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ボーイ(28)・ミーツ・ボーイ(17)
誠に遺憾である(アウクトルサイド)
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魔王の分体アウクトル・アーヴォはこの日、自分の運命に出会った。
この世に誕生した時から魔族の王として君臨していた彼は、魔族にとって唯一絶対であるが故に孤高の存在であり、他の種族からは脅威として遠ざけられていた。
複数の種族が世界を共有するには、この世界はあまりに狭く、特に神族と魔族の力は強すぎた。
隔絶した力を持つが故に、他の種族たちを意志ある存在とは認めず、その振る舞いに大小様々な悲劇が生まれた。
魔族は魔王アウクトル・ゲネリスを頂点とする完全縦組織で、魔王の方針に絶対服従なため、ある程度はコントロール可能だが神族はそうではない。
寧ろ、自分達に勝れども劣る事はない魔王という存在に積極的に反発する姿勢を見せていた。
最初は力の格差を少しでも埋めるため、特に弱いとされた人間と獣人に魔術や科学技術の手解きをした。
しかし、悪魔の取引と異種族への干渉と言われ、間も無く人間の間では魔女狩りが始まってしまった。
次は婚姻による融和政策を試した。
混血の子供が増えることで種族の垣根を越えた友愛と新しい文化の形成を目指した。
これは最初の試みよりも、もっと早い段階で失敗した。
魔王至上主義の魔族からも反発があった、理由は魔王至上主義だからだ。
まず彼等魔族にとって魔王というのは、実在する唯一神であり秩序であり魂の父である。
ブレることなく、明確な絶対者だ。
しかし、他の種族にその感覚はない。
考えてみてほしい。美男美女が接近してきて、親しくなったら宗教活動を強いて来るようなものである。
詐欺だと思って目が覚めるか、本人が愛のために「魔王教」への宗旨替えを決断しても親しい人間が止めに入る。魔族と親しくする人間は悪魔付き扱いされ、拷問まがいの悪魔祓いが流行した。
加えて人間と友好関係を築こうとした魔族は、軒並み淫魔扱いされた。
「魔王様の言葉は絶対!」を標榜する魔族。そんな彼らだが、当時は側近達が魔王へ決死の覚悟で諫言した。
市民階級の魔族たちから「魔王様の素晴らしさを理解しない輩と家庭を築くことなど不可能」と多数苦情が寄せられたためだ。
視点を変え、底上げが難しいなら、上位種のレベルを下に下げようとした事もあった。
これは神族のみならず、精霊やエルフからも激しく抵抗された。
持っているものを手放すのは嫌らしい。
それが他所の種族の提案なら尚更。
種族に捉われない平和な世界。
ラブアンドピースを志していた魔王だが、最後に残った結論は「相互不干渉が一番平和」だった。
一枚の世界を分断すると、面積や立地で文句が出ると思ったので、お互いに一つずつ世界を持てるようにした。完全にイーブンだ。
分断後はイーブンになる予定なので、実行は独断専行した。
事前に了承を得ようとしても、何だかんだと反発されるのが目に見えているからだ。
こうして魔族は魔界という魔族だけの世界を手に入れて1000年。要石である魔王は、その体は眠りについたままだが脳は活動しており定期的に各世界を魔眼で確認している。
=========
術を発動した当初は、世界を元に戻そうとする動きもあったが今はだいぶ沈静化した。
寿命の短い人間と獣人は世代の入れ替わりが激しいため、当時の記憶を持つ者は須く天寿を全うした。
残ったのは幾つかの歴史書のみ。
魔界や神界の事など絵空事だと考える者が大半で、今や自分達の世界を満喫し、独自の文明を目まぐるしく進化させている。
他の種族に比べ適応能力が高く、変化を恐れないのが彼らの強みだ。
精霊は元より他者への興味関心が薄く、単独で存在する生命体なので積極的に既に確立された生活を変えようとはしていない。
エルフは精霊から派生した存在なので、基本性質は同じだ。
自分達のコミュニティでゆったりと変化はないが穏やかでそれなりに満ち足りた生活を送っている。
幸福度が高く、満たされることを知っているのが彼らの強みだ。
ここに至り、魔王は自分も平和な世の中を謳歌したくなった。
自分が体を張って実現した平和な世界だ。
臣下たちの暮らしぶりをみて自分も同じように過ごしたいと思うのは当然の流れだ。
最初の数百年は慣れない大規模魔術の維持にリソースを取られていたが、長年やっていれば慣れる。
省エネモードに切り替え、余剰分の魔力で作り上げたのがアウクトル・アーヴォという存在だ。
彼が魔王の分体であることを知るのは、四天王を始めとする一部の高位魔族だけだ。
魔王が魔族にとって絶対的な存在である故に、分体に対する解釈は側近たちでも分かれており混乱を避けるために秘することになった。
但しアウクトル・アーヴォは見た目も性格も、本体であるアウクトル・ゲネリスと全く同じ。
謙虚さなど皆無、基本超上から目線。
圧倒的な魔力を躊躇なくバンバン使用する。
自重という単語は彼の辞書にはない。
経緯を知らない魔族からは「魔王様に似てるからってイキってるクソ野郎」もしくは「魔王様みたいで素敵、羨ましい」と両極端な評価をされているので、公表しないという配慮はあまり意味をなしていない。
未だに魔王を警戒しているのは神だけだが、まさか神がアウクトルに伴侶をもたらすとは。
意図したことではないとはいえ、魔王を目の敵にする連中が彼が最も喜ぶ贈り物をしたのだ。
アウクトルは生まれて初めて、神という要らない事しかしない厄介な存在に感謝してやっても良いと思った。
この世に誕生した時から魔族の王として君臨していた彼は、魔族にとって唯一絶対であるが故に孤高の存在であり、他の種族からは脅威として遠ざけられていた。
複数の種族が世界を共有するには、この世界はあまりに狭く、特に神族と魔族の力は強すぎた。
隔絶した力を持つが故に、他の種族たちを意志ある存在とは認めず、その振る舞いに大小様々な悲劇が生まれた。
魔族は魔王アウクトル・ゲネリスを頂点とする完全縦組織で、魔王の方針に絶対服従なため、ある程度はコントロール可能だが神族はそうではない。
寧ろ、自分達に勝れども劣る事はない魔王という存在に積極的に反発する姿勢を見せていた。
最初は力の格差を少しでも埋めるため、特に弱いとされた人間と獣人に魔術や科学技術の手解きをした。
しかし、悪魔の取引と異種族への干渉と言われ、間も無く人間の間では魔女狩りが始まってしまった。
次は婚姻による融和政策を試した。
混血の子供が増えることで種族の垣根を越えた友愛と新しい文化の形成を目指した。
これは最初の試みよりも、もっと早い段階で失敗した。
魔王至上主義の魔族からも反発があった、理由は魔王至上主義だからだ。
まず彼等魔族にとって魔王というのは、実在する唯一神であり秩序であり魂の父である。
ブレることなく、明確な絶対者だ。
しかし、他の種族にその感覚はない。
考えてみてほしい。美男美女が接近してきて、親しくなったら宗教活動を強いて来るようなものである。
詐欺だと思って目が覚めるか、本人が愛のために「魔王教」への宗旨替えを決断しても親しい人間が止めに入る。魔族と親しくする人間は悪魔付き扱いされ、拷問まがいの悪魔祓いが流行した。
加えて人間と友好関係を築こうとした魔族は、軒並み淫魔扱いされた。
「魔王様の言葉は絶対!」を標榜する魔族。そんな彼らだが、当時は側近達が魔王へ決死の覚悟で諫言した。
市民階級の魔族たちから「魔王様の素晴らしさを理解しない輩と家庭を築くことなど不可能」と多数苦情が寄せられたためだ。
視点を変え、底上げが難しいなら、上位種のレベルを下に下げようとした事もあった。
これは神族のみならず、精霊やエルフからも激しく抵抗された。
持っているものを手放すのは嫌らしい。
それが他所の種族の提案なら尚更。
種族に捉われない平和な世界。
ラブアンドピースを志していた魔王だが、最後に残った結論は「相互不干渉が一番平和」だった。
一枚の世界を分断すると、面積や立地で文句が出ると思ったので、お互いに一つずつ世界を持てるようにした。完全にイーブンだ。
分断後はイーブンになる予定なので、実行は独断専行した。
事前に了承を得ようとしても、何だかんだと反発されるのが目に見えているからだ。
こうして魔族は魔界という魔族だけの世界を手に入れて1000年。要石である魔王は、その体は眠りについたままだが脳は活動しており定期的に各世界を魔眼で確認している。
=========
術を発動した当初は、世界を元に戻そうとする動きもあったが今はだいぶ沈静化した。
寿命の短い人間と獣人は世代の入れ替わりが激しいため、当時の記憶を持つ者は須く天寿を全うした。
残ったのは幾つかの歴史書のみ。
魔界や神界の事など絵空事だと考える者が大半で、今や自分達の世界を満喫し、独自の文明を目まぐるしく進化させている。
他の種族に比べ適応能力が高く、変化を恐れないのが彼らの強みだ。
精霊は元より他者への興味関心が薄く、単独で存在する生命体なので積極的に既に確立された生活を変えようとはしていない。
エルフは精霊から派生した存在なので、基本性質は同じだ。
自分達のコミュニティでゆったりと変化はないが穏やかでそれなりに満ち足りた生活を送っている。
幸福度が高く、満たされることを知っているのが彼らの強みだ。
ここに至り、魔王は自分も平和な世の中を謳歌したくなった。
自分が体を張って実現した平和な世界だ。
臣下たちの暮らしぶりをみて自分も同じように過ごしたいと思うのは当然の流れだ。
最初の数百年は慣れない大規模魔術の維持にリソースを取られていたが、長年やっていれば慣れる。
省エネモードに切り替え、余剰分の魔力で作り上げたのがアウクトル・アーヴォという存在だ。
彼が魔王の分体であることを知るのは、四天王を始めとする一部の高位魔族だけだ。
魔王が魔族にとって絶対的な存在である故に、分体に対する解釈は側近たちでも分かれており混乱を避けるために秘することになった。
但しアウクトル・アーヴォは見た目も性格も、本体であるアウクトル・ゲネリスと全く同じ。
謙虚さなど皆無、基本超上から目線。
圧倒的な魔力を躊躇なくバンバン使用する。
自重という単語は彼の辞書にはない。
経緯を知らない魔族からは「魔王様に似てるからってイキってるクソ野郎」もしくは「魔王様みたいで素敵、羨ましい」と両極端な評価をされているので、公表しないという配慮はあまり意味をなしていない。
未だに魔王を警戒しているのは神だけだが、まさか神がアウクトルに伴侶をもたらすとは。
意図したことではないとはいえ、魔王を目の敵にする連中が彼が最も喜ぶ贈り物をしたのだ。
アウクトルは生まれて初めて、神という要らない事しかしない厄介な存在に感謝してやっても良いと思った。
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