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第二話 クズ勇者、旅に出る
その十六
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翌日は朝から移動する。そして昼過ぎに目的地、聖教国国境沿いの街、ファーナンドに到着した。名前通り、この街の郊外に『ファーナンド遺跡』がある。
「ついに、ココまで来たか――」
実のところ、前の人生ではこの街にイイ思い出がない。到着した初日はロゼルの所属する聖教会に招かれ、料理が振る舞われた。
しかし、そこの大司教とかいう、エラそうなヤツになにやら説教されたので、一発殴ったら大変な騒ぎになってしまった。ロゼルがなんとかことを納めてくれたのだが、そのせいで教会から追い出されてしまう。
そして、ファーナンド遺跡でロゼルを失い、逃げ帰ってくると、それはもう最悪だった。
ロゼルを見捨てたと、教会だけでなく市民からも罵声を浴びせられ、石を投げつけられたあげく、そのまま国外追放にされたのだ。
「はあ……とにかく、教会に近づくのはよそう」
触らぬ神――いや、触らぬ大司教に祟りなしだ。
街に入るには城門を通過することになるのだが、そこで門兵に検問される。アスワンがキャラバンの代表として、門兵となにやら話をしていたのだが、相手の兵がやたら緊張しているので、なかなか滑稽だった。
そのうち、エラそうな軍人が呼ばれ、アスワンに向かってヘコヘコ頭を下げている。うーん、そう言えば、前の人生で、ロゼルが『彼は大陸で名の知れた実力者』だと言っていたなあ――どうやら、マジみたいだ。
今後、失礼なことはしないようにしよう……軍人との話が終わると、捕縛した賊を門兵に引き渡していた。
「みんな、待たせたな。街に入るぞ」
アスワンがそう号令し、ゾロゾロと城門をくぐる。
そして最後に、オレたち三人が通ろうとしたら――
「おい、待て! オマエはキャラバンのメンバーなのに、なぜ武器を持っている? それに防具も――どういうことだ?」
げっ、しまった。キャラバンのメンバーは運び屋か商人。つまり、武器を持っているのはおかしいのだ。こんなことなら、武器と防具は隠しておけばよかった。
アスワンは――ダメだ。もう、先に行ってしまった。どうする? 用心棒として雇われたと誤魔化すか? いや、それじゃ、身分証を出せと言われるじゃないか!
「これは賊から奪ったもんですよ。ほら、賊を退治した話は聞いたでしょ? まあ、戦利品みたいなモノです」とマルタが応えた。そ、そういうことか――
「そ、そうですよ。思いのほかしっくりしたんで、身につけていたのを忘れてました。ハ、ハ、ハ――」と、話を合わせたつもりだが、門兵があからさまに疑っている表情をしている。
やべえ。オレって余計なことを言ってしまった?
「べ、別に要らないので、ココに置いていきましょうか?」
オレはヘラヘラと笑いながら、背負っていた両手剣を下ろした。
「いや、その必要はない。そういうことなら、持って行ってイイぞ」
「――へっ?」
「いやあ、オマエは商人にしては、ガタイもイイし、その格好もサマになっているから、もったいないなあ――そう思っただけだ」
「は、はあ……」なんか、気が抜けてしまった――
「どうだ? オマエがその気なら、わが軍に入らないか?」丁重に断らせてもらう。
「そうそう、街中で剣を抜くなよ。この国には抜刀罪というのがあって、剣を抜いただけで、牢屋行きだからな」
「も、もちろんです――」
教えてもらって良かった。気楽に剣を抜いて、破滅するところだった。
街に入ると、結構人通りが多く、賑やかだ。前もこんな感じだったと、少しずつ思い出す。
「あの大きな塔は鐘楼ですか?」町の中心部にある、ひときわ高い塔をフィルが指差した。
「ああ、ファーナンド大鐘楼だな。定刻になるとあの鐘が鳴るんだよ」
大小、様々なカネが同時に鳴り響くと、かなりの迫力なんだよな。
「大鐘楼の下には、ファーナンド大聖堂がある。聖都、ガルチの大聖堂に次ぐ大きな教会らしいぞ。青銅の大きなドームが特徴だな」
自慢げに説明していたら、マルタが不思議そうな顔をしていた。
「ん? どうした?」
「グエルって、この街は初めてだよね? そのわりには詳しいなあ――と思って」
し、しまった。思わず、前の人生の記憶をさらけ出してしまった。
「えーと、そうそう、ロゼルから話を聞いていたんだよ。たぶん」と適当なことを言ってみる。
「そうなんですね。このあと、大聖堂へ行ってみませんか?」
フィルが言うので、オレは焦ってしまう。
「い、いやあ……オレはイイ、かな?」
前の人生でやらかしたからなあ――なんか、近寄りたくない。
なんで、そんなに拒むのだろう――フィルはそう思ったのだろうか? オレのことを不思議そうな顔で見つめるので、オレはできるだけ目を合わせないようにした。
「ついに、ココまで来たか――」
実のところ、前の人生ではこの街にイイ思い出がない。到着した初日はロゼルの所属する聖教会に招かれ、料理が振る舞われた。
しかし、そこの大司教とかいう、エラそうなヤツになにやら説教されたので、一発殴ったら大変な騒ぎになってしまった。ロゼルがなんとかことを納めてくれたのだが、そのせいで教会から追い出されてしまう。
そして、ファーナンド遺跡でロゼルを失い、逃げ帰ってくると、それはもう最悪だった。
ロゼルを見捨てたと、教会だけでなく市民からも罵声を浴びせられ、石を投げつけられたあげく、そのまま国外追放にされたのだ。
「はあ……とにかく、教会に近づくのはよそう」
触らぬ神――いや、触らぬ大司教に祟りなしだ。
街に入るには城門を通過することになるのだが、そこで門兵に検問される。アスワンがキャラバンの代表として、門兵となにやら話をしていたのだが、相手の兵がやたら緊張しているので、なかなか滑稽だった。
そのうち、エラそうな軍人が呼ばれ、アスワンに向かってヘコヘコ頭を下げている。うーん、そう言えば、前の人生で、ロゼルが『彼は大陸で名の知れた実力者』だと言っていたなあ――どうやら、マジみたいだ。
今後、失礼なことはしないようにしよう……軍人との話が終わると、捕縛した賊を門兵に引き渡していた。
「みんな、待たせたな。街に入るぞ」
アスワンがそう号令し、ゾロゾロと城門をくぐる。
そして最後に、オレたち三人が通ろうとしたら――
「おい、待て! オマエはキャラバンのメンバーなのに、なぜ武器を持っている? それに防具も――どういうことだ?」
げっ、しまった。キャラバンのメンバーは運び屋か商人。つまり、武器を持っているのはおかしいのだ。こんなことなら、武器と防具は隠しておけばよかった。
アスワンは――ダメだ。もう、先に行ってしまった。どうする? 用心棒として雇われたと誤魔化すか? いや、それじゃ、身分証を出せと言われるじゃないか!
「これは賊から奪ったもんですよ。ほら、賊を退治した話は聞いたでしょ? まあ、戦利品みたいなモノです」とマルタが応えた。そ、そういうことか――
「そ、そうですよ。思いのほかしっくりしたんで、身につけていたのを忘れてました。ハ、ハ、ハ――」と、話を合わせたつもりだが、門兵があからさまに疑っている表情をしている。
やべえ。オレって余計なことを言ってしまった?
「べ、別に要らないので、ココに置いていきましょうか?」
オレはヘラヘラと笑いながら、背負っていた両手剣を下ろした。
「いや、その必要はない。そういうことなら、持って行ってイイぞ」
「――へっ?」
「いやあ、オマエは商人にしては、ガタイもイイし、その格好もサマになっているから、もったいないなあ――そう思っただけだ」
「は、はあ……」なんか、気が抜けてしまった――
「どうだ? オマエがその気なら、わが軍に入らないか?」丁重に断らせてもらう。
「そうそう、街中で剣を抜くなよ。この国には抜刀罪というのがあって、剣を抜いただけで、牢屋行きだからな」
「も、もちろんです――」
教えてもらって良かった。気楽に剣を抜いて、破滅するところだった。
街に入ると、結構人通りが多く、賑やかだ。前もこんな感じだったと、少しずつ思い出す。
「あの大きな塔は鐘楼ですか?」町の中心部にある、ひときわ高い塔をフィルが指差した。
「ああ、ファーナンド大鐘楼だな。定刻になるとあの鐘が鳴るんだよ」
大小、様々なカネが同時に鳴り響くと、かなりの迫力なんだよな。
「大鐘楼の下には、ファーナンド大聖堂がある。聖都、ガルチの大聖堂に次ぐ大きな教会らしいぞ。青銅の大きなドームが特徴だな」
自慢げに説明していたら、マルタが不思議そうな顔をしていた。
「ん? どうした?」
「グエルって、この街は初めてだよね? そのわりには詳しいなあ――と思って」
し、しまった。思わず、前の人生の記憶をさらけ出してしまった。
「えーと、そうそう、ロゼルから話を聞いていたんだよ。たぶん」と適当なことを言ってみる。
「そうなんですね。このあと、大聖堂へ行ってみませんか?」
フィルが言うので、オレは焦ってしまう。
「い、いやあ……オレはイイ、かな?」
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