上 下
27 / 60
第二章 ちょいとパーティー組む?

第27話 魔法障壁(マジックシールド)

しおりを挟む
「それではみなさん、集まってください!」

 ボクは今、魔導士向けのオリエンテーションに参加している。
 インストラクターで、ちょいダン運営会社、ダンジョンファクトリーのプレイヤースキル管理担当という葛西かさいマコト、プレイヤーネーム『マコちゃん』がそう声をあげ、参加者が集まる。

「ここが、『ちょいダン広場』という場所になります」

 将来的に、ダンジョン内で行われる、いろいろなもよおし物をおこなう場所になる予定――だと、マコちゃんは説明した。

「催し物って、どんなのでしょうね?」
 ユミさんが小声でたずねてきたので、「お祭りとかやるのかな?」なんて言ってみる。
「なんか、おもしろそうですね」
 彼女はそう言って、ニッコリ笑った。

 そうだな――と、想像してみた。

 この広い空間に、屋台が並ぶ状況――
 その店を切り盛りしているのが、ゴブリンたち――

『おっちゃん、ヤキソバ二つ』
『あいよ。すこしサービスするな』
 なんて、ゴブリンと会話する様子を思い浮かべる。

 ハ、ハ、ハ――なんか楽しそうだ。まあ、そんなことがあったら、もうゴブリンを殺せなくなるな――

「それでは、全員が見られるようにボクを中心に、弧を描いて並んでもらえますでしょうか?」
 マコちゃんの指示で、ボクらは彼の周りに並んだ。
 全部で二十名。この広い空間だと、少人数に感じる。

「そうですね、そんな感じで――それでは、さっそく、魔法の説明から――」

 現在、実装されている魔法は、『ファイア』、『ファイアボール』、『マジックシールド』の三つ――と説明される。ここまではチュートリアルと同じだ。

「この中で、『ファイア』と『ファイアボール』は、標的に杖を向けて、それぞれ名称を言えば魔法が発動するように調整してあります」

 そうなんだ――と思う。それにしても『調整』ってどうやってやるんだ?

「ムズカシイのはマジックシールドだと思いますが、こちらを覚えると、戦いがとても楽になります。なので、今日はぜひ覚えていってください」

 そういえば、マジックシールドは見たことなかったな――

「マジックシールドは、杖を持った反対側の手で発動させます。やってみますね」

 そう言って、マコちゃんが右手に杖を持ち、左手を突き出す。

「マジックシールド!」
 この広い空間に響き渡るくらい大声でそう唱えた。すると、左手の前に、六角形のポリゴンが、いくつか現れる。

「「「「「オオーッ!」」」」」という歓声がいた。

 ファイアボールやファイアも初めて見たときは感動したが、マジックシールドは別の感動がある。キラキラとして、とてもきれいだ。

「はい、こんな感じです」
 すると、誰からともなく拍手する。

「ありがとうございます。ちなみに、大声を出さなくても発動します。ご安心ください」
 そう言われて、ドッと笑い声があふれた。

「マジックシールドは大きさ、厚み、発動時間はレベルによって違います」

 レベルが上がると、大きく、厚く、長く展開するらしい。

「つまり、防御範囲が広く、防御力が高く、長くなるんですね」

 どれくらい違うかは、実際にやってみてほしいとのこと。

「ちなみに、ボクの魔導士レベルは十です。剣士は十二です。あ、これ自慢です」

 社員特権で、プレオープン前にやり込みました――と悪びれず言う。

「また、詠唱ですが、こちらはレベルに関係なく、速く詠唱できる人は早く発動します。また、頭の中で詠唱をイメージしても魔法が発動できる人もいます」

 誰かが、「無詠唱?」とつぶやくので、マコちゃんが「はい! そうです!」と応えた。

「できるひとは、意外とすぐに無詠唱で魔法が発動できるようになります。このように――」

 マコちゃんが左手を突き出しただけで、ポリゴン状のシールドが現れ、また、「オーッ!」と歓声があがる。

「他の魔法も、無詠唱で発動しますよ」
 そう言って、マコちゃんはくるっと半回転すると、誰もいない方向へ杖を向けた。

 ボウッ!

 いままで見たことのない大きな火の玉が現れ、まっすぐ飛んで行った!

 またまた、歓声。

「こうして、驚いてもらえると気分がイイですね」
 今度は爆笑――

 インストラクターって、こんなふうに口も達者じゃないといけないんだな。ボクも見習わないと――
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

落ちこぼれ盾職人は異世界のゲームチェンジャーとなる ~エルフ♀と同居しました。安定収入も得たのでスローライフを満喫します~

テツみン
ファンタジー
アスタリア大陸では地球から一万人以上の若者が召喚され、召喚人(しょうかんびと)と呼ばれている。 彼らは冒険者や生産者となり、魔族や魔物と戦っていたのだ。 日本からの召喚人で、生産系志望だった虹川ヒロトは女神に勧められるがまま盾職人のスキルを授かった。 しかし、盾を売っても原価割れで、生活はどんどん苦しくなる。 そのうえ、同じ召喚人からも「出遅れ組」、「底辺職人」、「貧乏人」とバカにされる日々。 そんなとき、行き倒れになっていたエルフの女の子、アリシアを助け、自分の工房に泊めてあげる。 彼女は魔法研究所をクビにされ、住み場所もおカネもなかったのだ。 そして、彼女との会話からヒロトはあるアイデアを思いつくと―― これは、落ちこぼれ召喚人のふたりが協力し合い、異世界の成功者となっていく――そんな物語である。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

倒したモンスターをカード化!~二重取りスキルで報酬倍増! デミゴッドが行く異世界旅~

乃神レンガ
ファンタジー
 謎の白い空間で、神から異世界に送られることになった主人公。  二重取りの神授スキルを与えられ、その効果により追加でカード召喚術の神授スキルを手に入れる。  更にキャラクターメイキングのポイントも、二重取りによって他の人よりも倍手に入れることができた。  それにより主人公は、本来ポイント不足で選択できないデミゴッドの種族を選び、ジンという名前で異世界へと降り立つ。  異世界でジンは倒したモンスターをカード化して、最強の軍団を作ることを目標に、世界を放浪し始めた。  しかし次第に世界のルールを知り、争いへと巻き込まれていく。  国境門が数カ月に一度ランダムに他国と繋がる世界で、ジンは様々な選択を迫られるのであった。  果たしてジンの行きつく先は魔王か神か、それとも別の何かであろうか。  現在毎日更新中。  ※この作品は『カクヨム』『ノベルアップ+』にも投稿されています。

【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた

きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました! 「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」 魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。 魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。 信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。 悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。 かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。 ※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。 ※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です

日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー

黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた! あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。 さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。 この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。 さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

ユニークスキルで異世界マイホーム ~俺と共に育つ家~

楠富 つかさ
ファンタジー
 地震で倒壊した我が家にて絶命した俺、家入竜也は自分の死因だとしても家が好きで……。  そんな俺に転生を司る女神が提案してくれたのは、俺の成長に応じて育つ異空間を創造する力。この力で俺は生まれ育った家を再び取り戻す。  できれば引きこもりたい俺と異世界の冒険者たちが織りなすソード&ソーサリー、開幕!! 第17回ファンタジー小説大賞にエントリーしました!

どうやら異世界ではないらしいが、魔法やレベルがある世界になったようだ

ボケ猫
ファンタジー
日々、異世界などの妄想をする、アラフォーのテツ。 ある日突然、この世界のシステムが、魔法やレベルのある世界へと変化。 夢にまで見たシステムに大喜びのテツ。 そんな中、アラフォーのおっさんがレベルを上げながら家族とともに新しい世界を生きていく。 そして、世界変化の一因であろう異世界人の転移者との出会い。 新しい世界で、新たな出会い、関係を構築していこうとする物語・・・のはず・・。

処理中です...