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第二章 盾職人は異世界の起業家となる
第56話 公開断罪となる
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次の日の朝、ボクたちは普段通り朝食を食べていた。
「そういえば、昨日の夜、なんか騒がしかったけど、なんかあったの?」
タローがそういうと、サリアも「うん、なんかヒソヒソ話が聞こえた」と言う。
「昨日の夜? そんなことあったのか?」とタバサは気づいていなかったようだ。うーん、この図太さ、見習いたい。
タローとサリアが気づいたのは、おそらくアレのことだとすぐにわかった。しかし、三人には言わないことにしようと、アリシアと話し合っていたので、「さあ、ボクたちも気づかなかったなあ……」ととぼけてみる。
「ふーん――なあ、それはともかくメルダはどうなるんだ?」と、タバサ。
昨日まで一緒に食事をしていたメルダは拘束されている。タバサでも、家族がひとりいないと、気になるんだなぁなんて、考えてしまう。
「うん? まあ、すぐに誤解は解けるよ」とボクは応えた。
うん、この作戦がうまくいけば、きっと――
実はあれから、ディーノさん、アーノルドさん、アレンさん、そしてアリシアとボクで、ある作戦を企てたのだ――
ディーノさんの言う、悪いヤツラをワナにはめるために――
そんなことを考えていたとき、工房の入口をたたく音が――
何事かとボクとアリシアが見に行くと、近衛兵が立っていた。
「何事ですか?」
「ヒロトさん、アリシアさん、アナタたちに衛兵から逮捕状が出ています。ひとまず、私たちについてきてもらえますか?」
逮捕状――
「すみません。罪状はなんですか?」
「魔族を王都にかくまっていた――という、蔵匿の罪です」
ボクはアリシアと目を合わせた。
「いったい、なんのことだか――」とボクはしらを切るのだけど――
「拘束しているメルダが魔族であるということとアナタたちがそれを知って彼女をかくまっていたという証拠を得たと衛兵から連絡があり、アナタたちを拘束することにしました」
ボクは「くっ――」とくやしさをあらわにした。
ボクとアリシアはタバサたちに事情を話す。そして、すぐに帰ってくると言って、工房をあとにした。まあ、タバサ――はともかく、タローとサリアは大丈夫だろう。
ボクたちは両手首を背中側で縛られ、とある小部屋にしばらく監禁された。そして数時間後、近衛兵に連れられ移動する。
行きついた先は、玉座のある大広間。そう、ボクたちが名人の称号を授かった場所だった。
「どうして、大広間?」
「儂が呼んだんだよ」
姿を現したのは、濃い緑にこれまた金糸で細かい刺繍が施された服を着た男性。白い髪のカツラと黒い口ひげ。
「ブルームハルト侯爵――」
アリシアを『亜人』と言って、魔法研究所から追い出した人物。
ボクが彼の傘下で魔盾を作ることを断ると、王都で商売ができないようにイヤガラセを仕掛けてきた、あの人物だ。
彼が呼んだ?
「いったい、どういうこと?」
「オマエたちを断罪するためだ!」
「――えっ?」
断罪――罪を下すということ?
「何を言っている? ボクたちは何もしていない」
「何もしていない? 王宮に魔族の女をかくまっていたという大罪を犯していたくせに、何を言う?」
侯爵が笑みを浮かべてそうたずねてきた。
「――何のことだかわからない」
ボクはそうしらを切るのだが、「もうすでに、調べはついている」と侯爵が言うと、彼のとなりに、男性が現れる。
その人物とは――
「ディーノさん⁉」
「大変申し訳ない、ヒロトさん。こうなってしまいました」
ディーノさんは愛想笑いをしながら、そんなことを言う。
「ディーノさん、私たちを裏切ったのですか?」そう、アリシアがたずねると――
「おおっ! 美しいご婦人をそのような姿にさせてしまうのは、こころが痛みます。ですが、裏切った――なんて言われると、まるで私が悪者のようではないですか? 私は最初から侯爵からアナタたちを監視するように言われて、近づいていただけなのですから――」
ボクたちを監視――?
「何のために――?」
「何のため? 当然だ。『亜人』なんかと一緒に仕事をする人間を野晴らしにできるか! 必ずなにかやらかすと思っていたんだよ」
侯爵はまたも、アリシアを『亜人』呼ばわりする。
「そうか――ボクが侯爵の下で働くことを断ったから――それを根に持って、こんなことを?」
「はあ? 儂を誰だと思っている? 王国屈指の名門、ブルームハルト侯爵家の当主だぞ! オマエなんぞ何とも思っていないわ! 儂はこの国を案じて、やったまでだ」
侯爵の言葉に、ボクはクスッと笑う。
「この国を案じて? アナタからそんな言葉が出てくるとは思いませんでした」
「――おい。ちょっと、名声を得たからってイイ気になるなよ。どうせ、オマエはこれで終わりだ」
これで終わり?
「まあ、あせるな。もうすぐ観客がやってくる。本番はそれからだ」
観客?
数分後、入口からぞろぞろと人が入ってくる。シャルロット殿下のお披露目式にやって来た面々と同じ。つまり、貴族だ。
そして、大扉からスチュワート殿下と国王陛下が現れた。
「国王陛下に、スチュワート殿下。ならびに、貴族のみなさま。こうして、急に集まっていただいたのは、他でもない。この王宮の敷地内に、こともあろうか魔族が入り込んでいたという大問題を断罪するためです!」
そう、侯爵は出席者へ知らしめた。
「そういえば、昨日の夜、なんか騒がしかったけど、なんかあったの?」
タローがそういうと、サリアも「うん、なんかヒソヒソ話が聞こえた」と言う。
「昨日の夜? そんなことあったのか?」とタバサは気づいていなかったようだ。うーん、この図太さ、見習いたい。
タローとサリアが気づいたのは、おそらくアレのことだとすぐにわかった。しかし、三人には言わないことにしようと、アリシアと話し合っていたので、「さあ、ボクたちも気づかなかったなあ……」ととぼけてみる。
「ふーん――なあ、それはともかくメルダはどうなるんだ?」と、タバサ。
昨日まで一緒に食事をしていたメルダは拘束されている。タバサでも、家族がひとりいないと、気になるんだなぁなんて、考えてしまう。
「うん? まあ、すぐに誤解は解けるよ」とボクは応えた。
うん、この作戦がうまくいけば、きっと――
実はあれから、ディーノさん、アーノルドさん、アレンさん、そしてアリシアとボクで、ある作戦を企てたのだ――
ディーノさんの言う、悪いヤツラをワナにはめるために――
そんなことを考えていたとき、工房の入口をたたく音が――
何事かとボクとアリシアが見に行くと、近衛兵が立っていた。
「何事ですか?」
「ヒロトさん、アリシアさん、アナタたちに衛兵から逮捕状が出ています。ひとまず、私たちについてきてもらえますか?」
逮捕状――
「すみません。罪状はなんですか?」
「魔族を王都にかくまっていた――という、蔵匿の罪です」
ボクはアリシアと目を合わせた。
「いったい、なんのことだか――」とボクはしらを切るのだけど――
「拘束しているメルダが魔族であるということとアナタたちがそれを知って彼女をかくまっていたという証拠を得たと衛兵から連絡があり、アナタたちを拘束することにしました」
ボクは「くっ――」とくやしさをあらわにした。
ボクとアリシアはタバサたちに事情を話す。そして、すぐに帰ってくると言って、工房をあとにした。まあ、タバサ――はともかく、タローとサリアは大丈夫だろう。
ボクたちは両手首を背中側で縛られ、とある小部屋にしばらく監禁された。そして数時間後、近衛兵に連れられ移動する。
行きついた先は、玉座のある大広間。そう、ボクたちが名人の称号を授かった場所だった。
「どうして、大広間?」
「儂が呼んだんだよ」
姿を現したのは、濃い緑にこれまた金糸で細かい刺繍が施された服を着た男性。白い髪のカツラと黒い口ひげ。
「ブルームハルト侯爵――」
アリシアを『亜人』と言って、魔法研究所から追い出した人物。
ボクが彼の傘下で魔盾を作ることを断ると、王都で商売ができないようにイヤガラセを仕掛けてきた、あの人物だ。
彼が呼んだ?
「いったい、どういうこと?」
「オマエたちを断罪するためだ!」
「――えっ?」
断罪――罪を下すということ?
「何を言っている? ボクたちは何もしていない」
「何もしていない? 王宮に魔族の女をかくまっていたという大罪を犯していたくせに、何を言う?」
侯爵が笑みを浮かべてそうたずねてきた。
「――何のことだかわからない」
ボクはそうしらを切るのだが、「もうすでに、調べはついている」と侯爵が言うと、彼のとなりに、男性が現れる。
その人物とは――
「ディーノさん⁉」
「大変申し訳ない、ヒロトさん。こうなってしまいました」
ディーノさんは愛想笑いをしながら、そんなことを言う。
「ディーノさん、私たちを裏切ったのですか?」そう、アリシアがたずねると――
「おおっ! 美しいご婦人をそのような姿にさせてしまうのは、こころが痛みます。ですが、裏切った――なんて言われると、まるで私が悪者のようではないですか? 私は最初から侯爵からアナタたちを監視するように言われて、近づいていただけなのですから――」
ボクたちを監視――?
「何のために――?」
「何のため? 当然だ。『亜人』なんかと一緒に仕事をする人間を野晴らしにできるか! 必ずなにかやらかすと思っていたんだよ」
侯爵はまたも、アリシアを『亜人』呼ばわりする。
「そうか――ボクが侯爵の下で働くことを断ったから――それを根に持って、こんなことを?」
「はあ? 儂を誰だと思っている? 王国屈指の名門、ブルームハルト侯爵家の当主だぞ! オマエなんぞ何とも思っていないわ! 儂はこの国を案じて、やったまでだ」
侯爵の言葉に、ボクはクスッと笑う。
「この国を案じて? アナタからそんな言葉が出てくるとは思いませんでした」
「――おい。ちょっと、名声を得たからってイイ気になるなよ。どうせ、オマエはこれで終わりだ」
これで終わり?
「まあ、あせるな。もうすぐ観客がやってくる。本番はそれからだ」
観客?
数分後、入口からぞろぞろと人が入ってくる。シャルロット殿下のお披露目式にやって来た面々と同じ。つまり、貴族だ。
そして、大扉からスチュワート殿下と国王陛下が現れた。
「国王陛下に、スチュワート殿下。ならびに、貴族のみなさま。こうして、急に集まっていただいたのは、他でもない。この王宮の敷地内に、こともあろうか魔族が入り込んでいたという大問題を断罪するためです!」
そう、侯爵は出席者へ知らしめた。
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