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第二章 盾職人は異世界の起業家となる
第44話 相談となる
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ディーノさんに対する質問をひととおり終えたところで――
「それでは、後日、冒険者ギルドを通してご返事いたしますので――」
そう伝えて、今日のところは帰ってもらった。
アリシアは、「ふう――」とため息をついて――
「面接って、するほうも緊張しますね」と、疲れた表情を見せる。
「まあ、そうだね――」とボクも苦笑いしたあと――
「それで、どうする?」
「どうする――と言いますと?」
「いや、たしかに能力としては申し分ないと思うけど、ほら、あれ――」
「――あれ?」
アリシアはピンと来ないという顔だったので――
「いや、なんかなれなれしいでしょ? いきなり手を握ったり――アリシアがイヤな思いをしたんじゃないかって?」
ボクがそう言うと、彼女は「フ、フ、フ」と笑う。
「そうですね。たしかになれなれしいところはありますね」
そう言うので、「やっぱり――」と思う。
「だけど、イヤとかではありませんよ。まあ、ちょっとビックリしましたけど」
「――えっ?」
イヤではない?
「でも、採用ということになれば、アリシアがディーノさんに仕事を教えることになるんだよ。たぶん、付きっきりで――」
「まあ、そうですね。でも、大丈夫ですよ」
大丈夫?
「はい、魔石に魔法を封じ込めることにとても興味をもっていたので、まじめにやってくれると思います。それに、一緒に仕事して楽しそうですし」
「――えっ?」
一緒に仕事をして楽しそう?
それって、どういう意味?
「私はかまいませんので、採用するかどうかはヒロトさんのご判断におまかせします」
そう彼女はニッコリした。
ボクの判断にまかせる――と言われても……
ディーノさんはSランク冒険者で能力的には申し分ない。そして、アリシアも大丈夫だと言う。
正直、彼のような女性になれなれしい人は苦手なのだけど、自分の好きキライで採用していては、経営者としてきっと良くないことだろう――
そう、自分に言い聞かせる。
「それじゃ、採用ということで――」
と、彼女に伝えると――
「はい!」とうれしそうに返事をした。
その顔を見て、かえってモヤモヤした気分になる。
「冒険者ギルドへの返事は明日にするね」
「はい、それでイイと思います」
こうして、まず一人目の採用が決まるのであった。
そして翌日――
「ちわぁ! 王都物産です! 商品を受け取りにきましたぁ!」
そういう元気な声が聞こえる。
「ああ、ご苦労さまです。準備してありますので、こちらを――」
「ありがとうございます! それと、ウチの若ダンナから言伝を預かってます」
――言伝?
「はい。このあいだお願いされた、人材の件で相談したいことがあるそうです」
「人材の件?」
ボクは王都物産の若ダンナに、部材の発注や経理ができる人をひとり頼めないか――そうお願いしていた。きっと、そのことだろう。
「わかりました。午後、お伺いすると伝えてください」
ちょうど、冒険者ギルドにディーノさんを採用すると連絡しなければならなかったので、そのついでに行こうと考えた。
そして――
冒険者ギルドに寄ったあと、そのまま、王都物産のお店に顔を出す。
「すみません。若ダンナはいますか?」
すぐに、奥から若ダンナが現れた。
「ヒロトさん、お忙しいところありがとうございます。どうぞこちらに――」
そう言われ、小部屋へ連れていかれる。
「早速ですが、頼まれていた発注、経理ができるという人が見つかりました」
「本当ですか⁉」
先日の話ではなかなか見つからないみたいなことを言っていたので、こんなに早く現れるとは思っていなかった――
「ただ、ちょっと、問題がありまして――」
そう、言いづらそうな表情を若ダンナは見せる。
「問題――ですか?」
若ダンナの話では――その人は女性で、最近まで帝国商会で働いていたとのこと。
「帝国商会⁉ 大手じゃないですか⁉」
帝国ばかりでなく、ここ王国でも取引がある大陸一番の商業ギルドである。そこで、働いていたというのはスゴい!
「念のため、計算や伝票の見方などをいくつか出題したのですが、すべて正解でした」
商会で働いていたという話は本当だろう――そう、若ダンナは言う。
「それで、なにが問題なんですか?」
「実はその人、商会で働いていたこと以外、何も話そうとしてくれないんです」
「――えっ?」
生まれや年齢、商会の前は何をしてか――など、全て「話せない」と応えるらしい。
「はあ――」
さすがに、それではムリだな――そう彼は考えたのだが、次にこのレベルの人材が見つかるのかわからない――そう考え、一応、ボクに相談しようということになったらしい。
「どうします?」
「うーん……」
さすがに悩んでしまう。そんな怪しい人を雇いたくない気持ちもあるのだけど、そんなことを言っていられない状況でもある。このチャンスを逃して、しばらく、適当な人が現れなかったら――そう思うと簡単に『断る』という決断ができない。
「すみません。一度、その人と合わせてもらえませんか?」
「それでは、後日、冒険者ギルドを通してご返事いたしますので――」
そう伝えて、今日のところは帰ってもらった。
アリシアは、「ふう――」とため息をついて――
「面接って、するほうも緊張しますね」と、疲れた表情を見せる。
「まあ、そうだね――」とボクも苦笑いしたあと――
「それで、どうする?」
「どうする――と言いますと?」
「いや、たしかに能力としては申し分ないと思うけど、ほら、あれ――」
「――あれ?」
アリシアはピンと来ないという顔だったので――
「いや、なんかなれなれしいでしょ? いきなり手を握ったり――アリシアがイヤな思いをしたんじゃないかって?」
ボクがそう言うと、彼女は「フ、フ、フ」と笑う。
「そうですね。たしかになれなれしいところはありますね」
そう言うので、「やっぱり――」と思う。
「だけど、イヤとかではありませんよ。まあ、ちょっとビックリしましたけど」
「――えっ?」
イヤではない?
「でも、採用ということになれば、アリシアがディーノさんに仕事を教えることになるんだよ。たぶん、付きっきりで――」
「まあ、そうですね。でも、大丈夫ですよ」
大丈夫?
「はい、魔石に魔法を封じ込めることにとても興味をもっていたので、まじめにやってくれると思います。それに、一緒に仕事して楽しそうですし」
「――えっ?」
一緒に仕事をして楽しそう?
それって、どういう意味?
「私はかまいませんので、採用するかどうかはヒロトさんのご判断におまかせします」
そう彼女はニッコリした。
ボクの判断にまかせる――と言われても……
ディーノさんはSランク冒険者で能力的には申し分ない。そして、アリシアも大丈夫だと言う。
正直、彼のような女性になれなれしい人は苦手なのだけど、自分の好きキライで採用していては、経営者としてきっと良くないことだろう――
そう、自分に言い聞かせる。
「それじゃ、採用ということで――」
と、彼女に伝えると――
「はい!」とうれしそうに返事をした。
その顔を見て、かえってモヤモヤした気分になる。
「冒険者ギルドへの返事は明日にするね」
「はい、それでイイと思います」
こうして、まず一人目の採用が決まるのであった。
そして翌日――
「ちわぁ! 王都物産です! 商品を受け取りにきましたぁ!」
そういう元気な声が聞こえる。
「ああ、ご苦労さまです。準備してありますので、こちらを――」
「ありがとうございます! それと、ウチの若ダンナから言伝を預かってます」
――言伝?
「はい。このあいだお願いされた、人材の件で相談したいことがあるそうです」
「人材の件?」
ボクは王都物産の若ダンナに、部材の発注や経理ができる人をひとり頼めないか――そうお願いしていた。きっと、そのことだろう。
「わかりました。午後、お伺いすると伝えてください」
ちょうど、冒険者ギルドにディーノさんを採用すると連絡しなければならなかったので、そのついでに行こうと考えた。
そして――
冒険者ギルドに寄ったあと、そのまま、王都物産のお店に顔を出す。
「すみません。若ダンナはいますか?」
すぐに、奥から若ダンナが現れた。
「ヒロトさん、お忙しいところありがとうございます。どうぞこちらに――」
そう言われ、小部屋へ連れていかれる。
「早速ですが、頼まれていた発注、経理ができるという人が見つかりました」
「本当ですか⁉」
先日の話ではなかなか見つからないみたいなことを言っていたので、こんなに早く現れるとは思っていなかった――
「ただ、ちょっと、問題がありまして――」
そう、言いづらそうな表情を若ダンナは見せる。
「問題――ですか?」
若ダンナの話では――その人は女性で、最近まで帝国商会で働いていたとのこと。
「帝国商会⁉ 大手じゃないですか⁉」
帝国ばかりでなく、ここ王国でも取引がある大陸一番の商業ギルドである。そこで、働いていたというのはスゴい!
「念のため、計算や伝票の見方などをいくつか出題したのですが、すべて正解でした」
商会で働いていたという話は本当だろう――そう、若ダンナは言う。
「それで、なにが問題なんですか?」
「実はその人、商会で働いていたこと以外、何も話そうとしてくれないんです」
「――えっ?」
生まれや年齢、商会の前は何をしてか――など、全て「話せない」と応えるらしい。
「はあ――」
さすがに、それではムリだな――そう彼は考えたのだが、次にこのレベルの人材が見つかるのかわからない――そう考え、一応、ボクに相談しようということになったらしい。
「どうします?」
「うーん……」
さすがに悩んでしまう。そんな怪しい人を雇いたくない気持ちもあるのだけど、そんなことを言っていられない状況でもある。このチャンスを逃して、しばらく、適当な人が現れなかったら――そう思うと簡単に『断る』という決断ができない。
「すみません。一度、その人と合わせてもらえませんか?」
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