落ちこぼれ盾職人は異世界のゲームチェンジャーとなる ~エルフ♀と同居しました。安定収入も得たのでスローライフを満喫します~

テツみン

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第二章 盾職人は異世界の起業家となる

第47話 説明となる

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「メルダさん、さっそくですけど、材料の在庫管理と調達をお願いしたいのですが――」
 二人で工房の隅にある机に座るとボクはそう伝える。

「はい、わかりました。それでは、材料の種類と日ごとの必要数を確認させてください」
 スラスラとそういった言葉が出てくるということは、やはり経験者ということだろう。大陸最大手の商業ギルド、帝国商会で鍛えられただけのことはある。

「えーと、これがウチの工房で作ってる盾の図面です」
「――図面?」
 頭をかしげるメルダさん。さすがに図面までは知らなかったようだ。

 ひととおり、図面に描かれている内容を説明した。すると、メルダさんは図面をじーっと。その目ヂカラがスゴくて、ドキドキしてしまった!
 サラリーマンだったころ、上司に報告書を確認してもらっている――あの時の気分だ。

「あのう、何か問題でもありますか?」
 おそおそるたずねると――

「――これは、ヒロトさんが描いたのですか?」と逆に質問される。
「ええ、まあ――」
 苦笑いをしながら応えた。そんなにひどい図面だったかなぁ――
 そりゃあ、大学を卒業して以来、図面なんて書いてなかったし……いろいろ、不備があるのは仕方ないよね……

「これはスゴいです!」
「――えっ?」
 いきなり、彼女が声をはりあげるので、ビックリしてしまう。

「これ一枚で、必要な部品の材質、大きさ、形状、数量が一目でわかります! さっき、ちょっとだけみなさんが製造している盾を拝見させていただいたのですが、どれも同じ形状、品質で作られているのでおどろいていたんです。これのおかげなんですね! この図面というモノは、ホントにすばらしい! 大発明ですよ!」
 なんか、とても興奮している。

「は、はあ――」
 逆に呆気あっけに取られてしまう。まあ、ほめられたことは素直に喜ぶことにしたい。

「わかりました。帳簿を確認させていただき、毎日の生産量から部材の調達計画を作らせていただきます」

 部材によって必要数量や注文してから到着するまでの日数を考慮して、一カ月先まで注文の計画を立てるらしい。
 商会ギルドは、そんな先まで計画しているんだなぁ――
 ボクたちは、足りなくなりそうになってから、慌てて注文してたりしたもんなぁ。だから、足りなくなって、まる一日作れなかったり、買いすぎて、部材が傷んだり――
 やっぱり、大手はスゴいとあらためて思う。

「いえ、商会でも発注者が変わったりすると、間違ったモノが届いたりして、トラブルが絶えなかったんです。ですが、この図面があれば、相手先と正確に交渉できます。やはり、この図面というモノは画期的です!」

 また、ほめられてしまった。ここまで、担ぎ上げられるとさすがにはずかしい。

「それでは、在庫を確認させていただけますでしょうか?」
 メルダさんに、そう言われて「あ……」と声がれてします。

 そういえば、今、在庫が――

「どうしたのですか?」とメルダさんが不思議そうな表情を見せたので――
「実は――ちょっと、たくさん買いすぎちゃって――」と、素直に応える。

「――えっ?」

 ボクは買いすぎた木材を押し込んだ部屋へ彼女を連れて行った。

 木材の山を見て、彼女は呆然ぼうぜんとしている。まあ、そうだよね――
 すると――

「すみません、書くモノを貸していただけますか?」
「書くモノ? インクと羽根ペンでイイ?」
「はい、なんでも大丈夫です」
 そういうので、注文書を書くときに使う羽根ペンを持ってくる。

 彼女はそれを受け取ると――
 これは、いつ入荷したモノですか?

「えっ? えーと、たしか六日前に受け取ったはずだけど――」

 すると、メルダさんは木材の端に日付を書き始めた。
「こうして、入荷日を書いておくことで、古い在庫から使用するようにします」
 なるほど――と思う。
 木材なんかは放置すると割れたりして、使い物にならなくなる。
 こうして、入荷した日付を書き古いモノから使えば、劣化して捨てなければならないムダを減らせるんだな。

 うん。やっぱり彼女を雇って正解だったと、ボクは改め思うのだった。

 そのとき、工房からアリシアの笑い声が聞こえる。

「もう、ディーノさんったら、おかしいんだから」
「ハ、ハ、ハ。そうかい?」
 見ると、彼女はディーノさんに魔石に魔法を封じ込めるための魔方陣の書き方を教えているようだ。
 楽しく仕事をするのは、別に悪いことではないのだけど――彼女が他の男性と仲良くしていると、なんか、モヤモヤした気分になってしまう。

「ヒロトさん?」
 
 メルダさんに呼ばれで、ボクはハッとする。
「あ、ゴメンナサイ。何でしたっけ?」
「他の在庫も見せてもらえますか?」
「そ、そうでしたね。こちらです――」
 本来の部材倉庫としている部屋へメルダさんを案内しているとき――

 ガシャーン‼

 ――という、大きな音がダイニングのほうから聞こえた。

「きゃあ! ゴメンナサイ!」

「な、なんだぁ⁉」
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