16 / 60
第一章 ちょいと寄ってく?
第16話 再会
しおりを挟む
ダンジョン入口のところで、ユミさんに会ってしまう。
うーん、戸越の予言が当たってしまった。なんか、くやしい。
「今来たところですか?」
そうたずねてみる。
「はい、タカアキさんは終わったところですか?」
「ええ、まあ――」
うーん、会話が続かない――戸越だったら、洒落た話題でも出てくるんだろうな……なんて、考えてしまう。
今度、教えてもらおう。
「おつかれさまでした」
そう言って、頭を下げられた。
そのまま、行かれそうになったので、何か言わなければと思う。
「今日は誰かと?」
そう、言ってみた。
「いえ――実は同僚と一緒に来たのですが、急にお客さんから呼ばれたとかで――」
ダンジョン入り口で引き返してしまった――そんなことを彼女は話す。
お客さんに呼ばれる?
「そうなんですか……大変ですね。失礼ですが、どんな職業なんですか?」
すると彼女は――
「保険会社です。東都損保っていう――」
東都損保……「ああ――」とボクはつぶやく。
「ウチの会社の近くですね」
そう伝えてみた。すると、彼女は「――あっ」と声を出す。
「どうかしました?」
「い、いえ――タカアキさんは、どこの会社ですか?」
そうたずねられたので、「四角物産です」と素直に答えた。
すると、彼女は「はあ……」とピンと来ていない顔をしているので――
「知ってます?」と訊いてみた。
「あ、はい。もちろん、知ってます。あの大きなビルの会社ですよね?」
「ハ、ハ、ハ――そうですね。あのビルの会社です」
ウチの会社のことをそんなふうに表現した人は彼女が初めてだったので、おもわず笑ってしまう。
すると、彼女はちょっと恥ずかしそうな顔で――
「ご、ごめんなさい――名前とかはよく聞くのですけど、その……どんな仕事をしている会社なのかまでは……」
勉強不足でゴメンナサイなんて言われてしまった。
「まあ、仕方ないですよ。ウチの会社、コマーシャルとかで宣伝しているわけではないし――」
逆に新鮮な反応で、面白いなあ――なんて思ってしまう。
すると――
「学校は――」
……えっ?
「学校?」
なんか、急に彼女が慌てだして、どうしたんだろう――そう考えると――
「え、いや、そうじゃなくて……そう、私の学校からも確か、四角物産に行った人がいたなぁ――なんて」
ああ、そういうことか――と思う。
「えーと……ユミさんの出身校って?」
「えっ? あ、はい――三田塾大です」
三田塾?
「もしかして――ユミさんはお嬢さま?」
女子大といえば、お嬢様――というイメージからそんなことを言ってしまったのだけど、彼女は、顔を真っ赤にして、「ち、違います!」と応えた。
「同級生の中にはお嬢様みたいな人がいましたけど、私はいたってふつうのサラリーマンの娘でして――」
と、手をパタパタしながら説明される。
「あ、そうなんですね」
ちょっと失礼だけど、彼女の反応ひとつひとつがカワイくて、おもしろいな――なんて思ってしまう。
小動物系?
「タカアキさんは⁉」
「――えっ?」
なんか、彼女の声のトーンが上がった。
「タカアキさんはどこの大学だったのですか?」
大学までたずねられちゃうんだぁ――
まあ、彼女の出身校も教えてもらったことだし、仕方ないか――と思う。
「えーと、一応、東大で――」
「――えっ?」
ユミさんは目を丸くした。
「ス、スゴいですね」
スゴい? まあ、スゴいんだろうなぁ。ふつうは――
「まあ、ボクの場合、運がヨカッタだけだから――」
そう言うと、謙遜のように聞こえてしまうかもしれないが、自分の場合、本当に『運がヨカッタ』だけなんだよなぁ――
「そ、そんなことないです! ありがとうございます!」
ん? なんでお礼を言われる?
まあ、イイかと思う。
「それじゃ、がんばって」
ボクがそう言うと、彼女は大きな杖を持ちながら――
「あ、ハ、ハイ……」
と、なんかしどろもどろの返事になる。
ああ、そういえば彼女、魔導士だったっけかぁ――
それで、ボクは袋を手に取る。
「そうそう、さっき、ゴブリンを倒したら杖をドロップして――」
先ほど手に入れた『タクトマスター』を彼女の前に差し出した。
「えっ? これは?」
「ユミさんにあげます」
「――えっ?」
なんか、驚かれてしまった。けど、自分は装備できないし、持っているだけじゃ宝の持ち腐れだから、使ってほしい――とお願いする。
「そ、そんな――」
「どうぞ遠慮せずに――そうですね。また、一緒にパーティーを組みましょう」
流れでそんなことを言ってしまった。まあ、イイよね――
「そ、それじゃ――お友達登録しませんか?」と彼女が言う。
あ、そうだな。パーティーに誘うんだったら、お友達登録しておかないと――
「はい、お願いします」
そう言って、スマホを取り出し、アプリを立ち上げる。
「――えーと、たぶん、これで登録できたはずですよ」
念のため、『お友達リスト』を確認するとちゃんと『ユミ』とあった。
戸越より先に、女の子をお友達登録するとはな――明日、戸越に自慢してやろう。
また、楽しみが増えたと思う。
それどころか――
「あのう、もしよかったら、LINもお願いできませんか?」
「――えっ?」
さすがにドキッとしてしまう。
「ゴメンナサイ! ダメですよね?」
そう言われるので、「そ、そんなことないです!」と慌てて否定する。
「それじゃ、お願いします」
そう言って、今度はLINのアプリも立ち上げた。
「――はい。これで、ボクのIDが行ったと思います」
彼女のバーコードを読み込んで、自分のLINのお友達の中に、『落合ユミ』という名前が入った。
「はい、タカアキさんの名前があります」
彼女がそう言うので、ホッとする。
「それじゃ、また」
「はい、また、よろしくお願いします」
彼女に何度も頭を下げられた。
うーん、なんか今日もいろいろあったけど――一番の収穫は女の子のLINをゲットしたことだな。
うーん、戸越の予言が当たってしまった。なんか、くやしい。
「今来たところですか?」
そうたずねてみる。
「はい、タカアキさんは終わったところですか?」
「ええ、まあ――」
うーん、会話が続かない――戸越だったら、洒落た話題でも出てくるんだろうな……なんて、考えてしまう。
今度、教えてもらおう。
「おつかれさまでした」
そう言って、頭を下げられた。
そのまま、行かれそうになったので、何か言わなければと思う。
「今日は誰かと?」
そう、言ってみた。
「いえ――実は同僚と一緒に来たのですが、急にお客さんから呼ばれたとかで――」
ダンジョン入り口で引き返してしまった――そんなことを彼女は話す。
お客さんに呼ばれる?
「そうなんですか……大変ですね。失礼ですが、どんな職業なんですか?」
すると彼女は――
「保険会社です。東都損保っていう――」
東都損保……「ああ――」とボクはつぶやく。
「ウチの会社の近くですね」
そう伝えてみた。すると、彼女は「――あっ」と声を出す。
「どうかしました?」
「い、いえ――タカアキさんは、どこの会社ですか?」
そうたずねられたので、「四角物産です」と素直に答えた。
すると、彼女は「はあ……」とピンと来ていない顔をしているので――
「知ってます?」と訊いてみた。
「あ、はい。もちろん、知ってます。あの大きなビルの会社ですよね?」
「ハ、ハ、ハ――そうですね。あのビルの会社です」
ウチの会社のことをそんなふうに表現した人は彼女が初めてだったので、おもわず笑ってしまう。
すると、彼女はちょっと恥ずかしそうな顔で――
「ご、ごめんなさい――名前とかはよく聞くのですけど、その……どんな仕事をしている会社なのかまでは……」
勉強不足でゴメンナサイなんて言われてしまった。
「まあ、仕方ないですよ。ウチの会社、コマーシャルとかで宣伝しているわけではないし――」
逆に新鮮な反応で、面白いなあ――なんて思ってしまう。
すると――
「学校は――」
……えっ?
「学校?」
なんか、急に彼女が慌てだして、どうしたんだろう――そう考えると――
「え、いや、そうじゃなくて……そう、私の学校からも確か、四角物産に行った人がいたなぁ――なんて」
ああ、そういうことか――と思う。
「えーと……ユミさんの出身校って?」
「えっ? あ、はい――三田塾大です」
三田塾?
「もしかして――ユミさんはお嬢さま?」
女子大といえば、お嬢様――というイメージからそんなことを言ってしまったのだけど、彼女は、顔を真っ赤にして、「ち、違います!」と応えた。
「同級生の中にはお嬢様みたいな人がいましたけど、私はいたってふつうのサラリーマンの娘でして――」
と、手をパタパタしながら説明される。
「あ、そうなんですね」
ちょっと失礼だけど、彼女の反応ひとつひとつがカワイくて、おもしろいな――なんて思ってしまう。
小動物系?
「タカアキさんは⁉」
「――えっ?」
なんか、彼女の声のトーンが上がった。
「タカアキさんはどこの大学だったのですか?」
大学までたずねられちゃうんだぁ――
まあ、彼女の出身校も教えてもらったことだし、仕方ないか――と思う。
「えーと、一応、東大で――」
「――えっ?」
ユミさんは目を丸くした。
「ス、スゴいですね」
スゴい? まあ、スゴいんだろうなぁ。ふつうは――
「まあ、ボクの場合、運がヨカッタだけだから――」
そう言うと、謙遜のように聞こえてしまうかもしれないが、自分の場合、本当に『運がヨカッタ』だけなんだよなぁ――
「そ、そんなことないです! ありがとうございます!」
ん? なんでお礼を言われる?
まあ、イイかと思う。
「それじゃ、がんばって」
ボクがそう言うと、彼女は大きな杖を持ちながら――
「あ、ハ、ハイ……」
と、なんかしどろもどろの返事になる。
ああ、そういえば彼女、魔導士だったっけかぁ――
それで、ボクは袋を手に取る。
「そうそう、さっき、ゴブリンを倒したら杖をドロップして――」
先ほど手に入れた『タクトマスター』を彼女の前に差し出した。
「えっ? これは?」
「ユミさんにあげます」
「――えっ?」
なんか、驚かれてしまった。けど、自分は装備できないし、持っているだけじゃ宝の持ち腐れだから、使ってほしい――とお願いする。
「そ、そんな――」
「どうぞ遠慮せずに――そうですね。また、一緒にパーティーを組みましょう」
流れでそんなことを言ってしまった。まあ、イイよね――
「そ、それじゃ――お友達登録しませんか?」と彼女が言う。
あ、そうだな。パーティーに誘うんだったら、お友達登録しておかないと――
「はい、お願いします」
そう言って、スマホを取り出し、アプリを立ち上げる。
「――えーと、たぶん、これで登録できたはずですよ」
念のため、『お友達リスト』を確認するとちゃんと『ユミ』とあった。
戸越より先に、女の子をお友達登録するとはな――明日、戸越に自慢してやろう。
また、楽しみが増えたと思う。
それどころか――
「あのう、もしよかったら、LINもお願いできませんか?」
「――えっ?」
さすがにドキッとしてしまう。
「ゴメンナサイ! ダメですよね?」
そう言われるので、「そ、そんなことないです!」と慌てて否定する。
「それじゃ、お願いします」
そう言って、今度はLINのアプリも立ち上げた。
「――はい。これで、ボクのIDが行ったと思います」
彼女のバーコードを読み込んで、自分のLINのお友達の中に、『落合ユミ』という名前が入った。
「はい、タカアキさんの名前があります」
彼女がそう言うので、ホッとする。
「それじゃ、また」
「はい、また、よろしくお願いします」
彼女に何度も頭を下げられた。
うーん、なんか今日もいろいろあったけど――一番の収穫は女の子のLINをゲットしたことだな。
50
お気に入りに追加
63
あなたにおすすめの小説
前回は断頭台で首を落とされましたが、今回はお父様と協力して貴方達を断頭台に招待します。
夢見 歩
ファンタジー
長年、義母と義弟に虐げられた末に無実の罪で断頭台に立たされたステラ。
陛下は父親に「同じ子を持つ親としての最後の温情だ」と断頭台の刃を落とす合図を出すように命令を下した。
「お父様!助けてください!
私は決してネヴィルの名に恥じるような事はしておりません!
お父様ッ!!!!!」
ステラが断頭台の上でいくら泣き叫び、手を必死で伸ばしながら助けを求めても父親がステラを見ることは無かった。
ステラは断頭台の窪みに首を押さえつけられ、ステラの父親の上げた手が勢いよく振り下ろされると同時に頭上から鋭い刃によって首がはねられた。
しかし死んだはずのステラが目を開けると十歳まで時間が巻き戻っていて…?
娘と父親による人生のやり直しという名の復讐劇が今ここに始まる。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
全力で執筆中です!お気に入り登録して頂けるとやる気に繋がりますのでぜひよろしくお願いします( * ॑꒳ ॑*)
クトゥルフ神話trpg世界で無双はできますか?→可もなく不可もなし!
葉分
SF
君たちはクトゥルフ神話trpgというものを知っているだろうか?
プレイヤーが探索者を作り、そのキャラのロールプレイを行いシナリオという非日常を体験し遊ぶゲームである。
簡単に言えばダイスを振ったり、ロールプレイして謎の部屋から出たり、化け物をぶっ倒したり、そいつらから逃げたりしてハラハラ、ワクワクを楽しむものだ。
この物語はマジもんのクトゥルフtrpgの世界に入り込んだ1人のプレイヤーが死亡ロストせず楽しく無事生還しようと笑い、苦しみ、踠き続ける物語である。
⚠︎物語の都合上、さまざまなCOCシナリオのネタバレと個人的なクトゥルフ神話の解釈が含まれます。ご理解の上でご覧ください。
本作は、「 株式会社アークライト 」及び「株式会社KADOKAWA」が権利を有する『クトゥルフ神話TRPG』の二次創作物です。
使用するシナリオは配信サービスなどで使用許可が出ているものを使用しております。
大絶滅 2億年後 -原付でエルフの村にやって来た勇者たち-
半道海豚
SF
200万年後の姉妹編です。2億年後への移住は、誰もが思いもよらない結果になってしまいました。推定2億人の移住者は、1年2カ月の間に2億年後へと旅立ちました。移住者2億人は11万6666年という長い期間にばらまかれてしまいます。結果、移住者個々が独自に生き残りを目指さなくてはならなくなります。本稿は、移住最終期に2億年後へと旅だった5人の少年少女の奮闘を描きます。彼らはなんと、2億年後の移動手段に原付を選びます。
薄い彼女
りゅう
SF
今年、大学四年になる神岡龍一は迷っていた。
就職先を決められないのだ。
そんな時、付き合っていた彼女の一言で彼の人生は大きく変わることになった。
彼女はこう言ったのだ。
「私には予知能力があるの」
もちろん、この一言で彼の人生は変わるのだが、それよりも驚いたのは彼女の存在確率が極めて低いという事実だった。
Condense Nation
鳳
SF
西暦XXXX年、突如としてこの国は天から舞い降りた勢力によって制圧され、
正体不明の蓋世に自衛隊の抵抗も及ばずに封鎖されてしまう。
海外逃亡すら叶わぬ中で資源、優秀な人材を巡り、内戦へ勃発。
軍事行動を中心とした攻防戦が繰り広げられていった。
生存のためならルールも手段も決していとわず。
凌ぎを削って各地方の者達は独自の術をもって命を繋いでゆくが、
決して平坦な道もなくそれぞれの明日を願いゆく。
五感の界隈すら全て内側の央へ。
サイバーとスチームの間を目指して
登場する人物・団体・名称等は架空であり、
実在のものとは関係ありません。
ポイントセンサー
岡智 みみか
SF
人格の全てを数値で表される世界
個人の人格を総合的に評価し、数値で現す時代。そのポイントの管理・運営を司るパーソナルポイント管理運営事務局、略してPP局に勤める主人公の明穂は、同じ部署の仲間と共に日々自己のPPアップと局の仕事に邁進していた。
元SPの横田や、医師の資格を持つさくら、中性的な男の子の市山など、様々な個性あふれるメンバーとの交流を重ねながら、明穂はPPという制度の利点と矛盾に悩みつつも、やがて大きな事件へと巻き込まれてゆくーー。
VRMMO レヴェリー・プラネット ~ユビキタス監視社会~
夏野かろ
SF
第三次世界大戦後、2084年。
日本は戦災によって監視社会となり、人々は自由のない日々を過ごすこととなった。
ある者はVRMMO「レヴェリー・プラネット」に興じることで監視のストレスから逃げようとする。
またある者は、テロによって監視社会を革命しようとする。
その他、ゲームに課金するために犯罪に走る者、その犯罪者を利用する者、取り締まる者、
多くの人がそれぞれの道を歩いていく。
この物語は、そんな人間模様を
『ブギーポップは笑わない』や『パルプ・フィクション』のような形式でまとめた小説です。
一括投稿。
モニターに応募したら、系外惑星に来てしまった。~どうせ地球には帰れないし、ロボ娘と猫耳魔法少女を連れて、惑星侵略を企む帝国軍と戦います。
津嶋朋靖(つしまともやす)
SF
近未来、物体の原子レベルまでの三次元構造を読みとるスキャナーが開発された。
とある企業で、そのスキャナーを使って人間の三次元データを集めるプロジェクトがスタートする。
主人公、北村海斗は、高額の報酬につられてデータを取るモニターに応募した。
スキャナーの中に入れられた海斗は、いつの間にか眠ってしまう。
そして、目が覚めた時、彼は見知らぬ世界にいたのだ。
いったい、寝ている間に何が起きたのか?
彼の前に現れたメイド姿のアンドロイドから、驚愕の事実を聞かされる。
ここは、二百年後の太陽系外の地球類似惑星。
そして、海斗は海斗であって海斗ではない。
二百年前にスキャナーで読み取られたデータを元に、三次元プリンターで作られたコピー人間だったのだ。
この惑星で生きていかざるを得なくなった海斗は、次第にこの惑星での争いに巻き込まれていく。
(この作品は小説家になろうとマグネットにも投稿してます)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる