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第四章 ちょいとボス狩りする?

第56話 悪あがき

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 月島さんの発した言葉に、ボクはショックを受けた。

『ちょいダン』の入口を破壊する?

 それって、つまり――

「こうなった以上、『ちょいダン』の存続は不可能です。であれば、考えられる策を全て打つしかないのです」

 ちょいダンの存続は不可能――つまり、ちょいダンの営業を断念する――ということだ。

 ボクは、ユミさんとアスナさんの顔を見た。もし『ちょいダン』がなければ、二人と出会うことはなかった。
 大手町という狭い空間で働いていても、キッカケがなければ同じ時間を共有することなんてない――それが現代という世の中。そのキッカケを作ってくれた『ちょいダン』がなくなってしまう――
 それは将来、この場所であったかもしれない新たな出会いを永遠に放棄することでもある――

 そう思うと、悔しくて仕方ない。

「しかし、入口を破壊しても、異世界を完全に遮断できないのだろ?」
 篠崎さんはそう言う。
 物理的に入り口を破壊しても、異世界とつながった『空間』自体は存在している。それに気づいたモンスターが、破壊した部分を掘り起こし、こちらの世界に入り込んんでくる可能性は否定できない――それは、月島さん本人が言った言葉だ。

「それでも、侵入を防げる抑止力にはなります。今は、少しでもその可能性を減らす方法を考えるべきです」
 月島さんの発言は正論なのだろう――
 彼女はココの責任者。であれば、外部に被害を及ぼすことは絶対に避けなければならない。たとえ、それが事業の存続を断念するということであっても――そういう考えに行きつくのは当然だ。

 ただの客であるボクたちに、それを反対する権限など最初からない――

 だけど――

「もう少しだけ、悪あがきしませんか?」
 ボクはそんなことを言ってしまう。

「――えっ?」
「まだ、リッチはちょいダン広場にいます。今すぐ、ダンジョンの入口を破壊する必要はないでしょう? なら、ギリギリまでリッチに挑みませんか?」

 ダンジョン内で死ぬことはない。つまり、リッチにいくらやられても失うものはないのだ。
 だったら、その可能性がどんなに低くても、『呪いの書』でリッチを封印することをあきらめたくない!

「そういうことか!」
 戸越がいきなり大声をあげる。全員、びっくりして彼を見た。

「根津! そういうことなんだな!」
「――えっ?」

 そういうこと――って?

「オレたちにはまだ切り札があったんだな! それは――」

 それは?

「根津! オマエの豪運なんだろ⁉」

 …………なんだって?

「そうだよ。それを忘れていたよ。根津よ、オマエは自分の豪運にかけてみたい――そう言いたかったんだな!」

 えっ? いや――そういうわけでは……

「運ですか……そうですね。私も根津さまの運にかけてみたいと思います」
 そんなことを、月島さんも言う。いや、ちょっとそれは……

「私も、タカアキさんを信じます!」
 ユミさんまで? ええーーーーっ⁉

「よしやろう!」
 そういう声が、ロビーの中を満たすのだった。

「根津くん、私も微力ながら手伝うわ」
「綾瀬さん?」
「私も守りたいの、このちょいダンを――」

 手伝う……って、あれ? なんか、ボクがリーダーになってない?

「よし! 根津くんについて行くぞ!」と篠崎さん。

 あれぇぇぇぇっ⁉
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