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第二章 ちょいとパーティー組む?

第26話 マコちゃん

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「それでは魔術師初級のオリエンテーションに参加する方、集まってくださーい!」

 大声で呼ぶ男性が現れ、ローブを着た面々がその人の周りに集まった。

「はい、みなさん、こんにちは!」

 年齢は三十くらいだろうか?
 さわやかな笑顔を振りまく、スポーツ刈りのお兄さんが、そう挨拶あいさつする。そのパワーに面食らったのか? 全員、呆然ぼうぜんと彼を見つめるだけだった。

「あれ? なんか、元気ないですね? まだ、仕事の疲れが抜けていないんじゃないですか? 明日はもう仕事ですよ? 大丈夫ですか?」
 なんて笑えない冗談を飛ばしてくる。

「もう一度、言いますね。みなさん、こんにちは!」
 すると、ぼそぼそと「こんにちは」という声が聞こえてきた。

「まだ、元気がないですけど、イイでしょう。私は、このちょいダンを管理しているダンジョンファクトリーのプレイヤースキル管理担当をしています葛西《かさい》マコトと言います。プレイヤーネームは『マコちゃん』ですので、どうぞ『マコちゃん』と呼んでください」

 うーん、そこは本気なのか、冗談なのか――周りをみると、みんな、似たような悩ましい反応をしていた。

「さて、今日は魔導士初級のオリエンテーションということで、魔導士の基本的な戦い方をマスターして帰ってもらおうと思ってます。みなさん、魔導士のソロでゴブリンと戦いましたか?」

 マコちゃんが「戦ってゴブリンを倒した方、手を上げて」と言うのだが、誰からも手があがらない。

「うーん、誰も手をあげませんね。ひとりやふたりはいるはずですが、はずかしいのかな?」
 そう苦笑いするマコちゃん。

「そうですね。実は私たちのところに来るクレームの中にも、『魔法がムズカシイ』、『魔導士はおもしろくない――』、そういうのが圧倒的だったんですね」

 まあ、そんなことを戸越も言っていたな――

「ですが、実は要領さえつかめれば、魔導士のほうが簡単にゴブリンを倒せるんです」

 魔導士のほうが簡単? そういう説明に、参加者がみんな半信半疑という表情になる。

「そういうことで、今日は『魔導士がソロでゴブリンを倒す――』その方法をマスターしてもらおうと、急遽きゅうきょ開催したしだいです」

 なるほど、そうだったのか――これは来て正解だった。

「それではさっそくダンジョンに入って、魔法の実演をしたいと思います。移動しますので、みなさんアプリを立ち上げてください」

 言われた通りにアプリを開く。

「そうしたら、マップの画面にして、右上にある検索のアイコンを押してください」

 検索――そんな機能もあったんだ。

「これでイイのでしょうか?」
 となりにいるユミさんがボクに向けて、スマホの画面を見せる。
「それでイイと思います。ボクも同じ画面になってます」
 そう応えると、ユミさんはホッとした顔をした。

「そうしたら、『ちょいダン広場』と入力して、検索してください」

 ちょいダン広場?
 まあ、言われた通りにやってみる。

 すると、マップが動き、それらしい場所を示した。

「そのあと、右下の『ナビ開始』を押してください」

 押してみる。

『ナビを開始します』
 そういう音声が一斉に聞こえ、みんな笑った。

「はい、これがナビ機能です。検索は『ちょいダン広場』のように場所の名前でも、座標でもできますので、活用してください」

 ナビは最短距離や、比較的安全なコースなど、いくつか選べるとのこと。
 なるほど、ダンジョン内で仲間と合流するときに使えそうだ。

「それでは、ナビに従って移動してください。今日は私が先導しますので、後ろをついて来てもらえればイイです」

 そう指示され、列になってマコちゃんを追った。

 二つほどの分かれ道を過ぎたところで、突然大きな空間が現れる。

「こんなところがあったんだ」
 そうつぶやくと、ユミさんも「びっくりしました」と目を見開く。

 丸い円形状の洞窟で一辺が百メートルくらいありそうだ。天井もドーム型で、一番高いところで二、三十メートルくらいだろうか――

「野球ができそうだな」
 ボクはそんなことを口にする。
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