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第一章 盾職人は異世界のゲームチェンジャーとなる

第10話 ゴブリン狩りとなる

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 ポイントに到着すると、すぐに一匹のゴブリンを見つける。
「よし、アレを狩ろう」

 ゴブリンのような魔物は人を見ると襲う習性がある。どうやって人だと認識しているのかは、魔物によって異なっているらしい。ゴブリンはふつう、目視によって『敵』だと判断しているようだ。
 しかし、あまり視力は高くないようで、こちらが結構近づかないと襲ってこない。その距離はだいたい二十メートルくらいだと言われている。ただし、音には敏感なので、ボクたちは小声で会話していた。

「まずは、ボクからやるね」
「はい、よろしくお願いします」

 ゆっくりとゴブリンに近づいた。アリシアもうしろをついてくる。
 だいたい二十メートルの距離でいったん停止。ゴブリンが一匹でいることを確認して、もう少し接近――

「シャァァァァッ!」
 ボクらに気づき、奇声をあげるゴブリン。そのまま、こちらに向かってくる!
 ゴブリンは身長一メートルくらいだが、とても動きが早い。あっという間に、目の前までやって来た。

 今だ!

 盾に魔力を込める。すると、盾に取り付けた魔石がボウッと淡く輝いた!

「ギャア!」
 再び奇声をあげると、そのまま飛びかかってくる!

「うわっ!」
 びっくりして、ボクはあお向けに倒れてしまった!

「ヒロトさん!」
 アリシアの声だ。ダメだ。声を出したら、ゴブリンの敵意がアリシアに向いてしまう……って、あれ? なんかヘンだぞ。

 ガツッ! ガツッ! ガツッ!

 そんな、擬音が聞こえる。ゴブリンは手にした石斧いしおのを何度も振り下ろしている――しかし、攻撃しているのは盾――ボクの手にしている盾だけだ。カラダには攻撃してこない!

 よし! 思った通りだ!

 盾に付与した、『敵意を引き付ける魔法』が発動して、ゴブリンの敵意が盾だけに向かっている!
 ボクは右手に持った剣をゴブリンに振り下ろした!

「ギャアァァァァ!」
 ゴブリンが悲鳴をあげる――が、まだ生きている。そして、石斧を振り上げ、また盾を攻撃してきた。
 ボクには戦闘スキルがないので、剣を振っても攻撃力は最低ライン。最弱のゴブリンでも一度の攻撃では倒せない。
「この! この!」
 ボクは二度、三度と剣を振り下ろすが、まだゴブリンは死なない。

 前回は、たしか五、六回攻撃して、やっとゴブリンを倒せた。すると、あと三回くらい攻撃すれば……

 その時、ボクのカラダがボウッと輝いたのに気づく。

「えっ? これって?」
「今、攻撃力強化の魔法をかけました!」

 アリシアだ。そうだった。アリシアは強化魔法が使えたんだ。
 それなら、戦う前に魔法を掛けてもらえばよかった――と後悔するのだが、もういまさらだ。

「これで、どうだ!」
 剣を振り下ろす。

 ドスッ!

 ボクの剣が、ゴブリンのムネに突き刺さった! 明らかに攻撃力が上がっている!

「ギャアァァァァ‼」

 ゴブリンが断末魔の叫びをあげると、そのカラダがバラバラと崩《くず》れ散らばる。そして、煙のように消えていった。最後に小さな塊が地面に残る。魔石だ。

「やったぁ! 倒せた!」
「ヒロトさん! 大丈夫ですか⁉ ケガはないですか⁉」

 慌てて近づくアリシアだが、ボクはまったくの無傷。そのまま、立ち上がる。

「うん、思ったどおりだ。ボクのカラダには攻撃してこなかった!」

 ゴブリンは盾ばかり攻撃していた。つまり、敵意を引き付ける魔法を付与した効果は確認できたことになる。

「そうなんですね。と、いうことは?」
「大成功だ! これなら、ほとんどリスクなしで魔物を倒せるぞ!」
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