追放されたクズ勇者の死に戻り ~「オマエはクビだ」からやり直したオレは、破滅フラグを折りまくる~

テツみン

文字の大きさ
15 / 84
第一話 クズ勇者、改心する

その十二

しおりを挟む
 王都を出ると、馬車はガタガタと上下左右に激しく揺れた。
 乗合馬車といっても、荷馬車に人が座るための長椅子を取り付けただけなので、いたしかたない。すると、不安そうな顔でマルタがオレを見ているので――

「なんだ? オレの顔になんかついているのか?」

 マルタは頭を横に振ったあと、オレが怒っていないのか心配だったと言い出す。

「なんで、オレが怒るんだ?」
「だって、馬車が揺れるといつも不機嫌だったじゃない?」

 そういえば、そうだったな――と思い出す。
 勇者の称号を得てから、選民意識過剰で横暴になっていたオレは馬車の乗り心地が悪いと、「もっと、揺れないように走らせろ」と御者に文句を言ったり、「ギルドのヤツらこんなポンコツ馬車を手配しやがって」と身勝手なことを言っていた気がする。
 だが、今はそれほど気にならない。

「まあ……慣れだな」

 奴隷だった時代には、もっと酷い馬車に乗せられ移動していた。時には、一日中裸足で走らされたりしたもんだ。それに比べれば、この馬車なんて天国のようなものである。

「ところで、リームの町まではどのくらいかかるんだ?」
「そうだね、順調なら四時間くらいかな?」
「そうか――」

 リームに到着したら、ザブレロへ向かう乗合馬車に乗り換えるらしい。

「リームの乗り換え時間は?」
 そうたずねると――
「一時間半ほどかな? その間に食事もするけどね」
 マルタが応えるので、「まあ、そのくらいあれば充分だな」と応える。

「えっ? リームになにか用事があるの?」と質問されたので――
「いや、リームに用事があるわけではない」とオレは応えて、向かいに座る人物をチラッと見た。

 黒いローブを纏い、フードを深く被っているので顔はわからない。どちらかというと小柄で華奢なカラダだが、一般人とは思えない魔力を感じる。そんな人物がこちらをうかがっていた。
 まあ、ふつうの人間なら気づきもしないだろう。しかし、オレみたいな武人になると、魔力量と気配で危険な人物なのかどうかくらいすぐにわかる。

 どうやら、ローブの人物はオレたちに用があるらしい。

「オレを狙っている――ということは、魔族の刺客か、闇社会の人物?」

 闇社会には魔族と取引をして私服を肥やしている輩もいると聞く。
 そういった人物は、勇者の存在を良く思わない。魔王が倒され、魔族の勢力が衰えることを恐れるからだ。彼らが勇者暗殺を企ている――なんて話も聞く。
 まあ、もうオレは勇者じゃないけどな……いや、まてよ……勇者じゃないから、邪魔になった冒険者ギルドがオレを殺しに来た?
 それはさすがに考えすぎか――

「えっ? なんか言った?」

 ブツブツとオレが言っていたので、マルタが気にしたようだ。

「なあに、リームでは何を食べようか考えていただけだ」
 そう誤魔化した。

 移動中は何事もなく、中継の町、リームに到着する。さあて、黒ローブの人物はどう動くかな?
 しかし、その前に――「どこで食べるのか考えているのか?」とたずねた。

「この近くの市場があって、そこの屋台で食べるのが普通みたいなんだけど、ちょっと離れたところに、おいしいお店があるという話を聞いたんだ」とマルタは言う。
 リームが故郷だという冒険者からの情報らしい。

「ほう、それは楽しみだ」
「こっちだよ」

 マルタが歩き出したので、ついて行く。そして――やはり、馬車に同乗していた黒ローブの人物もあとを追ってきていた。これで、オレたちが狙いだと確定したな。
 さて、どうするか――途中、適当な分かれ道でマルタの手を引っ張り、路地裏に隠れた。

「えっ? どうしたの?」
「しっ――」

 人差し指を口の前に立てて、声を出さないように伝える。案の定、黒ローブの人物は慌てて路地裏に入ってきた。オレはその人物を背中から羽交い締めにする。

「おい、どうしてオレたちを追ってくる? 何が目的だ?」

 そう威圧的にたずねた――のだが、相手のムネのあたりを押さえている左手に柔らかいふくらみを感じる。
 ――ん? これって?

「きゃあ!」

 短い悲鳴が黒ローブの人物から発せられた。
 その声――えっ? オンナ!? オレは慌てて手を離すと、相手はさっと数メートル離れた。ローブの上から胸の辺りを押さえている。

「ご、ごめんなさい。あやしい者ではありません。いや、充分あやしかったですけど」と、その人物から支離滅裂な返答があった。
 だけど、この声って――いや、まさか――

「私です」

 相手が被っていたフードを下ろすと、キレイな長い金髪がパサッと翻った。蒼玉のような美しい瞳、真っ白な肌。間違いない――

「フィ、フィリシア!?」
「殿下!?」

 オレとマルタは同時に声が出てしまう。そう、この国、ウィルハース王国の王女、フィリシア殿下だったのだ!

「ど、どうして――??」
 なぜ、こんなところにフィリシアが?

「グエル様がファーナンド遺跡へ行かれるとお聞きしまして、こっそりと王宮を抜け出してきました」
 いや、それってつまり――

「家出してきちゃいました」フィリシアはニッコリしながら、そんなことを平然と応える――えっ?

「「え、えぇぇぇぇっ!!」」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

世界最強の賢者、勇者パーティーを追放される~いまさら帰ってこいと言われてももう遅い俺は拾ってくれた最強のお姫様と幸せに過ごす~

aoi
ファンタジー
「なぁ、マギそろそろこのパーティーを抜けてくれないか?」 勇者パーティーに勤めて数年、いきなりパーティーを戦闘ができずに女に守られてばかりだからと追放された賢者マギ。王都で新しい仕事を探すにも勇者パーティーが邪魔をして見つからない。そんな時、とある国のお姫様がマギに声をかけてきて......? お姫様の為に全力を尽くす賢者マギが無双する!?

竜騎士の俺は勇者達によって無能者とされて王国から追放されました、俺にこんな事をしてきた勇者達はしっかりお返しをしてやります

しまうま弁当
ファンタジー
ホルキス王家に仕えていた竜騎士のジャンはある日大勇者クレシーと大賢者ラズバーによって追放を言い渡されたのだった。 納得できないジャンは必死に勇者クレシーに訴えたが、ジャンの意見は聞き入れられずにそのまま国外追放となってしまう。 ジャンは必ずクレシーとラズバーにこのお返しをすると誓ったのだった。 そしてジャンは国外にでるために国境の町カリーナに向かったのだが、国境の町カリーナが攻撃されてジャンも巻き込まれてしまったのだった。 竜騎士ジャンの無双活劇が今始まります。

追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?

タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。 白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。 しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。 王妃リディアの嫉妬。 王太子レオンの盲信。 そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。 「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」 そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。 彼女はただ一言だけ残した。 「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」 誰もそれを脅しとは受け取らなかった。 だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。

大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる

遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」 「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」 S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。 村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。 しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。 とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

パーティーを追放されるどころか殺されかけたので、俺はあらゆる物をスキルに変える能力でやり返す

名無し
ファンタジー
 パーティー内で逆境に立たされていたセクトは、固有能力取得による逆転劇を信じていたが、信頼していた仲間に裏切られた上に崖から突き落とされてしまう。近隣で活動していたパーティーのおかげで奇跡的に一命をとりとめたセクトは、かつての仲間たちへの復讐とともに、助けてくれた者たちへの恩返しを誓うのだった。

防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました

かにくくり
ファンタジー
 魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。  しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。  しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。  勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。  そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。  相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。 ※小説家になろうにも掲載しています。

処理中です...