落ちこぼれ盾職人は異世界のゲームチェンジャーとなる ~エルフ♀と同居しました。安定収入も得たのでスローライフを満喫します~

テツみン

文字の大きさ
上 下
44 / 60
第二章 盾職人は異世界の起業家となる

第44話 相談となる

しおりを挟む
 ディーノさんに対する質問をひととおり終えたところで――

「それでは、後日、冒険者ギルドを通してご返事いたしますので――」
 そう伝えて、今日のところは帰ってもらった。

 アリシアは、「ふう――」とため息をついて――
「面接って、するほうも緊張しますね」と、疲れた表情を見せる。


「まあ、そうだね――」とボクも苦笑いしたあと――

「それで、どうする?」
「どうする――と言いますと?」
「いや、たしかに能力としては申し分ないと思うけど、ほら、あれ――」
「――あれ?」

 アリシアはピンと来ないという顔だったので――

「いや、なんかしいでしょ? いきなり手を握ったり――アリシアがイヤな思いをしたんじゃないかって?」
 ボクがそう言うと、彼女は「フ、フ、フ」と笑う。
「そうですね。たしかになれなれしいところはありますね」
 そう言うので、「やっぱり――」と思う。

「だけど、イヤとかではありませんよ。まあ、ちょっとビックリしましたけど」
「――えっ?」

 イヤではない?
「でも、採用ということになれば、アリシアがディーノさんに仕事を教えることになるんだよ。たぶん、付きっきりで――」
「まあ、そうですね。でも、大丈夫ですよ」
 大丈夫?

「はい、魔石に魔法を封じ込めることにとても興味をもっていたので、まじめにやってくれると思います。それに、一緒に仕事して楽しそうですし」
「――えっ?」

 一緒に仕事をして楽しそう?
 それって、どういう意味?

「私はかまいませんので、採用するかどうかはヒロトさんのご判断におまかせします」
 そう彼女はニッコリした。

 ボクの判断にまかせる――と言われても……

 ディーノさんはSランク冒険者で能力的には申し分ない。そして、アリシアも大丈夫だと言う。
 正直、彼のような女性にしい人は苦手なのだけど、自分の好きキライで採用していては、経営者としてきっと良くないことだろう――
 そう、自分に言い聞かせる。

「それじゃ、採用ということで――」
 と、彼女に伝えると――
「はい!」とうれしそうに返事をした。
 その顔を見て、かえってモヤモヤした気分になる。

「冒険者ギルドへの返事は明日にするね」
「はい、それでイイと思います」

 こうして、まず一人目の採用が決まるのであった。 
 

 そして翌日――

「ちわぁ! 王都物産です! 商品を受け取りにきましたぁ!」
 そういう元気な声が聞こえる。

「ああ、ご苦労さまです。準備してありますので、こちらを――」
「ありがとうございます! それと、ウチの若ダンナから言伝ことづてを預かってます」
 ――言伝?

「はい。このあいだお願いされた、人材の件で相談したいことがあるそうです」
「人材の件?」

 ボクは王都物産の若ダンナに、部材の発注や経理ができる人をひとり頼めないか――そうお願いしていた。きっと、そのことだろう。

「わかりました。午後、お伺いすると伝えてください」
 ちょうど、冒険者ギルドにディーノさんを採用すると連絡しなければならなかったので、そのついでに行こうと考えた。

 そして――

 冒険者ギルドに寄ったあと、そのまま、王都物産のお店に顔を出す。

「すみません。若ダンナはいますか?」
 すぐに、奥から若ダンナが現れた。

「ヒロトさん、お忙しいところありがとうございます。どうぞこちらに――」
 そう言われ、小部屋へ連れていかれる。

「早速ですが、頼まれていた発注、経理ができるという人が見つかりました」
「本当ですか⁉」

 先日の話ではなかなか見つからないみたいなことを言っていたので、こんなに早く現れるとは思っていなかった――

「ただ、ちょっと、問題がありまして――」
 そう、言いづらそうな表情を若ダンナは見せる。

「問題――ですか?」

 若ダンナの話では――その人は女性で、最近まで帝国商会で働いていたとのこと。
「帝国商会⁉ 大手じゃないですか⁉」

 帝国ばかりでなく、ここ王国でも取引がある大陸一番の商業ギルドである。そこで、働いていたというのはスゴい!

「念のため、計算や伝票の見方などをいくつか出題したのですが、すべて正解でした」
 商会で働いていたという話は本当だろう――そう、若ダンナは言う。

「それで、なにが問題なんですか?」
「実はその人、商会で働いていたこと以外、何も話そうとしてくれないんです」
「――えっ?」

 生まれや年齢、商会の前は何をしてか――など、全て「話せない」と応えるらしい。
「はあ――」

 さすがに、それではムリだな――そう彼は考えたのだが、次にこのレベルの人材が見つかるのかわからない――そう考え、一応、ボクに相談しようということになったらしい。

「どうします?」
「うーん……」
 さすがに悩んでしまう。そんな怪しい人を雇いたくない気持ちもあるのだけど、そんなことを言っていられない状況でもある。このチャンスを逃して、しばらく、適当な人が現れなかったら――そう思うと簡単に『断る』という決断ができない。

「すみません。一度、その人と合わせてもらえませんか?」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!

仁徳
ファンタジー
あらすじ リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。 彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。 ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。 途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。 ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。 彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。 リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。 一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。 そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。 これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!

【完結】神スキル拡大解釈で底辺パーティから成り上がります!

まにゅまにゅ
ファンタジー
平均レベルの低い底辺パーティ『龍炎光牙《りゅうえんこうが》』はオーク一匹倒すのにも命懸けで注目もされていないどこにでもでもいる冒険者たちのチームだった。 そんなある日ようやく資金も貯まり、神殿でお金を払って恩恵《ギフト》を授かるとその恩恵《ギフト》スキルは『拡大解釈』というもの。 その効果は魔法やスキルの内容を拡大解釈し、別の効果を引き起こせる、という神スキルだった。その拡大解釈により色んなものを回復《ヒール》で治したり強化《ブースト》で獲得経験値を増やしたりととんでもない効果を発揮する! 底辺パーティ『龍炎光牙』の大躍進が始まる! 第16回ファンタジー大賞奨励賞受賞作です。

巻き込まれ召喚・途中下車~幼女神の加護でチート?

サクラ近衛将監
ファンタジー
商社勤務の社会人一年生リューマが、偶然、勇者候補のヤンキーな連中の近くに居たことから、一緒に巻き込まれて異世界へ強制的に召喚された。万が一そのまま召喚されれば勇者候補ではないために何の力も与えられず悲惨な結末を迎える恐れが多分にあったのだが、その召喚に気づいた被召喚側世界(地球)の神様と召喚側世界(異世界)の神様である幼女神のお陰で助けられて、一旦狭間の世界に留め置かれ、改めて幼女神の加護等を貰ってから、異世界ではあるものの召喚場所とは異なる場所に無事に転移を果たすことができた。リューマは、幼女神の加護と付与された能力のおかげでチートな成長が促され、紆余曲折はありながらも異世界生活を満喫するために生きて行くことになる。 *この作品は「カクヨム」様にも投稿しています。 **週1(土曜日午後9時)の投稿を予定しています。**

ルピナス

桜庭かなめ
恋愛
 高校2年生の藍沢直人は後輩の宮原彩花と一緒に、学校の寮の2人部屋で暮らしている。彩花にとって直人は不良達から救ってくれた大好きな先輩。しかし、直人にとって彩花は不良達から救ったことを機に一緒に住んでいる後輩の女の子。直人が一定の距離を保とうとすることに耐えられなくなった彩花は、ある日の夜、手錠を使って直人を束縛しようとする。  そして、直人のクラスメイトである吉岡渚からの告白をきっかけに直人、彩花、渚の恋物語が激しく動き始める。  物語の鍵は、人の心とルピナスの花。たくさんの人達の気持ちが温かく、甘く、そして切なく交錯する青春ラブストーリーシリーズ。 ※特別編-入れ替わりの夏-は『ハナノカオリ』のキャラクターが登場しています。  ※1日3話ずつ更新する予定です。

勇者がアレなので小悪党なおじさんが女に転生されられました

ぽとりひょん
ファンタジー
熱中症で死んだ俺は、勇者が召喚される16年前へ転生させられる。16年で宮廷魔法士になって、アレな勇者を導かなくてはならない。俺はチートスキルを隠して魔法士に成り上がって行く。勇者が召喚されたら、魔法士としてパーティーに入り彼を導き魔王を倒すのだ。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...