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第一章 盾職人は異世界のゲームチェンジャーとなる
第19話 仕事受注となる
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市場へ向かうアリシアを見送ったボクは、アーノルドさんが修理を頼んだ、超合金製の盾を作業台まで持ってくる。「それじゃ作業に取り掛かろう」と言う時に、アーノルドさんの声が聞こえた。
「よう、ヒロト! なんか大繁盛らしいじゃないか!」
とてもうれしそうな顔をしている。
「アーノルドさん、すみません……実は修理がまだで……」
「ああ、わかっているよ。忙しかったんだろ? もう少し時間があるから大丈夫だ」
一週間後に遠征へ行く予定なので、それまでにお願いしたいと言ってくれた。
「ありがとうございます。それまでには必ず終わらせます」
「そうか助かる――で、実は頼みがあって来たんだ」
「頼み?」
そう言うとアーノルドさんは手にしていた袋から大きな魔石を取り出した。
「これを、修理が終わった盾に取り付けてほしいんだ」
「――えっ?」
次の遠征はケルベロスという大型のモンスター討伐が目的らしい。その時のために、この超合金の盾を魔盾に改造したいという。
「でも、アーノルドさんは『挑発』のアビリティがありますよね? 魔盾は必要ないんじゃ……」
「いやいや、ケルベロスは頭が三つあるから、挑発ではダメなんだよ」
挑発は魔物の敵意を発動した本人に向かわせるアビリティである。ケルベロスのように複数の頭を持つ魔物では、一つを盾で防いでも、残りの頭がカラダを襲ってくる。
「だけど、魔盾ならすべての敵意を引き付けてくれるから、挑発より確実に攻撃を防げるんだ」
「そうなんですか?」
なんか、自分が思っていたよりも魔盾の用途は広い――と、いまさら思ってしまう。
「それにしても大きな魔石ですね」
「おおぅ! ゴブリンキングの魔石だ」
「ゴブリンキング⁉ 災害級の魔物じゃないですか!」
アーノルドさんたちが討伐したらしい。さすが、トップクラスのパーティだ。
「これなら、第三位階の魔法も封じ込めることができるぞ」
魔石は大きければ大きいほど、上位の魔法を封じ込められるのだそうだ。
「ただ、オレの知り合いで第三位階の強化魔法を使える魔導士はいないんだけどな」
そう苦笑いするアーノルドさん。魔盾ができてから、魔導士を紹介してもらうつもりだと話している。
「第三位階の強化魔法ならアテがありますよ」
「ほ、ホントかぁ!」
アーノルドさんは喜ぶ。アリシアは第三位階まで習得していると言っていたから、多分大丈夫だろう――休んでくれと言ったばかりだけど、アーノルドさんのためだ。アリシアにお願いしよう。
その時、また工房の入口から三人の男性が入ってくる。ひとりは執事のような黒いスーツを着た白髪の男性。あとの二人は軍服を着た青年だった。
「ヒロト・ニジカワ様はいらっしゃいますか?」
白髪の男性がそう話しかけてきた。
「はい、ボクですが、何か?」
「ブルームハルト侯爵がお会いしたいと言っております。お屋敷までお越しいただけますか?」
「――えっ?」
「よう、ヒロト! なんか大繁盛らしいじゃないか!」
とてもうれしそうな顔をしている。
「アーノルドさん、すみません……実は修理がまだで……」
「ああ、わかっているよ。忙しかったんだろ? もう少し時間があるから大丈夫だ」
一週間後に遠征へ行く予定なので、それまでにお願いしたいと言ってくれた。
「ありがとうございます。それまでには必ず終わらせます」
「そうか助かる――で、実は頼みがあって来たんだ」
「頼み?」
そう言うとアーノルドさんは手にしていた袋から大きな魔石を取り出した。
「これを、修理が終わった盾に取り付けてほしいんだ」
「――えっ?」
次の遠征はケルベロスという大型のモンスター討伐が目的らしい。その時のために、この超合金の盾を魔盾に改造したいという。
「でも、アーノルドさんは『挑発』のアビリティがありますよね? 魔盾は必要ないんじゃ……」
「いやいや、ケルベロスは頭が三つあるから、挑発ではダメなんだよ」
挑発は魔物の敵意を発動した本人に向かわせるアビリティである。ケルベロスのように複数の頭を持つ魔物では、一つを盾で防いでも、残りの頭がカラダを襲ってくる。
「だけど、魔盾ならすべての敵意を引き付けてくれるから、挑発より確実に攻撃を防げるんだ」
「そうなんですか?」
なんか、自分が思っていたよりも魔盾の用途は広い――と、いまさら思ってしまう。
「それにしても大きな魔石ですね」
「おおぅ! ゴブリンキングの魔石だ」
「ゴブリンキング⁉ 災害級の魔物じゃないですか!」
アーノルドさんたちが討伐したらしい。さすが、トップクラスのパーティだ。
「これなら、第三位階の魔法も封じ込めることができるぞ」
魔石は大きければ大きいほど、上位の魔法を封じ込められるのだそうだ。
「ただ、オレの知り合いで第三位階の強化魔法を使える魔導士はいないんだけどな」
そう苦笑いするアーノルドさん。魔盾ができてから、魔導士を紹介してもらうつもりだと話している。
「第三位階の強化魔法ならアテがありますよ」
「ほ、ホントかぁ!」
アーノルドさんは喜ぶ。アリシアは第三位階まで習得していると言っていたから、多分大丈夫だろう――休んでくれと言ったばかりだけど、アーノルドさんのためだ。アリシアにお願いしよう。
その時、また工房の入口から三人の男性が入ってくる。ひとりは執事のような黒いスーツを着た白髪の男性。あとの二人は軍服を着た青年だった。
「ヒロト・ニジカワ様はいらっしゃいますか?」
白髪の男性がそう話しかけてきた。
「はい、ボクですが、何か?」
「ブルームハルト侯爵がお会いしたいと言っております。お屋敷までお越しいただけますか?」
「――えっ?」
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