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第六話 あれから八年が経ったらしい
その二
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若い王様は最愛の王妃を失い絶望しました。
国民も悲しみ、国全体が暗くなってしまいました。
それを救ったのは王妃のお姉さんでした。
お姉さんは、王様のお話し相手になり、王様を励まし続けました。
幼いお姫様のお母さま代わりにもなりました。
徐々に元気を取り戻した王様は今度はお姉さまをお妃に迎えました。
暗くなっていた国民はそのニュースに喜びました。
新しい王妃様もとても聡明な方です。きっとこの国を前のように、いえ、前よりも活気のある国にしてくれると期待しました。
新しい王妃様はその期待に応えようと、様々な政策に取り組みます。
すっかり政に興味をなくしてしまった若い王様に代わり、王妃は精力的に活動しました。
隣国で商業の盛んなバルドニア自由都市連合から商人を向かい入れ、王都に新しい市場を開きました。
これによって、王都に人々が集まるようになり、また活気が戻ってきました。
みんな、王妃様のおかげと称えました。
しかし、それも長く続きません。
自由都市連合との関係が深まると、いろいろな文化や遊びが入ってきました。
その一つが、カードゲームです。
小妖精をカードに封印し、さまざまなアイテムを使ってカードの小妖精を成長させるゲームです。
子供のゲームとして王国に伝わったのですが、しだいに大人たちも熱中します。
何事も過熱しすぎると良いことはありません。
ゲームに没頭して、仕事をしなくなる人たちが続出するようになってきたのです。そのため、経済が停滞します。
それなのに、小妖精を成長させるアイテムは高値で取引されるようになります。貴重なアイテムになると金貨何枚にもなるほどでした。
借金をしてまでアイテムを買い漁る人が続出します。そのうち、借金を返せず夜逃げしたり、自殺する人が増えてきました……窃盗事件も多発するようになってしまいます。
ついには、アイテムを巡る殺人事件も起こるようになり、王都の治安は悪くなる一方でした。
それを見かねた王妃はカードゲーム禁止を発令します。
しかし、一度中毒になってしまった国民は隠れてカードゲームを続けてしまいます。
いっこうに王都の活気は戻りません。
王妃は治安部隊を結成し、カードゲームの取り締まりを強化します。
カードは全て没収されました。
隠し持っていたら犯罪者として牢屋に閉じ込められます。
それがあまりにも熾烈を極めたので、国民から反感を買うようになります。
ついに暴動が起きると、王妃はそれを武力で抑え込もうとしました。
――あなたたちのためにやっているのになぜわからないの?
王妃はそういう気持ちでやるせなかったのです。
王妃は武力による取り締まりを強化していきます。
これでは国が崩壊する。そう思った宰相のケンプが王妃に進言するのですが、王妃は聞耳を持ちません。
王様にお願いするも王妃に任せてあるとしか言いません。
堪えかねた宰相は隣国の帝国に頼み込みます。
大使を送ってもらって他国の意見として今の王国の惨状を諫めてもらおうと考えたのです。
しかし、それは逆効果でした――
内政干渉だと王妃は憤慨し、大使を追放、宰相を幽閉します。
大使が国に戻ると、皇帝に王国の惨状を伝えます。
皇帝はたいそうお怒りになりました。王国の国民を守るためという大義を従えて王国に兵を送ります。
国政が乱れた王国に、もう帝国の大軍を迎え撃つ力はありませんでした。
帝国軍はすぐに王都ニグレアまで押し寄せてきました。
そこで、ニグレアの開城と国王、王妃に降伏を要求します。
もちろん、王妃はそれを拒否。ニグレアの門を閉めて籠城します。
街の外にいる大軍がいつ攻め寄せるのか――市民はその恐怖でいっぱいでした。
それに立ち向かったのは王国騎士団です。
団長のアルバートだけ、国王の傍に残り、副団長エドワース率いる騎士団が門の外で一万の大軍と向かい合ったのです。
騎士団は総勢でも百数十名。とても歯が立ちません。
それでも、勇敢に立ちはだかります。
エドワースは一万の敵を前に全く怯まず、近寄る帝国軍を威嚇し、最後まで街への侵入を許しませんでした。
しかし、帝国の別動隊が街の裏手から城に直接攻め入ります。 騎士団長のアルバートが孤軍奮闘して、敵の侵入を拒みますが、それも長くは続きません。彼が力尽きると、城の防御は総崩れになりました。
そして、どこからともなく火の手が上がり、城は焼け落ちます。
守るものが無くなった騎士団と王国軍は降伏しニグレアを開城します。
王国はアーサー王からの輝かしい歴史に幕を閉じたのでした――
帝国軍は焼け跡から国王と王妃と思われる遺体を発見しました。ひどく損傷して顔はわかりませんでしたが着衣からそう判断されました。
そして、国王ただ一人の子供。五歳になったばかりのお姫様は、結局見つかりませんでした。
小さな体は焼け崩れた建物の下敷きになってしまったのだろう……そういうことになりました――
それから八年の月日が流れました――
国民も悲しみ、国全体が暗くなってしまいました。
それを救ったのは王妃のお姉さんでした。
お姉さんは、王様のお話し相手になり、王様を励まし続けました。
幼いお姫様のお母さま代わりにもなりました。
徐々に元気を取り戻した王様は今度はお姉さまをお妃に迎えました。
暗くなっていた国民はそのニュースに喜びました。
新しい王妃様もとても聡明な方です。きっとこの国を前のように、いえ、前よりも活気のある国にしてくれると期待しました。
新しい王妃様はその期待に応えようと、様々な政策に取り組みます。
すっかり政に興味をなくしてしまった若い王様に代わり、王妃は精力的に活動しました。
隣国で商業の盛んなバルドニア自由都市連合から商人を向かい入れ、王都に新しい市場を開きました。
これによって、王都に人々が集まるようになり、また活気が戻ってきました。
みんな、王妃様のおかげと称えました。
しかし、それも長く続きません。
自由都市連合との関係が深まると、いろいろな文化や遊びが入ってきました。
その一つが、カードゲームです。
小妖精をカードに封印し、さまざまなアイテムを使ってカードの小妖精を成長させるゲームです。
子供のゲームとして王国に伝わったのですが、しだいに大人たちも熱中します。
何事も過熱しすぎると良いことはありません。
ゲームに没頭して、仕事をしなくなる人たちが続出するようになってきたのです。そのため、経済が停滞します。
それなのに、小妖精を成長させるアイテムは高値で取引されるようになります。貴重なアイテムになると金貨何枚にもなるほどでした。
借金をしてまでアイテムを買い漁る人が続出します。そのうち、借金を返せず夜逃げしたり、自殺する人が増えてきました……窃盗事件も多発するようになってしまいます。
ついには、アイテムを巡る殺人事件も起こるようになり、王都の治安は悪くなる一方でした。
それを見かねた王妃はカードゲーム禁止を発令します。
しかし、一度中毒になってしまった国民は隠れてカードゲームを続けてしまいます。
いっこうに王都の活気は戻りません。
王妃は治安部隊を結成し、カードゲームの取り締まりを強化します。
カードは全て没収されました。
隠し持っていたら犯罪者として牢屋に閉じ込められます。
それがあまりにも熾烈を極めたので、国民から反感を買うようになります。
ついに暴動が起きると、王妃はそれを武力で抑え込もうとしました。
――あなたたちのためにやっているのになぜわからないの?
王妃はそういう気持ちでやるせなかったのです。
王妃は武力による取り締まりを強化していきます。
これでは国が崩壊する。そう思った宰相のケンプが王妃に進言するのですが、王妃は聞耳を持ちません。
王様にお願いするも王妃に任せてあるとしか言いません。
堪えかねた宰相は隣国の帝国に頼み込みます。
大使を送ってもらって他国の意見として今の王国の惨状を諫めてもらおうと考えたのです。
しかし、それは逆効果でした――
内政干渉だと王妃は憤慨し、大使を追放、宰相を幽閉します。
大使が国に戻ると、皇帝に王国の惨状を伝えます。
皇帝はたいそうお怒りになりました。王国の国民を守るためという大義を従えて王国に兵を送ります。
国政が乱れた王国に、もう帝国の大軍を迎え撃つ力はありませんでした。
帝国軍はすぐに王都ニグレアまで押し寄せてきました。
そこで、ニグレアの開城と国王、王妃に降伏を要求します。
もちろん、王妃はそれを拒否。ニグレアの門を閉めて籠城します。
街の外にいる大軍がいつ攻め寄せるのか――市民はその恐怖でいっぱいでした。
それに立ち向かったのは王国騎士団です。
団長のアルバートだけ、国王の傍に残り、副団長エドワース率いる騎士団が門の外で一万の大軍と向かい合ったのです。
騎士団は総勢でも百数十名。とても歯が立ちません。
それでも、勇敢に立ちはだかります。
エドワースは一万の敵を前に全く怯まず、近寄る帝国軍を威嚇し、最後まで街への侵入を許しませんでした。
しかし、帝国の別動隊が街の裏手から城に直接攻め入ります。 騎士団長のアルバートが孤軍奮闘して、敵の侵入を拒みますが、それも長くは続きません。彼が力尽きると、城の防御は総崩れになりました。
そして、どこからともなく火の手が上がり、城は焼け落ちます。
守るものが無くなった騎士団と王国軍は降伏しニグレアを開城します。
王国はアーサー王からの輝かしい歴史に幕を閉じたのでした――
帝国軍は焼け跡から国王と王妃と思われる遺体を発見しました。ひどく損傷して顔はわかりませんでしたが着衣からそう判断されました。
そして、国王ただ一人の子供。五歳になったばかりのお姫様は、結局見つかりませんでした。
小さな体は焼け崩れた建物の下敷きになってしまったのだろう……そういうことになりました――
それから八年の月日が流れました――
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