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ボーイ(28)・ミーツ・ボーイ(17)
勘違いコスプレ野郎
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【悲報】英雄さん、異世界デビューに失敗してしまう。
転移後、目を開けた瞬間に黒歴史が確定した。
転移時、あちらの世界が夜だったので、転移後も無意識に夜だと思い込んでた。
魔界、真っ昼間。太陽の位置からすると、多分16時くらい。
更にこれもまた無意識というか、勝手な思い込みだが、異世界転移なんて人目を避けて森の中とか人里離れた場所に到着するように設定するものだと思ってたけど違った。
設定された座標、魔王の分体の真正面だった。
神っぽいアレは、俺のことを視認するなりターゲットに切り掛かるようなヤバい奴だと思ってるの?
もしくは探す手間を省かせるため、親切のつもりなの?
馬鹿なの? 頭おかしいの?
次会う事があれば、目潰ししようと思う。
神族の思考回路が独特なのか、スカウトマン個人の問題なのかはわからないけど、彼等とは分かり合える気がしない。
=========
今俺が立っているのは高等学校の正門前。
若者達の視線が突き刺さって痛い。
一番痛いのは目の前の魔王君の視線だけど。
お前瞬きしてないんじゃない?
瞬きの刹那に襲いかかったりしないから、普通にしてて良いんだよ。いや、無理か。
魔界の説明時に神とか魔王とかファンタジーワード連呼されたので、ファンタジーな文明を想像していた。
実際俺を勧誘しにきたヤツは、そっち系の格好をしていた。
他人に言われるがまま魔王と戦う気なんてこれっぽっちも無かったけれど、未知の世界に行くからには、自衛の為武装した方が良かろうと思うのは至極真っ当な考えだと思う。
お金持ちな幼馴染その2にもらった軽装鎧を着てきたが、猛烈に後悔している。
今すぐ脱ぎたいけど、それをしたら不審者から変質者にシフトするのでフードを深く被って耐える。
金持ちからのプレゼントなだけあって、今着用している装備は高機能高品質。細かな細工が入った手間暇と金を掛けたオーダーメイド。
幻想獣の骨をフレームに使用し、最高級の古代種の皮で加工。艶消しした金で意匠を凝らしたデザインを描いている。
俺の容姿と色調をあわせて茶色ベースだが、上品な仕上がりなのでそこまで地味に見えない。
しかしながら魔界は、21世紀ヨーロッパな社会だった。
俺の住んでた世界より、ちょっとどころかかなり近代化進んでる。何だか負けた気分だ。
もしかしたらトイレの便座温かいかもしれない。
=========
下校時刻にかち合わせたようで、俺のことチラチラ見ながら生徒達が通り過ぎていく。
明日の朝、職員室で不審者の目撃情報が話題にされるんだろうな。
女子は膝丈プリーツスカートのワンピース、靴はローファー。
男子はブレザーにスラックス。
男女共に白を基調としているが、モノトーンのチェックやライトグレーの配分が多いので、全体的に明るく爽やかな印象を与えつつ、汚れが目立ちにくい。
機能性とデザイン性を両立させた制服で羨ましい。
母国の騎士服とは大違いじゃないか。
彼等にとって俺は突如として現れたコスプレ男。視線が痛い。
逆の立場だったら、同じように見ちゃうと思う。
学校前に変な人がいるの気になるよね、迷惑だよね。
俺の見立てではここは10代後半の学生が通う学舎。
まだ20代だけど、若者にとって俺は立派なおっさん。
俺の正面で、軽く驚いたような表情で此方を凝視している魔王君。
名乗らなくても分かる。彼が魔王の分体だ。
真紅の瞳、黒髪で精悍な顔立ちの持ち主。いかにも魔王らしい色彩で、何より魔力が桁違い。
魔力感知モードを発動すると明白なのだが、道ゆく人々は人魂のような揺らめくエネルギーを体内に内包している。魔力の性質や、量を現しているのかエネルギーのサイズや色は個人差がある。
目の前の青年は有り余るエネルギーを何とか無理やり人間サイズに凝縮した結果、歩く原子力発電所みたいな状態になってる。
普通に怖いな。
昼下がりのコスプレ野郎こと、異世界から来た刺客である俺は、男子高校生な魔王君に礼儀正しく名乗った後で場所を変えることを提案した。
人気がなければどこでも良いよ!
=========
魔王君はアウクトル・アーヴォと名乗った。
俺と彼は、街の中心地にある公園へ移動した。
平日の午後だが、天気が良いおかげか入り口付近の芝広場にはそれなりに人が居た。
敷地の中に小さな森があるくらい広いので、奥まった場所にいけば人気はない。
視界が悪く、夜は街灯が届かない場所なんて犯罪行為を誘発しそうなものだが、魔族にとって性差は身体能力に影響しないらしい。
外見から強さを測ることは困難なので、弱者を狙う通り魔的な犯行は滅多に起こらないようだ。
俺たちは池の側にあるベンチに並んで座った。
ベンチは池を取り囲むように、3ヶ所設置されており、俺たちの他にカップルが1ヶ所使用中。
カップルは池を挟んで対角線上に座っているので結構距離がある。
俺は彼らの服のボタンの数までハッキリ見えるけど、魔族の視力を人間と同等と仮定すると、向こうは俺たちの顔なんて分かりやしない。
俺の服装も、茶色くてゴチャゴチャしてるくらいの認識だと思う。
どうぞこちらの事は気にせず、イチャイチャ見つめ合うか、どこか別の場所に行ってください。
俺たちは絶対移動しないから!
ここは良い場所だ。
金がかからないし(俺は現地通貨持ってない)、斜め向かいのカップルが例外なだけで、ひらけた場所でありながら周囲を絶妙に木が覆い隠してくれて人目を避けられる。
マイナスポイントを挙げるとすれば、二人掛けのベンチなので隣との距離が近いところ。
パーソナルスペースゴリゴリ侵略されてる。
初対面の距離感じゃない。
転移後、目を開けた瞬間に黒歴史が確定した。
転移時、あちらの世界が夜だったので、転移後も無意識に夜だと思い込んでた。
魔界、真っ昼間。太陽の位置からすると、多分16時くらい。
更にこれもまた無意識というか、勝手な思い込みだが、異世界転移なんて人目を避けて森の中とか人里離れた場所に到着するように設定するものだと思ってたけど違った。
設定された座標、魔王の分体の真正面だった。
神っぽいアレは、俺のことを視認するなりターゲットに切り掛かるようなヤバい奴だと思ってるの?
もしくは探す手間を省かせるため、親切のつもりなの?
馬鹿なの? 頭おかしいの?
次会う事があれば、目潰ししようと思う。
神族の思考回路が独特なのか、スカウトマン個人の問題なのかはわからないけど、彼等とは分かり合える気がしない。
=========
今俺が立っているのは高等学校の正門前。
若者達の視線が突き刺さって痛い。
一番痛いのは目の前の魔王君の視線だけど。
お前瞬きしてないんじゃない?
瞬きの刹那に襲いかかったりしないから、普通にしてて良いんだよ。いや、無理か。
魔界の説明時に神とか魔王とかファンタジーワード連呼されたので、ファンタジーな文明を想像していた。
実際俺を勧誘しにきたヤツは、そっち系の格好をしていた。
他人に言われるがまま魔王と戦う気なんてこれっぽっちも無かったけれど、未知の世界に行くからには、自衛の為武装した方が良かろうと思うのは至極真っ当な考えだと思う。
お金持ちな幼馴染その2にもらった軽装鎧を着てきたが、猛烈に後悔している。
今すぐ脱ぎたいけど、それをしたら不審者から変質者にシフトするのでフードを深く被って耐える。
金持ちからのプレゼントなだけあって、今着用している装備は高機能高品質。細かな細工が入った手間暇と金を掛けたオーダーメイド。
幻想獣の骨をフレームに使用し、最高級の古代種の皮で加工。艶消しした金で意匠を凝らしたデザインを描いている。
俺の容姿と色調をあわせて茶色ベースだが、上品な仕上がりなのでそこまで地味に見えない。
しかしながら魔界は、21世紀ヨーロッパな社会だった。
俺の住んでた世界より、ちょっとどころかかなり近代化進んでる。何だか負けた気分だ。
もしかしたらトイレの便座温かいかもしれない。
=========
下校時刻にかち合わせたようで、俺のことチラチラ見ながら生徒達が通り過ぎていく。
明日の朝、職員室で不審者の目撃情報が話題にされるんだろうな。
女子は膝丈プリーツスカートのワンピース、靴はローファー。
男子はブレザーにスラックス。
男女共に白を基調としているが、モノトーンのチェックやライトグレーの配分が多いので、全体的に明るく爽やかな印象を与えつつ、汚れが目立ちにくい。
機能性とデザイン性を両立させた制服で羨ましい。
母国の騎士服とは大違いじゃないか。
彼等にとって俺は突如として現れたコスプレ男。視線が痛い。
逆の立場だったら、同じように見ちゃうと思う。
学校前に変な人がいるの気になるよね、迷惑だよね。
俺の見立てではここは10代後半の学生が通う学舎。
まだ20代だけど、若者にとって俺は立派なおっさん。
俺の正面で、軽く驚いたような表情で此方を凝視している魔王君。
名乗らなくても分かる。彼が魔王の分体だ。
真紅の瞳、黒髪で精悍な顔立ちの持ち主。いかにも魔王らしい色彩で、何より魔力が桁違い。
魔力感知モードを発動すると明白なのだが、道ゆく人々は人魂のような揺らめくエネルギーを体内に内包している。魔力の性質や、量を現しているのかエネルギーのサイズや色は個人差がある。
目の前の青年は有り余るエネルギーを何とか無理やり人間サイズに凝縮した結果、歩く原子力発電所みたいな状態になってる。
普通に怖いな。
昼下がりのコスプレ野郎こと、異世界から来た刺客である俺は、男子高校生な魔王君に礼儀正しく名乗った後で場所を変えることを提案した。
人気がなければどこでも良いよ!
=========
魔王君はアウクトル・アーヴォと名乗った。
俺と彼は、街の中心地にある公園へ移動した。
平日の午後だが、天気が良いおかげか入り口付近の芝広場にはそれなりに人が居た。
敷地の中に小さな森があるくらい広いので、奥まった場所にいけば人気はない。
視界が悪く、夜は街灯が届かない場所なんて犯罪行為を誘発しそうなものだが、魔族にとって性差は身体能力に影響しないらしい。
外見から強さを測ることは困難なので、弱者を狙う通り魔的な犯行は滅多に起こらないようだ。
俺たちは池の側にあるベンチに並んで座った。
ベンチは池を取り囲むように、3ヶ所設置されており、俺たちの他にカップルが1ヶ所使用中。
カップルは池を挟んで対角線上に座っているので結構距離がある。
俺は彼らの服のボタンの数までハッキリ見えるけど、魔族の視力を人間と同等と仮定すると、向こうは俺たちの顔なんて分かりやしない。
俺の服装も、茶色くてゴチャゴチャしてるくらいの認識だと思う。
どうぞこちらの事は気にせず、イチャイチャ見つめ合うか、どこか別の場所に行ってください。
俺たちは絶対移動しないから!
ここは良い場所だ。
金がかからないし(俺は現地通貨持ってない)、斜め向かいのカップルが例外なだけで、ひらけた場所でありながら周囲を絶妙に木が覆い隠してくれて人目を避けられる。
マイナスポイントを挙げるとすれば、二人掛けのベンチなので隣との距離が近いところ。
パーソナルスペースゴリゴリ侵略されてる。
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