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1000年前から愛してる

盗撮ダメ絶対(アウクトルサイド)

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 Q.友人が盗撮に手を染めていたらあなたはどうする?

 模範解答は「やめるよう説得する」「自首させる」。
 現実だと、薄情だが「友人付き合いを止める」が最も多いかもしれない。


 トーレ、アウクトル、アミの3人は幼馴染だ。
 母親同士が産院で意気投合し、公園デビューも一緒だった。
 派閥で言えば、トーレは中立派に当たる。
 彼がアウクトルの正体を知ったのは、幼稚舎に入ったばかりの頃だ。

 公園で遊んでいたら、四天王・血のヴィルトシャフトが現れた。
 転移で突然現れたヴィルトシャフトは、号泣しながらアウクトルの前に跪いた。
 いずれ分体を作り出す事を、魔王は眠りにつく前に四天王に告げていた。しかし何時、誰の子としてなどの詳しい情報は与えなかった。分体の気配を探し続けていたヴィルトシャフトは、漸く感知した主君の魔力の片鱗に我慢できず突撃訪問したのだ。
 男泣きする四天王。驚いて泣き出すアミ。不審者におもちゃのスコップで殴りかかるトーレ。玉座に座るかのようにブランコに腰掛けて四天王を見下ろすアウクトル。
 まさに混沌カオス

 いつも共に行動する2人には説明すべきと判断したアウクトルは、自ら自身の身の上を明かした。
 普通なら与太話と流されそうなものだが、幼い頃からアウクトルは普通ではなかった。
 威厳を取り戻したヴィルトシャフトが背後に控えていたこともあり、トーレとアミは彼の話を信じた。

「アール。昼休みに時間をくれ。二人で話したいことがある」
「ふむ。俺もお前に聞きたいことがある。丁度良い」

 共に育ったと言っても過言ではないトーレにとって、アウクトルは魔王である前にかけがえの無い幼馴染なのだ。
 そんな彼が盗撮をしている。本人に罪の意識はない。
 アウクトルを説得できるのは自分だけだ。

 =========

「アール。単刀直入に言うぞ。盗撮を止めろ」
「何故だ?」

 寧ろ何故大丈夫だと思うのか。早くもトーレの心が折れそうになる。

「相手の人権を無視している。お前だって、知らないうちに一方的にプライベートを暴かれたら嫌だろ?」
「フォンスは装飾品の機能を把握した上で、容認して装着している」
「何だって!?」

 色々な意味で驚きだ。
 フォンスというのはカフェの店長だ。異世界人でアウクトルが後見人をしている。果たして後見人という立場は、監視を行う権利を有していたか。トーレの常識が揺らぐ。

「お前たちには言っていなかったが、俺とフォンスは恋人同士だ」
「ちょ、ちょっと待ってくれ。理解が追いつかないっ」

 立て続けに特大の爆弾が打ち込まれた。

「驚くのも無理はない。本当はもっと早く報告したかったのだが、学園の生徒と付き合っていることが知れるのは、彼奴の為にならぬと思ったのだ」

 既にアウクトルと付き合っているため、以前フォンスは「生徒と付き合わない」という誓約魔術を持ちかけられたが拒否をした。
 しかし、その場で生徒に手を出さないことを宣言してしまったのは不味かった。
 アウクトルの友人たちが、彼の不利になることをするとは思えないが、秘密を知る人間が増えるに従い情報漏洩の危険は高まる。
 そんなつもりはなくても、何かの拍子に秘密が漏れないとも限らないのだ。

「全て合意の上だ。問題ない」
「何を考えているんだ…」

 トーレは米神に手を添えた。頭痛がしてきた。

 独自の価値観で動くアウクトル。それでも長い付き合いなので、トーレはそれなりに彼の為人を把握しているつもりだった。しかしその自信は今にも儚く崩れ去りそうだ。

 フォンスにしてもそうだ。一度しか会っていないが、スマートで理性的な人物だと感じたのは錯覚だったのか。
 年齢差とか、性別とか色々言いたいことはあるけど、恋は理屈でするものじゃない。社会人の立場なら節度を持って欲しいが、付き合うこと自体は理解できる。

 しかし盗撮の容認は理解し違い。
 異世界では一般的なのか? それとも特殊なプレイなのか?

 =========

「お前の話は以上か? では、次は俺の番だな」

 悶々とする幼馴染をスルーして、アウクトルは話を続ける。

「お前とシェリは仲睦まじいな」
「え? ああ」
「どうやっているのだ」
「え?」
「お前たちは、側から見て恋人同士とわかる甘い空気を纏っている」
「そう見えているなら嬉しいけど…」
「その手段を知りたい」

 学園を卒業するまで、恋人関係であることを隠し続けるつもりだったアウクトルだったが、今朝盗み見た一幕で考えを改めた。
 あれは害虫だ。駆除せねばならない。
 一匹排除しただけでは意味がない。時間が経てば新たな害虫が現れるだろう。
 害虫の駆除に一番効果的なのは、フォンスが誰のものか知らしめることだ。

 そもそも魔王であるアウクトルが周囲に配慮していたのがおかしかったのだ。彼が是と言えば、性別も、社会的立場も問題にすらならない。
 手始めに友人に事情を明かし、周囲に恋人同士だと知らしめる手法を取得しよう。

 =========

「……アール。フォンスさんと本当に付き合ってるんだよな?」
「そうだ」

 自信満々だが、質問内容と矛盾している。

「二人はその…、どこまでいってるんだ?」

 気が進まないが、トーレは確認した。

「肉体関係がある」
「ん”!!?」

 想像以上だった。キスの次に進むタイミングを図りかねているトーレよりも、何ステップも先を行っている。

「…その関係になったのは、い…いつごろ…?」

 トーレの中で好奇心が優った。参考にしたい。

「出会った日だ」
「!!!」

 手が早過ぎる。相手が歳上だからか? そうなのか?

「今までは店で二人で過ごすことが多かったので気にならなかったが、我が家でフォンスが同居した際に違和感があった」

 カフェが倒壊した為、フォンスがアーヴォ家に居候したことは周知の事実だ。
 同居と居候の違いって何だろうな、とトーレの思考が逸れた。現実逃避とも言う。

「同居中、恋人らしい触れ合いが全く無かった」
「……」
「指輪を作成したのだが、あまり嬉しそうでは無かった」
「指輪の習慣って、男同士だとどうなるんだ…?」

 口から思わず疑問が漏れた。

「お互いに贈り合った。俺たちは対等だからな」
「そ、そうなのか」

 余計な知識を得てしまった。
 今後指輪をした男性を見かけたら、邪推してしまいそうだ。

 …
 ……
 ………

 アウクトルの視線が突き刺さる。
 長い付き合いなので、トーレは彼が何を望んでいるのが察してしまった。

「…………僕も気になるし、フォンスさんと話してみるよ」
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