魔王君と俺 〜婚活から逃げて異世界へ行ったら、初日からヤバいのに誤解されてゴールインした件〜

一一(カズイチ)

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BLカテで乙女ゲーとか誰得

見える子ちゃん

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 昨日地図を手に入れたが、外交に興味のない国なだけあって一大陸しか載っていなかった。
 俺たちが欲しているのは世界地図。あと1000年以上前の事が書かれた歴史書。

 世界が分たれる前に起きた出来事は魔界・人界共通の筈。人間にとって1000年は長いが、魔族にとっては祖父の幼い頃レベルの時間軸らしい。当然シューラは1000年前くらいの出来事であれば知っている。
 神話とか御伽噺のジャンルでも良いので、1000年以上昔の出来事が書かれている資料が欲しい。

 朝食の席でシューラが溢したら、昨日のお詫びをしにきたツヴァイが快く請け負った。
 昨日まで神経質でシニカルな感じだったのに、今日は清々しい忠犬になっていた。一夜でキャラ変とかヤバいな。
 流石イージー。
 好感度30%で、スチル未回収でも攻略成功したらしい。

 =========

 この世界について判断できるまで、少しだけ浄化に協力するつもりだったが話が変わった。
 生命に危険が及ぶなら、1回たりともシューラに儀式を行わせるつもりはない。
 今日も彼女にはしっかり影がついている。
 しまった。どうやって監視の目を掻い潜り、作戦会議するか考えてなかった。

 =========

「聖女様におかれましては、ご機嫌麗しゅう。この城にはもう馴れまして?」

 俺はメアリー王女に協力を求めた。

 昨日の時点で感じたのだが、彼女の言動は芝居がかっている。絶対演劇好きだ。
 今もノリノリで、庭で聖女に絡む悪役令嬢を演じてくれている。隙のない縦ロールが陽光で輝いている。
 建物の中だと影が隠れる場所が豊富なので、拓けた庭で作戦開始。
 離れた場所から口の動きを読まれないため、王女付きの侍女達が俺たちを取り囲むように体でバリケードを作成。俺は頭突き出してるけど、口元誤魔化すくらい朝飯前なので無問題。
 これなら普通に集団いじめにしか見えない。
 素晴らしいよメアリー。君の評判は落ちるだろうけど、俺は君を尊敬する。


「儀式のことなら大丈夫だと思うわ。だって瘴気って魔素なんだもの」

 はい。ここに来て知らない単語が出てまいりました。
 シューラは魔素が見える特異体質の持ち主らしい。

 魔素と魔力は似て異なるもの。
 魔力は生命が内包するエネルギー。魔素は大気中に漂うエネルギー。
 どちらもエネルギーだが魔力は炎、魔素は風のような存在。
 魔力は視認が容易だが、魔素は困難。
 彼女が知る限り、魔界で魔素を感知できるのはシューラとアウクトルのみ。
 実は魔界にも魔素は存在するらしい。しかし魔族は元々魔力が高いので、魔素を扱うメリットが少ない。研究者も数えるほどしか居ない超マイナー分野。

 シューラ曰く、この国の人は魔素を取り込んで己の魔力にしているらしい。
 魔力が高い人=魔素を取り込む回路が発達している人。
 魔素を多く取り込むので色素が濃くなるのではないか、というのが彼女の見立て。

 大結界にしても、シューラとその他では見えるものが違う。
 俺には地上から50mくらいの高さまでオーロラが輝いているように見えるのだが、彼女は何枚もの魔素のベールで構築された壁に見えるらしい。

 匂いに濃淡があるように、大気中の魔素にも濃淡がある。不自然に濃い方角があるので、おそらくその先に浄化で周る神殿があると予測。

「ここで話していても時間の無駄だし、一番近い神殿に行って確かめたいわ」

 旅の仲間を誰一人同行しない状態で、聖女様は俺と王女御一行を連れて出発した。
 本当ヒロインムーブできない子だよ。

 =========

 移動手段が馬車だったので、神殿に到着したのは昼過ぎ。
 宗教活動用の拠点ではなく、浄化のために作られた神殿なので人気はない。
 屋内には俺たちしかいない。足音が響く。
 神殿内に入ってからは、シューラが先頭だ。彼女には俺たちに見えないものが見えている。

「魔素が濃いのはこの下ね」

 彼女が指差したのは、礼拝堂の一画。手分けして捜索したら、隠し扉があった。

「オニキス?」

 光源がないので、一瞬見間違えたがそれは真っ黒な瞳だった。
 今しがた抉り出したばかりと言われても良いほど瑞々しいため、暗い屋内でも光を反射したのだ。
 一対の瞳が聖遺物のように箱に収められていた。
 瞳から染み出したように黒い粘液が箱に広がっている。

 鑑定スキルを作動し、複数の呪いを感知。
 瞳の経年劣化を防ぎ、瞳から抽出したエネルギーを神殿内の魔道具へ供給させるのが目的だったようだ。

「とりあえず呪いを解くか」

 解呪スキルを発動して、眼を手に取る。

「ちょっと! 何普通に触ってるのよ!」

 シューラが叫ぶ。他の面々も同じ気持ちなのか、俺から一歩距離を置いた。

「直ではない。手袋を洗えば問題ない。それより魔素はどうだ?」
「解呪した瞬間に、安全域まで下がったわ。ちょっと待って…」

 気づいた事があったのか、シューラが小走りで窓に向かった。

「大結界のベールが薄くなったわ」
「つまりこの瞳は大結界を維持する動力源であると同時に、魔素の発生源か」

 メアリーが息を呑む。
 この瞳は黒。大結界を作った宵闇の魔法使い。瘴気を放つ魔の者の呪い。どこがスタートなんだろうな。

 手にした眼をどうするか一瞬迷ったが、<収納空間>にしまった。
 シューラが信じられないものを見る目で俺を見た。

「あの瞳はもう無害だ。後で埋葬したい」

「……そこに食べ物入れてなかった?」

「独立した空間だから、収納物が相互に影響を与えることはない」

 危ない。カフェの衛生管理を疑われてた。
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