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第三章 ちょいとこらしめる?
第36話 合コン
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「それでは自己紹介から!」
東京駅八重洲口側の居酒屋――
男女四人ずつが集まった。戸越が進行役となり、合コンが始まる。
「それでは、まずはオレから――」と、戸越、アスナさん、ボク、ユミさんと順番で自己紹介が終わった。
次に――
「は、はじめまして、えーと、千川ツネヒコと言います。根津先輩と同じ、食品事業部、戦略室に所属しています。今年で入社二年目です。大学は早稲谷で、ラグビー部にいました」
「「「おおーっ」」」と声があがる。
「早稲谷って、ラグビー強かったですよね?」
アスナさんがたずねると、千川は「は、はあ――」とはずかしそうに言う。
「四年前に大学選手権優勝したよな?」と戸越が言うと――
「ええ――まあ」と、これまたはずかしそうに応える。
「千川くん、その時、出場していたの?」
「ええ――まあ」
「「「おおっ!」」」
顔を真っ赤にしてテレているところがカワイイ。
「それじゃ、ワールドカップとか出場するの?」
「い、いえ。卒業して、競技は引退しました」
ただ、今でも月に一回くらい母校に行って、後輩たちを指導したり、練習を手伝ったりしているそうだ。
「はい、それじゃ次――」
「はい、辰巳カナっていいます! 今年、用賀大学を卒業して、東都損保に入社しました! えーと、所属はぁ、アスナ先輩、ユミ先輩と同じ、契約サービス部でーす。よろしくお願いしまーす!」
くるくるカールの茶髪に、大きなピアス。爪はネイルアートというのだろか――カラフルな模様がしてある。
今年入社ということは、ボクと三年しか違わないのだけど、なんかジェネレーションギャップを感じてしまう。
次に――
「えー、中井健太郎といいます。オレは四角物産じゃなくて、戸越の友人で同じ大学でした。会社は日室製作所なので、まあ、ニアリー大手町ということでゆるしてください」
そう笑いを取っている。実はボクも初めて会った。戸越もイケメンだが、彼もかなりのイケメン。アイドルグループにいてもおかしくないほどだ。
そして、女子の最後――
「あのう、綾瀬マリコです。急に呼ばれてきました。私は根津くんと千川くんと同じ、四角物産食品事業部、戦略室に所属してます。ですが、実家の自動車保険は東都損保だったはずなので、一応、東都損保つながりとしてください」
そう言って、頭を下げた。
そう、綾瀬さんも参加してもらったのだ。
――というのは、急に東都損保側の参加予定がドタキャンされたそうで、アスナさんから戸越にLINが来たそうだ。それで、ボクが綾瀬さんに声をかけた――という具合だ。
「はーい、それじゃ全員の自己紹介が終わったところで、乾杯といきましょう! あっ! 大事なことを忘れてました! これですが、実は『ちょいダン』・パーティーメンバーの集まりなんです」
そういえば、そうでした――
「そうなんですかぁ? 先輩たち、ちょいダンやっているのですか?」
ユミさんの後輩、辰巳カナさんがそんなことを言うので、アスナさんが「そうだよぉ」と応える。
「ええーっ、それなら誘ってください。私、やってみたーい」
「ホントに? それじゃ、今度――」
「はいはい、つもる話は乾杯のあとで」
ということで、仕切り直し。
「それじゃ、『ちょいダン』・パーティー、『戸越レンとゆかい仲間たち』の前途を祝して――」
「おい、本気でそれにするのか?」ボクが突っ込むと――
「うん、もちろん! はい、乾杯!」
「「「かんぱーい!」」」
なんか、パーティー名の件はうやむやにされてしまった。
それから、いろいろと会話が弾んだあと、再びちょいダンの話題となる。
「でさあ、ユミさんの魔法がスゴいんだよ!」
戸越が土曜日の冒険談をちょいダン未経験組に語る。
剣士三人でホブゴブリンを囲むと、ユミさんの『ファイア』がおもしろいほど決まった。
「ほんとうに、あれはスゴかったなあ――」
あのときのことを思い出すと、今でもゾクゾクしてしまう。
「ユミ先輩、そんなにスゴかったのですか?」
辰巳カナさんが目を輝かせながら、ユミさんにカラダを寄せると、ユミさんは恥ずかしそうに――
「あれは、杖がスゴかったんだと思います」と応えた。
「杖?」
「ああ、『タクトマスター』だっけか? あれは、かなりレアなんだと思うなあ。検索したけど、そんなアイテムはどこにも載っていなかったよ」
それを持つプレイヤーとパーティーは、時間の流れが十パーセント遅くなる。つまり、敵の動きがわずかに遅いのだ。たった十パーセントだが、それでもはっきりとわかるくらい効果があった。
「つまり、ユミさんがいるウチのパーティーは、現時点、ちょいダン最強だと思うぞ!」
戸越が自慢すると、ボクも「そうかもな」と否定しなかった。
「なんかおもしろそう」
そうカナさんが言うので、「それじゃ、これからみんなでちょいダンやろうか!」と戸越が立ち上がる。
「おい、『お酒を飲んでのプレイはご遠慮ください』と書いてあっただろ?」
ボクがそう忠告する。
「なあに、わからないって!」
「いや、だからダメだって」
戸越はお酒を飲むと、暴走するクセがあるからなあ――気をつけないと――
「それじゃ、今週末はどうだ?」
まあ、それならイイだろう。
「わーい。楽しみ!」
カナさんがウレシそうに言う。
「中井はどうする? 日室製作所も『ちょいダン』会員募集しているんだろ?」
「ああ――オレはイイや。興味ないし」
「なんだよ。付き合い悪いなあオマエ。それじゃ、綾瀬さんと千川くんはどう?」
「――えっ?」
綾瀬さんが戸惑った顔をしている。そういえば、ちょいダンでプレイしていることをナイショにしているんだよなあ――
「えーと、私は――」
そのとき、自分たちの席に近寄ってくる、男三人組がいた。
「あ、やっぱり、ゴスロリコスプレしていたオバサンじゃん!」
東京駅八重洲口側の居酒屋――
男女四人ずつが集まった。戸越が進行役となり、合コンが始まる。
「それでは、まずはオレから――」と、戸越、アスナさん、ボク、ユミさんと順番で自己紹介が終わった。
次に――
「は、はじめまして、えーと、千川ツネヒコと言います。根津先輩と同じ、食品事業部、戦略室に所属しています。今年で入社二年目です。大学は早稲谷で、ラグビー部にいました」
「「「おおーっ」」」と声があがる。
「早稲谷って、ラグビー強かったですよね?」
アスナさんがたずねると、千川は「は、はあ――」とはずかしそうに言う。
「四年前に大学選手権優勝したよな?」と戸越が言うと――
「ええ――まあ」と、これまたはずかしそうに応える。
「千川くん、その時、出場していたの?」
「ええ――まあ」
「「「おおっ!」」」
顔を真っ赤にしてテレているところがカワイイ。
「それじゃ、ワールドカップとか出場するの?」
「い、いえ。卒業して、競技は引退しました」
ただ、今でも月に一回くらい母校に行って、後輩たちを指導したり、練習を手伝ったりしているそうだ。
「はい、それじゃ次――」
「はい、辰巳カナっていいます! 今年、用賀大学を卒業して、東都損保に入社しました! えーと、所属はぁ、アスナ先輩、ユミ先輩と同じ、契約サービス部でーす。よろしくお願いしまーす!」
くるくるカールの茶髪に、大きなピアス。爪はネイルアートというのだろか――カラフルな模様がしてある。
今年入社ということは、ボクと三年しか違わないのだけど、なんかジェネレーションギャップを感じてしまう。
次に――
「えー、中井健太郎といいます。オレは四角物産じゃなくて、戸越の友人で同じ大学でした。会社は日室製作所なので、まあ、ニアリー大手町ということでゆるしてください」
そう笑いを取っている。実はボクも初めて会った。戸越もイケメンだが、彼もかなりのイケメン。アイドルグループにいてもおかしくないほどだ。
そして、女子の最後――
「あのう、綾瀬マリコです。急に呼ばれてきました。私は根津くんと千川くんと同じ、四角物産食品事業部、戦略室に所属してます。ですが、実家の自動車保険は東都損保だったはずなので、一応、東都損保つながりとしてください」
そう言って、頭を下げた。
そう、綾瀬さんも参加してもらったのだ。
――というのは、急に東都損保側の参加予定がドタキャンされたそうで、アスナさんから戸越にLINが来たそうだ。それで、ボクが綾瀬さんに声をかけた――という具合だ。
「はーい、それじゃ全員の自己紹介が終わったところで、乾杯といきましょう! あっ! 大事なことを忘れてました! これですが、実は『ちょいダン』・パーティーメンバーの集まりなんです」
そういえば、そうでした――
「そうなんですかぁ? 先輩たち、ちょいダンやっているのですか?」
ユミさんの後輩、辰巳カナさんがそんなことを言うので、アスナさんが「そうだよぉ」と応える。
「ええーっ、それなら誘ってください。私、やってみたーい」
「ホントに? それじゃ、今度――」
「はいはい、つもる話は乾杯のあとで」
ということで、仕切り直し。
「それじゃ、『ちょいダン』・パーティー、『戸越レンとゆかい仲間たち』の前途を祝して――」
「おい、本気でそれにするのか?」ボクが突っ込むと――
「うん、もちろん! はい、乾杯!」
「「「かんぱーい!」」」
なんか、パーティー名の件はうやむやにされてしまった。
それから、いろいろと会話が弾んだあと、再びちょいダンの話題となる。
「でさあ、ユミさんの魔法がスゴいんだよ!」
戸越が土曜日の冒険談をちょいダン未経験組に語る。
剣士三人でホブゴブリンを囲むと、ユミさんの『ファイア』がおもしろいほど決まった。
「ほんとうに、あれはスゴかったなあ――」
あのときのことを思い出すと、今でもゾクゾクしてしまう。
「ユミ先輩、そんなにスゴかったのですか?」
辰巳カナさんが目を輝かせながら、ユミさんにカラダを寄せると、ユミさんは恥ずかしそうに――
「あれは、杖がスゴかったんだと思います」と応えた。
「杖?」
「ああ、『タクトマスター』だっけか? あれは、かなりレアなんだと思うなあ。検索したけど、そんなアイテムはどこにも載っていなかったよ」
それを持つプレイヤーとパーティーは、時間の流れが十パーセント遅くなる。つまり、敵の動きがわずかに遅いのだ。たった十パーセントだが、それでもはっきりとわかるくらい効果があった。
「つまり、ユミさんがいるウチのパーティーは、現時点、ちょいダン最強だと思うぞ!」
戸越が自慢すると、ボクも「そうかもな」と否定しなかった。
「なんかおもしろそう」
そうカナさんが言うので、「それじゃ、これからみんなでちょいダンやろうか!」と戸越が立ち上がる。
「おい、『お酒を飲んでのプレイはご遠慮ください』と書いてあっただろ?」
ボクがそう忠告する。
「なあに、わからないって!」
「いや、だからダメだって」
戸越はお酒を飲むと、暴走するクセがあるからなあ――気をつけないと――
「それじゃ、今週末はどうだ?」
まあ、それならイイだろう。
「わーい。楽しみ!」
カナさんがウレシそうに言う。
「中井はどうする? 日室製作所も『ちょいダン』会員募集しているんだろ?」
「ああ――オレはイイや。興味ないし」
「なんだよ。付き合い悪いなあオマエ。それじゃ、綾瀬さんと千川くんはどう?」
「――えっ?」
綾瀬さんが戸惑った顔をしている。そういえば、ちょいダンでプレイしていることをナイショにしているんだよなあ――
「えーと、私は――」
そのとき、自分たちの席に近寄ってくる、男三人組がいた。
「あ、やっぱり、ゴスロリコスプレしていたオバサンじゃん!」
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