしないと」
「ちょっと何言ってるんですか!?」
「ご安心ください先生。主人には真っ当な性教育を施します。是非ビエルサ様の成長を楽しみになさってください」
「本当に何言ってるんですか!!」
おや、とラインハルトは今の会話に違和感を覚えた。
トリルは頑なに「坊ちゃん」呼びしていた筈だが、いつの間にか名前呼びになっている。
(何か心境に変化があったのか)
「……」
「一方的に恋慕を募らせて、好きな人を困らせるなんて自分本位過ぎます」
「……」
「どれだけの人を巻き込んだことか。ラインハルト様はお仕事でこの島に来たんです。それが全部お芝居だったなんて。全くいい迷惑ですよ!」
「……」
「ラインハルト様は物じゃなくて、意思を持った1人の人間なんです。その気持ちを尊重せずに騙したり、陥れて自分のものにしようとするなんて本当に好きなんですかね?」
「……セシル君、止めなさい」
「でも」
「それ全部! 君と同じだから!!」
我慢できずラインハルトは怒鳴ってしまった。
椅子に座っていたシグルドが耐え切れず吹き出した。
セシルの言うことは尤もだ。
何も知らない人物であれば、彼の言葉に感銘を受けただろう。
しかし彼の前科を知る者や、直接的な被害にあったラインハルトからすれば「お前が言うな!」とツッコまずにはいられない。
(正論だけど、コイツ自分のこと棚上げし過ぎだろ!)
遅れて合流したランスロットが、理解し難い生き物を見る目でセシルを見ている。
ラインハルトには彼の気持ちがよく分かった。
(全力で特大ブーメラン投げ続けてたからな)
誰かセシルに己を俯瞰する方法を教えて欲しい。
彼が自分を客観視できるようになればストーカーを卒業する事ができるかもしれない。
(いや、客観視できないからストーカーになったのか?)
「ラインハルト様ッ! 今俺に怒鳴りましたよね!?」
「え? ええ」
「しかも言葉遣いも、いつもより乱暴でした!」
「そうですか? 自覚はなかったんですが、すみません」
「いいえ! 嬉しいです!」
「……僕は君のことが本当に分からないです」
セシルはラインハルトに叱られたことが嬉しいようだ。
ビエルサが理詰めのストーカーだとすると、セシルは本能的なストーカーだ。
どちらもストーカーだが、正直セシルの方が何を考えているのか分からなくて恐ろしい。
(ストーカーが側にいることが当たり前どころか、カテゴライズして比較するとかもう末期じゃん)
*
ラインハルトが遠い目をしていると、目元を赤くしたビエルサがトリルとゲルスを伴って部屋に戻ってきた。
ビエルサが雇った町の住人は帰宅済みだ。今この屋敷には、使用人達とラインハルト達しか居ない。
「ラインハルト先生。申し訳ありませんでした」
「ちゃんと反省しましたか?」
「はい……」
「人を好きになるって事は、ちゃんとその人と接する事が大前提なんだ。これに懲りてラインハルト様の事を嗅ぎ回るのは止めるんだな」
「な――!」
ラインハルトが慌ててセシルを叱責したが、しっかりビエルサの逆鱗に触れたらしい。
「ラインハルト先生に付きまとっているお前に言われたくない! お前よりも僕の方が先生のことを真摯に思っている!」
「そんなわけないだろ! 俺のラインハルト様への気持ちは誰にも負けない!」
「お前は先生に迷惑かけっぱなしじゃないか!」
「そんな事ない。お役に立てるよう頑張ってるし、お前にはできないような事も俺にはできるんだからな!」
怒鳴り合う二人。このままではいけない。
「ちょっと待ちなさい!」
「お前にできる事なら、僕にもできる!」
セシルの含むことのある表現に、ラインハルトは危機感を覚えた。
ビエルサがどこまで理解しているのか不明だが、早くこの言い合いを終わらせなければ。
「いいや無理だ! お前はお子様だろ。ラインハルト様を満足させるのは無理だね!」
「セシル君ッ!」
(ちょちょちょちょちょ)
やはり性的な意味だった。ラインハルトが慌てて制止するが、ヒートアップした彼らは止まらない。
「もしかして性行為の事を言ってるのか? 僕はもうできるぞ!」
「エルッ!?」
(ああああああああああ)
ラインハルトは頭を抱えた。
「へー。俺はもうラインハルト様と何回もしてるぞ」
「合意無しですからね!」
大事な事なので、ラインハルトはすかさず否定した。
「ぼ、僕はまだ1回だけど。先生からしてもらったぞ」
「――え? ラインハルト様……嘘ですよね?」
ビエルサの言葉に、セシルがこの世の終わりのような顔をした。
「嘘じゃない! 抱きしめてもらって、キスだってした」
(嘘じゃないんだけど言い方!)
「ラインハルト様!?」
セシルが悲痛な声で叫ぶ。
「語弊があります……」
セシルに言い訳するのもおかしい気がするが、このままだとショタコン認定されかねない。
ラインハルトがどう説明するか迷っているうちに、セシルは思考を切り替えた。
「くっ、こうなったら勝負だ!」
「勝負!?」
「俺とお前が左右からラインハルト様の乳首を舐め「アウトーーーーーーー!!!!!!」」
(コイツ14歳にとんでもない事言いやがった)
「でもラインハルト様。こういった事は早めにハッキリさせないと!」
「何をどうハッキリさせるんですかッ!?」
「勿論、どちらがよりラインハルト様を気持ち良くさせることができるかです!」
キラキラした笑顔でとんでもない発言をした。
「ずるいぞ! 僕とお前じゃ年齢差があるだろう。色々経験があるお前に有利な勝負じゃないか」
「そんな事はない! 俺の初めての相手はラインハルト様だ!」
(聞きたくなかった!!!)
ラインハルトでセシルは童貞を捨てたようだ。
シグルドが腹を抱えて笑っている。
ラインハルトが手で顔を覆った瞬間を好機と見たセシルが、その左膝に乗り左腕を拘束した。
反射的にビエルサも右側で同じ体勢をとった。
「お互い耳を舐めるだけだ。大事なのは技巧ではなく、相手を思いやる気持ちだ。ラインハルト様の反応をちゃんと観察できている方が、より気持ち良くさせることができるはずだ」
「いいだろう」
「良くないです!」
ラインハルトが座っているのは一人掛けのソファなので横にずれる事ができない。腕を拘束された状態で、両膝に2人分の体重が乗り自力での脱出は不可能。
ここにランスロットが居れば助けてくれたのだろうが、彼はビエルサ達と入れ替わりに部屋を出ていった。
「おや先生、両手に花ですね」
「揶揄わないで、助けてください!」
シグルドはヒーヒー涙を流しながら笑っている。彼に悪友を回収するつもりはないようだ。
トリルは面白がるように見ているだけだし、ゲルスはどうしたら良いのかわからないようでオロオロしている。
「ゲルスさん! 主人が間違った道に進もうとしたら、体を張ってでも止めるのが真の忠義ですよ!」
「そ、そうですよね! ダメですよご主人様!」
「ゲルス。主人に勝手に触れるとは何事ですか。分をわきまえなさい」
「すみませんッ」
「ちょっとトリルさん!?」
折角ゲルスがビエルサを引き剥がそうとしたのに、トリルが叱責した所為で彼は身を退いてしまった。
「先生は今の状況から脱出したいですか?」
「勿論です!」
「では貸しひとつですよ」
ニコリと微笑むと、トリルは問答無用でセシルの首根っこを引っ掴んで持ち上げた。
男を一人片手で持ち上げている。以前も思ったが、細身にも関わらず凄い力だ。
「ビエルサ様もそこまでです」
「邪魔をするな」
「今のビエルサ様のテクニックでは、ペットに舐められている程度の刺激しかありませんよ。先生を気持ち良くさせたいなら相応の準備をしないと」
「ちょっと何言ってるんですか!?」
「ご安心ください先生。主人には真っ当な性教育を施します。是非ビエルサ様の成長を楽しみになさってください」
「本当に何言ってるんですか!!」
おや、とラインハルトは今の会話に違和感を覚えた。
トリルは頑なに「坊ちゃん」呼びしていた筈だが、いつの間にか名前呼びになっている。
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