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1000年前から愛してる
週7日1日6時間シフト
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「それで、俺は何を殺せば良いんだ?」
モチベーションを取り戻した俺は、今回の目的を確認することにした。
「ここでの目的は殺すことではない」
「何かを討伐するために、武装が必要だったんだろう?」
「この戦乱の世では、街中であっても武装は必須だ。解除して良いのは家の中だけと心得よ。武器は生活の糧を得るための道具だ。この時代は魔獣を狩って生活する者が多いからな」
ふむ。物騒だ。一昔前の我が故郷に似ている。
ああ、21世紀ヨーロッパから1000年引いたら、11世紀ヨーロッパだから時代背景としては妥当なのか。
「魔獣なんて魔界にいたか?」
「魔獣は動物から派生した存在だ。分たれた世界でも存在する。魔界では文明レベルが進むにつれ数が減少している。偶に人里に降りてきても即討伐される故ニュースにもならん」
人類の繁栄で野生動物が減少したようなものか。世知辛い。
「この世界で為すべきは、殺すことではなく生むことだ」
何か作るのか。そうなると、俺の仕事は素材集めか?
「四天王を産む」
四天王はアウクトルが生み出した存在。それは知っている。
「確か髪、爪、血、涙だったか…」
「それは偽りの情報だ。とはいえ、俺も記憶が戻るまではそう信じていたがな」
やはりそうか。一度会っただけだが、店に来た彼らはアウクトルとは完全に別存在だった。元が魔王の体なら、もう少し関連性を感じたはず。
「四天王は俺とお前の子だ」
情報処理に数秒かかった。
あまりの衝撃に絶句する俺を置き去りに、彼女は悠々と語る。
「記憶の封印が解けた。俺はこの時代で、お前との間に四天王を作らねばならぬ」
「ちょ、ちょっと待ってくれ!」
「過去に飛んだお前が俺との間に子を成す。これは既に確定している史実だ」
「……」
「ここで四天王が生まれなければ、この先の未来が崩壊する」
「……」
「本来であれば時間をかけたいところだが、その余裕がない。安心しろ、出産は俺がしてやろう。ーーお前はただ俺を抱けば良い」
世界を盾にして、俺に子作りを強要するアウクトル。
ジリジリと詰め寄られる。奴は本気だ。
危険な野生生物に遭遇した人間のように、目を逸らすことなく後退する。
足に何かがぶつかり、目を向けるとベッドだった。
やけにデカい。最初からヤル気満々のようで一台しかない。
背筋を冷たいものが走る。隙ありとみたのか、アウクトルが硬直する俺を押し倒した。
=========
ベッドの上で俺はアウクトルの説得を試みた。
おい服に手をかけるな。
「待て」
不埒な動きをする手を押さえ込む。コイツ、性別が変わっても膂力は健在か。
「協力はする。だが、こんな形は嫌だ」
「ではお前が――」
「そこから離れろ!」
恐ろしいことを言われそうだったので遮る。
「妊娠、出産は命懸けだ。お前に負担を掛けたくはない」
彼女の身を気遣う発言をしたことで、大人しくなった。
1割くらい本音、残り9割は単純にヤリたくないだけ。
「それにお前の精神は男なんだろ?」
顔を手で挟み、此方へ向かせる。しっかりと目を合わせた。
「二人で考えよう」
二人の部分を強調する。
アウクトルの気が削がれたのを察知した俺は、例の必殺技を発動した。
筋肉ホールドだ。今回は俺が下になり、抱き合う形になるが効果は変わらない。
受精の仕組みとか、妊娠のメカニズムとか生物学講義を子守唄に腕の中の存在を寝かしつけた。
勿論俺は寝ない。アウクトルが悪さしないよう、一晩中拘束する必要があるからな。
俺は日本のアニメで色々な発想に触れている。アウクトルの魔術を使えば、クローンとかホムンクルス的なものを組み合わせて上手いことできるんじゃないかと思う。
体外受精、培養を俺は強く希望する!
=========
――魔王城の最下層。重鎮にしか立ち入りを許されないその場所。
四天王と呼ばれる4人の表情は厳しい。
早朝に主君に召集された彼らにもたらされたのは驚愕の事実。
自分達は主君の体の一部から派生した生命ではなく、実子だという事。
それ自体は何にも勝る僥倖なのだが、その後がよろしくなかった。
主君は過去に飛び、伴侶と子をなすと宣言した。
時間遡行魔術は、現在と過去両方から術を維持する必要がある。
どちらかが術を中断することで、過去へ飛んでいた者は現代に戻され、固定されていた時間が動き出すのだ。
過去へ戻った主君は問題ない。彼の魔力であれば何年何百年と単独で術を維持することなど容易。
問題は現代の彼ら四天王。24時間、絶えず魔力を注ぎ続ける必要がある。4人で分担しても1日6時間。
主君が自主的に術を解除するまで耐えなければいけないが、それがいつまで続くのか見当もつかない。デスマーチの始まりだ。
此方側から中断してしまったとき、四天王は三天王になっているかもしれない。
否、妊娠出産には時間がかかる。下手をすると、もっと減る可能性だってある。
平均台の上で命懸けのリレーをするようなものだ。
失敗したら、誰かが消える。
何も一度に全員産む必要はない。主君とその伴侶が仲睦まじければ、分割して過去に飛び子作りすれば良い。
だがその期待は昼間崩れ去った。
最初に言い出したのが誰だったかは思い出せない。
四天王は魔王の伴侶ーー自分達の片親の姿を見ようと、学園内のカフェへ赴いた。
そこで見聞きした驚愕の事実。
フォンスは主君を完膚なきまでに振っていた。彼にその気は一切ない。この先芽生えそうにもない。
騙し討ちしてでも一回で済まさなければ、絶対に二度目はない。
慌てて店を後にした四天王は、満場一致で早急に主君に進言した。
「現代のことは何とかするので、一刻も早く我ら全員を世に送り出してほしい」と。
モチベーションを取り戻した俺は、今回の目的を確認することにした。
「ここでの目的は殺すことではない」
「何かを討伐するために、武装が必要だったんだろう?」
「この戦乱の世では、街中であっても武装は必須だ。解除して良いのは家の中だけと心得よ。武器は生活の糧を得るための道具だ。この時代は魔獣を狩って生活する者が多いからな」
ふむ。物騒だ。一昔前の我が故郷に似ている。
ああ、21世紀ヨーロッパから1000年引いたら、11世紀ヨーロッパだから時代背景としては妥当なのか。
「魔獣なんて魔界にいたか?」
「魔獣は動物から派生した存在だ。分たれた世界でも存在する。魔界では文明レベルが進むにつれ数が減少している。偶に人里に降りてきても即討伐される故ニュースにもならん」
人類の繁栄で野生動物が減少したようなものか。世知辛い。
「この世界で為すべきは、殺すことではなく生むことだ」
何か作るのか。そうなると、俺の仕事は素材集めか?
「四天王を産む」
四天王はアウクトルが生み出した存在。それは知っている。
「確か髪、爪、血、涙だったか…」
「それは偽りの情報だ。とはいえ、俺も記憶が戻るまではそう信じていたがな」
やはりそうか。一度会っただけだが、店に来た彼らはアウクトルとは完全に別存在だった。元が魔王の体なら、もう少し関連性を感じたはず。
「四天王は俺とお前の子だ」
情報処理に数秒かかった。
あまりの衝撃に絶句する俺を置き去りに、彼女は悠々と語る。
「記憶の封印が解けた。俺はこの時代で、お前との間に四天王を作らねばならぬ」
「ちょ、ちょっと待ってくれ!」
「過去に飛んだお前が俺との間に子を成す。これは既に確定している史実だ」
「……」
「ここで四天王が生まれなければ、この先の未来が崩壊する」
「……」
「本来であれば時間をかけたいところだが、その余裕がない。安心しろ、出産は俺がしてやろう。ーーお前はただ俺を抱けば良い」
世界を盾にして、俺に子作りを強要するアウクトル。
ジリジリと詰め寄られる。奴は本気だ。
危険な野生生物に遭遇した人間のように、目を逸らすことなく後退する。
足に何かがぶつかり、目を向けるとベッドだった。
やけにデカい。最初からヤル気満々のようで一台しかない。
背筋を冷たいものが走る。隙ありとみたのか、アウクトルが硬直する俺を押し倒した。
=========
ベッドの上で俺はアウクトルの説得を試みた。
おい服に手をかけるな。
「待て」
不埒な動きをする手を押さえ込む。コイツ、性別が変わっても膂力は健在か。
「協力はする。だが、こんな形は嫌だ」
「ではお前が――」
「そこから離れろ!」
恐ろしいことを言われそうだったので遮る。
「妊娠、出産は命懸けだ。お前に負担を掛けたくはない」
彼女の身を気遣う発言をしたことで、大人しくなった。
1割くらい本音、残り9割は単純にヤリたくないだけ。
「それにお前の精神は男なんだろ?」
顔を手で挟み、此方へ向かせる。しっかりと目を合わせた。
「二人で考えよう」
二人の部分を強調する。
アウクトルの気が削がれたのを察知した俺は、例の必殺技を発動した。
筋肉ホールドだ。今回は俺が下になり、抱き合う形になるが効果は変わらない。
受精の仕組みとか、妊娠のメカニズムとか生物学講義を子守唄に腕の中の存在を寝かしつけた。
勿論俺は寝ない。アウクトルが悪さしないよう、一晩中拘束する必要があるからな。
俺は日本のアニメで色々な発想に触れている。アウクトルの魔術を使えば、クローンとかホムンクルス的なものを組み合わせて上手いことできるんじゃないかと思う。
体外受精、培養を俺は強く希望する!
=========
――魔王城の最下層。重鎮にしか立ち入りを許されないその場所。
四天王と呼ばれる4人の表情は厳しい。
早朝に主君に召集された彼らにもたらされたのは驚愕の事実。
自分達は主君の体の一部から派生した生命ではなく、実子だという事。
それ自体は何にも勝る僥倖なのだが、その後がよろしくなかった。
主君は過去に飛び、伴侶と子をなすと宣言した。
時間遡行魔術は、現在と過去両方から術を維持する必要がある。
どちらかが術を中断することで、過去へ飛んでいた者は現代に戻され、固定されていた時間が動き出すのだ。
過去へ戻った主君は問題ない。彼の魔力であれば何年何百年と単独で術を維持することなど容易。
問題は現代の彼ら四天王。24時間、絶えず魔力を注ぎ続ける必要がある。4人で分担しても1日6時間。
主君が自主的に術を解除するまで耐えなければいけないが、それがいつまで続くのか見当もつかない。デスマーチの始まりだ。
此方側から中断してしまったとき、四天王は三天王になっているかもしれない。
否、妊娠出産には時間がかかる。下手をすると、もっと減る可能性だってある。
平均台の上で命懸けのリレーをするようなものだ。
失敗したら、誰かが消える。
何も一度に全員産む必要はない。主君とその伴侶が仲睦まじければ、分割して過去に飛び子作りすれば良い。
だがその期待は昼間崩れ去った。
最初に言い出したのが誰だったかは思い出せない。
四天王は魔王の伴侶ーー自分達の片親の姿を見ようと、学園内のカフェへ赴いた。
そこで見聞きした驚愕の事実。
フォンスは主君を完膚なきまでに振っていた。彼にその気は一切ない。この先芽生えそうにもない。
騙し討ちしてでも一回で済まさなければ、絶対に二度目はない。
慌てて店を後にした四天王は、満場一致で早急に主君に進言した。
「現代のことは何とかするので、一刻も早く我ら全員を世に送り出してほしい」と。
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