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ようこそ実力主義のグランピングへ<蛇足編3>
そ、そうきたか〜(後半アウクトルサイド)
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「何だいむさ苦しいメンバーだね。女の一人もいないのかい」
「メルセさん!?」
「アタシもお邪魔して良いかい。花の一つでもあった方が、酒が美味いだろ」
「お前が花ってタマかよ」
アヴァンが突っ込む。
ゼルドナは腕を組んで目を閉じたまま我関せずだ。
「こんなしなやかな野生の花、滅多にお目にかかれるもんじゃないよ」
「あははは。どうします? フォンスさん?」
ダンがフォンスに問いかけた。
「……彼女は世慣れていそうだし、女性の意見も聞けたら嬉しい」
「じゃあ。メルセさんは此方へどうぞ」
「一杯ひっかけて娼館にしけこむんじゃなくて、顔突き合わせて相談事なのかい?」
「ちょ! メルセさん!」
ダンが真っ赤になって否定する。
「彼らにはアウクトルの事で相談乗ってもらいたかったんだ」
「……へぇ」
魔界の住民は基本魔王至上主義だ。魔王関連の相談は慎重にならざるを得ない。
しかし、この街の住民にはその縛りがない。
アウクトルに座標を教えてもらったことで、俺は今後もここへ自力で転移可能だ。
俺は男友達とは別に、何かあった時に相談できる相手が欲しい。
偏見かもしれないが、ダンは純情そうで恋愛経験が豊富には見えない。
ゼルドナは硬派すぎてダンと同レベルな気配がする。
メルセは男女の仲に詳しそうだし、もしかしたらこの中で一番頼りになるかもしれない。
「アウクトルの事で誰かに相談しようと思っても、交友関係を広げていなかったので手詰まりになった事があった。彼は故郷では特別な存在だから、詳細を伏せて彼方の誰かに相談するよりも、この街の君たちに相談する方が忌憚のない意見を聞けると思ったんだ」
「特別って血筋が凄いとか? あの魔術もそれで?」
「血統ではなく彼固有のものだ。彼の能力は故郷で突出している。相談したいのは能力とは関係ない、彼自身の事だ」
「ふぅん。そもそも二人はどういう関係なんだい?」
「出会った切欠は彼を亡き者にしたい人物が、俺に殺させようとしたんだ」
「おいおい物騒だな」
「俺は最初からそのつもりはなかったから、まあ…その人物を騙す形で依頼を引き受けた」
俺の回答が気に入ったのか、アヴァンがヒュウと口を鳴らした。
対照的にダンは不安そうだ。
「それ大丈夫なんですか?」
「問題ない。もしかしたら、この先何かあるかもしれないが、それは俺の責任だ」
「それで? ターゲットだった坊やと接触して、今は仲良しこよしかい?」
「俺はそうありたいと思っている。だがアウクトルの考えが読めなくて困っている」
「結構わかりやすいと思うが」
ずっと聞き役だったゼルドナが口を開いた。
「俺たちが合流してからずっと不機嫌だった。それを隠そうともしていない。あれは仲の良い友達が、他人に取られるのを警戒する子供と一緒だ」
「アンタはもう黙っときな。いいかい、飲み終わるまで口を開くんじゃないよ。これはアンタの為なんだからね」
何故か顔を青くしたメルセが、ゼルドナに酒瓶を押し付けた。
*
「アンタたち、やたら距離が近いけどヤる事やってんだろ?」
「「「ブッ」」」
俺とメルセ以外のメンバーが咽せた。
「肉体関係の事を指しているなら微妙だ」
明け透けかもしれないが、彼女から言い出した事だし特に気にする性格でもなさそうだ。
「微妙って、そんな表現あるのかい?」
あまり吹聴したい内容ではないが、変に隠しては意味がない。
対魔族と違って、何も隠さずに相談できるのが彼らに相談する最大の利点だ。
「俺は性別を変えた状態で彼の子供を産んでいる。性行為で妊娠した」
「「「ングッ」」」
「彼は性別を変えた状態で俺の子供を産んでいる。俺の血液を使って妊娠した」
最早誰も酒に手をつけない、全員驚いた顔で俺を凝視している。
「どちらも必要に迫られてのものだった。俺は気にしていないが、当時の彼は気にしたのかもしれない。今は踏ん切りがついているみたいだが」
「……アウクトルさんは17歳だって言ってませんでした?」
計算が合わないと思ったのだろう。ダンは困惑顔だ。
「そこが難しいところで、俺の子供を産んだのは今のアウクトルと同一と考えて良いが、俺を妊娠させたのは……ええと、彼の本体というか、意識は彼と同一なんだが肉体は別なんだ」
現在本体が休眠状態で、分体が活動していること。意識は共通と話す。
「つまり彼の記憶では肉体関係ありだが、今の体とは実は何もない。子供が存在するので、事情を知る者には内縁関係と認知されている」
「……ちょっと、理解に時間がかかるというか。時間かけても理解できる自信がないです」
「まー、とにかく色々あったって事だろ! 問題は今の悩みと、それをどうするかだ!」
アヴァンが雑にまとめた。
俺が酒に口を付けたので、他の面々もつまみに手を伸ばしたり、飲酒を再開した。
「昨日アウクトルに迫られたんだが、彼は男同士の状態で俺を抱きたいらしい」
「「「ヴグッ」」」
メルセ以外が咽せた。
「……アンタはどうしたんだい?」
「断った」
「どうして?」
「とにかく童貞を捨てるのが目的といった感じで……彼が焦っているように感じたからだ」
「アンタ自身は抱かれる事についてどう思ってるんだい? 気持ち悪い? 嫌?」
実感が湧かない為か、そこまで嫌悪感はない。だが元々性行為に興味がないので、しなくて済むならそれに越したことはない。
「嫌悪感はないが、安易にするべきではないと思っている」
「今回のは安易なのかい?」
「一般的な感覚が分からないんだ。男にとって童貞を捨てる事は、そんなに急を要するというか…大事な事なんだろうか?」
「あー、まあ。そこら辺は人によりけりだな。誰でも良いから早く卒業したいってヤツは確かに多い」
「……僕はいつよりも、誰との方が重要です…」
「随分可愛い事言うじゃないか~」
「ダンの言う誰かって、例の彼女の事だろ?」
「ちょっ、止めてください!」
「……アンタが大事な坊やほっぽり出して、この連中と飲みに行ったのは、坊やの事を相談したかったからなんだね」
「そうだ」
大事とはちょっと違うが、そんな細かい訂正はしなくても良いだろう。面倒だ。
=========
フォンスをターゲットに遠見系の魔術をかけるとバレる。
だからメルセに魔術をかけ、彼女の目を通じてアウクトルは飲み会の様子を盗み見た。
フォンスがメルセに鑑定や解呪をすればアウトだが、そうなる確率は非常に低い。
マリオネット役が優秀なこともあり、難なくアウクトルは目的を遂げた。
フォンスがアウクトル以外の人間と接触しようとしたのは、恋愛相談を行う為だった。
確かにこれはアウクトル本人には言えない。
フォンスには自分以外とは極力関わって欲しくない。
だがアウクトルに関する悩みを、誰かに相談したいといういじらしい想いを棄却するのはあまりに狭量だ。
アウクトルだって、フォンスの事について友人達に意見を求めている。
「メルセさん!?」
「アタシもお邪魔して良いかい。花の一つでもあった方が、酒が美味いだろ」
「お前が花ってタマかよ」
アヴァンが突っ込む。
ゼルドナは腕を組んで目を閉じたまま我関せずだ。
「こんなしなやかな野生の花、滅多にお目にかかれるもんじゃないよ」
「あははは。どうします? フォンスさん?」
ダンがフォンスに問いかけた。
「……彼女は世慣れていそうだし、女性の意見も聞けたら嬉しい」
「じゃあ。メルセさんは此方へどうぞ」
「一杯ひっかけて娼館にしけこむんじゃなくて、顔突き合わせて相談事なのかい?」
「ちょ! メルセさん!」
ダンが真っ赤になって否定する。
「彼らにはアウクトルの事で相談乗ってもらいたかったんだ」
「……へぇ」
魔界の住民は基本魔王至上主義だ。魔王関連の相談は慎重にならざるを得ない。
しかし、この街の住民にはその縛りがない。
アウクトルに座標を教えてもらったことで、俺は今後もここへ自力で転移可能だ。
俺は男友達とは別に、何かあった時に相談できる相手が欲しい。
偏見かもしれないが、ダンは純情そうで恋愛経験が豊富には見えない。
ゼルドナは硬派すぎてダンと同レベルな気配がする。
メルセは男女の仲に詳しそうだし、もしかしたらこの中で一番頼りになるかもしれない。
「アウクトルの事で誰かに相談しようと思っても、交友関係を広げていなかったので手詰まりになった事があった。彼は故郷では特別な存在だから、詳細を伏せて彼方の誰かに相談するよりも、この街の君たちに相談する方が忌憚のない意見を聞けると思ったんだ」
「特別って血筋が凄いとか? あの魔術もそれで?」
「血統ではなく彼固有のものだ。彼の能力は故郷で突出している。相談したいのは能力とは関係ない、彼自身の事だ」
「ふぅん。そもそも二人はどういう関係なんだい?」
「出会った切欠は彼を亡き者にしたい人物が、俺に殺させようとしたんだ」
「おいおい物騒だな」
「俺は最初からそのつもりはなかったから、まあ…その人物を騙す形で依頼を引き受けた」
俺の回答が気に入ったのか、アヴァンがヒュウと口を鳴らした。
対照的にダンは不安そうだ。
「それ大丈夫なんですか?」
「問題ない。もしかしたら、この先何かあるかもしれないが、それは俺の責任だ」
「それで? ターゲットだった坊やと接触して、今は仲良しこよしかい?」
「俺はそうありたいと思っている。だがアウクトルの考えが読めなくて困っている」
「結構わかりやすいと思うが」
ずっと聞き役だったゼルドナが口を開いた。
「俺たちが合流してからずっと不機嫌だった。それを隠そうともしていない。あれは仲の良い友達が、他人に取られるのを警戒する子供と一緒だ」
「アンタはもう黙っときな。いいかい、飲み終わるまで口を開くんじゃないよ。これはアンタの為なんだからね」
何故か顔を青くしたメルセが、ゼルドナに酒瓶を押し付けた。
*
「アンタたち、やたら距離が近いけどヤる事やってんだろ?」
「「「ブッ」」」
俺とメルセ以外のメンバーが咽せた。
「肉体関係の事を指しているなら微妙だ」
明け透けかもしれないが、彼女から言い出した事だし特に気にする性格でもなさそうだ。
「微妙って、そんな表現あるのかい?」
あまり吹聴したい内容ではないが、変に隠しては意味がない。
対魔族と違って、何も隠さずに相談できるのが彼らに相談する最大の利点だ。
「俺は性別を変えた状態で彼の子供を産んでいる。性行為で妊娠した」
「「「ングッ」」」
「彼は性別を変えた状態で俺の子供を産んでいる。俺の血液を使って妊娠した」
最早誰も酒に手をつけない、全員驚いた顔で俺を凝視している。
「どちらも必要に迫られてのものだった。俺は気にしていないが、当時の彼は気にしたのかもしれない。今は踏ん切りがついているみたいだが」
「……アウクトルさんは17歳だって言ってませんでした?」
計算が合わないと思ったのだろう。ダンは困惑顔だ。
「そこが難しいところで、俺の子供を産んだのは今のアウクトルと同一と考えて良いが、俺を妊娠させたのは……ええと、彼の本体というか、意識は彼と同一なんだが肉体は別なんだ」
現在本体が休眠状態で、分体が活動していること。意識は共通と話す。
「つまり彼の記憶では肉体関係ありだが、今の体とは実は何もない。子供が存在するので、事情を知る者には内縁関係と認知されている」
「……ちょっと、理解に時間がかかるというか。時間かけても理解できる自信がないです」
「まー、とにかく色々あったって事だろ! 問題は今の悩みと、それをどうするかだ!」
アヴァンが雑にまとめた。
俺が酒に口を付けたので、他の面々もつまみに手を伸ばしたり、飲酒を再開した。
「昨日アウクトルに迫られたんだが、彼は男同士の状態で俺を抱きたいらしい」
「「「ヴグッ」」」
メルセ以外が咽せた。
「……アンタはどうしたんだい?」
「断った」
「どうして?」
「とにかく童貞を捨てるのが目的といった感じで……彼が焦っているように感じたからだ」
「アンタ自身は抱かれる事についてどう思ってるんだい? 気持ち悪い? 嫌?」
実感が湧かない為か、そこまで嫌悪感はない。だが元々性行為に興味がないので、しなくて済むならそれに越したことはない。
「嫌悪感はないが、安易にするべきではないと思っている」
「今回のは安易なのかい?」
「一般的な感覚が分からないんだ。男にとって童貞を捨てる事は、そんなに急を要するというか…大事な事なんだろうか?」
「あー、まあ。そこら辺は人によりけりだな。誰でも良いから早く卒業したいってヤツは確かに多い」
「……僕はいつよりも、誰との方が重要です…」
「随分可愛い事言うじゃないか~」
「ダンの言う誰かって、例の彼女の事だろ?」
「ちょっ、止めてください!」
「……アンタが大事な坊やほっぽり出して、この連中と飲みに行ったのは、坊やの事を相談したかったからなんだね」
「そうだ」
大事とはちょっと違うが、そんな細かい訂正はしなくても良いだろう。面倒だ。
=========
フォンスをターゲットに遠見系の魔術をかけるとバレる。
だからメルセに魔術をかけ、彼女の目を通じてアウクトルは飲み会の様子を盗み見た。
フォンスがメルセに鑑定や解呪をすればアウトだが、そうなる確率は非常に低い。
マリオネット役が優秀なこともあり、難なくアウクトルは目的を遂げた。
フォンスがアウクトル以外の人間と接触しようとしたのは、恋愛相談を行う為だった。
確かにこれはアウクトル本人には言えない。
フォンスには自分以外とは極力関わって欲しくない。
だがアウクトルに関する悩みを、誰かに相談したいといういじらしい想いを棄却するのはあまりに狭量だ。
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