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第二章 盾職人は異世界の起業家となる
第35話 師匠となる
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翌朝、指定した時間ちょうどにタバサは姿を現した。自分の工具もひととおり持ってきている。
その意気込みは買ってあげてもイイ。
「師匠! よろしくお願いします!」
師匠って……まあイイか……
ボクは彼女の前に、材料と作ってほしい盾の見本を置いた。
「これと同じものを作ってほしいのだけど、イイ?」
「わかりました! 師匠!」
返事はとてもイイのだけど……
「そのう……師匠っていうのはやめてくれる?」
「わかりました! ではなんと呼べば?」
「ふつうにヒロトでいいよ」
「わかりました! ヒロト師匠!」
……まあ、いいか。
とりあえず、自分の仕事をやりながら様子をみる。一時間ほど経過。
「ヒロト師匠! できました!」
「えっ? もう?」
意外と腕が立つのだろうか? そう思って、できあがった盾を見る――
「うっ……」
ちょっと絶句する。まあ、一応カタチにはなっているのだけど……
「あのさタバサ、ここの釘の位置が違っているよ。あと、ここも金具から木材がはみ出している」
ボクが指摘した部分をタバサはのぞき見る。
「なるほど! そうか! もう一度やってみる!」
そう元気な返事が返ってきた。
「あと、全体的にカンナかけが足りない。これじゃ毛羽立って、その部分から割れたり、腐ったりしちゃうよ」
「わかった! やってみる!」
まあ、注意したところを素直に受け入れてもらえるのは、とてもありがたいことだ。
真剣な顔つきで作業を続けるタバサを見て、「ふう……」と、ため息をついた。
「タバサさんの腕前はどうですか?」
アリシアが心配して、ボクに話かけてくる。
「うん、まだ荒っぽいけど、作業は速いし、なにより真面目に取り組んでくれているから、結構早く、仕事を任せられるかも」
ボクがそう言うと、「それはよかったですね!」とアリシアもウレシそうだった。
それからも、何度かやり直ししながら、しだいにイイ出来になってきた。父親の仕事を手伝っていたことはある。
気がつけばお昼になっていた。
「ごはんの用意ができましたよ」
アリシアの声が聞こえてくる。
「タバサさんも一緒に食べませんか?」
「――えっ?」
おどろくタバサをボクは手招きする。
「アリシアの料理はとてもオイシイよ」
そう話すと、アリシアはテレた顔になる。
「オレもイイのか?」
恐る恐る近づくタバサ。料理を見てノドを鳴らしていた。
「ほら、席に座って」
そううながすのだけど、なぜかタバサは座ろうとしない。そして、急にこんなことを言い出す。
「この料理、持ち帰ってイイか?」
「えっ?」
アリシアと二人で驚いてしまう。持ち帰るって?
「弟たちにこの料理、食べさせてあげたい」
タバサとその弟妹は、朝、昼、晩、パンとミルクだけなのだそうだ。
「そうか……それじゃ、ココに呼んだらどう?」
ボクがそう提案すると、タバサはまたびっくりした表情を見せる。
「イイのか?」
アリシアに「まだ料理ある?」とたずねると、「はい、ありますよ」とニッコリされる。
「だそうだよ。呼んできなよ」
ボクがそう言うと、タバサはよろこんで「それじゃ、連れてくる!」と工房を飛び出して行った。
「ハ、ハ、ハ――なんか、にぎやかになりそうだね?」
アリシアも、「はい、楽しみです!」と言ってくれた。
その意気込みは買ってあげてもイイ。
「師匠! よろしくお願いします!」
師匠って……まあイイか……
ボクは彼女の前に、材料と作ってほしい盾の見本を置いた。
「これと同じものを作ってほしいのだけど、イイ?」
「わかりました! 師匠!」
返事はとてもイイのだけど……
「そのう……師匠っていうのはやめてくれる?」
「わかりました! ではなんと呼べば?」
「ふつうにヒロトでいいよ」
「わかりました! ヒロト師匠!」
……まあ、いいか。
とりあえず、自分の仕事をやりながら様子をみる。一時間ほど経過。
「ヒロト師匠! できました!」
「えっ? もう?」
意外と腕が立つのだろうか? そう思って、できあがった盾を見る――
「うっ……」
ちょっと絶句する。まあ、一応カタチにはなっているのだけど……
「あのさタバサ、ここの釘の位置が違っているよ。あと、ここも金具から木材がはみ出している」
ボクが指摘した部分をタバサはのぞき見る。
「なるほど! そうか! もう一度やってみる!」
そう元気な返事が返ってきた。
「あと、全体的にカンナかけが足りない。これじゃ毛羽立って、その部分から割れたり、腐ったりしちゃうよ」
「わかった! やってみる!」
まあ、注意したところを素直に受け入れてもらえるのは、とてもありがたいことだ。
真剣な顔つきで作業を続けるタバサを見て、「ふう……」と、ため息をついた。
「タバサさんの腕前はどうですか?」
アリシアが心配して、ボクに話かけてくる。
「うん、まだ荒っぽいけど、作業は速いし、なにより真面目に取り組んでくれているから、結構早く、仕事を任せられるかも」
ボクがそう言うと、「それはよかったですね!」とアリシアもウレシそうだった。
それからも、何度かやり直ししながら、しだいにイイ出来になってきた。父親の仕事を手伝っていたことはある。
気がつけばお昼になっていた。
「ごはんの用意ができましたよ」
アリシアの声が聞こえてくる。
「タバサさんも一緒に食べませんか?」
「――えっ?」
おどろくタバサをボクは手招きする。
「アリシアの料理はとてもオイシイよ」
そう話すと、アリシアはテレた顔になる。
「オレもイイのか?」
恐る恐る近づくタバサ。料理を見てノドを鳴らしていた。
「ほら、席に座って」
そううながすのだけど、なぜかタバサは座ろうとしない。そして、急にこんなことを言い出す。
「この料理、持ち帰ってイイか?」
「えっ?」
アリシアと二人で驚いてしまう。持ち帰るって?
「弟たちにこの料理、食べさせてあげたい」
タバサとその弟妹は、朝、昼、晩、パンとミルクだけなのだそうだ。
「そうか……それじゃ、ココに呼んだらどう?」
ボクがそう提案すると、タバサはまたびっくりした表情を見せる。
「イイのか?」
アリシアに「まだ料理ある?」とたずねると、「はい、ありますよ」とニッコリされる。
「だそうだよ。呼んできなよ」
ボクがそう言うと、タバサはよろこんで「それじゃ、連れてくる!」と工房を飛び出して行った。
「ハ、ハ、ハ――なんか、にぎやかになりそうだね?」
アリシアも、「はい、楽しみです!」と言ってくれた。
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