上 下
19 / 60
第一章 盾職人は異世界のゲームチェンジャーとなる

第19話 仕事受注となる

しおりを挟む
 市場へ向かうアリシアを見送ったボクは、アーノルドさんが修理を頼んだ、超合金オリハルコン製の盾を作業台まで持ってくる。「それじゃ作業に取り掛かろう」と言う時に、アーノルドさんの声が聞こえた。

「よう、ヒロト! なんか大繁盛らしいじゃないか!」
 とてもうれしそうな顔をしている。

「アーノルドさん、すみません……実は修理がまだで……」
「ああ、わかっているよ。忙しかったんだろ? もう少し時間があるから大丈夫だ」
 一週間後に遠征へ行く予定なので、それまでにお願いしたいと言ってくれた。

「ありがとうございます。それまでには必ず終わらせます」
「そうか助かる――で、実は頼みがあって来たんだ」
「頼み?」
 そう言うとアーノルドさんは手にしていた袋から大きな魔石を取り出した。
「これを、修理が終わった盾に取り付けてほしいんだ」
「――えっ?」

 次の遠征はケルベロスという大型のモンスター討伐が目的らしい。その時のために、この超合金オリハルコンの盾を魔盾まじゅんに改造したいという。

「でも、アーノルドさんは『挑発』のアビリティがありますよね? 魔盾は必要ないんじゃ……」
「いやいや、ケルベロスは頭が三つあるから、挑発ではダメなんだよ」

 挑発は魔物の敵意を発動した本人に向かわせるアビリティである。ケルベロスのように複数の頭を持つ魔物では、一つを盾で防いでも、残りの頭がカラダを襲ってくる。

「だけど、魔盾ならすべての敵意を引き付けてくれるから、挑発より確実に攻撃を防げるんだ」
「そうなんですか?」

 なんか、自分が思っていたよりも魔盾の用途は広い――と、いまさら思ってしまう。

「それにしても大きな魔石ですね」
「おおぅ! ゴブリンキングの魔石だ」
「ゴブリンキング⁉ 災害級の魔物じゃないですか!」

 アーノルドさんたちが討伐したらしい。さすが、トップクラスのパーティだ。

「これなら、第三位階の魔法も封じ込めることができるぞ」

 魔石は大きければ大きいほど、上位の魔法を封じ込められるのだそうだ。

「ただ、オレの知り合いで第三位階の強化魔法を使える魔導士はいないんだけどな」
 そう苦笑いするアーノルドさん。魔盾ができてから、魔導士を紹介してもらうつもりだと話している。

「第三位階の強化魔法ならアテがありますよ」
「ほ、ホントかぁ!」

 アーノルドさんは喜ぶ。アリシアは第三位階まで習得していると言っていたから、多分大丈夫だろう――休んでくれと言ったばかりだけど、アーノルドさんのためだ。アリシアにお願いしよう。

 その時、また工房の入口から三人の男性が入ってくる。ひとりは執事のような黒いスーツを着た白髪の男性。あとの二人は軍服を着た青年だった。

「ヒロト・ニジカワ様はいらっしゃいますか?」
 白髪の男性がそう話しかけてきた。

「はい、ボクですが、何か?」
「ブルームハルト侯爵がお会いしたいと言っております。お屋敷までお越しいただけますか?」

「――えっ?」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

ちょいダン? ~仕事帰り、ちょいとダンジョンに寄っていかない?~

テツみン
SF
東京、大手町の地下に突如現れたダンジョン。通称、『ちょいダン』。そこは、仕事帰りに『ちょい』と冒険を楽しむ場所。 大手町周辺の企業で働く若手サラリーマンたちが『ダンジョン』という娯楽を手に入れ、新たなライフスタイルを生み出していく―― これは、そんな日々を綴った物語。

おっさん料理人と押しかけ弟子達のまったり田舎ライフ

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
真面目だけが取り柄の料理人、本宝治洋一。 彼は能力の低さから不当な労働を強いられていた。 そんな彼を救い出してくれたのが友人の藤本要。 洋一は要と一緒に現代ダンジョンで気ままなセカンドライフを始めたのだが……気がつけば森の中。 さっきまで一緒に居た要の行方も知れず、洋一は途方に暮れた……のも束の間。腹が減っては戦はできぬ。 持ち前のサバイバル能力で見敵必殺! 赤い毛皮の大きなクマを非常食に、洋一はいつもの要領で食事の準備を始めたのだった。 そこで見慣れぬ騎士姿の少女を助けたことから洋一は面倒ごとに巻き込まれていく事になる。 人々との出会い。 そして貴族や平民との格差社会。 ファンタジーな世界観に飛び交う魔法。 牙を剥く魔獣を美味しく料理して食べる男とその弟子達の田舎での生活。 うるさい権力者達とは争わず、田舎でのんびりとした時間を過ごしたい! そんな人のための物語。 5/6_18:00完結!

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

獣人の里の仕置き小屋

真木
恋愛
ある狼獣人の里には、仕置き小屋というところがある。 獣人は愛情深く、その執着ゆえに伴侶が逃げ出すとき、獣人の夫が伴侶に仕置きをするところだ。 今夜もまた一人、里から出ようとして仕置き小屋に連れられてきた少女がいた。 仕置き小屋にあるものを見て、彼女は……。

帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす

黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。 4年前に書いたものをリライトして載せてみます。

処理中です...