43 / 60
第三章 ちょいとこらしめる?
第43話 挟み撃ち
しおりを挟む
「タカアキさん、あれって――」
あれからもう少し奥に進んだボクたちは、初めて見るホブゴブリンを見つけた。
黒いローブに杖を持っている――つまり……
「うん、ウィザードゴブリンだと思う」
ウィザードゴブリン――チュートリアルでは、『魔法を使用するホブゴブリン』となっていた。
ランクもホブゴブリンより上という扱いだったような気がする。
「どうしますか?」
ユミさんの質問に、「うーん――」と唸ってしまう。
やはり、初めての敵だと、慎重にいきたい。
「いったん、ロビーまで戻って、ドロップしたアイテムを確定しよう」
万が一、死んでもそれなら失うモノがない。
「そうですね。そうしましょう」
そういうことで、二人は来た道を引き返す――
「――えっ?」
引き返した先にもウィザードゴブリンが見えた。
途中に分かれ道もない――したがって……
「挟まれてしまったね――」
「うん――」
そうとなれば、どちらかのウィザードゴブリンを倒さなければならない。
「とにかく帰り道の確保。そうとなれば、こっちのゴブリンだな」
どんな攻撃をしてくるのか、どれだけ防御力があるのかもわからない。
しかし、もはやそれを確認してから戦う――というのはムリそうだ。
「この際、一か八か行こう。なあに、死んでも復活する。ドロップアイテムはもったいないが、逆に失うのはそのくらいだ」
「そ、そうですね」
決心はついた。あとは戦い方だが――
「ボクが突っ込むから、ユミさんはフォローお願い」
「わかりました」
「ヨシ!」
死ぬことはない――とはわかっていても、やはりドキドキする。怖くて仕方がない。
でも、本当の戦闘はもっと怖いんだろうな――戦争反対!
ボクはカウントダウンを始める。
「三、二、一――!」
全力で駆け出し、ウィザードゴブリンに向かっていった!
「キィィィィッ!」
気づかれた! それはわかっていたが――
相手が杖をボクに向ける。
ボウッ!
「うわっ!」
炎がボクのカラダにまとわりつく!
熱い!
ファイアか⁉
ボクは地べたに倒れ、転げまわる。
「タカアキさん‼」
ユミさんがこちらに駆け出すのが見えた。
ダメだ! 来るな!
もう死ぬのか――
そう思った時、炎がパッと消える。
「あっ――魔法が解けた?」
まだ、ヒリヒリするが、致命傷というレベルではない。
どうやら、一回の魔法では死なないようだ。
「レベルが上がったから、魔法耐性があがっているのか?」
だが、そんなことを考えている余裕はない。また、ゴブリンは魔法を唱えている!
「アツッ!」
再び、炎がカラダを覆った。熱い――だけど、それを我慢してウィザードゴブリンに向かう。
短剣を振り抜くと相手を斬り裂いた手ごたえ。
「キィィィィッ!」
悲鳴とともに苦しんでいる様子がわかる。
よし! ダメージはあるようだ!
また、相手が詠唱を始めたが、構わず短剣を突き刺した。
「ギャァァァァ!」
詠唱をやめて、悲鳴をあげるウィザードゴブリン。
そうか! 攻撃して相手に当たれば、相手は詠唱できないんだ!
そうとなれば、相手を倒すまで攻撃を続けるしかない!
しかし――
「きゃあ!」
後方で、ユミさんの悲鳴が!
振り向くと、もう一匹のウィザードゴブリンがユミさんに攻撃を仕掛けてきたのだ!
「ユミさん!」
この騒ぎで反対側にいたウィザードゴブリンがリンクしてしまった!
「だ、大丈夫です!」
ユミさんの声だ。ローブはわずかながら魔法耐性がある。だから、ボクよりはダメージがなかったようだ。
「ユミさん! 杖でソイツをたたいて!」
「えっ? わ、わかりました!」
魔法で応戦するより、そのほうが相手の魔法を食らわなくて済む。その間に――
「この! この!」
やはり、攻撃を受けている間は、魔法の詠唱ができないようだ。こうなったら、相手が倒れるまで、攻撃続ける!
十回くらい刺したあと――
「ギャァァァァッ‼」
断末魔の悲鳴をあげて、ウィザードゴブリンが横たわった。どうやら、倒せたようだ。
それを確認することなく、ボクはユミさんを助けに行く!
「えい! えい! えい!」
ユミさんは言われたとおり、杖でウィザードゴブリンの頭をたたいていた。その様子はなかなか滑稽なのだが、本人は必死だ。
「もう大丈夫!」
ボクも加わって、ウィザードゴブリンをめった刺しにする!
「ギャァァァァ!」
悲鳴をあげながら倒れると、ウィザードゴブリンのカラダが消えた。
「ふう――死ぬかと思った――」
「タカアキさん! カラダが!」
ユミさんが慌てる。
「ああ、服が燃えちゃったね」
ワイシャツの袖が黒く燃え落ちて、腕が見えている。肌の一部も焼けただれてけっこう痛い。
正直、あと一回、ファイアを受けていたら死んでいたかもしれない――
「一度、戻りましょう」
「ああ、そうしよう。その前にドロップを拾って――」
ボクたちは急いで、ウィザードゴブリンからドロップしたアイテムを拾った。
紫色の魔石の他に二つ落ちているのが確認できる。
「こっちは、ローブだな。こっちは、本?」
ボロボロでいかにも古そうな本だけど――
「なんに使うんでしょう?」
「なんだろうね? まあ、とりえず持って帰ろう」
ここでモタモタして、また、ゴブリンから攻撃されたら大変だ。アイテムを回収すると急いで近くのワープポイントへ向かい、ダンジョン入口まで戻った。
あれからもう少し奥に進んだボクたちは、初めて見るホブゴブリンを見つけた。
黒いローブに杖を持っている――つまり……
「うん、ウィザードゴブリンだと思う」
ウィザードゴブリン――チュートリアルでは、『魔法を使用するホブゴブリン』となっていた。
ランクもホブゴブリンより上という扱いだったような気がする。
「どうしますか?」
ユミさんの質問に、「うーん――」と唸ってしまう。
やはり、初めての敵だと、慎重にいきたい。
「いったん、ロビーまで戻って、ドロップしたアイテムを確定しよう」
万が一、死んでもそれなら失うモノがない。
「そうですね。そうしましょう」
そういうことで、二人は来た道を引き返す――
「――えっ?」
引き返した先にもウィザードゴブリンが見えた。
途中に分かれ道もない――したがって……
「挟まれてしまったね――」
「うん――」
そうとなれば、どちらかのウィザードゴブリンを倒さなければならない。
「とにかく帰り道の確保。そうとなれば、こっちのゴブリンだな」
どんな攻撃をしてくるのか、どれだけ防御力があるのかもわからない。
しかし、もはやそれを確認してから戦う――というのはムリそうだ。
「この際、一か八か行こう。なあに、死んでも復活する。ドロップアイテムはもったいないが、逆に失うのはそのくらいだ」
「そ、そうですね」
決心はついた。あとは戦い方だが――
「ボクが突っ込むから、ユミさんはフォローお願い」
「わかりました」
「ヨシ!」
死ぬことはない――とはわかっていても、やはりドキドキする。怖くて仕方がない。
でも、本当の戦闘はもっと怖いんだろうな――戦争反対!
ボクはカウントダウンを始める。
「三、二、一――!」
全力で駆け出し、ウィザードゴブリンに向かっていった!
「キィィィィッ!」
気づかれた! それはわかっていたが――
相手が杖をボクに向ける。
ボウッ!
「うわっ!」
炎がボクのカラダにまとわりつく!
熱い!
ファイアか⁉
ボクは地べたに倒れ、転げまわる。
「タカアキさん‼」
ユミさんがこちらに駆け出すのが見えた。
ダメだ! 来るな!
もう死ぬのか――
そう思った時、炎がパッと消える。
「あっ――魔法が解けた?」
まだ、ヒリヒリするが、致命傷というレベルではない。
どうやら、一回の魔法では死なないようだ。
「レベルが上がったから、魔法耐性があがっているのか?」
だが、そんなことを考えている余裕はない。また、ゴブリンは魔法を唱えている!
「アツッ!」
再び、炎がカラダを覆った。熱い――だけど、それを我慢してウィザードゴブリンに向かう。
短剣を振り抜くと相手を斬り裂いた手ごたえ。
「キィィィィッ!」
悲鳴とともに苦しんでいる様子がわかる。
よし! ダメージはあるようだ!
また、相手が詠唱を始めたが、構わず短剣を突き刺した。
「ギャァァァァ!」
詠唱をやめて、悲鳴をあげるウィザードゴブリン。
そうか! 攻撃して相手に当たれば、相手は詠唱できないんだ!
そうとなれば、相手を倒すまで攻撃を続けるしかない!
しかし――
「きゃあ!」
後方で、ユミさんの悲鳴が!
振り向くと、もう一匹のウィザードゴブリンがユミさんに攻撃を仕掛けてきたのだ!
「ユミさん!」
この騒ぎで反対側にいたウィザードゴブリンがリンクしてしまった!
「だ、大丈夫です!」
ユミさんの声だ。ローブはわずかながら魔法耐性がある。だから、ボクよりはダメージがなかったようだ。
「ユミさん! 杖でソイツをたたいて!」
「えっ? わ、わかりました!」
魔法で応戦するより、そのほうが相手の魔法を食らわなくて済む。その間に――
「この! この!」
やはり、攻撃を受けている間は、魔法の詠唱ができないようだ。こうなったら、相手が倒れるまで、攻撃続ける!
十回くらい刺したあと――
「ギャァァァァッ‼」
断末魔の悲鳴をあげて、ウィザードゴブリンが横たわった。どうやら、倒せたようだ。
それを確認することなく、ボクはユミさんを助けに行く!
「えい! えい! えい!」
ユミさんは言われたとおり、杖でウィザードゴブリンの頭をたたいていた。その様子はなかなか滑稽なのだが、本人は必死だ。
「もう大丈夫!」
ボクも加わって、ウィザードゴブリンをめった刺しにする!
「ギャァァァァ!」
悲鳴をあげながら倒れると、ウィザードゴブリンのカラダが消えた。
「ふう――死ぬかと思った――」
「タカアキさん! カラダが!」
ユミさんが慌てる。
「ああ、服が燃えちゃったね」
ワイシャツの袖が黒く燃え落ちて、腕が見えている。肌の一部も焼けただれてけっこう痛い。
正直、あと一回、ファイアを受けていたら死んでいたかもしれない――
「一度、戻りましょう」
「ああ、そうしよう。その前にドロップを拾って――」
ボクたちは急いで、ウィザードゴブリンからドロップしたアイテムを拾った。
紫色の魔石の他に二つ落ちているのが確認できる。
「こっちは、ローブだな。こっちは、本?」
ボロボロでいかにも古そうな本だけど――
「なんに使うんでしょう?」
「なんだろうね? まあ、とりえず持って帰ろう」
ここでモタモタして、また、ゴブリンから攻撃されたら大変だ。アイテムを回収すると急いで近くのワープポイントへ向かい、ダンジョン入口まで戻った。
50
お気に入りに追加
63
あなたにおすすめの小説
落ちこぼれ盾職人は異世界のゲームチェンジャーとなる ~エルフ♀と同居しました。安定収入も得たのでスローライフを満喫します~
テツみン
ファンタジー
アスタリア大陸では地球から一万人以上の若者が召喚され、召喚人(しょうかんびと)と呼ばれている。
彼らは冒険者や生産者となり、魔族や魔物と戦っていたのだ。
日本からの召喚人で、生産系志望だった虹川ヒロトは女神に勧められるがまま盾職人のスキルを授かった。
しかし、盾を売っても原価割れで、生活はどんどん苦しくなる。
そのうえ、同じ召喚人からも「出遅れ組」、「底辺職人」、「貧乏人」とバカにされる日々。
そんなとき、行き倒れになっていたエルフの女の子、アリシアを助け、自分の工房に泊めてあげる。
彼女は魔法研究所をクビにされ、住み場所もおカネもなかったのだ。
そして、彼女との会話からヒロトはあるアイデアを思いつくと――
これは、落ちこぼれ召喚人のふたりが協力し合い、異世界の成功者となっていく――そんな物語である。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた
きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました!
「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」
魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。
魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。
信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。
悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。
かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。
※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。
※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です
倒したモンスターをカード化!~二重取りスキルで報酬倍増! デミゴッドが行く異世界旅~
乃神レンガ
ファンタジー
謎の白い空間で、神から異世界に送られることになった主人公。
二重取りの神授スキルを与えられ、その効果により追加でカード召喚術の神授スキルを手に入れる。
更にキャラクターメイキングのポイントも、二重取りによって他の人よりも倍手に入れることができた。
それにより主人公は、本来ポイント不足で選択できないデミゴッドの種族を選び、ジンという名前で異世界へと降り立つ。
異世界でジンは倒したモンスターをカード化して、最強の軍団を作ることを目標に、世界を放浪し始めた。
しかし次第に世界のルールを知り、争いへと巻き込まれていく。
国境門が数カ月に一度ランダムに他国と繋がる世界で、ジンは様々な選択を迫られるのであった。
果たしてジンの行きつく先は魔王か神か、それとも別の何かであろうか。
現在毎日更新中。
※この作品は『カクヨム』『ノベルアップ+』にも投稿されています。
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
ユニークスキルで異世界マイホーム ~俺と共に育つ家~
楠富 つかさ
ファンタジー
地震で倒壊した我が家にて絶命した俺、家入竜也は自分の死因だとしても家が好きで……。
そんな俺に転生を司る女神が提案してくれたのは、俺の成長に応じて育つ異空間を創造する力。この力で俺は生まれ育った家を再び取り戻す。
できれば引きこもりたい俺と異世界の冒険者たちが織りなすソード&ソーサリー、開幕!!
第17回ファンタジー小説大賞にエントリーしました!
日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー
黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた!
あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。
さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。
この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。
さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。
どうやら異世界ではないらしいが、魔法やレベルがある世界になったようだ
ボケ猫
ファンタジー
日々、異世界などの妄想をする、アラフォーのテツ。
ある日突然、この世界のシステムが、魔法やレベルのある世界へと変化。
夢にまで見たシステムに大喜びのテツ。
そんな中、アラフォーのおっさんがレベルを上げながら家族とともに新しい世界を生きていく。
そして、世界変化の一因であろう異世界人の転移者との出会い。
新しい世界で、新たな出会い、関係を構築していこうとする物語・・・のはず・・。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる