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第一章 盾職人は異世界のゲームチェンジャーとなる

第26話 お着替えとなる

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 あれから馬車に押し込められたボクとアリシアは十分後には王宮の中にいた。

 そのあと、二人は別々の部屋へ連れて行かれる。ボクは四、五人のメイドに囲まれ、着ている服を脱がされた。
 ――えっ? ちょ、ちょっと、下着まで⁉
 さすがにあわてる。

「男でしょ? 堂々としていなさい!」

 メイドの中で一番年配の女性にそう言われた。だけど、メイドの中にはボクより若い女の子もいる。そんな中でスッポンポンになっているのだから、さすがにはずかしい!

 すると、シルクっぽい、薄くてツヤのある、いかにも高価そうな下着をかせられた。「自分で着るから」と言ったのだが、先ほどの年配の女性から、「これは私たちの仕事です」と無下むげに断られる。

 次にヒラヒラの多いシャツを着せられ、その上から臙脂色えんじいろに金色の糸で刺繍された派手なスーツを身にまとった。

 次に、油くさいベトベトしたモノを頭に塗られ、髪の毛をオールバックで固められる。
 最後に胸元のポケットに白いハンカチを差し込まれ、白い手袋を手に持たされると大きな鏡の前に立たされた。

「いかかです? 男前になりましたでしょ?」

 それはアニメとかに登場する貴族の姿だった。ただ、顔が自分……つまり、東洋人の顔なので――
「なんか、似合ってないです――」

 それが本音だった。はっきり言って、こんな姿で人前に出るなんてはずかしい!
 罰ゲームじゃないかと思ってしまう。

「そのうちれてきますよ」とメイドの人は言うのだけど、このまま逃げて帰りたかった。

 部屋の扉が開くと、軍服を着た男性――たぶん、近衛兵というのだろう――が現れる。その人に「待合室にお連れします」と言われ、彼のうしろを歩いた。長い廊下の突き当りで、近衛兵が扉を開ける。「お呼びするまで、こちらでください」と中に案内されると、ボクひとり残し扉が閉められた。

「はあ……くつろげって言われてもなあ……」

 置かれている家具はどれも高価そうなモノばかり。キズつけてはいけないと、触るのを躊躇ためらってしまう。そのうえ、窮屈きゅうくつな服を着ているから、座ることもできない。

「なんか……場違いなところに来ちゃったなぁ」

 憂鬱ゆううつになっていると、突然、扉が開く。

「よう、ヒロト! 男前になったじゃないか!」
 入ってきたのはアーノルドさん。そして、アレンさんだった。二人とも純白の軍服。騎士ナイトの正装だ。二人とも騎士の称号を既にいただいている。

 そして、その後ろから聖職者の祭服を着た男性。勇者パーティの治癒職担当。この世界で、アスタリア聖教の洗礼を受け、司教の位までいただいたロバート・グレンさん。
 ボクが頭を下げると、彼も軽く会釈した。そういえば、ロバートさんが話しているところを見たことないなあ。

 そして、真っ赤なドレス、同じく真っ赤な長い髪。長身だけど恐ろしく、整った美女が最後に入ってくる。第三位階の火、風、水、土、四つの属性魔法をマスターし、現世の大賢者グランドフィロソファーと早くも言われている魔導士、エレーナ・スウェインさん。彼女も爵位としては騎士なのだが、軍服ではないのは彼女の趣味のようだ。

 ロバートさんもエレーナさんも、トップ冒険者パーティ『ブルズ』の正規メンバーなのである。

「ヒロト君、お久しぶり」
 エレーナさんがニッコリ笑って挨拶あいさつするので、顔が熱くなった。

「そんなに緊張しなさんな!」
 アーノルドさんが背中をたたくので、ボクは苦笑いする。だけど、ブルズの方々が来てくれたことで、ちょっとだけ落ち着けた。

 そして、次に扉が開いたとき――

「まあ、キレイ!」
 エレーナさんがそう声をあげた。男たちはその姿に言葉をなくす。もちろん、ボクもだ。

 中に入ってきたのは、ライトグリーンのドレスをまとったアリシアだった。はずかし気に、頬を赤く染めながら、中に入ってくる。
「あ、あのう……私のような者がこのようなドレスを着させてもらって、本当にイイのでしょうか?」
 アリシアはオドオドしながらそんなことを言う。

「なにを言っているのですか? 今日は二人も主役なのですよ」
 アレンさんがニッコリしながら、そう伝える。

 ボクたちも主役のひとり?
 本当に、そんなことでイイのだろうか?

 まだ、自分が置かれている状況を理解できない。
 そうこうしているうちに、近衛兵が呼びにきた。全員、大広間へと移動する。
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