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第二章 盾職人は異世界の起業家となる
第40話 大所帯となる
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新しく工房の一員となった盾職人の名前は、順番にボブ、サム、ジャックという。
彼らはそれぞれ家族を持っているので、毎朝、この工房へ通ってもらうことにした。
「それじゃ、作ってほしい盾の図面を渡します」
昨日の夜、羊皮紙にボクが描いた盾の展開図である。図面なんて大学で描いて以来だったが、描き始めると、けっこうすんなりできた。
「これ、お頭が作ったのですか?」
図面を見ると、みんな、同じように驚く。
この世界の職人は、図面なんて持たない。みんな、頭の中に自分の作る製品の設計図を持っていて、あとは経験とカンで作り上げている。
しかし、それでは完成した製品にバラツキが発生する。数人の職人が同じ製品を作ろうとするなら、図面は必需品だ。
「図面には材料、許容できる長さ、厚みの範囲、表面の仕上げ具合も入れました。そして、これも渡しておきます」
そう言って、作ってほしい盾の見本、そして竹でできた棒。
「――? この棒は?」
「それは、定規です」
「じょうぎ?」
竹に目盛を付けただけの品物だけど、これで長さ、厚みを確認してほしいと頼んだ。
そこまで説明すると、職人たちは目を丸くする。
「これはスゴい……お頭が作った盾がみんな同じ大きさでできている理由がわかった」
まあ、これも大学の授業で習ったことなんだけどね。
でも、会社に入ったら、技術職ではなく営業職に回されてしまったんだよなあ……
「そうだろう! オレはもうこのずめんとじょうぎを使っているぞ!」
タバサは鼻を擦りながら、なぜか自慢している。使っているだけじゃなく、図面どおりに製品ができるように早くなろうな。
「よし! それじゃ、オレも始めるか!」
「ワシも始めよう!」
「ワイもだ!」
ボブ、サム、ジャックも腕まくりをして、さっそく作業に取りかかった。
「みんな、イイ人ばかりでヨカッタですね!」
アリシアがウレシそうにボクに話しかけた。
「うん、そうだね」
これでずいぶんと魔盾作りがはかどるだろう。
「アリシア! 遊びにきてやったぞ!」
工房の入り口がドンッ! と開く。そして、シャルロット殿下が現れた。
「殿下、いらっしゃいませ。ですが、今日はお仕事があるので、一緒に遊ぶことができません」
アリシアが申し訳なさそうに応える。
「なんだ、つまらないのう」と不満をつぶやく殿下。というか、いくらボクたちが王宮の敷地内に引っ越したからって、毎日来るつもりか?
「殿下、あそぼ」
「おお、サリアにタロー! よかろう、遊ぼうぞ」
うーん、ここはいつから保育所になったのだろ……まあ、いっか。部屋が余っているのだから、ひとつ、遊び場に改造するかな?
「さて、それじゃ、ボクも仕事を――」
「何を言っている、ヒロト。貴様は剣術の訓練だ」
いつの間にか、ジェシカさんがボクの後ろに立って、耳元でそんなことをささやく。
「いや、ボクは盾を作らないと……」
そもそも、盾職人だから、いくら剣術を練習したってレベルが上がらないんだけど?
「しっかり鍛錬しなければ、立派な殿下の下僕になれんぞ」
いや、だから下僕になった覚えは……
「お頭兼下僕ですか? お忙しいですな。まあ、こちらはオレらに任せてください」
ボブ、サム、ジャックが笑う。いや、助けてよ。というより、ボクより三人のほうが、よっぽど腕力とかありそうなんだけどぉ⁉
こうして、いつの間にか大所帯になったボクの工房。
なんか、いろいろ大変なことはあったけど、今のところ順調です。
彼らはそれぞれ家族を持っているので、毎朝、この工房へ通ってもらうことにした。
「それじゃ、作ってほしい盾の図面を渡します」
昨日の夜、羊皮紙にボクが描いた盾の展開図である。図面なんて大学で描いて以来だったが、描き始めると、けっこうすんなりできた。
「これ、お頭が作ったのですか?」
図面を見ると、みんな、同じように驚く。
この世界の職人は、図面なんて持たない。みんな、頭の中に自分の作る製品の設計図を持っていて、あとは経験とカンで作り上げている。
しかし、それでは完成した製品にバラツキが発生する。数人の職人が同じ製品を作ろうとするなら、図面は必需品だ。
「図面には材料、許容できる長さ、厚みの範囲、表面の仕上げ具合も入れました。そして、これも渡しておきます」
そう言って、作ってほしい盾の見本、そして竹でできた棒。
「――? この棒は?」
「それは、定規です」
「じょうぎ?」
竹に目盛を付けただけの品物だけど、これで長さ、厚みを確認してほしいと頼んだ。
そこまで説明すると、職人たちは目を丸くする。
「これはスゴい……お頭が作った盾がみんな同じ大きさでできている理由がわかった」
まあ、これも大学の授業で習ったことなんだけどね。
でも、会社に入ったら、技術職ではなく営業職に回されてしまったんだよなあ……
「そうだろう! オレはもうこのずめんとじょうぎを使っているぞ!」
タバサは鼻を擦りながら、なぜか自慢している。使っているだけじゃなく、図面どおりに製品ができるように早くなろうな。
「よし! それじゃ、オレも始めるか!」
「ワシも始めよう!」
「ワイもだ!」
ボブ、サム、ジャックも腕まくりをして、さっそく作業に取りかかった。
「みんな、イイ人ばかりでヨカッタですね!」
アリシアがウレシそうにボクに話しかけた。
「うん、そうだね」
これでずいぶんと魔盾作りがはかどるだろう。
「アリシア! 遊びにきてやったぞ!」
工房の入り口がドンッ! と開く。そして、シャルロット殿下が現れた。
「殿下、いらっしゃいませ。ですが、今日はお仕事があるので、一緒に遊ぶことができません」
アリシアが申し訳なさそうに応える。
「なんだ、つまらないのう」と不満をつぶやく殿下。というか、いくらボクたちが王宮の敷地内に引っ越したからって、毎日来るつもりか?
「殿下、あそぼ」
「おお、サリアにタロー! よかろう、遊ぼうぞ」
うーん、ここはいつから保育所になったのだろ……まあ、いっか。部屋が余っているのだから、ひとつ、遊び場に改造するかな?
「さて、それじゃ、ボクも仕事を――」
「何を言っている、ヒロト。貴様は剣術の訓練だ」
いつの間にか、ジェシカさんがボクの後ろに立って、耳元でそんなことをささやく。
「いや、ボクは盾を作らないと……」
そもそも、盾職人だから、いくら剣術を練習したってレベルが上がらないんだけど?
「しっかり鍛錬しなければ、立派な殿下の下僕になれんぞ」
いや、だから下僕になった覚えは……
「お頭兼下僕ですか? お忙しいですな。まあ、こちらはオレらに任せてください」
ボブ、サム、ジャックが笑う。いや、助けてよ。というより、ボクより三人のほうが、よっぽど腕力とかありそうなんだけどぉ⁉
こうして、いつの間にか大所帯になったボクの工房。
なんか、いろいろ大変なことはあったけど、今のところ順調です。
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