ちょいダン? ~仕事帰り、ちょいとダンジョンに寄っていかない?~

テツみン

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第一章 ちょいと寄ってく?

第6話 ダンジョンへ

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「おーい、戸越はどこへ行った?」

 たしか、チュートリアルが終わるころロビーに戻ってくると言っていたはずだが――

 五分ほど待ったのだが、戸越は現れない。

 受付に確認したところ、ロビーを含め、ダンジョン内は携帯の中継基地がないらしく、専用アプリに『友達』登録をしないと連絡が取れないらしい。

「仕方ない、ひとりでやってみるか――」

 行き違いになるかもしれないが、約束を守らなかった戸越が悪い。
 なにより、早くダンジョンに入りたくて仕方なかったのだ。

「うーん、こんなにワクワクするのはひさしぶりなぁ」

 さっそく、ダンジョン入口の洞窟に入る。ココも二十メートルくらいの薄暗いトンネルが続いた。
 そこを抜けると、直径十メートルほどの円形をした部屋に出る。真ん中に白いヘンな形の石像が見えた。高さ五メートル、直径三メートルくらいある大きな石像だ。

「これが、ワープポイントというやつか――」
 その部屋は、ロビーへつながる通路の他に四つの洞窟とつながっていた。

「ここからが本格的なダンジョンということだな」
 四つある洞窟のひとつを選んで進む。いつでもゴブリンが出てきてもイイように、片手剣をさやから抜き取りかまえる。
 片手剣は五十センチほど。ずっしりと重さを感じた。

 洞窟内は真っ暗というわけではない。満月の夜道くらい明るい。目が慣れてくると、岩肌の色もハッキリわかった。最初はどうして明るいのかわからなかったが、岩全体がほんのりと発光しているのだと気づく。

「これも、なにげにスゴいなあ。光ゴケとかいうモノだろうか? それとも飛行石? ハ、ハ、ハ。それはないか」

 五十メートルほど歩くと、道が二つに分かれている。適当に歩くとまた分かれ道が――それを何度も繰り返した。
 現在位置を確認しようと、スマホを取り出しアプリを立ち上げる。
「アプリのマップがなければ間違いなく迷子だな」

 マップを開くと自分の位置が赤いマーカーで記されている。どうやら、ダンジョン入口から一キロメートルほど離れたようだ。けっこう歩いたな――なんて考える。それでも、一階層全体の大きさから考えたら、まだほんの一部なのだが――

「さて、そろそろゴブリンが現れてもイイと思うのだけど――」

 そんなことを思った時、後方から、タタタ、という足音が――
 振り向くと――

「ギイィィィィ!」
 奇声をあげて、何かが飛びかかってきた!

「うわっ!」
 避けようとしたのだが、避けきれない! 何かで腰あたりをたたかれた!
「イタイッ!」
 パニックになって逃げ出す。しかし、相手のほうが速い! 太ももあたりを何度も叩かれた!

「イタ――ん、思ったより痛くない?」

 死ぬんじゃないかと最初は焦ったが、少しだけ冷静になるとそれほどでもない。三歳のおいっ子に玩具で殴られた――くらいの痛みだ。ガキは手加減を知らないから、けっこう痛いんだよなぁ。まあ、それはどうでもイイが――つまり、ケガをするほどではない。

「それなら――」
 振り向き、剣を振る。しかし、相手はそれをサッとかわした。
 向き合い、相手の姿をしっかり見る。薄暗いダンジョンの中でも、相手が緑色の肌をしているとハッキリわかった。

「コイツがゴブリンか――」
 体毛はなく、下あごから長い牙が生えている。想像以上にリアルでグロテスクだ。
 石を棒に括り付けただけの、いわゆる石斧いしおのを持っていた。あれで叩かれていたらしい。

「グルルルル――」
 うなるゴブリンに目掛け、片手剣を振る。しかし、今度も躱された。
「全然、攻撃が当たらない――攻撃されてもほとんどダメージはないけど、これじゃラチが明かないなぁ」

 むやみに剣を振り回してもダメだ――しっかりと相手を見なければ――そう考える。
 すると、ゴブリンから飛びかかってきた。

「今だ!」
 剣を持った右手を思いっきり振り下ろす! すると、ゴブリンのカラダに剣が突き刺さった!

「ギャアァァァァ!」
 鼓膜が破れてしまうのでは――というほどの大きな悲鳴をあげて、ゴブリンが地面にバタっと倒れる。

「やった――のか?」
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