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第三章 ちょいとこらしめる?

第43話 挟み撃ち

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「タカアキさん、あれって――」

 あれからもう少し奥に進んだボクたちは、初めて見るホブゴブリンを見つけた。

 黒いローブに杖を持っている――つまり……
「うん、ウィザードゴブリンだと思う」

 ウィザードゴブリン――チュートリアルでは、『魔法を使用するホブゴブリン』となっていた。

 ランクもホブゴブリンより上という扱いだったような気がする。

「どうしますか?」
 ユミさんの質問に、「うーん――」とうなってしまう。

 やはり、初めての敵だと、慎重にいきたい。
「いったん、ロビーまで戻って、ドロップしたアイテムを確定しよう」

 万が一、死んでもそれなら失うモノがない。

「そうですね。そうしましょう」

 そういうことで、二人は来た道を引き返す――
「――えっ?」

 引き返した先にもウィザードゴブリンが見えた。
 途中に分かれ道もない――したがって……

「挟まれてしまったね――」
「うん――」

 そうとなれば、どちらかのウィザードゴブリンを倒さなければならない。

「とにかく帰り道の確保。そうとなれば、こっちのゴブリンだな」

 どんな攻撃をしてくるのか、どれだけ防御力があるのかもわからない。
 しかし、もはやそれを確認してから戦う――というのはムリそうだ。

「この際、一か八か行こう。なあに、死んでも復活する。ドロップアイテムはもったいないが、逆に失うのはそのくらいだ」
「そ、そうですね」

 決心はついた。あとは戦い方だが――
「ボクが突っ込むから、ユミさんはフォローお願い」
「わかりました」
「ヨシ!」

 死ぬことはない――とはわかっていても、やはりドキドキする。怖くて仕方がない。
 でも、本当の戦闘はもっと怖いんだろうな――戦争反対!

 ボクはカウントダウンを始める。

「三、二、一――!」
 全力で駆け出し、ウィザードゴブリンに向かっていった!

「キィィィィッ!」
 気づかれた! それはわかっていたが――

 相手が杖をボクに向ける。

 ボウッ!

「うわっ!」
 炎がボクのカラダにまとわりつく!
 熱い!

 ファイアか⁉

 ボクは地べたに倒れ、転げまわる。
「タカアキさん‼」
 ユミさんがこちらに駆け出すのが見えた。
 ダメだ! 来るな!

 もう死ぬのか――
 そう思った時、炎がパッと消える。
「あっ――魔法が解けた?」

 まだ、ヒリヒリするが、致命傷というレベルではない。
 どうやら、一回の魔法では死なないようだ。

「レベルが上がったから、魔法耐性があがっているのか?」

 だが、そんなことを考えている余裕はない。また、ゴブリンは魔法を唱えている!

「アツッ!」
 再び、炎がカラダを覆った。熱い――だけど、それを我慢してウィザードゴブリンに向かう。

 短剣を振り抜くと相手を斬り裂いた手ごたえ。
「キィィィィッ!」
 悲鳴とともに苦しんでいる様子がわかる。
 よし! ダメージはあるようだ!

 また、相手が詠唱を始めたが、構わず短剣を突き刺した。
「ギャァァァァ!」
 詠唱をやめて、悲鳴をあげるウィザードゴブリン。

 そうか! 攻撃して相手に当たれば、相手は詠唱できないんだ!

 そうとなれば、相手を倒すまで攻撃を続けるしかない!
 しかし――

「きゃあ!」
 後方で、ユミさんの悲鳴が!

 振り向くと、もう一匹のウィザードゴブリンがユミさんに攻撃を仕掛けてきたのだ!

「ユミさん!」

 この騒ぎで反対側にいたウィザードゴブリンがリンクしてしまった!

「だ、大丈夫です!」
 ユミさんの声だ。ローブはわずかながら魔法耐性がある。だから、ボクよりはダメージがなかったようだ。

「ユミさん! 杖でソイツをたたいて!」
「えっ? わ、わかりました!」

 魔法で応戦するより、そのほうが相手の魔法を食らわなくて済む。その間に――

「この! この!」
 やはり、攻撃を受けている間は、魔法の詠唱ができないようだ。こうなったら、相手が倒れるまで、攻撃続ける!

 十回くらい刺したあと――

「ギャァァァァッ‼」
 断末魔の悲鳴をあげて、ウィザードゴブリンが横たわった。どうやら、倒せたようだ。

 それを確認することなく、ボクはユミさんを助けに行く!

「えい! えい! えい!」
 ユミさんは言われたとおり、杖でウィザードゴブリンの頭をたたいていた。その様子はなかなか滑稽なのだが、本人は必死だ。

「もう大丈夫!」
 ボクも加わって、ウィザードゴブリンをめった刺しにする!

「ギャァァァァ!」
 
 悲鳴をあげながら倒れると、ウィザードゴブリンのカラダが消えた。

「ふう――死ぬかと思った――」
「タカアキさん! カラダが!」
 ユミさんが慌てる。

「ああ、服が燃えちゃったね」
 ワイシャツのそでが黒く燃え落ちて、腕が見えている。肌の一部も焼けただれてけっこう痛い。

 正直、あと一回、ファイアを受けていたら死んでいたかもしれない――

「一度、戻りましょう」
「ああ、そうしよう。その前にドロップを拾って――」

 ボクたちは急いで、ウィザードゴブリンからドロップしたアイテムを拾った。

 紫色の魔石の他に二つ落ちているのが確認できる。
「こっちは、ローブだな。こっちは、ほん?」
 ボロボロでいかにも古そうな本だけど――
「なんに使うんでしょう?」
「なんだろうね? まあ、とりえず持って帰ろう」

 ここでモタモタして、また、ゴブリンから攻撃されたら大変だ。アイテムを回収すると急いで近くのワープポイントへ向かい、ダンジョン入口まで戻った。
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