38 / 60
第二章 盾職人は異世界の起業家となる
第38話 家族となる
しおりを挟む
翌日、タバサたち三人も王宮の工房に移り住む許可をもらったので、さっそく、引っ越しの準備を始めた。
とはいっても、持っていくのは盾作りに必要な工具類と、生活品くらい。それも、王宮の使用人が荷馬車を出して運んでくれたので、一回でほとんどの荷物が運べてしまった。
あとは、倉庫にある荷物くらいだが、それは急ぎではないので、時間に余裕ができたら運んでくればイイ。
「うわぁ――」
タバサ、タロー、サリアが新しい工房の中に入ると、その広さに口を開けて見入っていた。
「ここが、ボクたちのいえになるの?」
タローがまだ信じられないという顔で言うので、「そうだよ」と言ってあげた。
吹き抜けの居間から螺旋階段で二階に上がる。一番奥の比較的大きな部屋をタバサたちが使うように決めた。
「ここにベッドを三つ――一つは二段ベッドがイイかな?」
ボクがそう言うと、タバサが「ベッドなんて持ってないぞ」と言い返してくる。
「買うんだよ。これから」
「――えっ?」
びっくりするタバサ。「そんなおカネなんてない」と言う。
「ボクからのプレゼントだよ。まあ、その分、お仕事をがんばってもらうけどね」
さっそく、午後から買いに行こうと話す。
ベッドで寝られるとはしゃぐ三人を見るとなんかほほ笑ましい。
「それで、ボクがこの部屋で、こっちの部屋がアリシアでイイかな?」
アリシアが「はい!」とうれしそうに返事をした。
するとなぜかタバサが不思議そうな顔をする。
「――? タバサ、どうしたの?」
「なぜ、二人は別々の部屋なんだ?」
「――えっ?」
「夫婦は一緒に寝るモノだろ?」
「なっ!」
ボクとアリシアは二人一緒に変な声をあげてしまった。
「ち、違う! ボクたちはそういう仲じゃないから!」
ボクはあわてて否定する。アリシアは顔を真っ赤にしてうつむいてしまった……
「そうなのか? ならなぜ、二人は一緒に住んでいるんだ?」
「――えっ?」
いきなりそう言われて、なんて応えればイイのか困ってしまう。
「えーと……」
ボクはアリシアと一緒に住むことになった経緯を話した。
「ふーん。つまり、ヒロトはアリシアを拾った――ということだな?」
拾った……って、子猫みたいに――まあ、そうなのかもしれないけど……
「それじゃ、ボクとサリアと同じだね」とタローが言う。
「えっ? それってどういう――?」
タローもサリアも身寄りのない子供だったのをタバサの父親が連れてきて一緒に住むことになったそうだ。
「そう……だったんだ」
タバサも孤児だったそうで、三人とも血のつながりはないらしい。
三人ともいろいろ苦労したんだな――
「よし! それじゃ、引っ越しのお祝いにお昼は美味しいモノを食べよう!」
荷物の整理はまだ終わっていなかったが、みんなで市場に行くと、それぞれ食べたいモノを買ってきた。
そして、真新しい丸く白いテーブルに五人が座り、たくさん並べられた料理を見て、目を輝かせる。
「なんか、家族ができたようで、ウレシイです!」
アリシアは満面の笑みだった。
家族――? うん、そうだね。
「それじゃ、家族五人新しい門出を祝って、かんぱーい!」
みんな、それぞれの飲み物を手にして、「かんぱい!」と声をあげる。
こうして、長い間ひとり暮らしだったボクは、たった一ヵ月で五人という大所帯の家族を持つことになった。
とはいっても、持っていくのは盾作りに必要な工具類と、生活品くらい。それも、王宮の使用人が荷馬車を出して運んでくれたので、一回でほとんどの荷物が運べてしまった。
あとは、倉庫にある荷物くらいだが、それは急ぎではないので、時間に余裕ができたら運んでくればイイ。
「うわぁ――」
タバサ、タロー、サリアが新しい工房の中に入ると、その広さに口を開けて見入っていた。
「ここが、ボクたちのいえになるの?」
タローがまだ信じられないという顔で言うので、「そうだよ」と言ってあげた。
吹き抜けの居間から螺旋階段で二階に上がる。一番奥の比較的大きな部屋をタバサたちが使うように決めた。
「ここにベッドを三つ――一つは二段ベッドがイイかな?」
ボクがそう言うと、タバサが「ベッドなんて持ってないぞ」と言い返してくる。
「買うんだよ。これから」
「――えっ?」
びっくりするタバサ。「そんなおカネなんてない」と言う。
「ボクからのプレゼントだよ。まあ、その分、お仕事をがんばってもらうけどね」
さっそく、午後から買いに行こうと話す。
ベッドで寝られるとはしゃぐ三人を見るとなんかほほ笑ましい。
「それで、ボクがこの部屋で、こっちの部屋がアリシアでイイかな?」
アリシアが「はい!」とうれしそうに返事をした。
するとなぜかタバサが不思議そうな顔をする。
「――? タバサ、どうしたの?」
「なぜ、二人は別々の部屋なんだ?」
「――えっ?」
「夫婦は一緒に寝るモノだろ?」
「なっ!」
ボクとアリシアは二人一緒に変な声をあげてしまった。
「ち、違う! ボクたちはそういう仲じゃないから!」
ボクはあわてて否定する。アリシアは顔を真っ赤にしてうつむいてしまった……
「そうなのか? ならなぜ、二人は一緒に住んでいるんだ?」
「――えっ?」
いきなりそう言われて、なんて応えればイイのか困ってしまう。
「えーと……」
ボクはアリシアと一緒に住むことになった経緯を話した。
「ふーん。つまり、ヒロトはアリシアを拾った――ということだな?」
拾った……って、子猫みたいに――まあ、そうなのかもしれないけど……
「それじゃ、ボクとサリアと同じだね」とタローが言う。
「えっ? それってどういう――?」
タローもサリアも身寄りのない子供だったのをタバサの父親が連れてきて一緒に住むことになったそうだ。
「そう……だったんだ」
タバサも孤児だったそうで、三人とも血のつながりはないらしい。
三人ともいろいろ苦労したんだな――
「よし! それじゃ、引っ越しのお祝いにお昼は美味しいモノを食べよう!」
荷物の整理はまだ終わっていなかったが、みんなで市場に行くと、それぞれ食べたいモノを買ってきた。
そして、真新しい丸く白いテーブルに五人が座り、たくさん並べられた料理を見て、目を輝かせる。
「なんか、家族ができたようで、ウレシイです!」
アリシアは満面の笑みだった。
家族――? うん、そうだね。
「それじゃ、家族五人新しい門出を祝って、かんぱーい!」
みんな、それぞれの飲み物を手にして、「かんぱい!」と声をあげる。
こうして、長い間ひとり暮らしだったボクは、たった一ヵ月で五人という大所帯の家族を持つことになった。
12
お気に入りに追加
74
あなたにおすすめの小説
ちょいダン? ~仕事帰り、ちょいとダンジョンに寄っていかない?~
テツみン
SF
東京、大手町の地下に突如現れたダンジョン。通称、『ちょいダン』。そこは、仕事帰りに『ちょい』と冒険を楽しむ場所。
大手町周辺の企業で働く若手サラリーマンたちが『ダンジョン』という娯楽を手に入れ、新たなライフスタイルを生み出していく――
これは、そんな日々を綴った物語。
今日も聖女は拳をふるう
こう7
ファンタジー
この世界オーロラルでは、12歳になると各国の各町にある教会で洗礼式が行われる。
その際、神様から聖女の称号を承ると、どんな傷も病気もあっという間に直す回復魔法を習得出来る。
そんな称号を手に入れたのは、小さな小さな村に住んでいる1人の女の子だった。
女の子はふと思う、「どんだけ怪我しても治るなら、いくらでも強い敵に突貫出来る!」。
これは、男勝りの脳筋少女アリスの物語。
薬漬けレーサーの異世界学園生活〜無能被験体として捨てられたが、神族に拾われたことで、ダークヒーローとしてナンバーワン走者に君臨します〜
仁徳
ファンタジー
少年はとある研究室で実験動物にされていた。毎日薬漬けの日々を送っていたある日、薬を投与し続けても、魔法もユニークスキルも発動できない落ちこぼれの烙印を押され、魔の森に捨てられる。
森の中で魔物が現れ、少年は死を覚悟したその時、1人の女性に助けられた。
その後、女性により隠された力を引き出された少年は、シャカールと名付けられ、魔走学園の唯一の人間魔競走者として生活をすることになる。
これは、薬漬けだった主人公が、走者として成り上がり、ざまぁやスローライフをしながら有名になって、世界最強になって行く物語
今ここに、新しい異世界レースものが開幕する!スピード感のあるレースに刮目せよ!
競馬やレース、ウマ娘などが好きな方は、絶対に楽しめる内容になっているかと思います。レース系に興味がない方でも、異世界なので、ファンタジー要素のあるレースになっていますので、楽しめる内容になっています。
まずは1話だけでも良いので試し読みをしていただけると幸いです。
異世界悪霊譚 ~無能な兄に殺され悪霊になってしまったけど、『吸収』で魔力とスキルを集めていたら世界が畏怖しているようです~
テツみン
ファンタジー
**救国編完結!**
『鑑定——』
エリオット・ラングレー
種族 悪霊
HP 測定不能
MP 測定不能
スキル 「鑑定」、「無限収納」、「全属性魔法」、「思念伝達」、「幻影」、「念動力」……他、多数
アビリティ 「吸収」、「咆哮」、「誘眠」、「脱兎」、「猪突」、「貪食」……他、多数
次々と襲ってくる悪霊を『吸収』し、魔力とスキルを獲得した結果、エリオットは各国が恐れるほどの強大なチカラを持つ存在となっていた!
だけど、ステータス表をよーーーーっく見てほしい! そう、種族のところを!
彼も悪霊――つまり「死んでいた」のだ!
これは、無念の死を遂げたエリオット少年が悪霊となり、復讐を果たす――つもりが、なぜか王国の大惨事に巻き込まれ、救国の英雄となる話………悪霊なんだけどね。
幼馴染と話し合って恋人になってみた→夫婦になってみた
久野真一
青春
最近の俺はちょっとした悩みを抱えている。クラスメート曰く、
幼馴染である百合(ゆり)と仲が良すぎるせいで付き合ってるか気になるらしい。
堀川百合(ほりかわゆり)。美人で成績優秀、運動完璧だけど朝が弱くてゲーム好きな天才肌の女の子。
猫みたいに気まぐれだけど優しい一面もあるそんな女の子。
百合とはゲームや面白いことが好きなところが馬が合って仲の良い関係を続けている。
そんな百合は今年は隣のクラス。俺と付き合ってるのかよく勘ぐられるらしい。
男女が仲良くしてるからすぐ付き合ってるだの何だの勘ぐってくるのは困る。
とはいえ。百合は異性としても魅力的なわけで付き合ってみたいという気持ちもある。
そんなことを悩んでいたある日の下校途中。百合から
「修二は私と恋人になりたい?」
なんて聞かれた。考えた末の言葉らしい。
百合としても満更じゃないのなら恋人になるのを躊躇する理由もない。
「なれたらいいと思ってる」
少し曖昧な返事とともに恋人になった俺たち。
食べさせあいをしたり、キスやその先もしてみたり。
恋人になった後は今までよりもっと楽しい毎日。
そんな俺達は大学に入る時に籍を入れて学生夫婦としての生活も開始。
夜一緒に寝たり、一緒に大学の講義を受けたり、新婚旅行に行ったりと
新婚生活も満喫中。
これは俺と百合が恋人としてイチャイチャしたり、
新婚生活を楽しんだりする、甘くてほのぼのとする日常のお話。
素質ナシの転生者、死にかけたら最弱最強の職業となり魔法使いと旅にでる。~趣味で伝説を追っていたら伝説になってしまいました~
シロ鼬
ファンタジー
才能、素質、これさえあれば金も名誉も手に入る現代。そんな中、足掻く一人の……おっさんがいた。
羽佐間 幸信(はざま ゆきのぶ)38歳――完全完璧(パーフェクト)な凡人。自分の中では得意とする持ち前の要領の良さで頑張るが上には常に上がいる。いくら努力しようとも決してそれらに勝つことはできなかった。
華のない彼は華に憧れ、いつしか伝説とつくもの全てを追うようになり……彼はある日、一つの都市伝説を耳にする。
『深夜、山で一人やまびこをするとどこかに連れていかれる』
山頂に登った彼は一心不乱に叫んだ…………そして酸欠になり足を滑らせ滑落、瀕死の状態となった彼に死が迫る。
――こっちに……を、助けて――
「何か……聞こえる…………伝説は……あったんだ…………俺……いくよ……!」
こうして彼は記憶を持ったまま転生、声の主もわからぬまま何事もなく10歳に成長したある日――
最強の職業は付与魔術師かもしれない
カタナヅキ
ファンタジー
現実世界から異世界に召喚された5人の勇者。彼等は同じ高校のクラスメイト同士であり、彼等を召喚したのはバルトロス帝国の3代目の国王だった。彼の話によると現在こちらの世界では魔王軍と呼ばれる組織が世界各地に出現し、数多くの人々に被害を与えている事を伝える。そんな魔王軍に対抗するために帝国に代々伝わる召喚魔法によって異世界から勇者になれる素質を持つ人間を呼びだしたらしいが、たった一人だけ巻き込まれて召喚された人間がいた。
召喚された勇者の中でも小柄であり、他の4人には存在するはずの「女神の加護」と呼ばれる恩恵が存在しなかった。他の勇者に巻き込まれて召喚された「一般人」と判断された彼は魔王軍に対抗できないと見下され、召喚を実行したはずの帝国の人間から追い出される。彼は普通の魔術師ではなく、攻撃魔法は覚えられない「付与魔術師」の職業だったため、この職業の人間は他者を支援するような魔法しか覚えられず、強力な魔法を扱えないため、最初から戦力外と判断されてしまった。
しかし、彼は付与魔術師の本当の力を見抜き、付与魔法を極めて独自の戦闘方法を見出す。後に「聖天魔導士」と名付けられる「霧崎レナ」の物語が始まる――
※今月は毎日10時に投稿します。
ぽっちゃり女子の異世界人生
猫目 しの
ファンタジー
大抵のトリップ&転生小説は……。
最強主人公はイケメンでハーレム。
脇役&巻き込まれ主人公はフツメンフツメン言いながらも実はイケメンでモテる。
落ちこぼれ主人公は可愛い系が多い。
=主人公は男でも女でも顔が良い。
そして、ハンパなく強い。
そんな常識いりませんっ。
私はぽっちゃりだけど普通に生きていたい。
【エブリスタや小説家になろうにも掲載してます】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる