上 下
54 / 60
第四章 ちょいとボス狩りする?

第54話 作戦名『人間導線』

しおりを挟む
 ボクたちはある作戦のため、『ちょいダン広場』にやってきた。魔導士のオリエンテーションを行った、あの場所だ。

 そして、その作戦のためには、リッチをこの『ちょいダン広場』に追い込まなければならない。

「その役目、ボクたちにやらせてください」

 そう言ってきたのは、四角セキュリティの神田だった。綾瀬さんを「オバサン」とバカにした、あの青年である。

「ボクたちがやれることと言ったら、そのくらいしかないので――」
「いやしかし、それは――」
「やらせてやってください。彼らが率先して言ってくれるのは頼もしいかぎりだ。それに、本当にわけではないのだし――」

 そう言ったのは篠崎さん。四角セキュリティの専務で、現在、実質的な指示を出していた。

 ここは、言葉に甘えることにする。

 そして、今の陣形――

 いや、陣形なんてモノではない。
 今、リッチがいる場所から、十メートル間隔で、四角セキュリティのメンバーがならんだだけ。それが、『ちょいダン広場』まで続いている。

「それじゃ、始めます」

 篠崎さんの合図で、最前線にいた四角セキュリティのメンバーがモンスターに向かって、突進した!
 四角セキュリティのドローンが撮影しているライブ映像をちょいダン広場にいるボクたちは観ていた。ちょいダン広場でも空間投影で観れていたのだ。

「これって、イベントとかでやれば、面白そうだな――」
 戸越はこの状況でそんなことを言う。まあ、たしかに面白そうだ。当然、月島さんはそういうことも考えているのだろうけど――

「わーっ!」
 大声で叫びながら、四角セキュリティのメンバーが、ゴブリンの群れに向かって剣を振った!

 ゴブリンを次々と行動不能にし、ついに、リッチの姿が見える!
 次の瞬間――

「うわっ!」
 
 突然、映像からリッチがいなくなる。それと同時に、悲鳴が――

「映像をもっと手前に!」
 篠崎さんの指示で、ドローンのカメラが下方へ移動。そこに、四角セキュリティの人がうつぶせに倒れていた。

「リッチは⁉ ドローンを回転させて、後方を映せ!」
 映像がぐるっと回転する。その先に黒いローブを被ったモンスターの姿が――
 バリバリという音と、激しい光が見えた。

「よし! がうまくいっている!」
 篠崎さんがそう言うので、ボクは苦笑いした――

 人間導線――リッチが反応する間隔で人を立たせて、リッチを誘導する作戦のことだけど、さすがに成功したと喜ぶ気持ちにならない。
 いくら、復活するとわかっていても――死ぬとわかっていて人を立たせるのは、人道的にも気分的にもいかがなものかと思う。

 しかし、作戦的にはうまくいっていた。リッチは確実にこちら――『ちょいダン広場』に向かっている。

「そろそろ、来るぞ――」

 篠原さんの声で、ボクたちは武器を構える。

 ここまでは順調だが、実のところ、この作戦が成功するかどうかは、これからにかかっている。

「キイィィィィッ!」
 そういう奇声と同時に、二つの光が見えた――
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

異世界悪霊譚 ~無能な兄に殺され悪霊になってしまったけど、『吸収』で魔力とスキルを集めていたら世界が畏怖しているようです~

テツみン
ファンタジー
『鑑定——』  エリオット・ラングレー  種族 悪霊  HP 測定不能  MP 測定不能  スキル 「鑑定」、「無限収納」、「全属性魔法」、「思念伝達」、「幻影」、「念動力」……他、多数  アビリティ 「吸収」、「咆哮」、「誘眠」、「脱兎」、「猪突」、「貪食」……他、多数 次々と襲ってくる悪霊を『吸収』し、魔力とスキルを獲得した結果、エリオットは各国が恐れるほどの強大なチカラを持つ存在となっていた! だけど、ステータス表をよーーーーっく見てほしい! そう、種族のところを! 彼も悪霊――つまり「死んでいた」のだ! これは、無念の死を遂げたエリオット少年が悪霊となり、復讐を果たす――つもりが、なぜか王国の大惨事に巻き込まれ、救国の英雄となる話………悪霊なんだけどね。

落ちこぼれ盾職人は異世界のゲームチェンジャーとなる ~エルフ♀と同居しました。安定収入も得たのでスローライフを満喫します~

テツみン
ファンタジー
*この作品は24hポイントが0になりしだい、公開を終了します。ご愛読ありがとうございました。 アスタリア大陸では地球から一万人以上の若者が召喚され、召喚人(しょうかんびと)と呼ばれている。 彼らは冒険者や生産者となり、魔族や魔物と戦っていたのだ。 日本からの召喚人で、生産系志望だった虹川ヒロトは女神に勧められるがまま盾職人のスキルを授かった。 しかし、盾を売っても原価割れで、生活はどんどん苦しくなる。 そのうえ、同じ召喚人からも「出遅れ組」、「底辺職人」、「貧乏人」とバカにされる日々。 そんなとき、行き倒れになっていたエルフの女の子、アリシアを助け、自分の工房に泊めてあげる。 彼女は魔法研究所をクビにされ、住み場所もおカネもなかったのだ。 そして、彼女との会話からヒロトはあるアイデアを思いつくと―― これは、落ちこぼれ召喚人のふたりが協力し合い、異世界の成功者となっていく――そんな物語である。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

異世界帰りの元勇者、日本に突然ダンジョンが出現したので「俺、バイト辞めますっ!」

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
俺、結城ミサオは異世界帰りの元勇者。 異世界では強大な力を持った魔王を倒しもてはやされていたのに、こっちの世界に戻ったら平凡なコンビニバイト。 せっかく強くなったっていうのにこれじゃ宝の持ち腐れだ。 そう思っていたら突然目の前にダンジョンが現れた。 これは天啓か。 俺は一も二もなくダンジョンへと向かっていくのだった。

社畜の俺の部屋にダンジョンの入り口が現れた!? ダンジョン配信で稼ぐのでブラック企業は辞めさせていただきます

さかいおさむ
ファンタジー
ダンジョンが出現し【冒険者】という職業が出来た日本。 冒険者は探索だけではなく、【配信者】としてダンジョンでの冒険を配信するようになる。 底辺サラリーマンのアキラもダンジョン配信者の大ファンだ。 そんなある日、彼の部屋にダンジョンの入り口が現れた。  部屋にダンジョンの入り口が出来るという奇跡のおかげで、アキラも配信者になる。 ダンジョン配信オタクの美人がプロデューサーになり、アキラのダンジョン配信は人気が出てくる。 『アキラちゃんねる』は配信収益で一攫千金を狙う!

ビキニに恋した男

廣瀬純一
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー

黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた! あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。 さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。 この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。 さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。

ゲート0 -zero- 自衛隊 銀座にて、斯く戦えり

柳内たくみ
ファンタジー
20XX年、うだるような暑さの8月某日―― 東京・銀座四丁目交差点中央に、突如巨大な『門(ゲート)』が現れた。 中からなだれ込んできたのは、見目醜悪な怪異の群れ、そして剣や弓を携えた謎の軍勢。 彼らは何の躊躇いもなく、奇声と雄叫びを上げながら、そこで戸惑う人々を殺戮しはじめる。 無慈悲で凄惨な殺戮劇によって、瞬く間に血の海と化した銀座。 政府も警察もマスコミも、誰もがこの状況になすすべもなく混乱するばかりだった。 「皇居だ! 皇居に逃げるんだ!」 ただ、一人を除いて―― これは、たまたま現場に居合わせたオタク自衛官が、 たまたま人々を救い出し、たまたま英雄になっちゃうまでを描いた、7日間の壮絶な物語。

処理中です...