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ボーイ(28)・ミーツ・ボーイ(17)
それってあなたの感想ですよね
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「魔王討伐」というのが自称神の依頼だ。
つまり殺しの依頼だ。
さもそれが名誉ある役目だと言わんばかりに、無報酬で初対面の人間に人殺しを命じている。
確かに結果として殺しまくっているが、英雄=殺戮者と認識しているなら失礼極まりない。
俺に転移願望がなければ、この時点で話は打ち切っていた。
そんなわけでは俺は目の前に現れた存在を、今後も神を名乗る不審者と呼ぶ。
長年俺が覗き見していた異世界・地球は、西暦2000年を超えている俺にとってはSF、清潔で便利な未来的な世界。特に日本という国の文化に触れることが多かった。
比べて今住んでいるのは、中世ヨーロッパ的な世界。
移動も通信も不便だし、公衆衛生なんて期待できない。せめてもの救いは水洗トイレがあることくらい。
目の前の不審者は中性的過ぎて性別が判別できない。
もしかしたら性そのものが無いのかもしれない。
絶対透けるはずの布を体に巻いているのに、何故か透けていないファンタジーな衣装を身に纏い、異様に長い白銀の髪を布と一緒に体に巻き付けている。
来ている服もだが、全体的に色素が薄い。
そして体の内側からやや発光している。
宝石眼とでも呼べば良いのか、白眼の面積が非常に小さくオパールをそのまま嵌め込んだような瞳をしている。瞳孔や虹彩がないため、どこを見ているのか視線の先を把握し難い。
目潰ししたら、きっと固いんじゃないかな。
不審者の外見だけで確信が持てる。
うん、縁もゆかりも無い異世界の話だ。
俺の態度を、神を敬い傾聴していると感じたのか調子に乗ってペラペラ喋ってくれる。
相槌打ったり、質問しなくて良いので楽だ。
=========
不審者の世界は、魔王によって1000年間4層に剥離されているらしい。
その世界には神族、魔族、精霊及びエルフ族、人及び獣人族が暮らしていた。
頂点に君臨するのは神族。
神々同士に優越がないのとは対照的に、魔族には明確な格差があった。
それが魔族の長である魔王だ。
魔族の中で魔王のみが神に比肩し得る力を持ち、驕った魔王は長きに渡り他種族への干渉を繰り返してきた。
遂には自分の体を要石に大規模魔術を発動し、種族毎に住む世界のレイヤーを別けて相互干渉出来ないようにした。
世界は4つに分たれ、神界、魔界、精霊界、人界が生まれた。
重ねると元の1つの世界だが、それぞれのレイヤー毎に世界があり、レイヤーがバラけないようにピン留めしているのが魔王の存在らしい。
そして魔王の存在がレイヤー同士を磁石の同じ極同士のように反発させている。
不干渉だがレイヤーにも順番があり、神族と魔族が隣り合っているため辛うじて魔界の動きを感知することだけは可能だとか。
今回俺に白羽の矢が立ったのは、術を維持するため1000年眠り続けている魔王に動きがあったため。
当初は全リソースを使って魔術維持していた魔王だが、段々コツをつかんだようで自分の分体を作り出して精神を移し、いち魔族として生活しているらしい。
神界はこれを「魔王の疑似的な復活」と捉え警戒。
いずれ本体が目覚める、若しくは分体が成長し新たな魔王となることを危惧した。
もし魔王が完全なる復活を遂げたら、他の世界にも手を伸ばすかもしれない。
その時は俺が住むこの世界にも影響があるかもしれない。
だから、異世界の英雄である俺に、悪が目覚める前に滅ぼせと。
これは正義のための戦いなのだと断言して、神的な存在は話を締め括った。図々しすぎる。
後半仮定どころか妄想の域に入っていたので、ただでさえ低かった信憑性が更に下がった。
完全に自分達に都合の良いストーリー作り上げてるだろ。
そんなに魔王が気に食わないなら、自分達で何とかしろと言いたいが、1000年かけてお隣を覗き見するのが精々だった神界にそんな力はないようだ。
神は完成した存在であり不変、故に成長もないらしい。
圧倒的な力を持つため未来永劫他族に対する優位性は変わらないと豪語しているが、負け犬の遠吠えにしか聞こえなかった。へーそーなんだーすごいねー。
完璧な存在が何故、異世界人の俺に接触してきたかというと、やっぱり俺のチート目当てだった。
もうチートと呼ぼう。ネーミングセンス皆無だから、格好良い名称なんて思いつかない。分かり易いのが一番。
話が逸れたが、覗き見以上の相互干渉不可。
故に神界から魔界へ攻撃、ないしは刺客を送るのは不可能。
しかし異世界(俺が今住んでいる世界)の人間を転移させるのに手助け(座標を提示する程度)をするのはギリギリセーフ。
普通はこんな手助け程度で異世界転移なんて出来ないが、俺が新しく転移系の能力を獲得すれば実現可能になるらしい。
そんな都合よくいくかなと思って今確認したら、スキル増えてた。既に獲得済みだったらしい。
<世界転移><環境適応><恒常性維持><言語取得>と、今すぐ行こうぜというラインナップが新たに並んでいる。
何だこのご都合主義。
内心散々不敬なことを考えている俺だけど、神妙な顔して相槌を打ち続けているので、神もどきのお怒りはない。
事前の承諾なしに相手からかけられた魔術を弾く体質なので、思考を読まれてはいないだろう。なので、心はいつでも正直だ。
自由な頭で俺は考えた。
コイツを利用して、この世界からバックれられるんじゃないかと。
一連の説明はあくまで、ヒラヒラ衣装の不審者の主張だ。
魔王側はまた違う意見を持っているだろう。
「依頼内容に関して、期限の設定や内容の遵守といった誓約を結ぶことはできない。現地で自分で判断して動いて良いなら、この話を請けよう」
俺は英雄の皮を被り、正義の執行者らしく提案した。
因幡の白兎のようにはなりたくないので、必要最低限しか喋らないぞ。
つまり殺しの依頼だ。
さもそれが名誉ある役目だと言わんばかりに、無報酬で初対面の人間に人殺しを命じている。
確かに結果として殺しまくっているが、英雄=殺戮者と認識しているなら失礼極まりない。
俺に転移願望がなければ、この時点で話は打ち切っていた。
そんなわけでは俺は目の前に現れた存在を、今後も神を名乗る不審者と呼ぶ。
長年俺が覗き見していた異世界・地球は、西暦2000年を超えている俺にとってはSF、清潔で便利な未来的な世界。特に日本という国の文化に触れることが多かった。
比べて今住んでいるのは、中世ヨーロッパ的な世界。
移動も通信も不便だし、公衆衛生なんて期待できない。せめてもの救いは水洗トイレがあることくらい。
目の前の不審者は中性的過ぎて性別が判別できない。
もしかしたら性そのものが無いのかもしれない。
絶対透けるはずの布を体に巻いているのに、何故か透けていないファンタジーな衣装を身に纏い、異様に長い白銀の髪を布と一緒に体に巻き付けている。
来ている服もだが、全体的に色素が薄い。
そして体の内側からやや発光している。
宝石眼とでも呼べば良いのか、白眼の面積が非常に小さくオパールをそのまま嵌め込んだような瞳をしている。瞳孔や虹彩がないため、どこを見ているのか視線の先を把握し難い。
目潰ししたら、きっと固いんじゃないかな。
不審者の外見だけで確信が持てる。
うん、縁もゆかりも無い異世界の話だ。
俺の態度を、神を敬い傾聴していると感じたのか調子に乗ってペラペラ喋ってくれる。
相槌打ったり、質問しなくて良いので楽だ。
=========
不審者の世界は、魔王によって1000年間4層に剥離されているらしい。
その世界には神族、魔族、精霊及びエルフ族、人及び獣人族が暮らしていた。
頂点に君臨するのは神族。
神々同士に優越がないのとは対照的に、魔族には明確な格差があった。
それが魔族の長である魔王だ。
魔族の中で魔王のみが神に比肩し得る力を持ち、驕った魔王は長きに渡り他種族への干渉を繰り返してきた。
遂には自分の体を要石に大規模魔術を発動し、種族毎に住む世界のレイヤーを別けて相互干渉出来ないようにした。
世界は4つに分たれ、神界、魔界、精霊界、人界が生まれた。
重ねると元の1つの世界だが、それぞれのレイヤー毎に世界があり、レイヤーがバラけないようにピン留めしているのが魔王の存在らしい。
そして魔王の存在がレイヤー同士を磁石の同じ極同士のように反発させている。
不干渉だがレイヤーにも順番があり、神族と魔族が隣り合っているため辛うじて魔界の動きを感知することだけは可能だとか。
今回俺に白羽の矢が立ったのは、術を維持するため1000年眠り続けている魔王に動きがあったため。
当初は全リソースを使って魔術維持していた魔王だが、段々コツをつかんだようで自分の分体を作り出して精神を移し、いち魔族として生活しているらしい。
神界はこれを「魔王の疑似的な復活」と捉え警戒。
いずれ本体が目覚める、若しくは分体が成長し新たな魔王となることを危惧した。
もし魔王が完全なる復活を遂げたら、他の世界にも手を伸ばすかもしれない。
その時は俺が住むこの世界にも影響があるかもしれない。
だから、異世界の英雄である俺に、悪が目覚める前に滅ぼせと。
これは正義のための戦いなのだと断言して、神的な存在は話を締め括った。図々しすぎる。
後半仮定どころか妄想の域に入っていたので、ただでさえ低かった信憑性が更に下がった。
完全に自分達に都合の良いストーリー作り上げてるだろ。
そんなに魔王が気に食わないなら、自分達で何とかしろと言いたいが、1000年かけてお隣を覗き見するのが精々だった神界にそんな力はないようだ。
神は完成した存在であり不変、故に成長もないらしい。
圧倒的な力を持つため未来永劫他族に対する優位性は変わらないと豪語しているが、負け犬の遠吠えにしか聞こえなかった。へーそーなんだーすごいねー。
完璧な存在が何故、異世界人の俺に接触してきたかというと、やっぱり俺のチート目当てだった。
もうチートと呼ぼう。ネーミングセンス皆無だから、格好良い名称なんて思いつかない。分かり易いのが一番。
話が逸れたが、覗き見以上の相互干渉不可。
故に神界から魔界へ攻撃、ないしは刺客を送るのは不可能。
しかし異世界(俺が今住んでいる世界)の人間を転移させるのに手助け(座標を提示する程度)をするのはギリギリセーフ。
普通はこんな手助け程度で異世界転移なんて出来ないが、俺が新しく転移系の能力を獲得すれば実現可能になるらしい。
そんな都合よくいくかなと思って今確認したら、スキル増えてた。既に獲得済みだったらしい。
<世界転移><環境適応><恒常性維持><言語取得>と、今すぐ行こうぜというラインナップが新たに並んでいる。
何だこのご都合主義。
内心散々不敬なことを考えている俺だけど、神妙な顔して相槌を打ち続けているので、神もどきのお怒りはない。
事前の承諾なしに相手からかけられた魔術を弾く体質なので、思考を読まれてはいないだろう。なので、心はいつでも正直だ。
自由な頭で俺は考えた。
コイツを利用して、この世界からバックれられるんじゃないかと。
一連の説明はあくまで、ヒラヒラ衣装の不審者の主張だ。
魔王側はまた違う意見を持っているだろう。
「依頼内容に関して、期限の設定や内容の遵守といった誓約を結ぶことはできない。現地で自分で判断して動いて良いなら、この話を請けよう」
俺は英雄の皮を被り、正義の執行者らしく提案した。
因幡の白兎のようにはなりたくないので、必要最低限しか喋らないぞ。
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