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第一章 盾職人は異世界のゲームチェンジャーとなる
第8話 魔石に魔法を封じ込める術となる
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自分の考えが正しければ、もしかしたら……
急に黙り込んでしまったボクに、アリシアは「どうしたのですか?」とたずねてきた。
「……ねえ、『魔物の敵意を引き付ける魔法』について、詳しく教えて」
そう言うと、微妙に不思議そうな表情をしながら「ええ、イイですけど……」とアリシアは応える。
「その魔法を魔石に封じた場合、効果は魔石に閉じ込めた道具側に現れるの? それとも、それを持っている人?」
「……えっ?」
予想していなかった質問だったようで、アリシアはちょっと戸惑っていた。それでも少し考えてから「そうですね……その魔法を魔石に封じ込めたことはないのですが……」と前置きして――
「魔剣の場合、効果は剣に現れるので、おそらく道具ではないかと……」
やっぱりそうか――だとしたら、ちょっと面白いモノが作れるかも……
「魔法を封じ込める魔石はどんなものでもイイの? たとえば、ゴブリンの魔石でも」
「あ、はい。第一位階の魔法でしたらゴブリンの魔石で充分です」
それなら……
ボクは食事を急いで済ませて、倉庫に向かう。
「以前、ダンジョンに行ったときに手に入れた魔石が、たしかこの辺りに……」
「えっ? ヒロトさん、ダンジョンで狩りをしたことがあるのですか?」
生産系のジョブでも戦闘ができることをアリシアは知らなかったようだ。
「うん、自分が作った盾の性能を見たくてね……とはいっても、生産系はいくら経験を積んでも戦闘スキルはレベル一のままなんだけど」
レベル一でも、ダンジョン一階層に現れるゴブリンくらいなら、なんとか倒せる。
「――あった!」
狩用に中古で買った剣と胸当て、それにグローブが入っていた木箱を開けると、魔石が二個出てきた。
「いつか売りにいこうと思っていたんだよな……」
ゴブリンの魔石だと、銀貨一枚になればイイくらいなので、すっかり忘れていたのだ。
「この魔石に、さっき言っていた『魔物の敵意を引き付ける魔法』を付与できるかな?」
ボクが頼むと、アリシアは「ええ、大丈夫ですよ」とすぐに答えた。
それから、彼女は工房の地面に直径三十センチくらいの小さな魔方陣を描いて、その真ん中に魔石を置いた。
「念のため、離れてもらえますか?」
アリシアはボクにそう伝えた。
「えっ? もしかして、危ないの?」
「危ないというか……眩しいというか……」
「――まぶしい?」
なんかよくわからないが、言われたとおりに工房の壁まで離れた。
「それでは、いきます」
彼女は詠唱を始める。魔法詠唱は今までにも何度か聞いたことがあるので、もう驚かなくなったが、言葉と言うより、電子音に近いモノである。最初に聞いた時には、本当に驚いたなぁ。
『魔物の敵意を引き付ける魔法』の詠唱は十秒ほどだった。すると、魔石が突然輝き出す!
「うわっ!」
確かに眩しい。直視したら、しばらく目がくらみそうだ。
「はい、これで魔法を封じ込めました」
思ったより早く終わる。魔法そのものより、魔方陣を描いている時間の方がよっぽど長かったくらいだ。
アリシアは魔石を拾うとボクに渡してきた。それを手に取り、じっくり見る。
「うーん。見た目は変わらないなぁ」
「そうですね。ですが、魔石に魔力を加えると、魔法の効果が現れます」
魔石であれば、自分が持っていないスキルの魔法でも使えるようになる。勇者や剣士は魔力を持っていても、魔法スキルがないので、自ら魔法を発動することはできないけど、魔石を使えば、魔法が発動できるのだ。
「ふーん。案外、魔石って使い道があるんだね」
そう言って、ちょっと魔力を込めてみた。実は、ボクもそれなりに魔力を持っている。召喚人は現地人に比べ、魔力量が多いようだ。
すると、魔石が淡く光った。
「おお! ……だけど、これで魔物の敵意を引き付けているのかな?」
「そうですね。ここに魔物がいないので、確認のしようがないですが、おそらくは……」
魔法の効果はなくても、夜の灯り取りには使えそうだな――なんて、考えてしまう。
「よし! それじゃもう一個もお願い!」
アリシアは「はい!」と言って、すぐに取り掛かる。こうして、『魔物の敵意を引き付ける魔法』を封じ込めた魔石が二つできた。
「それじゃ、これを盾に取り付けよう!」
二つ目の魔石もアリシアから受け取る。すると、アリシアがふらっとして、その場に座り込んでしまった。
「アリシアさん! 大丈夫⁉」
「あ、はい……ちょっと、連続で魔法を使ったので、体力が尽きちゃったようです」
魔法を発動する場合、魔力と一緒に体力も使う。彼女の話だと、魔石に魔法を封じ込めるのは対人で魔法を付与するより、数倍、魔力と体力を消費するらしい。
「そう言ってくれれば、まず一個だけで良かったのに……」
なんか、申し訳ない――そういう気持ちになった。
「いえ、数分だけじっとしていれば動けるようになりますので……」
アリシアがそう言うので少し安心する。ボクは部屋から椅子を持ってくると、そこに彼女を座らせた。
「それじゃ、この魔石を盾に取り付けよう」
盾の在庫はたくさんある。まあ、昨日、武具屋のオヤジが受け取らなかったからなんだけど――あとは取り付ける金具だが、そのあたりにあった金具をたたいて、魔石をはめ込めるように適当な形を作った。
「これを盾の真ん中に釘で打ち込んで……できた!」
「えっ? もうできたのですか?」
二つの盾に魔石を取り付ける。それにかかった時間は十分くらい。そんなに早く完成するとは思ってなかったようで、アリシアは目を丸くした。
「よし! それじゃ、アリシアさんが回復したら、ダンジョンに行くぞ!」
「……えっ?」
急に黙り込んでしまったボクに、アリシアは「どうしたのですか?」とたずねてきた。
「……ねえ、『魔物の敵意を引き付ける魔法』について、詳しく教えて」
そう言うと、微妙に不思議そうな表情をしながら「ええ、イイですけど……」とアリシアは応える。
「その魔法を魔石に封じた場合、効果は魔石に閉じ込めた道具側に現れるの? それとも、それを持っている人?」
「……えっ?」
予想していなかった質問だったようで、アリシアはちょっと戸惑っていた。それでも少し考えてから「そうですね……その魔法を魔石に封じ込めたことはないのですが……」と前置きして――
「魔剣の場合、効果は剣に現れるので、おそらく道具ではないかと……」
やっぱりそうか――だとしたら、ちょっと面白いモノが作れるかも……
「魔法を封じ込める魔石はどんなものでもイイの? たとえば、ゴブリンの魔石でも」
「あ、はい。第一位階の魔法でしたらゴブリンの魔石で充分です」
それなら……
ボクは食事を急いで済ませて、倉庫に向かう。
「以前、ダンジョンに行ったときに手に入れた魔石が、たしかこの辺りに……」
「えっ? ヒロトさん、ダンジョンで狩りをしたことがあるのですか?」
生産系のジョブでも戦闘ができることをアリシアは知らなかったようだ。
「うん、自分が作った盾の性能を見たくてね……とはいっても、生産系はいくら経験を積んでも戦闘スキルはレベル一のままなんだけど」
レベル一でも、ダンジョン一階層に現れるゴブリンくらいなら、なんとか倒せる。
「――あった!」
狩用に中古で買った剣と胸当て、それにグローブが入っていた木箱を開けると、魔石が二個出てきた。
「いつか売りにいこうと思っていたんだよな……」
ゴブリンの魔石だと、銀貨一枚になればイイくらいなので、すっかり忘れていたのだ。
「この魔石に、さっき言っていた『魔物の敵意を引き付ける魔法』を付与できるかな?」
ボクが頼むと、アリシアは「ええ、大丈夫ですよ」とすぐに答えた。
それから、彼女は工房の地面に直径三十センチくらいの小さな魔方陣を描いて、その真ん中に魔石を置いた。
「念のため、離れてもらえますか?」
アリシアはボクにそう伝えた。
「えっ? もしかして、危ないの?」
「危ないというか……眩しいというか……」
「――まぶしい?」
なんかよくわからないが、言われたとおりに工房の壁まで離れた。
「それでは、いきます」
彼女は詠唱を始める。魔法詠唱は今までにも何度か聞いたことがあるので、もう驚かなくなったが、言葉と言うより、電子音に近いモノである。最初に聞いた時には、本当に驚いたなぁ。
『魔物の敵意を引き付ける魔法』の詠唱は十秒ほどだった。すると、魔石が突然輝き出す!
「うわっ!」
確かに眩しい。直視したら、しばらく目がくらみそうだ。
「はい、これで魔法を封じ込めました」
思ったより早く終わる。魔法そのものより、魔方陣を描いている時間の方がよっぽど長かったくらいだ。
アリシアは魔石を拾うとボクに渡してきた。それを手に取り、じっくり見る。
「うーん。見た目は変わらないなぁ」
「そうですね。ですが、魔石に魔力を加えると、魔法の効果が現れます」
魔石であれば、自分が持っていないスキルの魔法でも使えるようになる。勇者や剣士は魔力を持っていても、魔法スキルがないので、自ら魔法を発動することはできないけど、魔石を使えば、魔法が発動できるのだ。
「ふーん。案外、魔石って使い道があるんだね」
そう言って、ちょっと魔力を込めてみた。実は、ボクもそれなりに魔力を持っている。召喚人は現地人に比べ、魔力量が多いようだ。
すると、魔石が淡く光った。
「おお! ……だけど、これで魔物の敵意を引き付けているのかな?」
「そうですね。ここに魔物がいないので、確認のしようがないですが、おそらくは……」
魔法の効果はなくても、夜の灯り取りには使えそうだな――なんて、考えてしまう。
「よし! それじゃもう一個もお願い!」
アリシアは「はい!」と言って、すぐに取り掛かる。こうして、『魔物の敵意を引き付ける魔法』を封じ込めた魔石が二つできた。
「それじゃ、これを盾に取り付けよう!」
二つ目の魔石もアリシアから受け取る。すると、アリシアがふらっとして、その場に座り込んでしまった。
「アリシアさん! 大丈夫⁉」
「あ、はい……ちょっと、連続で魔法を使ったので、体力が尽きちゃったようです」
魔法を発動する場合、魔力と一緒に体力も使う。彼女の話だと、魔石に魔法を封じ込めるのは対人で魔法を付与するより、数倍、魔力と体力を消費するらしい。
「そう言ってくれれば、まず一個だけで良かったのに……」
なんか、申し訳ない――そういう気持ちになった。
「いえ、数分だけじっとしていれば動けるようになりますので……」
アリシアがそう言うので少し安心する。ボクは部屋から椅子を持ってくると、そこに彼女を座らせた。
「それじゃ、この魔石を盾に取り付けよう」
盾の在庫はたくさんある。まあ、昨日、武具屋のオヤジが受け取らなかったからなんだけど――あとは取り付ける金具だが、そのあたりにあった金具をたたいて、魔石をはめ込めるように適当な形を作った。
「これを盾の真ん中に釘で打ち込んで……できた!」
「えっ? もうできたのですか?」
二つの盾に魔石を取り付ける。それにかかった時間は十分くらい。そんなに早く完成するとは思ってなかったようで、アリシアは目を丸くした。
「よし! それじゃ、アリシアさんが回復したら、ダンジョンに行くぞ!」
「……えっ?」
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