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第一章 ちょいと寄ってく?

第15話 レア度☆☆☆

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 戸越にドタキャンされたボクは、仕方なく今日もソロで『ちょいダン』に入った。

「――なるほど、ダンジョン入口のワープポイントから昨日の場所に移動できるんだな」
 一度利用したワープポイントはポイントナンバーが表示され、マップ上のマーカーが灰色から青色に変わっている。昨日、利用したポイントは『XI』というナンバーになっていた。

 入口から入ってすぐのワープポイントにある石像に手を当てると、アプリに『どちらに行きますか?』という文字が現れ、『XI』を選択。まあ、今はそれしかないのだけど――

 すると――

「おおっ。やっぱりすごいなぁ」
 突然、見えていた視界が変化する。こういう現象はなかなかシュールだ。ダンジョン内はシュールなことしか起きないのだが――

 ワープポイント『XI』には三つの出口がある。
「――昨日はこっちから来たんだよな。それじゃ、こっち行ってみようか」
 ひとりでつぶやく。

 それからは昨日と同じ要領だ。分かれ道のところで、そーっと先をのぞき、ゴブリンがいるかを確認する。
 三つほどの分かれ道を過ぎたところで、早くも一匹目のゴブリンを発見!

「おっ! しかもリュック持ちだ」
 と、いうことは、コイツを倒せばなにかドロップするかもしれない。

 ここは慎重に、確実に仕留めようと考える。

 できるだけ、音を立てずにゆっくり近づいて――

「ギイィ!」
 ゴブリンが気づかれこちらに向かってきた!

 すかさず盾を向ける!

 ガツ! ガツ!

 どうやら、武器はナイフのようだ。
 このあと、ゴブリンは飛びかかろうとするので、そのタイミングで攻撃するとダガーの間合いでも確実に仕留められるのだが――

 ガツッ!

「うわっ!」
 背中に痛みを感じ、思わず声を出してしまう。
 振り向くと別のゴブリンが、石斧で攻撃してきた!

「マズい! リンクした!」

 いったい、どこに隠れていたんだ?
 しかし、今、それを考えている余裕はない。

 うしろのゴブリンは石斧だから、致命傷になることはないだろう――
 そうなれば、前にいるゴブリンに集中する!

 そう考えるが、石斧でもけっこう痛い! なんとか我慢する。

 すると――

「ギイィ!」
 リュック持ちのゴブリンがジャンプして、飛びかかってきた!
「今だ!」
 
 踏み込んで右手を思いっきり突き出す! フェンシングのイメージだ!

「ギャアァァァァ!」
 断末魔をあげて、ゴブリンが地べたに転がった!

「この!」
 今度は振り向きざま、もう一匹のゴブリンに向けて、ダガーを振り抜く!

「ギイィ!」
 さすがに当てずっぽうで振ったので、ゴブリンにかすった程度だった。それで、相手は逃げ出してしまう。

「ふう――しかし、痛かったなあ……」

 自分の背中をさする。いまでもヒリヒリして痛い。
「まあ、もう一匹が石斧で助かった。ナイフだったら死んでいたよ――」
 
 本当に死ぬわけではないとわかっても、さすがに死ぬのはイヤだ。気をつけなければと思う。

「そうだ、なにをドロップした?」

 前に振り向きなおすと、魔石のとなりになにか大きなモノが落ちていた。
「なんだこれ?」
 それを手に取る。
「どうやら、杖のようだな?」

 茶色の棒なのだが、先っぽが玉ねぎのような形をしている。
「――いや、炎の形なのか?」
 
 なにを模しているのかは不明だが、そんな感じだ。

「杖ということは、魔導士用なんだろうな――」

 これをドロップしたゴブリンはナイフで攻撃した。つまり、魔法使いではない。ということは、ドロップアイテムとモンスターのジョブは関係ないみたいだ。

 それにしても、魔導士用の武器じゃ、装備できないよなぁ……

「売っておカネにするか……その前に、どんなモノかくらいは見ておかないとな……」

 スマホを取り出し、アイテム検索をする。

「なになに?『タクトマスター』? 種類、魔法杖ワンド。大昔に実在した、時間を操る大賢者が使用していた杖? レア度☆☆☆。ボーナス、魔法攻撃力アップ、魔法命中率アップ、装備中、時間の進み方が十パーセント遅くなるぅ?」

 なんか、スゴそうだ。
 装備できないのは残念だけど、とりあえず、持っておこうとナップサックの袋に押し込む。
 いまさらだが、このナップサック、袋の大きさより大きいモノでも中におさまってしまう。アニメとかで表現される無限収納カバンのようなモノだろうか?

「さて、この調子でどんどん行くか!」

 それからも、ゴブリンを五匹仕留める。そのうち二匹はリュック持ちで、それぞれ盾と胸当てを落とした。どちらもレア度は☆ひとつだったが――

「今日はずいぶん、アイテムを手に入れたな」
 DT二時間半のアラームが鳴ったので、そろそろ上がろう――そう考える。
 マップを見ると近くにワープポイントポイントがあったので、そこを目指した。

「二つ目のワープポイント、ゲットだな」

 これって、けっこう順調に進んでいるんじゃないか?

 石像を触れて、ダンジョン入口まで戻ってきた。ワープポイントの使い方もなれたモノだ。

 さて、帰るか。
 戸越は『今日も会う』なんて予言していたけど――
「さすがにそれは外れたようだな――」なんて考えたとき。

「――えっ?」
 そんな声が聞こえたので、振り向く。
「――あ」
 そこにいたのは――

「ユミさん?」
「タカアキさん?」
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