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第一章 ちょいと寄ってく?
第9話 出会い
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現れたのはゴブリンでなく、人だった。灰色のローブと木製の大きな杖を持った小柄な女性。
「ごめんなさい。ゴブリンかと思って――」
ボクは武器を向けてしまったことを急いで謝る。
「こちらこそ、驚かしてスミマセンでした。何やら声が聞こえたので見に来たのですが――」
女性はそんなことを言う。
声? ああ、ゴブリンの悲鳴だな――
今、ゴブリンを倒したところだと説明する。
「そうだったんですか? スゴいですね」
――スゴい?
彼女の話では、ダンジョンに入ったのは今日が初めてらしい。
「会社の人と一緒に来たのですが、途中ではぐれちゃって――探していたところでした」
「そうだったんですか。あれ? たしか、パーティーだと仲間の位置がアプリのマップ上に表示されるとかじゃなかったでしたっけ?」
チュートリアルでそんなことを言っていた気がする。
「そうなんですか? ありがとうございます。ちょっと、見てみます」
そう言って、自分のスマホを取り出し見始めた。
「えーと……こうでしたっけ?」
女性は、かぶっていたフードを下ろした。それで、相手の顔がはっきり見える。ボブカットの黒髪。すこし幼っぽいけど、カワイイ女の子だった。
「ちょっと、わからないですね……」
困った顔をしているので、ボクは「スミマセン、見せてもらえますか?」と彼女へ近寄ってみる。自分の身長は百七十センチ。つまり、そんなに大きいほうではないのだが、こうやって近くにくると、遠目の印象より身長差があるとわかった。
「あ、ハイ」
そう言って、彼女はスマホを差し出す。のぞき込むと、マップは表示されて、自分の位置を示すマーカーはあった。しかし、仲間のマーカーが確認できない。マップを広範囲にしても、仲間のマーカーは見当たらなかった。
「うーん、ないですね……そういえば、相手とはパーティー登録しました?」
「パーティー? とうろく?」
チュートリアルでは、パーティーにする場合、相手のQRコードを読んでパーティー登録する――となっていた。
「すみません、スマホをちょっと貸してもらえますか?」
「あ、ハイ」
受け取ると、パーティー情報の画面を出してみる。
「あ、やっぱり、パーティーになってませんね」
「はあ、そうなんですか……」
困ったような顔をその女の子は見せる。
「私、今日が初めてなので、よくわからなくて――」
ご迷惑をおかけしてスミマセン――と謝られる。
「いえ、ボクも初めてですし――」そう応えると――
「そうだったのですか? おひとりで?」
そうたずねられたので、一緒にきた会社同僚にはチュートリアルを見ている間、「先に行く」と言われたのだが、そのまま帰ってこなかった。なので、ひとりでやっていたと説明する。
「初めてなのに、スゴいですね」
「さあ、どうなんでしょう?」
ボクは苦笑いする。まあ、それよりも――
「ダンジョンは広いですから、やみくもに探してもみつからないと思いますよ。一度、ワープポイントに行って、ロビーの受付でたずねてみたらどうでしょう?」
そう提案するのだが、彼女は浮かない顔をする。
「どうしました?」
「わたし、方向音痴なので、ワープポイントまで行ける自身が……」
そんなことを言われるので、「はあ……」と気の抜けた返事をしてしまう。
「それじゃ、ボクが案内しますよ」
そう言うと、彼女は慌てる。
「い、いえ、そこまでご迷惑をお掛けするわけには――」
そんなふうに断られるので、ちょっと困ってしまう。
すると、彼女がこんなことを言ってきた。
「あのう、よろしかったら、一緒にいてイイですか?」
「――えっ?」
「ごめんなさい。ゴブリンかと思って――」
ボクは武器を向けてしまったことを急いで謝る。
「こちらこそ、驚かしてスミマセンでした。何やら声が聞こえたので見に来たのですが――」
女性はそんなことを言う。
声? ああ、ゴブリンの悲鳴だな――
今、ゴブリンを倒したところだと説明する。
「そうだったんですか? スゴいですね」
――スゴい?
彼女の話では、ダンジョンに入ったのは今日が初めてらしい。
「会社の人と一緒に来たのですが、途中ではぐれちゃって――探していたところでした」
「そうだったんですか。あれ? たしか、パーティーだと仲間の位置がアプリのマップ上に表示されるとかじゃなかったでしたっけ?」
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「そうなんですか? ありがとうございます。ちょっと、見てみます」
そう言って、自分のスマホを取り出し見始めた。
「えーと……こうでしたっけ?」
女性は、かぶっていたフードを下ろした。それで、相手の顔がはっきり見える。ボブカットの黒髪。すこし幼っぽいけど、カワイイ女の子だった。
「ちょっと、わからないですね……」
困った顔をしているので、ボクは「スミマセン、見せてもらえますか?」と彼女へ近寄ってみる。自分の身長は百七十センチ。つまり、そんなに大きいほうではないのだが、こうやって近くにくると、遠目の印象より身長差があるとわかった。
「あ、ハイ」
そう言って、彼女はスマホを差し出す。のぞき込むと、マップは表示されて、自分の位置を示すマーカーはあった。しかし、仲間のマーカーが確認できない。マップを広範囲にしても、仲間のマーカーは見当たらなかった。
「うーん、ないですね……そういえば、相手とはパーティー登録しました?」
「パーティー? とうろく?」
チュートリアルでは、パーティーにする場合、相手のQRコードを読んでパーティー登録する――となっていた。
「すみません、スマホをちょっと貸してもらえますか?」
「あ、ハイ」
受け取ると、パーティー情報の画面を出してみる。
「あ、やっぱり、パーティーになってませんね」
「はあ、そうなんですか……」
困ったような顔をその女の子は見せる。
「私、今日が初めてなので、よくわからなくて――」
ご迷惑をおかけしてスミマセン――と謝られる。
「いえ、ボクも初めてですし――」そう応えると――
「そうだったのですか? おひとりで?」
そうたずねられたので、一緒にきた会社同僚にはチュートリアルを見ている間、「先に行く」と言われたのだが、そのまま帰ってこなかった。なので、ひとりでやっていたと説明する。
「初めてなのに、スゴいですね」
「さあ、どうなんでしょう?」
ボクは苦笑いする。まあ、それよりも――
「ダンジョンは広いですから、やみくもに探してもみつからないと思いますよ。一度、ワープポイントに行って、ロビーの受付でたずねてみたらどうでしょう?」
そう提案するのだが、彼女は浮かない顔をする。
「どうしました?」
「わたし、方向音痴なので、ワープポイントまで行ける自身が……」
そんなことを言われるので、「はあ……」と気の抜けた返事をしてしまう。
「それじゃ、ボクが案内しますよ」
そう言うと、彼女は慌てる。
「い、いえ、そこまでご迷惑をお掛けするわけには――」
そんなふうに断られるので、ちょっと困ってしまう。
すると、彼女がこんなことを言ってきた。
「あのう、よろしかったら、一緒にいてイイですか?」
「――えっ?」
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