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第一章 盾職人は異世界のゲームチェンジャーとなる
第28話 名人(マイスター)となる
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わけもわからないまま、上座の壇上に上がらせられたボクとアリシア。高い位置から会場を見渡すと、全員の視線が自分に向けられて緊張してしまう。
「あらためて紹介しよう! ヒロト・ニジカワとアリシア・リンである」
陛下から名前を呼ばれ、ボクたちは頭を下げた。会場から拍手が沸き起こる。
「二人が作った『魔盾』により、われわれはケルベロス討伐とフーベル奪還作戦を開始するに至った。この功績をたたえ、余から彼らに『名人』の称号を授けたいと思う」
「おおぅ――」というどよめきが聞こえた。さきほどまでの歓声とはあきらかに違っていたので、ボクは少し不安になる。その時――
「異議あり!」
そういう声が聞こえる。驚いてその方向を向くと、純白の祭服(カソックと言ったかな?)を着た男性が手をあげていた。
「ヨハネディクト枢機卿、なにか意見があるのかな?」
国王がその男性へ声をかけると――
「恐れながら申し上げます、陛下。マイスターは騎士と並ぶ称号。準貴族として扱われます。このウィルハース王国において、亜人が貴族となった記録は一度もありません」
亜人――
男性の身なりから聖職者なのだと思う。枢機卿という地位がどのくらいなのか、正直わからないけど、ここに招待されているということは、やはり高い地位であるのだろう……そのような人が――それも、聖職者がアリシアを『亜人』と呼ぶなんて……
ボクはショックを受ける。
「王国の伝統と権威をおとしめる行為にならないか、いまいちどご考慮を」
ヨハネディクト枢機卿と呼ばれた男性が頭を深く下げた。
伝統と権威をおとしめる行為だなんて、そんな……
「うむ、枢機卿の気持ちは理解した。この国のことを案じていただき、深く感謝する。しかし、この国も変化しなければならない」
陛下がそうお言葉を返す。
「知ってのとおり、この国、そして他国も魔族からの侵攻をゆるしている。その中で、ダルタール帝国だけが、いち早く自国の領土を魔族から奪還した。帝国はエルフ、ドワーフ、獣人を人とみなし、それぞれに見合った職を与えていると聞く。それにより、国全体が栄え、軍備が整ったことにより、魔族の脅威から解放された」
ウィルハース王国と並ぶこの大陸二大国家のひとつ、ダルタール帝国は王国より歴史が浅いが、皇帝の強力な改革により、今や王国を上回る武力と財力、そして発言力を有するそうだ。
「このウィルハース王国も現地人、召喚人、他民族の隔てなく、対等な立場ではたらき、成果を出してもらう。そのことが王国のさらなる繁栄をもたらすと考えておる」
陛下のお考えを伝えられたことで、会場は静まり返った。
「その第一歩が、アリシア・リン嬢へ名人の称号授与である。枢機卿、これでご理解いただけたかな?」
陛下がヨハネディクトへ顔を向けると、彼は「そこまでお考えであれば、どうぞ御心のままに――」と伝え、二、三歩、後方へ下がった。
「それでは、さっそく二人への授与をとり行う」
壇上に大きなカツラを被った男性が上がり、そう言葉を発する。あとで彼が国務尚書だとアーノルドさんから聞いた。
美しいドレスをまとった女性が大きな盆を手にして、やはり壇上に上がると、陛下は盆の上から羊皮紙を取り、読み上げた。その羊皮紙が称号を授与した証なのだそうだ。
それをボクとアリシアが受け取ると、今度は皇太子から勲章をムネに付けてもらった。
小さい勲章なのに、とても重く感じた。
「あらためて紹介しよう! ヒロト・ニジカワとアリシア・リンである」
陛下から名前を呼ばれ、ボクたちは頭を下げた。会場から拍手が沸き起こる。
「二人が作った『魔盾』により、われわれはケルベロス討伐とフーベル奪還作戦を開始するに至った。この功績をたたえ、余から彼らに『名人』の称号を授けたいと思う」
「おおぅ――」というどよめきが聞こえた。さきほどまでの歓声とはあきらかに違っていたので、ボクは少し不安になる。その時――
「異議あり!」
そういう声が聞こえる。驚いてその方向を向くと、純白の祭服(カソックと言ったかな?)を着た男性が手をあげていた。
「ヨハネディクト枢機卿、なにか意見があるのかな?」
国王がその男性へ声をかけると――
「恐れながら申し上げます、陛下。マイスターは騎士と並ぶ称号。準貴族として扱われます。このウィルハース王国において、亜人が貴族となった記録は一度もありません」
亜人――
男性の身なりから聖職者なのだと思う。枢機卿という地位がどのくらいなのか、正直わからないけど、ここに招待されているということは、やはり高い地位であるのだろう……そのような人が――それも、聖職者がアリシアを『亜人』と呼ぶなんて……
ボクはショックを受ける。
「王国の伝統と権威をおとしめる行為にならないか、いまいちどご考慮を」
ヨハネディクト枢機卿と呼ばれた男性が頭を深く下げた。
伝統と権威をおとしめる行為だなんて、そんな……
「うむ、枢機卿の気持ちは理解した。この国のことを案じていただき、深く感謝する。しかし、この国も変化しなければならない」
陛下がそうお言葉を返す。
「知ってのとおり、この国、そして他国も魔族からの侵攻をゆるしている。その中で、ダルタール帝国だけが、いち早く自国の領土を魔族から奪還した。帝国はエルフ、ドワーフ、獣人を人とみなし、それぞれに見合った職を与えていると聞く。それにより、国全体が栄え、軍備が整ったことにより、魔族の脅威から解放された」
ウィルハース王国と並ぶこの大陸二大国家のひとつ、ダルタール帝国は王国より歴史が浅いが、皇帝の強力な改革により、今や王国を上回る武力と財力、そして発言力を有するそうだ。
「このウィルハース王国も現地人、召喚人、他民族の隔てなく、対等な立場ではたらき、成果を出してもらう。そのことが王国のさらなる繁栄をもたらすと考えておる」
陛下のお考えを伝えられたことで、会場は静まり返った。
「その第一歩が、アリシア・リン嬢へ名人の称号授与である。枢機卿、これでご理解いただけたかな?」
陛下がヨハネディクトへ顔を向けると、彼は「そこまでお考えであれば、どうぞ御心のままに――」と伝え、二、三歩、後方へ下がった。
「それでは、さっそく二人への授与をとり行う」
壇上に大きなカツラを被った男性が上がり、そう言葉を発する。あとで彼が国務尚書だとアーノルドさんから聞いた。
美しいドレスをまとった女性が大きな盆を手にして、やはり壇上に上がると、陛下は盆の上から羊皮紙を取り、読み上げた。その羊皮紙が称号を授与した証なのだそうだ。
それをボクとアリシアが受け取ると、今度は皇太子から勲章をムネに付けてもらった。
小さい勲章なのに、とても重く感じた。
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