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ボーイ(28)・ミーツ・ボーイ(17)
俺は嫌われてない
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フォンス・フィダンツィア・エアステ。現在28歳。
英雄の末裔として、周囲から求められるままに戦い続ける事約20年、正直俺は行き詰まっていた。
災害指定されるレベルの古代種は倒し切り、永きに渡り社会の影に根を広げていた巨悪組織の幾つかを根絶した今、人々を悩ませるのは精々国単位の権力闘争や貧困等の社会問題。
個人の武力では解決することのできない種類のものに移り変わった。
つまり腕っ節が強いだけの俺が必要とされる事態は目下見当たらず。魔獣は絶滅した訳ではないが、現在生存しているのは全て現地の戦力で討伐可能。
これからの時代、人の敵は人。
この先人類が一丸となるような分かりやすい敵はなく、競争社会の中で人同士が己の利益を求めて争い合うことになるだろう。
新しい世界にとって、英雄の存在は危険だ。
取扱注意程度で済めば良いが、人間の枠からあからさまに外れた存在を容認し続ける程世間は優しくない。
この世界で比類するものが無いレベルの武力が、一人の意志を持った人間として存在しているのだから。
世界の新たな脅威として、何がきっかけで討伐命令が下されるかわからない。
昨日まで笑顔で挨拶していた同僚が、次の日には大義名分掲げて剣を抜くとも限らない。
権力者がその気になれば、いくらでも罪の一つや二つ捏造できる。
そうなれば今まで一緒に戦ってきた者達は、内心がどうであれ従うだろう。
彼らの人間性を卑下しているわけではない。俺と親交が深いほど、俺の能力を理解しているやつほど、俺に対して脅威を感じているはずだからだ。
きっと彼らは正義の為に、俺を討つ。
=========
どうやって穏やかに引退するか、ついでに最近勢いを増した婚活のプレッシャーから逃げるか。
これが今の俺の悩みだ。
子供の頃から国の方針に従い、ある程度成長してからは各国からの要望で世界中を飛び回っては剣を振るってきたのだ。
世のため人のため、本当は生活のためだけど散々働いてきた。
平和になったら未来に備えて次代作れとか、俺たちの安心の為に死ねとか冗談じゃない。
残りの人生は誰に命令されることもなく、金や人間関係に頭を悩ますことなく、悠々自適に生活したい。
英雄の末裔というのは比喩ではなく、家系図にしっかり記されているリアルな話だ。
エアステ家は、国際社会で中堅に位置する島国の中流貴族である。
周辺諸国にも英雄の家系と認識されており、代々騎士の輩出を求められてきたので知名度は高いが社交や領地経営は最低限。
寧ろ下手に権力を持ったり、経済力を身につけては御し難くなると周囲によって勢力をコントロールされてきた。
嫌な言い方をすると、貴重種として保護もしくは、飼い殺しにされてきたのだ。
幼い頃に両親を亡くした俺は、以降国に囲われて生きてきた。
騎士になったのは、国に生かされていた身では職業選択の自由がなかったからだ。
自由がなかったのは職業だけじゃない。
思想の偏りを持たせない、英雄を堕落させない等々、様々な思惑で配慮されまくった俺の職場環境は至ってクリーンで味気ない。
職場以外の人間関係?
一つ仕事が終われば、次の仕事のため移動の繰り返し。一ヶ所に長期滞在することなく任務中は基本野営。
長年付き合いがあるプライベートな存在なんて、実家の使用人と数人の幼馴染くらい。
そんな幼馴染も結局は俺の従者として働いているんだから、プライベート要素は半分しかない。
生まれてこのかた恋人どころか、政略結婚のけの字もなかった。
下手に異性を紹介すると、俺の交友関係に敏感なお偉いさん達を刺激することになるから皆遠慮したんだと思いたい。
飲み会に誘われたことがないのも、オフに娼館に誘われたことがないのも、俺がワクで、スキルの問題で性的欲求がないからだと信じてる。
遠巻きにされていた気がしないでもないけど、世間話はできていたし嫌われては無いはず。ダメだ、だんだん自信無くなってきた。
つまり俺にとって結婚と言うクエストは、世界三大魔獣をソロ狩りするよりも難題なのだ。
出会いがないは言い訳にならない。
認めよう、俺はモテない。
勿論童貞。
英雄の末裔として、周囲から求められるままに戦い続ける事約20年、正直俺は行き詰まっていた。
災害指定されるレベルの古代種は倒し切り、永きに渡り社会の影に根を広げていた巨悪組織の幾つかを根絶した今、人々を悩ませるのは精々国単位の権力闘争や貧困等の社会問題。
個人の武力では解決することのできない種類のものに移り変わった。
つまり腕っ節が強いだけの俺が必要とされる事態は目下見当たらず。魔獣は絶滅した訳ではないが、現在生存しているのは全て現地の戦力で討伐可能。
これからの時代、人の敵は人。
この先人類が一丸となるような分かりやすい敵はなく、競争社会の中で人同士が己の利益を求めて争い合うことになるだろう。
新しい世界にとって、英雄の存在は危険だ。
取扱注意程度で済めば良いが、人間の枠からあからさまに外れた存在を容認し続ける程世間は優しくない。
この世界で比類するものが無いレベルの武力が、一人の意志を持った人間として存在しているのだから。
世界の新たな脅威として、何がきっかけで討伐命令が下されるかわからない。
昨日まで笑顔で挨拶していた同僚が、次の日には大義名分掲げて剣を抜くとも限らない。
権力者がその気になれば、いくらでも罪の一つや二つ捏造できる。
そうなれば今まで一緒に戦ってきた者達は、内心がどうであれ従うだろう。
彼らの人間性を卑下しているわけではない。俺と親交が深いほど、俺の能力を理解しているやつほど、俺に対して脅威を感じているはずだからだ。
きっと彼らは正義の為に、俺を討つ。
=========
どうやって穏やかに引退するか、ついでに最近勢いを増した婚活のプレッシャーから逃げるか。
これが今の俺の悩みだ。
子供の頃から国の方針に従い、ある程度成長してからは各国からの要望で世界中を飛び回っては剣を振るってきたのだ。
世のため人のため、本当は生活のためだけど散々働いてきた。
平和になったら未来に備えて次代作れとか、俺たちの安心の為に死ねとか冗談じゃない。
残りの人生は誰に命令されることもなく、金や人間関係に頭を悩ますことなく、悠々自適に生活したい。
英雄の末裔というのは比喩ではなく、家系図にしっかり記されているリアルな話だ。
エアステ家は、国際社会で中堅に位置する島国の中流貴族である。
周辺諸国にも英雄の家系と認識されており、代々騎士の輩出を求められてきたので知名度は高いが社交や領地経営は最低限。
寧ろ下手に権力を持ったり、経済力を身につけては御し難くなると周囲によって勢力をコントロールされてきた。
嫌な言い方をすると、貴重種として保護もしくは、飼い殺しにされてきたのだ。
幼い頃に両親を亡くした俺は、以降国に囲われて生きてきた。
騎士になったのは、国に生かされていた身では職業選択の自由がなかったからだ。
自由がなかったのは職業だけじゃない。
思想の偏りを持たせない、英雄を堕落させない等々、様々な思惑で配慮されまくった俺の職場環境は至ってクリーンで味気ない。
職場以外の人間関係?
一つ仕事が終われば、次の仕事のため移動の繰り返し。一ヶ所に長期滞在することなく任務中は基本野営。
長年付き合いがあるプライベートな存在なんて、実家の使用人と数人の幼馴染くらい。
そんな幼馴染も結局は俺の従者として働いているんだから、プライベート要素は半分しかない。
生まれてこのかた恋人どころか、政略結婚のけの字もなかった。
下手に異性を紹介すると、俺の交友関係に敏感なお偉いさん達を刺激することになるから皆遠慮したんだと思いたい。
飲み会に誘われたことがないのも、オフに娼館に誘われたことがないのも、俺がワクで、スキルの問題で性的欲求がないからだと信じてる。
遠巻きにされていた気がしないでもないけど、世間話はできていたし嫌われては無いはず。ダメだ、だんだん自信無くなってきた。
つまり俺にとって結婚と言うクエストは、世界三大魔獣をソロ狩りするよりも難題なのだ。
出会いがないは言い訳にならない。
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勿論童貞。
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※表紙絵はミドリ/緑虫様(@cklEIJx82utuuqd)からのいただきものです。
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