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第二章 盾職人は異世界の起業家となる
第37話 内見となる
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シャルロット殿下とジェシカさんが持ってきたお話を詳しく聞くために、ボクとアリシアは王宮へ向かった。
「この工房は彫刻師の名人が使っていたのだが、先月、引退して田舎へ帰ったんだ」
ボクたちはスチュワート殿下から直々に工房を案内してもらっていた。
荷物はすでに前の主が持ち帰っていて、残った家具や備品の整理や清掃を終えたばかりだとか。
「ここをボクたちに貸していただけると?」
ボクとアリシアは顔を見合わせる。それは、工房というより小さなお屋敷。部屋の数はざっと十を超えており、前の主がアトリエとして使っていたという居間は、二、三十人ほどの人が集まってパーティーを開けるくらい広い。
「あのう……ちょっと、大きくありませんか?」
アリシアが恐縮しながらスチュワート殿下に申し上げる。
「なに、大きいことに越したことはない。もちろん家賃は取らないよ」
「家賃を払わなくてもいいのですか?」
ここは、王室が支援する芸術家の工房だから、その経費は王室の予算から出るそうだ。
「掃除が面倒だというのなら、使用人を雇えばいい。その給料も王室から出してあげよう」
「えっ? 使用人のお給料も⁉」
「つまり、二人は王室お抱えの職人になるということだ」
「えっ? 王室お抱え⁉」
いままで王室が支援してきたのは、彫刻や絵画、それに音楽家のような芸術家ばかりだった。なので、武器に関わる職人を王宮の工房に招き入れたことは、今までなかったらしい。つまり、初めて王室が抱える職人となるわけだ。
「まあ、それだけヒロト君たちがこの王国にとって重要な人物だと判断してのことなのだよ」
魔盾のウワサは既に他国まで及んでいた。おそらく魔族にも知られていることだろう。魔盾の情報を盗もうと、他国の諜報部員が動いている可能性だってある。「ヒロト君たちの命を狙ってくる者もいるかもしれない――」なんて、殿下は説明するのだった。
「えっ? ボクたちの命を⁉」
「実際に、キミ達の工房近くで不穏な人物を見かけたと、見回っていた衛兵から連絡があった」
「は、はあ……」
きっと、それはタバサのことだな……ボクは苦笑いする。
「という事情もあって、キミ達には一刻も早く、こちらへ移り住んでほしい」
皇太子殿下にそう言われ、もはや断ることもできなくなったボクたち。だからといって、こんなに大きな工房を二人で住むなんて……
そのとき、ボクは「はっ――」と思い、アリシアに耳元でささやいた。
「えっ?」
アリシアは最初、おどろいた表情を見せたが、「それはイイ考えだと思います!」と笑顔で言ってくれた。だから、ボクは殿下にあるお願いをする。
「実は、今日から一緒に仕事をしてくれる人たちができたんです。その人たちも一緒に住んでもらってイイですか?」
もちろん、タバサたちのことだ。
「えっ? うーん。まずはその人たちの素性を確認してからになるな……」
スチュワート殿下は悩ましい表情を見せる。なので、ボクは一緒にいたシャルロット殿下とジェシカさんに、タバサたちのことを説明してほしいと頼んだ。
「そうか……話はわかった。だけど、やはり陛下と宰相の許可を取ってからになる」
まあ多分、大丈夫だという話を殿下がしてくれたので、ボクたちは大喜びする。
「それじゃ、さっそく帰って、タバサたちの考えを聞くことにしよう!」
「この工房は彫刻師の名人が使っていたのだが、先月、引退して田舎へ帰ったんだ」
ボクたちはスチュワート殿下から直々に工房を案内してもらっていた。
荷物はすでに前の主が持ち帰っていて、残った家具や備品の整理や清掃を終えたばかりだとか。
「ここをボクたちに貸していただけると?」
ボクとアリシアは顔を見合わせる。それは、工房というより小さなお屋敷。部屋の数はざっと十を超えており、前の主がアトリエとして使っていたという居間は、二、三十人ほどの人が集まってパーティーを開けるくらい広い。
「あのう……ちょっと、大きくありませんか?」
アリシアが恐縮しながらスチュワート殿下に申し上げる。
「なに、大きいことに越したことはない。もちろん家賃は取らないよ」
「家賃を払わなくてもいいのですか?」
ここは、王室が支援する芸術家の工房だから、その経費は王室の予算から出るそうだ。
「掃除が面倒だというのなら、使用人を雇えばいい。その給料も王室から出してあげよう」
「えっ? 使用人のお給料も⁉」
「つまり、二人は王室お抱えの職人になるということだ」
「えっ? 王室お抱え⁉」
いままで王室が支援してきたのは、彫刻や絵画、それに音楽家のような芸術家ばかりだった。なので、武器に関わる職人を王宮の工房に招き入れたことは、今までなかったらしい。つまり、初めて王室が抱える職人となるわけだ。
「まあ、それだけヒロト君たちがこの王国にとって重要な人物だと判断してのことなのだよ」
魔盾のウワサは既に他国まで及んでいた。おそらく魔族にも知られていることだろう。魔盾の情報を盗もうと、他国の諜報部員が動いている可能性だってある。「ヒロト君たちの命を狙ってくる者もいるかもしれない――」なんて、殿下は説明するのだった。
「えっ? ボクたちの命を⁉」
「実際に、キミ達の工房近くで不穏な人物を見かけたと、見回っていた衛兵から連絡があった」
「は、はあ……」
きっと、それはタバサのことだな……ボクは苦笑いする。
「という事情もあって、キミ達には一刻も早く、こちらへ移り住んでほしい」
皇太子殿下にそう言われ、もはや断ることもできなくなったボクたち。だからといって、こんなに大きな工房を二人で住むなんて……
そのとき、ボクは「はっ――」と思い、アリシアに耳元でささやいた。
「えっ?」
アリシアは最初、おどろいた表情を見せたが、「それはイイ考えだと思います!」と笑顔で言ってくれた。だから、ボクは殿下にあるお願いをする。
「実は、今日から一緒に仕事をしてくれる人たちができたんです。その人たちも一緒に住んでもらってイイですか?」
もちろん、タバサたちのことだ。
「えっ? うーん。まずはその人たちの素性を確認してからになるな……」
スチュワート殿下は悩ましい表情を見せる。なので、ボクは一緒にいたシャルロット殿下とジェシカさんに、タバサたちのことを説明してほしいと頼んだ。
「そうか……話はわかった。だけど、やはり陛下と宰相の許可を取ってからになる」
まあ多分、大丈夫だという話を殿下がしてくれたので、ボクたちは大喜びする。
「それじゃ、さっそく帰って、タバサたちの考えを聞くことにしよう!」
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