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第一章 盾職人は異世界のゲームチェンジャーとなる

第20話 侯爵からのお呼び出しとなる

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 ブルームハルト侯爵家といえば王国三大貴族の一つ。つまり、とても高貴な人だ。そんな人がボクに会いたいと言っているらしい。

「侯爵がどうして?」
「ニジカワ様の作られた魔盾まじゅんについて、侯爵は大変興味を持っておられます」
「――えっ?」
 三大貴族と言われる人が魔盾に興味を持っている?

「はい、魔盾は対魔物の戦い方を大きく変える素晴らしい発明だと、侯爵から直々にお言葉をお伝えしたい。そう言伝ことづてうけたまわっております」
 侯爵がボクに会ってくれる? そして、お言葉をもらえる?

 この世界はまだ封建社会である。王族、貴族のチカラは絶大だ。

 それは召喚人であっても同じで、有力貴族のうしろ盾があれば、いろいろと都合がイイ。特に生産系ジョブの場合、いろいろなトラブルに巻き込まれる。そんなとき、貴族の庇護下ひごかとなっていれば、なにかと安心なのだ。

 盾職人のボクには、いままで貴族から声をかけられたことがなかった。正直なところ、盾に注目する貴族なんていなかったからだ。

 だけど、そんなボクにも貴族、それも三大貴族のブルームハルト侯爵からお声がかかるなんて――
 防具職人、マサヒコも侯爵がうしろ盾になっている。だから、あんなふうにボクのことをバカにしてきた。

 だけど、こうして声をかけてくれたということは、侯爵がボクのうしろ盾になってくれるかもしれない。そうなれば、ボクとマサヒコは対等の立場。もう、バカにされることはない!

「あのう……この人たちは?」

 市場から帰ってきたアリシアが、食材を手にして入口から入ってきた。

「アリシアさん、ちょうど良かった。この人たちはブルームハルト侯爵の使いの人たちだよ。侯爵がボクたちの魔盾をほめてくれたんだ!」
「えっ? ブルームハルト……侯爵……ですか……」

 急にアリシアの顔色が悪くなる。あれ? どうして?
 そういえば、前にもそんなことがあった気がする。

 アリシアにそれをたずねる前に、アーノルドさんが声をかけてきた。
「おいヒロト、このかわいいエルフちゃんは誰だ?」
 そう言って、ボクの肩に腕を乗せてきた。

「あ、彼女はアリシアさん。強化魔法ができる魔導剣士なんです」
「おお! それじゃ、第三階位の強化魔法が使えるアテというのは?」
「はい、彼女のことです」
 アリシアにもアーノルドさんを紹介する。

「あ、お話はヒロトさんから聞いておりました。よろしくお願いします」
 アリシアは頭を深く頭を下げてアーノルドさんに挨拶あいさつした。

 すると、アーノルドさんはボクの耳元でささやく。
「ヒロトもやるなあ。こんな、美人を彼女にするなんて……」

 えっ? か、か、彼女⁉

「ち、違いますよ!」とボクはすぐに否定したのだが、アーノルドさんの顔はニヤニヤしたままだった。

 そのタイミングで咳払せきばらいが聞こえ、そちらを向く、侯爵の使いと言う白髪の男性だった。

「それではヒロトさん、屋敷までお連れします」
 そう言って、右手を胸元に当てて頭を下げた。

「あのう、お屋敷……て?」
 アリシアがそうたずねるので、侯爵からお声がかかったことを伝えた。
「そう……ですか……」
 なぜかアリシアは浮かない顔だ。なんだろう? と不思議な気もしたが……
「とにかく、行ってみよう」とアリシアに言う。

「私は……イイです」
「――えっ?」
 イイって……彼女は行きたくないということ?

「侯爵からニジカワ様だけをお連れするようにとうけたまわっております」
 そう白髪の男性は言う。なぜ、自分だけなのかと思うのだが――

「私がお留守番してますので、ヒロトさん、行ってきてください」
 アリシアの顔色を見ると、なにかモヤモヤした気分になる。しかし、相手はこの国の重鎮。ヘタに断るわけにもいかないし――男性に「わかった」と伝えた。

「それでは――」と男性がボクを外に連れ出そうとするところ、アーノルドさんが耳元でささやく。
「侯爵には気を付けろよ。あまりイイ話を聞かないから」
「――えっ?」

 ボクはアーノルドさんに顔を向けるが、彼はササッと離れたので、それ以上聞けなかった。
 イイ話を聞かないって……?

 それから、アリシアを工房に残し、ボクは派手な装飾がほどこされた馬車に乗せられた。
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